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21.秘密を一つ話します
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朝からたっぷりと、唇を堪能されてしまった。
舐られて吸われて、甘噛みされた舌はジンジンと甘い疼きを発していて、はぁはぁと荒い息に思考が乱される。
「本当に、貴女は可愛いですね。このまま手放したくなくなってしまう」
くったりとベッドに沈み込む私の髪を撫でながら、満足そうに目を細めるアルバートさんがあまりにも色っぽくて格好良くて、これはおはようのキスじゃないと、文句を言おうとしていた出鼻を挫かれてしまった。
「あんな風に可愛い顔で、だめ、なんて男に言ってはいけませんよ。こんな風に襲われてしまいますからね」
「ひゃぁんっ……っ!」
賢しげな顔で諭されたが、ダメって言わなきゃいけない状況に追い込んだ、アルバートさんにも責任があると思うんですけど。そう思うのに、忙しなく上下する胸の先を指先が悪戯するように掠めていって、抗議の声は嬌声に上書きされてしまった。
「ああ、またそんな可愛い声を上げて、私の我慢も限界ですよ」
「も…もうダメです。今からなんてダメですからね?これ以上したら、怒りますからね」
流石にもう流されてはいけないと、なけなしの自制心をかき集めて、アルバートさんに抵抗の意思を示す。
なんとか手繰り寄せたシーツで身体を巻いてみたけれど、なぜだかアルバートさんは楽しそうに笑っているように見える。
「落ち着いてください、ハルカ。今日はもうなにもしませんよ。もう少ししたら貴女の侍女が来ますから、そうしたら着替えをすればいいですよ。今は落ち着いて、もう少し何かお腹に入れておきましょうね」
大丈夫ですよ。と微笑まれ、優しく頭を撫でられると、逆毛を立てて威嚇していた気持ちが、シュンと萎んでしまった。
「さ、今度はこっちのも食べてみてください」
完全に丸め込まれた。と分かっているのに、ソレでいいような気がして、怒るのが苦手な私は大人しく口を開いた。口元にメロンに似たオレンジ色の果実の切り身が差し出された。甘い香りと、滴る果汁が美味しそうだ。
「どうです?」
「ん、美味しいです。これ、甘いけどすっきりしてて、美味しい」
トロリと解ける口当たりも、悪くなくて、さっきまでちょっと怒っていたのも忘れて、美味しさにニコニコと笑みを振りまいてしまう。
「もう一つどうですか」
「あ、もう一人で食べられ…んっ……もぐ」
何時までも食べさせてもらうのは申し訳ないし、それに恥ずかしい。だから一人で食べられると言おうとしていたのに、言葉になる前に果実を口に入れられてしまった。
食べ物を粗末にするのは良くないので、口に入れられればもぐもぐと咀嚼してしまう。
「コレも美味しいですよ」
「あ、あの…んぐ…もぐ」
果実を口元に差し出される、恥ずかしいからお断りしようとする。口の中に入れられる。結局食べる。を延々と繰り返すこと八回。そろそろお腹がくちくなってきた。
「ん、んぐ、んぐぐぐ」
もう、お腹いっぱいです。とジェスチャーを交えて伝えれば、漸く「あーん」攻撃が収束した。
お腹もいっぱいだけど、別の意味で胸もいっぱいです。
こんなカッコいい人に、情事の終わった朝、あーんで食べ物を食べさせてもらうなんて、どこの恋愛シュミレーションゲームのスチルシーンだろう。
不謹慎ではあるけれど、恋人同士みたいでドキドキした。
コンコンコン。
軽いノックの音が聞こえた。ロゼッタさんだろうか?
