高嶺のsub様の大いなる勘違い〜その人はdomじゃありません〜

もかりん

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2. 高嶺の sub様はご主人様を見つけたかもしれません

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「はぁ~…どこかに白馬に乗ったdom様はいないかな~」

今日も誘われるまま、domに付いて行き、グレアを浴びて見たがダメだった…

国内、いや世界中探しても見つからないんじゃないかって言われてるんだから当たり前なんだけども…

「もう、こんな不毛な事やめて諦めようかな…」

高嶺のsub様とは、うまい事言ったものだ。
麓から見上げたら美しく見えるかもしれないが、崖の上ではボッチの一輪咲きだ…

誰のグレアにも服従できない、誰にも支配してもらえない哀しいsubの僕…

そんな事を考えながらトボトボ歩いていると足下にボールが転がってきた。

バスケットボールが体育館の開いているドアから転がってきたらしい。
ちょうどボールを追いかけてきた青年がいたので、僕はボールを投げ渡してやった。

身長180cmを優に超えていそうな大きな背を屈めながら『すみませーん』と頭を下げてからこちらを見た。

3メートルほどの距離。目が合ったのは、ほんの2、3秒…だろうか…

『ありがとう』

彼がフワリと柔らかく微笑んだ瞬間…

ドクリ

心臓が跳ねるのを感じ、その後今まで感じた事のない大きなグレアが僕を満たした。

いた!いたんだ!僕をグレアで満たせるdomが!ああ!王子様!ご主人様!
貴方に跪き縋りたい!そして甘えたい!

俺は今にも蕩けて跪きそうなのを必死に堪えて、彼を見返した。

彼はなぜ急に、僕にグレアを当てたのか…

たしかに僕は学内でsubである事を公言し、グレアを当てたい者に許可を出すこともあったが…

僕と関係を持ちたいと誘っているのか…

それとも、彼以外のグレアを日々浴びている僕を諫めてくださっ…は!いかんいかん!思考がsub性に引き摺られている!

僕は彼の意図を探るべく、彼を観察しようとした。

が、彼はそのまま何事もなかったように立ち去ってしまった…

何故だ??

これだけ僕が幸福感に満たされて、股間まではち切れそうなのに…

僕からも相当なS波が出ているはず…
当然グレアを与えた彼にも強い快感があったはずだ…

少なくとも僕が服従状態に入ったことに気づいたはずだ…

なのになぜ、放置したのか?

なぜ何のコマンドもくれなかったのか?

怒ってらっしゃる?

僕が日々節操なく、色んなdomのグレアを浴びているから、いい子になるまでプレイはお預けということだろうか…

ああ、でも『ありがとう』と言ってくださった…

『すみませーん』という他人からは命令と気付かれない言葉で、僕に暗にボールを拾う事を示唆し、ちゃんと僕がご主人様の意図を汲んでボールを拾って、ちゃんとご主人様に渡せたから、褒めて下さったんじゃないだろうか…

あ!そういえば、僕、あの時手渡しせずに投げて返してしまった…無礼だっただろうか?

ご主人様と気づく前だったとはいえ、駆け寄ってでも跪き、両手で差し出すべきだった!

ご主人様は、躾のなっていないこの駄犬に、更生の機会をやると暗におっしゃってるんじゃないだろうか…

どうすればよいのだ?…どうすれば…どうすれば…

僕はその場に立ちすくんでいた…
一瞬だったのか長い時間なのかわからないが、1人でぐるぐる考えても頭が回らない。

まずはご主人様の事を知ろう!

彼は何者なのだろう…世界中探しても、見つかるかどうかと言われた、僕をグレアで満たせるdomが、まさか学内にいたなんて…

早速、我が家の使用人達に調べさせよう!

***

うちの優秀な使用人達は仕事が早く、早速彼が何者なのかを突き止めてくれた。

彼は、岬春人みさきはるとさま。この大学の同じ医学部の一年生だった。

今まで気づかなかったが、意識するとそこそこの頻度で遭遇することがわかった。

彼は見た目通りの好青年だった。

道で大きな荷物を持って困っているお年寄りを助けたり、学食で美味しそうにカレーライス食べてるときとか、そんな瞬間でさえ、じわっと僕に甘いグレアをくれるんだ…

目は合わないけど、きっと僕の存在に気づいていて、お仕置き中なのに、さりげなく僕にだけグレアをくれた。

そう…僕にだけ。

僕が蕩けるほどの強いグレアなのに、周りの誰も気づかない。完璧なコントロールで僕だけにグレアをくれる。

まるで『お前は俺のものだよ、忘れるな』って言われてるみたいじゃないか!

彼のグレアは僕だけのもの…そして、僕が受けていいグレアも彼のものだけ…

そうだ!そういうことなのだ!
ご主人様は僕に他のdomを見るなと言ってるんだ!

それから僕は、他のdomの誘いを一切断った。
少しだけでいいからと食い下がるものもいたが、知った事ではない。
唯一のご主人様からの命令なのだ!違える訳には行かない。

こうして、清い体に僕が近づいたらご主人様はまた、僕を見てくれるだろうか…
あの大きな手で僕の頭を撫でてくれるだろうか…
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