高嶺のsub様の大いなる勘違い〜その人はdomじゃありません〜

もかりん

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20. 僕のヒーロー

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春人と出会って、季節が過ぎて、もうすぐ春だ…

春人とクリスマスを一緒に過ごし、僕の両親がアメリカから戻れないらしいので、お正月は春人の実家にお邪魔した。
両親は、アメリカに来て欲しそうだったけど、そんなに長期で春人と離れるのは嫌だったから、次に東京に両親が戻る時に実家に帰る事にした。

春人の家族は温かい人たちだった…

お母さんも、春人と血が繋がっていないと思えないほど、みんなに同じように接していて、小学校2年生のゆうまくんと、5歳のだいきくん、しのちゃん(双子だった!)は素直で可愛くて、初対面の僕にも懐いて膝に座ったり、「美人さんがきた~」って走り回ったりしていた。

春人は、初めのうちは
「あいつら調子乗るから、あんまり甘やかさなくていいからな!」
とか言ってたけど、僕が子ども達と仲良くなって3人の部屋に連れて行ってもらったりしてるうちに、拗ね始めて、
「理人はにーちゃんのだぞ!」とか言って、子ども達の前で僕を膝に乗せて下ろさなくなった(笑)

結局、春人のご機嫌が直るまで頭を撫で撫でしてあげた…

バレンタインは、大変だった。だって、僕の生活を春人が全部管理してるんだもの…

こっそりチョコを用意するのが難しい…

なんとか、実家から材料取り寄せて、一平におススメレシピ聞いて、春人のバイトの間に作った。

春人がバイトから帰ってきた時に、チョコの味見しすぎて、ほとんどご飯食べてなかったのがバレて、お仕置きされたけど、なんでご飯食べれなかったのかコマンドで聞かれなくてよかった…

最近は、僕が主体的にしたことにはあまり口を出さないようにしてるみたい…
たいていのことは、僕が聞いてほしくて、自分から話しちゃうんだけどね…
基本何でも聞いてほしいし、見てほしいから…

でも、チョコはこっそり用意したかったから、お仕置きされても頑張った!

あの時のお仕置きは、やばかった…
僕が、コンビニのお菓子食べすぎたって嘘ついたから、
『俺のご飯より他の物が好きな理人にぴったりのお仕置きをする』って言われて、羽根で乳首やおちんちんくすぐられたり、アナルビーズ入れられて…

「理人【say言え】何がほしい?」って聞かれて、春人の指とおちんちんをおねだりしまくったんだよね…

それはそれで興奮したけど、やっぱり僕が春人のご飯が大好きだってわかってほしくて、ちょっと悲しかった…

やっとバレンタインに春人にチョコ渡せた時は、春人は「ありがとう」と「ごめんなさい」をひたすら繰り返して土下座してた。

僕にお仕置きをしろって言うから困っちゃった…だって、domに向かってsubがお仕置きするなんて、居心地悪いよ…subの喜びはdomが喜ぶことだから…

だから、お仕置きの代わりにおねだりをする事にした。
温泉に連れてってもらって、2人で露天風呂で「ワンちゃんのお散歩プレイ」をしてもらうことをおねだりした。

だって、キャンプの時に帰りに日帰り温泉があって、入りたいって言ったのに、「理人の裸を他の奴に見せられないから公衆浴場はダメ」って言ってお家のお風呂になったんだ
…まぁヤキモチ妬いた春人が僕の身体中誰にも見せられないくらいいっぱい跡つけてくれたから許すけど…

その時いつか2人で温泉行こうねって約束したから、おねだりしても良いよね?

春人は温泉より「ワンコプレイ」に怯んでるみたいだった…春人にとっては前回葛藤しながら相当頑張ったみたいで…覚悟が必要なんだって。
でもめっちゃ気持ちよくて楽しかったから、あの快感が忘れられないんだよね…僕…
だから、当然抑制剤を多めに飲んでたっぷりいたぶっってもらった。お尻もちょっと叩いてもらって、幸せだった…

まぁ、そんなこんなで僕は幸せな日々を過ごしているわけですが…

でも、1週間に一度、ちょっと苦手な時間がある。

それは金曜日の午後の授業…僕が空きコマで春人は授業が入ってる。

一平が話し相手してくれる時もあるけど、1人の時は退屈だ。マンションに戻るほどの時間でもないし、微妙な90分。春人は何も命令してくれなくて、「自分で考えて過ごしなさい」って言われてる。

暇だから図書館行って本を漁ったり、空き教室で自習したりしてるんだけど、
今日は自習中にdomが沢山入ってきた。

その人達は、僕の知らない人だと思ったけど、僕の事を知ってるみたいだった。
春人の友達みたいで、春人が怪我したから急いで付いてきてって言われて、僕は慌てて荷物をまとめて追いかけた。
付いて行った先は病院ではなくどこかのアパートだった。

春人は友達の家で休んでるのかな?
それとも救急車待ちなんだろうか…
僕が部屋の中に入ると、カチャリと鍵をかけられた。

春人は部屋にはいなかった。

「はるとは?…どこ!?」

「あいつはいないよ…」

一気にそこにいたdom全員からグレアが放たれた。おそらく全員Aランクだろう。Aの上の方の奴もいればBとの境界ギリギリの奴もいた。

「騙したの?」

「まさか、本当に1人でのこのこ付いてくるなんて…警戒心が足りないんじゃないかい?」

1番グレアの強そうなリーダー格っぽい奴が話し始めた。

「なんでこんなことするの?」

「最近、君が相応しくないdomとつるんでるって噂になっててね。誰がご主人様に相応しいか、教えてあげようと思ってね。」

何言ってるんだ?こいつ?

僕にこんなことしたのがバレたら大学にいられないとは思わなかったんだろうか…

「君のような素晴らしいsubがAランクのdom僕たちを無碍にしておきながら、もっと低ランクのdomに付き従うなんて許せない…

どうせ、 sub抑制剤を使ってランクを無理矢理下げてるんだろう?

なら、俺の方が高ランクだし、俺にしておけよ…可愛がってやるから…」

「ていうか、あんた達誰?春人の友達じゃないの?」

「前に君にグレアを上げたことがあるんだけど、覚えてない?」

そうか…あの頃僕に声をかけてきたdomたちか…

気持ち悪い…近づかないでほしい…

嫌悪感が募る。
春人に出会う前の僕はどうして、他の奴をご主人様にしてもいいかもと一瞬でも思えたんだろう…今ならハッキリ言える。絶対に嫌だ!

「悪いけど、春人以外をご主人様にするつもりはないから、そこをどいてくれない?」

「お前、今の状況がわかってないみたいだな…」

dom達が一斉に僕に向かってグレアを強めてきた。Aランクdomが5人一斉に僕に向かって放ったグレアに空気が重くなる。

sub抑制剤でBランクのdomに従うsubなら、Aランクが5人でかかればイチコロだと思ったんだろう…

体内グレアなんて、世界で僕らと父さんくらいしか知らないだろうから当然だけど…

僕に対しての横暴も、一度subを支配してしまえば、 subはdomの意志に従うから、合意のプレイとして片付ければいいと思ったのかもしれない。

だけど、彼らは誤解している。僕が使っているのはsub抑制剤ではなく、dom抑制剤だ。
むしろ、春人に出会う前、sub抑制剤を使っていた時でSSランクなのだ。

今の僕は、sub抑制剤を飲んでない。謂わばSSSランクとも言える。

春人以外には体内グレアはピクリとも反応しないので、Aランクが5人来られても何ともない。だが、高ランクsubと言えども、僕は非力だ。
もしも腕力に訴えられたらひとたまりもない。

僕はチラッと時計を見た。春人はまだ授業中だ。
授業が終われば、僕がいないことに気づいて探してくれるだろう…とにかく時間稼ぎをしよう

出来るだけ、暴力の方向に行かずグレアだけに持ち込みたい。
グレアを引き出して疲弊させる作戦でいこう…

僕は、わざとグレアが効いて苦しそうな顔を作った…
リーダー格の奴の口の端が上がる…

それにしてもK大生らしいというか、無理矢理に暴力を働こうとせず、完全服従にこだわる奴らで助かった…万が一支配できずに乱暴を働けば自分達の輝かしい将来を失うことを自覚しての計算なのか、小賢しいことこの上ないが、とにかく助かった…とりあえず支配を受けてるフリをして…時間を稼ごう…


