2 / 21
2. 高嶺の sub様はご主人様を見つけたかもしれません
しおりを挟む「はぁ~…どこかに白馬に乗ったdom様はいないかな~」
今日も誘われるまま、domに付いて行き、グレアを浴びて見たがダメだった…
国内、いや世界中探しても見つからないんじゃないかって言われてるんだから当たり前なんだけども…
「もう、こんな不毛な事やめて諦めようかな…」
高嶺のsub様とは、うまい事言ったものだ。
麓から見上げたら美しく見えるかもしれないが、崖の上ではボッチの一輪咲きだ…
誰のグレアにも服従できない、誰にも支配してもらえない哀しいsubの僕…
そんな事を考えながらトボトボ歩いていると足下にボールが転がってきた。
バスケットボールが体育館の開いているドアから転がってきたらしい。
ちょうどボールを追いかけてきた青年がいたので、僕はボールを投げ渡してやった。
身長180cmを優に超えていそうな大きな背を屈めながら『すみませーん』と頭を下げてからこちらを見た。
3メートルほどの距離。目が合ったのは、ほんの2、3秒…だろうか…
『ありがとう』
彼がフワリと柔らかく微笑んだ瞬間…
ドクリ
心臓が跳ねるのを感じ、その後今まで感じた事のない大きなグレアが僕を満たした。
いた!いたんだ!僕をグレアで満たせるdomが!ああ!王子様!ご主人様!
貴方に跪き縋りたい!そして甘えたい!
俺は今にも蕩けて跪きそうなのを必死に堪えて、彼を見返した。
彼はなぜ急に、僕にグレアを当てたのか…
たしかに僕は学内でsubである事を公言し、グレアを当てたい者に許可を出すこともあったが…
僕と関係を持ちたいと誘っているのか…
それとも、彼以外のグレアを日々浴びている僕を諫めてくださっ…は!いかんいかん!思考がsub性に引き摺られている!
僕は彼の意図を探るべく、彼を観察しようとした。
が、彼はそのまま何事もなかったように立ち去ってしまった…
何故だ??
これだけ僕が幸福感に満たされて、股間まではち切れそうなのに…
僕からも相当なS波が出ているはず…
当然グレアを与えた彼にも強い快感があったはずだ…
少なくとも僕が服従状態に入ったことに気づいたはずだ…
なのになぜ、放置したのか?
なぜ何のコマンドもくれなかったのか?
怒ってらっしゃる?
僕が日々節操なく、色んなdomのグレアを浴びているから、いい子になるまでプレイはお預けということだろうか…
ああ、でも『ありがとう』と言ってくださった…
『すみませーん』という他人からは命令と気付かれない言葉で、僕に暗にボールを拾う事を示唆し、ちゃんと僕がご主人様の意図を汲んでボールを拾って、ちゃんとご主人様に渡せたから、褒めて下さったんじゃないだろうか…
あ!そういえば、僕、あの時手渡しせずに投げて返してしまった…無礼だっただろうか?
ご主人様と気づく前だったとはいえ、駆け寄ってでも跪き、両手で差し出すべきだった!
ご主人様は、躾のなっていないこの駄犬に、更生の機会をやると暗におっしゃってるんじゃないだろうか…
どうすればよいのだ?…どうすれば…どうすれば…
僕はその場に立ちすくんでいた…
一瞬だったのか長い時間なのかわからないが、1人でぐるぐる考えても頭が回らない。
まずはご主人様の事を知ろう!
彼は何者なのだろう…世界中探しても、見つかるかどうかと言われた、僕をグレアで満たせるdomが、まさか学内にいたなんて…
早速、我が家の使用人達に調べさせよう!
***
うちの優秀な使用人達は仕事が早く、早速彼が何者なのかを突き止めてくれた。
彼は、岬春人さま。この大学の同じ医学部の一年生だった。
今まで気づかなかったが、意識するとそこそこの頻度で遭遇することがわかった。
彼は見た目通りの好青年だった。
道で大きな荷物を持って困っているお年寄りを助けたり、学食で美味しそうにカレーライス食べてるときとか、そんな瞬間でさえ、じわっと僕に甘いグレアをくれるんだ…
目は合わないけど、きっと僕の存在に気づいていて、お仕置き中なのに、さりげなく僕にだけグレアをくれた。
そう…僕にだけ。
僕が蕩けるほどの強いグレアなのに、周りの誰も気づかない。完璧なコントロールで僕だけにグレアをくれる。
まるで『お前は俺のものだよ、忘れるな』って言われてるみたいじゃないか!
彼のグレアは僕だけのもの…そして、僕が受けていいグレアも彼のものだけ…
そうだ!そういうことなのだ!
ご主人様は僕に他のdomを見るなと言ってるんだ!
それから僕は、他のdomの誘いを一切断った。
少しだけでいいからと食い下がるものもいたが、知った事ではない。
唯一のご主人様からの命令なのだ!違える訳には行かない。
こうして、清い体に僕が近づいたらご主人様はまた、僕を見てくれるだろうか…
あの大きな手で僕の頭を撫でてくれるだろうか…
10
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?



家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる