高嶺のsub様の大いなる勘違い〜その人はdomじゃありません〜

もかりん

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10. 高嶺のsub様の密かな特訓

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僕は院長室から泣きながら帰った。
春人に子供のように抱っこされながら、借りているマンションに送り届けてもらった。

春人が帰り際におでこにちゅーをしてくれた。
「おやすみ。大好きだよ」
って言ってくれて、僕も好きっていい返したかったけど、

おでこにチューされただけで、もうグレアでグズグスに溶かされてsubスペースに入っちゃったから…何も返せなかった…

結局春人は、蕩けた僕をベッドまで運んでくれて、それでも手を離さない僕のせいで、一緒のベッドで泊まる羽目になった…

そして今に至る。

「おはよう…理人」

僕はパチっと目を覚ましたら目の前が真っ白だった。
よく見たら、それは春人のシャツで、僕は寝ている間に春人に抱きついていたらしい…

「ご…ごめん!おはよう春人…」

「いや、俺にとってはご褒美だよ。でも、そろそろ離れてくれるかな?さすがに限界…」

春人の春人が大きくなって、僕のももに当たっているのに気づいた。
あ…やばい…意識したら僕の息子も大きくなりはじめてる…
僕は慌てて春人から離れて洗面所に向かった。

顔を洗って出てくると、春人に後ろから抱きしめられた。

「は…はると?」

「昨日の続き…返事、聴かせてくれないの?」

僕はかぁーっと顔が熱くなる。

「あ…そうだね…うん。じゃ、ソファに座って…」

春人のすぐ横に僕も座る。隙間なくピッタリ。むしろちょっともたれ掛かってる。
恥ずかしいよりも、安心する気持ちが勝ってしまうのはsubの性質なんだろうな…

グレアが僕の発生したものであっても、トリガーが春人だから、僕の中ではやっぱり僕のご主人様は春人なんだ…

「春人…あのね…僕、春人のこと好き。この感情の名前が分からなかったけど、多分初めて会った時から、僕は春人が好きだったんだと思う…だから、春人の恋人にしてほしい…

でも、ご主人様になってほしいのも本当…僕はずっとパートナーに憧れていて、春人が僕のご主人様って気持ちは変わらない…

だから、ゆっくりでいいからパートナーの事も考えてほしい。僕は春人以外のご主人様は欲しくないから…」

「ありがとう!理人と付き合えるなんて夢みたいだ…パートナーの事も…全然自信ないけど、やっぱり俺も理人が他の誰かのsubになるなんて絶対嫌だから真剣に考えてみるよ。

いつか、俺にdom性が現れるかもしれないし、今すぐに正式なパートナーにはなれなくても、僕たちらしい関係を築いていこう!」

春人はギュッと僕を抱きしめてくれた。
首をすりすりってするのが擽ったくて愛しい…これが恋ってことなんだ…

春人は少し体を離すと、大きな身体を曲げて僕にキスをしてくれた。

ちゅっ…ちゅっ…ちゅぶちゅぶ…ちゅっぷ

だんだんキスが深くなって、春人の舌が入ってきた。ぴちゃぴちゃと舌を絡め合うと気持ち良すぎて、またグレアが溢れ出す…あぁ、もうこれ、dom用抑制剤がないと普通に暮らせないかもしれない…早く叔父さんに処方してもらおう。

春人が上顎の敏感なところを舌先で舐め上げたところで、僕はまた、ぐずぐずに蕩けてsubスペースに入ってしまった。

春人が帰れるようになったのは結局日曜日だった…

***

「はぁ~春人に会いたい…」
僕は、授業の終わった机に突っ伏している。
もうみんな退席して、僕1人だ。

先日の土日の反省から、叔父さんにdom用の抑制剤をもらうまで、春人と会うのは土日だけにしようって事になった。

そうは言っても同じ医学部なので当然授業で春人の姿を見かけるわけで…

その度に後ろ姿を見ただけでも心臓がキュンとなり、ちょっとグレアが漏れてやばい。
春人の前に跪きたくて、春人に抱きつきたくて、中途半端に疼いた身体を持て余し、春人のことばかり考えてしまう…叔父さんは忙しいみたいで、次に予約が取れるのは来週の水曜日。
だから春人には土日まで会えない。

ん?そういえば…なんか大事なことを忘れているような…

あ!そうだ!頭が春人のことでいっぱいで忘れていた!!

一平に報告しなくちゃ!あんなに心配してくれてたのに!すっかり忘れていた!

僕は早速、一平に連絡を取った。

一平は今日、正樹さんの家にお泊まりらしいけど、その前に少しだけ会おうという事になった。

***

「んで、やっぱり岬はneutralだったけど、理人の得意体質で、ときめく度にグレアが漏れて蕩けていたわけか…」

うう…改めて言われると一人芝居みたいで恥ずかしい…

「でも、岬も理人のこと好きって言ってくれたんだろ?恋人同士になれてよかったじゃん」

「うん…ありがとう…これも全部、一平のおかげだよ!!お礼にオレンジゼリー奢らせて!」

「いや、いらねぇ。別にそれ好きじゃないから…」

「え?お金足りなくても食べたがるほど好きだったじゃん?」

「ばか…理人と岬の絡みを作るために決まってるだろ…」

「一平~~♡」

「でも、あんまり1人で突っ走るなよ。お前は思い込みが強いからなぁ…なんかあったら拗れる前にすぐに相談しろよ」

「うん…うん…ありがとう!」

「んで、パートナー契約の方はどうするんだ?」

「うん…春人はneutralだけど、俺はもう春人以外のdomは欲しくないし、春人もそう思ってくれてるみたいだから、プレイごっこは続けてくれるって。」

「そっか、よかったな…まぁ、理人はそれで満足できるから、まぁいいとして、岬はneutralなんだから、その事は配慮してやれよ…」

「大丈夫。春人とも話し合った…あんまりハードなプレイは無理っていうのとイチャイチャ多めでって事になった。」

「そっか…まぁ、理人はイチャイチャするだけでグレアで蕩けちゃうんだから、いつでもプレイみたいなもんだろうけどな…」

「うーん…それが問題なんだよな…僕、春人と一緒にいるだけで蕩けちゃって、大変だから大学では会えないし、夜に会うとsubスペース入っちゃって、翌日まで響くから、来週抑制剤もらうまでは土日しか会わないことになったんだ…