「西園寺くん、いや、理人【kneel跪け】」

こいつらに『りひと』なんて呼ばれたくない…

僕は、苦しそうに耐えている顔を作った。

僕はゆっくりと片膝を付いた…
いくら演技でもkneelなんてしたくない

跪くなんてごめんだ…

リーダー格の男が躍起になって、グレアを強めてくるが、後ろの2人はもうグレア切れでフラフラだ…
いつまで持つかな…

しかし、いつまでもグレアに屈しそうにな演技を続けるわけにはいかない…

だんだん床に付いている膝が痛くなってきた…
かと言って、こいつらの前で【kneelおすわり】や【crawl四つん這い】をするなんてごめんだし、かと言ってあぐらをかいたりすれば、グレアが効いてないのがバレてしまう…

「くそ!【kneel】っつってんだろうが!おいお前らこいつのことをねじ伏せろ!」

僕が考えあぐねていると、向こうもなかなか服従しない僕に痺れを切らしたようで、リーダー格のdomがとうとう焦れて強硬手段に出てきた。

やばい…

子分のdom達が僕の腕を掴んだ…


『ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!』

玄関のベルが鳴った。

「いい!ほっとけ!鍵はかかってるんだし」

ドンドン!ドンドン!!ガチャガチャ!…ドンドン!!

ドアが蹴破られそうな勢いで叩き続けられている。

「りひとっ!りひとっ!そこにいるのか?りひとぉ!」

春人の声がした。

「はると!? 僕はここだよ!!」

「くそっ!あんまり騒がれると通報されちまう!
おい!お前ドア開けてあいつ黙らせてこい!相手はせいぜいBランクだろ…威圧で動かなくさせちまえ!」

domの1人がドアを開けたと同時に春人が部屋に入ってきた。

ドアを開けた奴がグレアを放ったみたいだが、ディフェンス状態の春人はそれを無視してズカズカと部屋に入ってきた…

焦ったdomが春人に殴りかかったけど、あっさり返り討ちにされていた。

春人、かっこいい!喧嘩も強いんだな…

「おい!Bランクが調子乗ってんじゃねぇぞ!」

dom達のグレアが一斉に春人に集中攻撃を始めた。

「お前らからの攻撃の意思は受け取った。
これで、正当防衛されても文句言えないな」

春人は、歪んだ笑みを浮かべた…

「理人、セーフワードを言え」

「え?はい…たかねのあな!」

次の瞬間、ぶわわ~~っ!と強烈なグレアが部屋中に広がりバタバタとdom達が崩れ落ちた。
後ろにいたやつは失神している。
リーダーの横にいた奴は意識はあるものの、震えてちびってしまったようだ…いや、あの量は漏らしたという表現が正しいかもしれない。

リーダー格の奴もがくりと膝がくずれて、とうとう完全に【kneelおすわり】の姿勢になってしまった…

「くっ…お前、Bランクじゃなかったのか…」

悔しげに顔が歪んだ。

実は、僕は春人が来た時点でこうなるんじゃないかと予想はしていたんだ…

僕と付き合ううちに、春人は僕にくれるグレアの量を完璧にコントロールできるようになっていた。僕の体内グレアの量に合わせて的確にコントロールしていた。

グレアを川の流れに例えると、誰でも水源の湧水量を多少変える事はできるが、春人のように河の流れを瞬時に堰き止めるような芸当はそうそうできるものではない。

だから他のdom達はグレアの川の太さだけに目が言ったのだ…

だけど、今春人がやってのけたのは謂わばダムの決壊だ…

渦巻くような濁流はまさにSSランクにも匹敵する水量で、簡単に全てを飲み込んでいく…

「さすが!春人すごいね!」

「理人!大丈夫か?何もされなかったか?」

「うん…大丈夫。春人…授業中じゃなかったの?どうして気づいたの?それになんでここがわかったの?」

「そのピアスだよ」

「え…これ?…」

僕は、自分の左耳のピアス型デバイスに触れた…

それは少し前に父さんが開発した物で、体内グレアを計測できるデバイスだった。僕の体内グレアの量に合わせて、ピアスの色が変わる代物で、春人はそれを見ながら自分から出すグレアの量を調整してくれていた。

僕は、春人と一緒じゃない時も弱い体内グレアを発生しているけど、その量はその時の精神状態と密着していて、嬉しい事があると増えるし、気分が落ち込むと減る。
このピアスは、春人にときめいた時に発生する大量の体内グレアだけでなく、通常時の微弱なグレアの変動も検知してくれるらしく、春人は僕の精神状態の管理にこのデバイスを活用していた。

「グレアの水準はピアス本体だけじゃなくて、俺のスマートウォッチにも遠隔表示されるようになっていたんだよ。だから、授業中でも理人が元気か、こまめにチェックしてるんだ。午後の授業中に著しく体内グレアの低下が見られたから何かあるなと思って、GPS調べたら、理人が学内から出ていたから慌てて教室を飛び出したんだ…」

そっか…授業中もこまめに俺の様子を確認してくれていたのか…心がじんわりと温かくなった。

GPSはお互いの居場所が把握できると何かと安心なので、スマホに専用のアプリを入れていた。まぁ、スマホ取られたとしても他にも春人や武田からいくつも付けられている…

それでも、GPSの精度を考えるとアパートの部屋番号まで特定するのは難しいんじゃないだろうか…

「俺が駆けつけた時、アパートの周辺を囲むように理人の家の使用人さん達がいてね。いつでも突入できるように待機してたんだ。

理人の安全を確認しながら、ギリギリまで俺の到着を待ってくれてたみたいで…

俺が駆けつけたら、武田さんて人がこの部屋を教えてくれたんだ。

おかげですぐにここに辿り着けた。」

武田~!!ありがとう! 愛を感じるよ~!!

「理人、大丈夫か?何かされてないか?」

「グレアを当てられたのと、手首を掴まれただけ…
大丈夫、こいつらのグレアなんて、なんて事ないよ…コマンドにも従ってない…」

「そうか…よかった…理人に何かあったらと気が気じゃなかった…でも理人が他の奴のグレアを浴びるのも、手を触られるのもすごく嫌だ…」

僕の手首を包み込む手が震えている…すごく心配してくれたんだ…

「もう、春人にしてもらったから、大丈夫。春人以外の誰のものにもなりたくないって実感したよ…
すごくかっこよかったよ!ぼくのdomさま…それに…き…もちよか…った…」

あれ?緊張と興奮が解けて今頃蕩けてきた…

「理人!ありがとう!【goodよく頑張った】偉かったな…

ん?おい!大丈夫か?セーフワード使ったんだよな?」

「ごめん、せっかくのぜんりょく…の…は…ると…のグレア、あびてみたくて…つい…わざと…いいまちがい…したんだ…」

「理人!すまない!お前が浴びてるなんて知らなくて、配慮してやれなかった…」

「すっごく…きもち…かった~♡」

あの時の僕は、嫌な思いしてグレアが最低レベルに下がっていたから、春人の全力を受け止められる気がしたんだけどな…
あ、そうか…突入してきた春人にキュンとしたのを忘れてたな~

僕のピアスは春人が僕を管理するためのものだから、僕自身が見えないのが難点だなぁ~

「くっ…理人…急いで帰ろう…俺、このままだと、ここでお前を襲ってしまいそうだ…授業も今日は自主休校だ」

あ、しまった…
春人に返ってくるS波の事を忘れていた…

SSランクのS波をもろに、しかも初めて食らった春人は相当の衝撃のはずだ…

今まで僕に気遣って平静でいられたのが奇跡みたいなものだ…

春人が僕をお姫様抱っこして、部屋から出た。
普段の春人は僕を子供みたいに縦に抱くのに、敢えてそうしないのは、身体の密着を避けるダメだろう…相当辛いのだと推測できる。

それでも、蕩けた僕を歩かせないのは、春人の独占欲と理性が鬩ぎ合っている気がして、愛しくて堪らない…




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