高嶺のsub様の大いなる勘違い〜その人はdomじゃありません〜

もかりん

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9. 高嶺のsub様は恋を自覚しました

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僕たちが院長室に戻ると、もうビデオ通話の準備が整っていた。

「やぁ2人とも待たせたね…こちらにきて座ってくれ」

叔父さんの机の上のパソコンモニターにはオンラインアプリが立ち上がっていて、机の前には2脚の椅子が並べられていた。2人で画面に映るためだろう…

僕らが座ると画面がすぐに切り替わって、父さんの顔が映った。

「やぁ!理人、久しぶり」

「父さんも久しぶり。元気そうだね。」

「ああ!こんなに面白いデータを見たら元気になって当然だよ♪」

「やっぱり、僕を被験体にしてたんだね…
あ、父さんこちら同級生の岬春人くん…僕の見つけたdomだよ」

「そうか…君がそうなのか…はじめまして、理人の父の西園寺雅弘です。」

「は…はじめまして!岬春人です!よろしくお願いします。」

「うん…時間がないから早速、本題に移るよ。理人と春人くんのデータと診察記録をこちらに送ってもらった。
結論から言うと、春人くんは間違いなくneutralだ。少なくとも今現在はね…」

「そんな!そんなはず…」

「理人、落ち着いて。理人が春人くんといる時にグレアを感じたのは事実だ。データがそれを物語っている。」

「うん…」

「実は最近、私が手がけている研究によく似た症例がいくつかあってね。私は君たちの状態もそうではないかと踏んでいるんだ」

「うん…」

「一般的に、domとsubのパートナーは同ランクか離れても1つくらいのランク差が望ましい事は知っているね?」

「うん…」

「1つくらいのランク差なら、高い方に釣られてもう一方が上がる事もあるし、そのままでも大きな不安症は起こらない。でもランク差が大きい場合、domのランクが高すぎるとsubの出すS波にdomは満足できない。逆にsubのランクが高すぎると、そもそもdomのグレアがsubのレセプターを満たせないので、subは S波を出せない。だからランク差が大きいカップルは、抑制剤の助けを借りるか、第三者とのプレイを必要とする。」

「うん…」

「だが、世界に何例か、大きなランク差がありながら薬を用いる必要もなく幸せに過ごしているカップルの例があるんだ…
彼らの共通点はsub側のランクが高い事と、お互いが恋愛感情をもった恋人や夫婦である事だ。

彼らの脳波を調べてわかったんだが、彼らのsub側の全員がD波を発生する能力を持っていたんだ。

彼らはsubだからdomのようにグレアを外部へ出す器官はない。あくまで、体内のみでグレアが発生する状態だ。我々はこれを仮に体内グレアと呼んでいる。

この体内グレアは、恋愛のときめき、謂わゆるキュンと胸が高鳴るという状況で発生する。体内グレアがパートナーのグレアの不足分を補う事で、S波を発生させる事ができていた。

理人が同じ体質だと仮定すると、春人くんに恋愛感情を持ってときめいた時に蕩けてしまうほどのグレアが発生したんじゃないかな…」

「え?僕が春人に恋をしているってこと?」

「あくまで、仮説だよ…でも、春人くんがお年寄りを助けている姿を見た時、理人はどう思った?」

「…優しくて素敵な人だなって思った…」

「カレーライスを頬張る春人くんを見て、どう思った?」

「こんな無邪気な顔もするんだなって…笑顔が可愛いなって…僕にも向けてくれないかなって思った…」

「そうか…その気持ちはsubがdomに感じる従属の欲求とは別物だよ。
理人は、恋をしたことがなかったから分からなかったんだろうね…」

「え…っっと…僕は既に…春人の事が…すっごく好きって事?…それ…」

「あくまで私の推察だ。私が決める事じゃない。理人がよく考えなさい。でも恋愛関係のない、ただのパートナーなら春人くんが他に恋人を作っても、理人は受け入れなきゃならない。春人にそれができるかな?」

「え…やだ!!絶対やだ!!」

「ふふ…そうか…もう答えは出ていそうだね。
春人は以前から、高ランクの割に抑制剤への依存度が低くて、弱い薬で対応できていた。

私は、春人が定期的に体内グレアを発生させる体質なんじゃないかと踏んで、この研究を始めたんだ。

まさか、恋愛感情が最大のトリガーになるとはね…

おそらく何事も桁外れの理人は、春人くんといる時に自分のレセプターを満たして自身を蕩けせるほどの膨大な体内グレアを発しているんだろうね…まぁ、研究者としては、その桁違いのグレアを体外に出せる方法を開発したくてウズウズ…おっと!話が逸れてしまったね…」

「父さん…色々ありがとう。もう今日は頭が限界だから、僕帰りたい…また連絡するよ」

「ああ…そうだね。心の整理が必要だろう…じゃあおやすみ!」


プツン…
ビデオ通話が切れた。

「大丈夫か?理人?」

叔父さんが心配そうに僕を覗き込んで尋ねる。

「叔父さん!!僕、春人のこと好きだったみたいだ…気づかなかったのは僕の頭だけで、心と身体は勝手に恋に落ちてたんだね…」

「動揺してるか?」

「ううん…嬉しいんだ…もし、春人がdomじゃなくて、僕が春人を恋愛として好きにならなかったら、春人が離れて行っちゃうんじゃないかって…他の誰かに取られちゃうんじゃないかって不安で不安でたまらなかった…春人の手を握ったり、キスをしたり、僕以外の人にしてほしくなくて…」

言いながらボロボロと涙が溢れてきた…動揺してるけど、春人の気持ちに応えられるのが嬉しくて、でも恥ずかしくて、わけがわからない…

春人の顔を見られない…

「それを伝えるのは俺じゃないだろ!本人に言ってやれ」

「だっで…はずがじぐでぇぇ~…」

顔を抑えて泣きじゃくる僕を、誰かがそっと抱きしめてくれた。

僕はもう、その温もりを知ってる…抱きしめてくれた人が叔父さんじゃないってこと。

僕の大好きなご主人様で恋人になる人…






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