「ハルカ様、朝のお支度に参りました。開けてもよろしゅうございますか?」
「は、はーい。お願いします」
うっかり返事をしてしまってから、アルバートさんが一緒だったことを思い出した。
ロゼッタさんは全部を承知だけれど、それでも情事の痕があるベッドで一緒にいるところを見られるのは恥ずかしい。
ああもう、どうしよう。
真っ赤になた頬を押さえてウロウロと視線を彷徨わせていると、ふっと吐息で笑ったアルバートさんがちゅっと頬に掠めるようなキスをして、そっとベッドから出て行った。
うそ、裸………じゃなかった。
正確には、上半身は裸だったけれど、下半身はちゃんとズボンを身に着けていた。
「おはようございます、ハルカ様。アルバート様も…」
湯気の立つ手桶を持ったロゼッタさんが、昨日と変わらない笑顔で挨拶してくれた。そのことに、なんだか凄くホッとする。
昨夜のことは治療行為だったわけだし、悪いことをしたわけじゃないけれど、治療行為と良いながら、気持ち良くなっちゃったことに、ちょっとだけ後ろめたさがあったから、ロゼッタさんの変わらない笑顔に救われた。
手桶の中には、ハーブの香油が落とされたちょっと熱めのお湯が入っていて。ロゼッタさんに追い出されてアルバートさんがいなくなった後、身体を綺麗に拭いてもらった。
本当ならお風呂に入って色々洗い流したいのが本音だけれど、私の事情でそれが叶わなかった。
酷い抱かれ方をしたわけでもなかったし、最後にしてから一年以上経っていたとはいえ、処女でもなかったのに、お腹に力が入らなくて立てなかったのだ。
下世話な話、ヤリスギて腰が立たない。等と言う話は聞いたことがあるが、お腹に力が入らなくて立てないって言うのは、原因は別のところにあると思う。
たぶん、お腹の中にあるあの珠のせいだと思う。
女神様は、珠に精を注いでもらえば、魔力が回復する。魔力が満ちる感覚を掴めれば、自分で世界に満ちる魔力の素を、珠に満たすことができるようになる。というようなことを言っていた。
憶測でしかないけれど、この世界の魔力回復薬を飲んで拒絶反応を示した私の身体を思うと、相性が良いとは言え、他人の魔力を受け入れてそれを自分の物とするのに、若干の時間なり労力が必要なんだと思う。
それでお腹に力が入らないんだろうな。と自分で勝手に結論付けて、今はロゼッタさんの成すがままになっている。
「お綺麗ですわ、ハルカ様。こんなに見事な黒髪は始めてみました。艶々と輝いて、まるで星が煌く夜空のようですわ」
髪油を塗りこめ、何度も櫛で梳った髪は自分でもびっくりするくらい綺麗になっていた。
サラサラと流れる黒髪を見つめていると、複数の足音が聞こえてきた。
執事のおとないに応えたロゼッタさんが、三人の人物を引き連れてベッドへとやってきた。オーウェンさんにエリオットくんに、アルバートさんだ。
「…まさか、ハルカか?」
事前に説明を受けていた筈だけど、やっぱり見た目が違えば動揺はしてしまうようで。
黒髪で少し年齢の上がった私を見た二人は、あんぐりと口を開けてしまっている。
「はい。昨日までの姿は変身した姿で、皆さんの言う救世の聖なる乙女の姿と言うことになります。これが本来の私の姿です」
何時までも本当のことを言わないでいるのは気持ちが落ち着かない、だから今日にでも二人に説明したいと、家へ帰るアルバートさんに二人を連れてきてくれるようお願いしたのだ。
「ハルカ、本当に年上だったんだね」
「うん…嫌、かな?」
相変わらず美少女にしか見えないエリオットくんが、少し悲しげに私の隣に来て手を取った。
「ううん。嫌じゃないよ。そうじゃなくて、昨日のハルカは可愛かったけど、今日のハルカは綺麗だから、僕緊張しちゃった」
テヘっと笑う貴方の方が、何十倍も可愛くて綺麗だと小一時間説明してあげたいけど、たぶん理解してくれなさそうだから止めた。
「本当だな。聖女のハルカは小さくて可愛くて綿菓子のようだったが、今日のハルカは色気があって、黒い髪の美しさも相まって、酔ってしまいそうだ」
エリオットくんと反対の手を握ったオーウェンさんが、指先に口付けながら赤面せずには聞けないような、気障な台詞を凄くカッコよく囁いてくれた。
両脇を麗しい美少年と、キリリとした青年騎士に挟まれて、ドキドキが止まらない。
褒め殺しって言葉があるけど、今の私の状況がまさにそれな気がする。
二人とも凄く綺麗だって褒めてくれるけど、今まで男の人にこんな風に褒められたことなんてないから、どう反応していいのか困ってしまう。
「本当にハルカ様はお綺麗ですわ。昨日までのお可愛らしいお姿も素敵でしたが、今のお姿は神秘的ですらありますもの。皆様が見惚れられるのも納得です」
カチャカチャとお茶の用意をするロゼッタさん、彼女の頬が薄紅色に染まり目がうっとりと潤んでいて、なにか最上のものを褒め称えるようだった。
「そ、そんなに、褒めないでください。もう……それで、この姿のことも話しておきたかったことなんですが、聖女の姿になっていると魔力を消費するみたいなので、できることなら平時はこの姿でいたいのですが…」
「そうですね、そのほうが良いかも知れません。こんな言い方は貴女を利用するようで誠に心苦しいのですが、魔力の回復の方法がアレしかないのであれば、余計な魔力消費はしないほうがいいでしょうね」
「そうですよね。いえ、納得しました」
アルバートさんの言っている事は正論なので、別に心苦しいことはないんだけど、やっぱりアレを何度もするっていうのは、別の意味で心苦しい。
「回復方法がアレしかないって、どういうことだ?回復薬じゃ、間に合わないくらいハルカの魔力が凄いのか?」
「魔力量については、私も正確にはわかりませんが。ハルカはこの世界の人ではありません。そのせいで、私達が使っている回復薬では魔力が回復しないみたいなのです」
「は?それは拙いんじゃないのか?」
「そうですよ、魔力を回復する方法がないんじゃ、どうするんですか?」
私を褒め称えていた雰囲気は一気に消えてしまって、今度は心配されだしたわけですが、これって、女神様との一件、話さないといけない感じ?
