セックスしないと出られない部屋に閉じ込められたのに、彼女が性交渉に応じてくれません。

西木景

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第8章

優しさの理由(4/7)

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 これまで頑なに拒絶するばかりだったのに、いったい何が引き金になったのか?
 想像でしかないが、運営からのあの突発的な報告がかえって彼女の危機感を煽り立て、単身で募りゆく不安を抱えることに耐えきれなくなったのかもしれない。
 マイナスの感情を打ち消すために肉欲を満たそうとしているのなら、今すぐ行為は中止するべきだ。こんなことしなくても、あと数時間待てば自分たちは外の世界に出られるのだから。
 言ってしまえばこれは不必要なセックスだ。『この部屋を出るため』という大義名分がなければ、それは恋人であるカレンに対する裏切りに他ならない。カナにしても自分の身体を粗末にする必要はないはずだ。
 頭ではわかっている。この性交は断じて倫理的に許されるものではないと。
 だけど止められなかった。意思という名のブレーキペダルは完全に機能を失っていて、すでに本能の獣が身体の自由を乗っ取っていた。立花カナの肉体を堪能したい――その欲求だけが今の自分を突き動かす原動力だった。

「んん……ハァ、んんっ……」

 ベッドのうえでふたり、生まれたままの姿で抱き合って情熱的なキスを交わす。お互いの吐息が一つに混ざり合い、ちゅぱちゅぱと官能的な響きが絶えず居室を漂う。
 カナの唾液はほんのり甘く、どんな媚薬より興奮をそそられる。それを啜り呑んでいる間は、体中の血液が沸々と煮えたぎるように感じられ、その熱に浮かされたように彼女の白くてすべすべとした肌を撫で回すことに夢中になっていた。
 ずっとこうしていたかった。3年前、初めて彼女と会話した時から、ずっとだ。
 夢にまで見た立花カナとのキスに、熱い抱擁に、興奮は止まるところを知らなかった。

「ハァ、ハァ……。カナ、カナっ」

 呼吸する瞬間さえ惜しく、舌を絡ませながら彼女の名前を連呼する。
 カナの瞼が僅かに開かれ、湿っぽい瞳が自分のハートを貫いた。

「せんぱい……せんぱい……せんぱい……」

 息も絶え絶えといった様子で、カナが何度も応じる。艶めかしい響きを備えたその声がいっそう情欲を盛り上がる。
 キスをしながら右手をカナの乳房に重ねた。今まで妄想の中で数えきれないくらい夜のおかずにしてきた代物だ。それが今、自分の手の中に収まっている。その事実に涙が滲むほどの感動を覚えていた。

「んん、ああん……せんぱい」

 手を動かした途端、カナの唇から脱力した声が発せられた。
 想像を絶する胸の柔らかさに俺は驚愕していた。比べるのは失礼だとわかっているが、今まで枕を交わした誰よりも張りがあってしなやかで、指に力をこめると第二関節まで埋まるほどだった。あるいは極限まで膨らんだ性欲がそう感じさせているのかもしれないが、胸を触っただけでここまで性欲を掻き立てられるのは初めての経験だった。
 指を動かすたび彼女の口から遠慮のない嬌声が放たれた。それがこちらの興奮を高めることは言うまでもなく、次第に乱暴な手付きとなって彼女の豊満な乳房を弄んでいた。

「あッ、あぁッ、おっぱい、気持ちいぃ」

 カナが気持ちよさそうな声を上げるものだから、つい調子に乗って激しく揉みしだいてしまう。
 彼女とアダルトビデオを観て我慢比べをした日が遠い昔のことのように感じられる。が、実際はつい前日の出来事だ。あの時は自分の理性をコントロールできたことに誇りすら覚えたものだったが、今はもう見る影もない。我ながら愚かしい人間だと思うが、今は後悔に溺れている暇もなかった。ただ目の前の肉体を貪ることだけに意識が占拠されていた。
 息を荒げながら、今度は乳房を口に含む。乳輪を舌で舐め回し、乳首が十分に発達したことを確認して思いっきり吸いついた。

