青春-4つの物語-

Zero

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第3の物語「青春の悪夢」

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相関図も徐々に複雑になっていく一方、SSK事件の解決へと遠退いている。テレビのニュースを見ると話題はSSK事件のことは忘れられていた。代わりにSNS上に出回った動画について、番組の司会者やコメンテーターが批判しているようなことが続いていた。

とある平日の学校、皆から痛い視線を浴びながら授業を受けていると、外の方が騒々しかった。クラス中も大騒ぎになり窓の方を見ると、大勢の集団が走って学校へと向かってきている姿が見えた。

教師陣も大騒ぎになって玄関に行く先生も見られたが、呆気なく集団に押し倒されてしまった。

校内中は大パニックとなり上の階に移動していると、1人の男性がとある生徒の襟を掴み階段から引きずり下ろした。

そして、男性はネクタイを外しその生徒の首に巻き首を絞めたのだ。教師陣はそれを振りほどこうとするも大勢が相手になると歯が立たなかった。

俺たちは屋上へと向かった。「これは、学校テロだ!」そう叫んだのは生徒会副会長の3年B組 榊 天馬だ。彼はイケメンで成績も良く、おまけに運動神経も良く人気があり皆から信頼されている。

そして、屋上にも大勢の集団が侵略し俺たちに襲いかかってきた。おそらく、あの液体を飲んだからだろう。その根拠に先生には危害を及ばさない。あの洗脳薬を飲めば、春丘学園の生徒だけを襲うのだ。

俺たちは逃げ回るので必死だった。しかし榊 天馬だけは反撃していた。悲鳴や歓声が飛び交う中、俺は気づいたら天馬の手助けをしていた。

集団らの腹を殴ったり、背負い投げしたり今までで一番ハードな運動だった。やっと乱闘が収まったと思えば屋上には、大量の血が飛び散っていた。

一方、刑事たちの方も京花が発見された深山先生の家を調べていた。家からは浜松里奈の指紋も発見され、深山先生がまだ隠していることがあると事情聴取が続いた。また、浜松里奈の行方を追っている。

SNSには何処からか撮影された屋上の様子の写真が出回り「SSK事件と今回の騒動は関係している」と探偵気取りのド素人の考察が世間を賑わせていた。

事件解決に向かう一方、新たな事件が俺らを邪魔し解決から遠ざけようとしているのは一体誰だ。

騒動が収まり俺は屋上で休んでいると、生き残ってる生徒のうち1人の目の色が黒から赤へと変化した。その男子生徒は急に俺の胸ぐらを掴み「王様の命令は絶対」と呟き美術の時間に使用する彫刻刀をブレザーのポケットから取り出し俺の顔にめがけ振り下ろした。その時…

「何してんだ!」と榊 天馬が怒鳴り、俺を殺そうとした生徒の襟を掴み地面に叩きつけた。普段見せない榊の言動は皆を驚かせた。

しばらくして警察も到着し、俺ら全員に1人ずつ事情聴取を1階の空き教室でされることになった。

俺の番が回ってくると刑事たちは驚いていた。

浅蔵刑事
 「お前、つくづくついてないな」
ミチル
 「これって僕のせいなんですかね?」
浅蔵刑事
 「…真犯人は解決から遠ざけようとしているに違いない。」
ミチル
 「誰なんですか?少しぐらい検討つかないんですか?」
浅蔵刑事
 「今から私たちの質問に応えてください」
ミチル
 「え?」
浅蔵 刑事
 「これは事情聴取なんで」
ミチル
 「あ、そっか」
浅蔵刑事
 「では、始めます。」
ミチル
 「お、お願いします」
浅蔵刑事
 「まず、詳しい状況を教えてください。」

俺は何があったかをできるだけ具体的に説明した。
ミチル
 「授業中、外から騒々しい声とともに大勢の集団がやってきたんです。何人かの先生は玄関に行ったんですが歯が立たなかったみたいで、俺たちが屋上に移動してる途中も何人かの生徒が襲われたみたいで、屋上にも集団が侵略してきて襲い始めました。」

浅蔵 刑事
 「それで、君はどうした。」
ミチル
 「俺は反撃しました。」
浅蔵刑事
 「君だけが?」
ミチル
 「いえ、俺は榊くんが反撃してたんで手伝っただけです」
浅蔵刑事
 「榊くん?」
ミチル
 「榊 天馬…生徒会副会長の」

櫻井 刑事
 「榊 天馬。」
浅蔵刑事
 「榊天馬を知ってるのか?」
櫻井刑事
 「どこかで見たんですよねぇ」
ミチル
 「彼はイケメンで成績も良く運動神経も良く人気があります」
浅蔵 刑事
 「と言うことは信頼されている?」
ミチル
 「はい、」
浅蔵 刑事
 「彼を徹底的に調べるか、」

そう話してると上の階から「助けて!」と男子生徒の声がした。俺と刑事さんは声のする方、体育館へ向かうと用具庫の方から声が聞こえた。俺たちが向かうとロープで縛られている生徒や先生がいた。

すると、体育館へと近づいてくる足音が聞こえた。俺が体育館の入り口を見ると、京花が立っていた。

ミチル
 「京花?なんで?」
キョウカ
 「とりあえず逃げましょう!」
ミチル
 「え?」
キョウカ
 「榊くんから早く逃げなきゃ!」
浅蔵刑事
 「何か知ってるんですか?」
キョウカ
 「榊 天馬は!」

そう言うと彼女は倒れた。

ミチル
 「京花?」
俺が京花に駆け寄ろうとすると体育館の入り口から榊天馬がやって来た。

ミチル
 「まさか、お前がやったのか?」
テンマ
 「この投稿見ましたか?」

そう言うとスマホを見せてきた。SNSにて投稿された屋上の様子の写真だ。

ミチル
 「それがどうした?」
テンマ
 「この時の僕、めちゃくちゃカッコ良くないですか?」
ミチル
 「…は?」
浅蔵 刑事
 「質問に答えてください。あなたがこの騒動を巻き起こしましたか?」
テンマ
 「はい。何か悪いことしました?」
浅蔵 刑事
 「…パトカーに連れてけ」
櫻井 刑事
 「は、はい。」

その後、榊 天馬は洗脳薬と言うものを流通させ学校の生徒を襲わせ、良い格好を見せようとしたことを証言した。なおSSK事件とは無関係であることが分かった。

俺は、この事件は色々と複雑で、思わぬ敵が出現し、解決までの道のりが長いと感じた。
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