「いえ、回復する方法がないわけではないんですよ。ただ、その方法を説明するに当たって、秘密を守って欲しいのです。これから聞くことは、たとえマクガレン師匠にも、秘密にしてください」
「マクガレンにも秘密って、相当だな」
アルバートさんの真剣な表情に、オーウェンさん達もなんだか深刻そうになってきた。
「勿論です。このことが外に漏れたら、間違いなくハルカの女性としての資質を、問われることになりかねません。ハルカを護りたいなら、秘密は絶対に守ってください」
「分かった。僕z、ハルカが困るようなこと、絶対しないよ。秘密は死んでも守る。この剣に誓うよ」
真っ先に声を上げてくれたのはエリオットくんで、大切にしている剣を捧げて秘密を守ると誓ってくれた。
「心配するなハルカ。俺だってハルカの護衛騎士だ、お前を護るこの剣に誓って秘密は死守しよう」
ううっ、二人とも格好良すぎですよ。
騎士服に身を包んだお二人が、剣を捧げて誓約を宣言する姿は、朝日の眩しさと相まって神々しくすら見えた。
「では、お二人にお話しましょう。昨夜この部屋に女神様が光臨されて……」
舐られて吸われて、甘噛みされた舌はジンジンと甘い疼きを発していて、はぁはぁと荒い息に思考が乱される。
「本当に、貴女は可愛いですね。このまま手放したくなくなってしまう」
くったりとベッドに沈み込む私の髪を撫でながら、満足そうに目を細めるアルバートさんがあまりにも色っぽくて格好良くて、これはおはようのキスじゃないと、文句を言おうとしていた出鼻を挫かれてしまった。
「あんな風に可愛い顔で、だめ、なんて男に言ってはいけませんよ。こんな風に襲われてしまいますからね」
「ひゃぁんっ……っ!」
賢しげな顔で諭されたが、ダメって言わなきゃいけない状況に追い込んだ、アルバートさんにも責任があると思うんですけど。そう思うのに、忙しなく上下する胸の先を指先が悪戯するように掠めていって、抗議の声は嬌声に上書きされてしまった。
「ああ、またそんな可愛い声を上げて、私の我慢も限界ですよ」
「も…もうダメです。今からなんてダメですからね?これ以上したら、怒りますからね」
流石にもう流されてはいけないと、なけなしの自制心をかき集めて、アルバートさんに抵抗の意思を示す。
なんとか手繰り寄せたシーツで身体を巻いてみたけれど、なぜだかアルバートさんは楽しそうに笑っているように見える。
「落ち着いてください、ハルカ。今日はもうなにもしませんよ。もう少ししたら貴女の侍女が来ますから、そうしたら着替えをすればいいですよ。今は落ち着いて、もう少し何かお腹に入れておきましょうね」
大丈夫ですよ。と微笑まれ、優しく頭を撫でられると、逆毛を立てて威嚇していた気持ちが、シュンと萎んでしまった。
「さ、今度はこっちのも食べてみてください」
完全に丸め込まれた。と分かっているのに、ソレでいいような気がして、怒るのが苦手な私は大人しく口を開いた。口元にメロンに似たオレンジ色の果実の切り身が差し出された。甘い香りと、滴る果汁が美味しそうだ。
「どうです?」
「ん、美味しいです。これ、甘いけどすっきりしてて、美味しい」
トロリと解ける口当たりも、悪くなくて、さっきまでちょっと怒っていたのも忘れて、美味しさにニコニコと笑みを振りまいてしまう。
「もう一つどうですか」
「あ、もう一人で食べられ…んっ……もぐ」
何時までも食べさせてもらうのは申し訳ないし、それに恥ずかしい。だから一人で食べられると言おうとしていたのに、言葉になる前に果実を口に入れられてしまった。
食べ物を粗末にするのは良くないので、口に入れられればもぐもぐと咀嚼してしまう。
「コレも美味しいですよ」
「あ、あの…んぐ…もぐ」
果実を口元に差し出される、恥ずかしいからお断りしようとする。口の中に入れられる。結局食べる。を延々と繰り返すこと八回。そろそろお腹がくちくなってきた。
「ん、んぐ、んぐぐぐ」
もう、お腹いっぱいです。とジェスチャーを交えて伝えれば、漸く「あーん」攻撃が収束した。
お腹もいっぱいだけど、別の意味で胸もいっぱいです。
こんなカッコいい人に、情事の終わった朝、あーんで食べ物を食べさせてもらうなんて、どこの恋愛シュミレーションゲームのスチルシーンだろう。
不謹慎ではあるけれど、恋人同士みたいでドキドキした。
コンコンコン。
軽いノックの音が聞こえた。ロゼッタさんだろうか?