でも、春人に会いたくて…寂しくて春人のことばっか考えちゃって結局グレア漏れちゃって…」

「グレアのお漏らしか…恋する乙女だな(笑)
しかし、subのお前がdom用抑制剤飲むなんてな…
本当に面白い身体してるよな…」

「笑い事じゃないんだよ…このままじゃ、今週土日も会った瞬間にsubスペースに入ってしまう自信があるよ…」

「しょうがねぇな…俺がとっておきの秘術を伝授してやろう」

「え?」

「正樹さんってBランクでも上の方でさ、俺がCランクだから、結構グレアがきつい時あるんだよ。だから、編み出した技があるんだ…」

「まじ?!おお~♪一平さま…」

「やめろ…拝むな…俺はsubだから嬉しくない。」

「あ、そうだよね(笑)」

「あと、そうだな…どうせ土日もグレアで蕩けて出歩けないだろ?
お家デートするなら、まずは胃袋を掴んでみたらどうだ?
岬はカレーが好きなんだろ?学食でうまそうに食べてたらしいし…
とっておきのレシピ教えてやるから練習しろよ」

「え…僕料理なんてしたことないよ…」

「安心しろ。俺が教えてやる。理人でもできる簡単な奴だから、まずはカレーだけを作れるようになれ。せっかく土日まで会えないんだから練習しろよ。」

「うんうん!これからうちくる?」

「いや、今日は正樹さんちにお泊まりだから、明日な!」

正樹さんの話をする時の一平は別人だ。すっかりsubの顔。いや、乙女の顔か?
俺も春人といる時はこんな顔してるんだろうか…
急にいそいそとスマホを確認して、足早に去っていった。

***
翌日、大学終わりに僕のマンションに一平と向かった。
昨日のうちに使用人に頼んで、調理器具を一式揃えて置いてもらった。

「まずはカレー作って食べてから、subの秘術教えてやるから」

一平の買い物袋を覗いたけど、カレーのルーらしきものが入っていない。

「カレー粉で作る。その方が簡単なのに美味いんだ…一回覚えればすぐに作れて便利だぞ…本当はスパイス何種類か混ぜて好みに調整していくのが楽しいんだけど、初心者だからカレー粉な」

買い物袋の中に入っていたのは、鶏肉とカレー粉の他はヨーグルトとかトマト缶とかココナッツミルクとか、見慣れないものが多くて、じゃがいもは?人参は?って思ったけど、
一平の言う通り、あっという間にカレーができた。
そして、めっちゃ美味い!
こういうカレーが自分で作れるなんて知らなかった…

さすがにナンはハードルが高いし、春人の好みがわからないので、普通にご飯にした。

「は~…めっちゃ美味しかった!一平、ご馳走様!」

「おい…俺はカレーをご馳走しに来たわけじゃないぞ。わかってるか?」

「う…はい…」

「いいか、明日と明後日は練習に晩ご飯はこれを作れ。んで木曜日に上手く作れたら食べずに冷蔵庫に寝かせて、金曜の夜に岬に出してやれ…わかったか?」

「はい!」

僕は元気に頷いた。

「んじゃ次な。グレアを逃がす方法を教えるから、これも練習な…」

「グレアを逃がす?」

「そうだ…グレアがレセプターを満たすと、ぐずぐずになるだろ?」

「うん…」

「だから、その前にグレアを横から少しずつ逃すんだ…仕組みはよくわかんないけど、そういうイメージを浮かべると冷静さを取り戻せるんだ。俺はこれができるようになるのに何年もかかったけど…理人は時々ポンコツになるけど、基本は超有能だから、もしかしたら短期間でできるようになるかもって思ったんだ…」

「うーん…イマイチよくわかんないけど…」

「こればっかりは、頭を開いてグレアの流れを見せてやる事もできないし、実践あるのみだな…

理人、岬の写真あるか?出してみろ」

僕はスマホを取り出して春人の写真を表示した。
久しぶりの春人の笑顔の破壊力…

一瞬でグレアが溢れ出す。

「レセプターがいっぱいになる前に、横に穴が開いてるイメージで少しずつ逃がしてみろ…」

うーん…難しい…俺はそのままトロトロになった。

「理人、俺の顔を見ろ。お前の前にいるのは俺だ!一平だ…春人じゃない」

おお!一平の顔を見たらグレアがピタリと止まって冷静になった。

「すごい!一瞬で戻った。」

「んじゃ、もっかい春人の写真を見てみろ」

また、春人の顔を見るとグレアが溢れ出す。やっぱり上手く逃がせずぐずぐずになると一平が僕の顔を覗き込んできて冷静に戻った。

そんな事を10回くらい繰り返した後、一平は僕のスマホにアプリで一平と春人が10秒ごとに繰り返し表示されるスライドショーを作ってくれた。

「これからこれ使って、週末までトレーニングしてみな。すぐにできるようになるかはわかんないけど…」

「うん。ありがとう!頑張るよ!」

一平って本当にいいやつだな…

僕は金曜日の夜に向けて、カレー作りとグレア逃がしの特訓をした。



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