「ハルカ様、朝のお支度に参りました。開けてもよろしゅうございますか?」
「は、はーい。お願いします」
うっかり返事をしてしまってから、アルバートさんが一緒だったことを思い出した。
ロゼッタさんは全部を承知だけれど、それでも情事の痕があるベッドで一緒にいるところを見られるのは恥ずかしい。
ああもう、どうしよう。
真っ赤になた頬を押さえてウロウロと視線を彷徨わせていると、ふっと吐息で笑ったアルバートさんがちゅっと頬に掠めるようなキスをして、そっとベッドから出て行った。
うそ、裸………じゃなかった。
正確には、上半身は裸だったけれど、下半身はちゃんとズボンを身に着けていた。
「おはようございます、ハルカ様。アルバート様も…」
湯気の立つ手桶を持ったロゼッタさんが、昨日と変わらない笑顔で挨拶してくれた。そのことに、なんだか凄くホッとする。
昨夜のことは治療行為だったわけだし、悪いことをしたわけじゃないけれど、治療行為と良いながら、気持ち良くなっちゃったことに、ちょっとだけ後ろめたさがあったから、ロゼッタさんの変わらない笑顔に救われた。
手桶の中には、ハーブの香油が落とされたちょっと熱めのお湯が入っていて。ロゼッタさんに追い出されてアルバートさんがいなくなった後、身体を綺麗に拭いてもらった。
本当ならお風呂に入って色々洗い流したいのが本音だけれど、私の事情でそれが叶わなかった。
酷い抱かれ方をしたわけでもなかったし、最後にしてから一年以上経っていたとはいえ、処女でもなかったのに、お腹に力が入らなくて立てなかったのだ。
下世話な話、ヤリスギて腰が立たない。等と言う話は聞いたことがあるが、お腹に力が入らなくて立てないって言うのは、原因は別のところにあると思う。
たぶん、お腹の中にあるあの珠のせいだと思う。
女神様は、珠に精を注いでもらえば、魔力が回復する。魔力が満ちる感覚を掴めれば、自分で世界に満ちる魔力の素を、珠に満たすことができるようになる。というようなことを言っていた。
憶測でしかないけれど、この世界の魔力回復薬を飲んで拒絶反応を示した私の身体を思うと、相性が良いとは言え、他人の魔力を受け入れてそれを自分の物とするのに、若干の時間なり労力が必要なんだと思う。
それでお腹に力が入らないんだろうな。と自分で勝手に結論付けて、今はロゼッタさんの成すがままになっている。
「お綺麗ですわ、ハルカ様。こんなに見事な黒髪は始めてみました。艶々と輝いて、まるで星が煌く夜空のようですわ」
髪油を塗りこめ、何度も櫛で梳った髪は自分でもびっくりするくらい綺麗になっていた。
サラサラと流れる黒髪を見つめていると、複数の足音が聞こえてきた。
執事のおとないに応えたロゼッタさんが、三人の人物を引き連れてベッドへとやってきた。オーウェンさんにエリオットくんに、アルバートさんだ。
「…まさか、ハルカか?」
事前に説明を受けていた筈だけど、やっぱり見た目が違えば動揺はしてしまうようで。
黒髪で少し年齢の上がった私を見た二人は、あんぐりと口を開けてしまっている。
「はい。昨日までの姿は変身した姿で、皆さんの言う救世の聖なる乙女の姿と言うことになります。これが本来の私の姿です」
何時までも本当のことを言わないでいるのは気持ちが落ち着かない、だから今日にでも二人に説明したいと、家へ帰るアルバートさんに二人を連れてきてくれるようお願いしたのだ。
「ハルカ、本当に年上だったんだね」
「うん…嫌、かな?」
相変わらず美少女にしか見えないエリオットくんが、少し悲しげに私の隣に来て手を取った。
「ううん。嫌じゃないよ。そうじゃなくて、昨日のハルカは可愛かったけど、今日のハルカは綺麗だから、僕緊張しちゃった」
テヘっと笑う貴方の方が、何十倍も可愛くて綺麗だと小一時間説明してあげたいけど、たぶん理解してくれなさそうだから止めた。
「本当だな。聖女のハルカは小さくて可愛くて綿菓子のようだったが、今日のハルカは色気があって、黒い髪の美しさも相まって、酔ってしまいそうだ」
エリオットくんと反対の手を握ったオーウェンさんが、指先に口付けながら赤面せずには聞けないような、気障な台詞を凄くカッコよく囁いてくれた。
両脇を麗しい美少年と、キリリとした青年騎士に挟まれて、ドキドキが止まらない。
褒め殺しって言葉があるけど、今の私の状況がまさにそれな気がする。
二人とも凄く綺麗だって褒めてくれるけど、今まで男の人にこんな風に褒められたことなんてないから、どう反応していいのか困ってしまう。
「本当にハルカ様はお綺麗ですわ。昨日までのお可愛らしいお姿も素敵でしたが、今のお姿は神秘的ですらありますもの。皆様が見惚れられるのも納得です」
カチャカチャとお茶の用意をするロゼッタさん、彼女の頬が薄紅色に染まり目がうっとりと潤んでいて、なにか最上のものを褒め称えるようだった。
「そ、そんなに、褒めないでください。もう……それで、この姿のことも話しておきたかったことなんですが、聖女の姿になっていると魔力を消費するみたいなので、できることなら平時はこの姿でいたいのですが…」
「そうですね、そのほうが良いかも知れません。こんな言い方は貴女を利用するようで誠に心苦しいのですが、魔力の回復の方法がアレしかないのであれば、余計な魔力消費はしないほうがいいでしょうね」
「そうですよね。いえ、納得しました」
アルバートさんの言っている事は正論なので、別に心苦しいことはないんだけど、やっぱりアレを何度もするっていうのは、別の意味で心苦しい。
「回復方法がアレしかないって、どういうことだ?回復薬じゃ、間に合わないくらいハルカの魔力が凄いのか?」
「魔力量については、私も正確にはわかりませんが。ハルカはこの世界の人ではありません。そのせいで、私達が使っている回復薬では魔力が回復しないみたいなのです」
「は?それは拙いんじゃないのか?」
「そうですよ、魔力を回復する方法がないんじゃ、どうするんですか?」
私を褒め称えていた雰囲気は一気に消えてしまって、今度は心配されだしたわけですが、これって、女神様との一件、話さないといけない感じ?
「いえ、回復する方法がないわけではないんですよ。ただ、その方法を説明するに当たって、秘密を守って欲しいのです。これから聞くことは、たとえマクガレン師匠にも、秘密にしてください」
「マクガレンにも秘密って、相当だな」
アルバートさんの真剣な表情に、オーウェンさん達もなんだか深刻そうになってきた。
「勿論です。このことが外に漏れたら、間違いなくハルカの女性としての資質を、問われることになりかねません。ハルカを護りたいなら、秘密は絶対に守ってください」
「分かった。僕z、ハルカが困るようなこと、絶対しないよ。秘密は死んでも守る。この剣に誓うよ」
真っ先に声を上げてくれたのはエリオットくんで、大切にしている剣を捧げて秘密を守ると誓ってくれた。
「心配するなハルカ。俺だってハルカの護衛騎士だ、お前を護るこの剣に誓って秘密は死守しよう」
ううっ、二人とも格好良すぎですよ。
騎士服に身を包んだお二人が、剣を捧げて誓約を宣言する姿は、朝日の眩しさと相まって神々しくすら見えた。
「では、お二人にお話しましょう。昨夜この部屋に女神様が光臨されて……」
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