「ああッ、せんぱい、そこ……だめぇ」

 だめだと言いながらも後頭部に腕を回してきつく抱きしめてくる。
 吸い付きつつ舌でれろれろと乳首を転がすたび、腕の中で彼女の全身がくねくねと波打つのを知覚した。

「乳首、弱いのか?」

 つい出来心で尋ねると、薄目で睨まれた。
 笑みを殺しながら今度は歯を立てて甘噛みしてみると、彼女の背中にぞくぞくと震えが迸った。胸だけでこんなにも反応が良い女性を相手にするのも記憶になかった。演技でないのだとしたら、自分のテクニックに自惚れてしまいそうだ。
 夢中になって吸い続けていると、やがて彼女の下半身から放たれる牝の匂いがいっそう濃度を増したのを感じた。見ると、両脚を内股にして、もじもじと擦り合わせている。
 乳房から口を離し、カナの両膝に手を置いた。そのまま腕に力をこめると簡単に股を割り開くことができた。
 ご開帳された秘部に視線を注ぐ。恥丘に群生する陰毛の真下で、サーモンピンクの大陰唇がひくひくと蠢いていた。すでに愛蜜がだくだくと溢れ出ていて、神々しく輝いて見えた。またしても大きな感動が胸いっぱいに広がった。

「いやっ、そんなに、みないでください」

 今更羞恥心が芽生えたのか、カナが抵抗の声を発する。股を閉じようとするが、それを許さないよう腕に力をこめてホールドする。するとカナは観念したように脱力して、朱に染まった顔を腕で覆い隠した。
 恥じらう姿がいじらしく、いっそう興奮を誘う。
 膝に置いていた右手を太腿から股ぐらにかけてスライドさせ、指先が湿り気を帯びた性器に到達すると、彼女の口から、ひゃっ、と可愛らしい悲鳴が飛び出た。
 ぷっくりと膨らんだ大陰唇をなぞって、真上にある陰核を優しい力で押す。すると彼女の下半身が電流を帯びたようにびくんと跳ねた。そのままコリコリと弄ぶと、五月雨のように嬌声が放たれた。

「あっ、あっ、だめっ! そこ……あっ、ああッ」

 力いっぱいシーツを握り締めて、押し寄せる快楽の波に抗っている様子だ。
 まだ表面をなぞっただけなのに、すでに右手は彼女の愛液でびっしょりになっていた。
 ひとしきりクリトリスをいじめ抜いたところで、ついに中指を膣の中に這い入れた。無数の膣襞が忽ち指に絡みつき、万力のように締め上げてくる。媚肉を搔き分けながら、さらに指を中へ中へと押しこむ。中指がすっぽり呑み込まれたところで、ほじくるように指先を動かした。
 カナの唇からくすぐったそうな声が漏れ出る。指を鉤爪状に折り曲げて、Gスポットと思しきポイントを責めてみると、背中がシーツから離れて弓なりに反り返った。

「あ、あああッ、せんぱいっ、だめですっ、そこ、弱いのっ」

 また身体が小刻みに震え出した。膣中と陰核を交互に責めると、やがて彼女は「イクッ」と絶叫した。直後、これまでにない規模の痙攣が彼女の全身を襲い、媚肉のうねりが激しくなった。そして気づいたときには彼女の陰唇が、ぴしゃっ、ぴしゃっ、と潮を噴射していた。

「あああああああぁぁぁぁぁッ!」

 まるで魂の慟哭のような叫び声を発しながらカナは顔を歪ませる。それは恍惚と苦悶のちょうど中間に位置するような、妖艶な表情だった。
 程なくして身体の痙攣が収まり、カナはぐったりとベッドに身を沈めた。呼吸するのも苦しそうで、胸部が激しく上下している。半開きの目が天井の何もない一点を捉えていた。
 つかの間、絶頂の余韻に浸ってぼんやりしている様子だったが、ふと思い立ったように上半身を起こして、隣に寝転がっていた自分にしなだれかかるように抱きついてきた。
 唇で唇を塞がれて、熱を帯びた吐息と舌が口内に這いずりこんでくる。すぐさま窒息感と陶酔感が混ざり合い、頭の芯がまどろむように朦朧としてきた。
 やがてカナに押し倒されるような形で仰向けの体勢になる。開け放たれた足の間に、彼女は正座を崩したような体勢で潜り込んできた。先ほどまでと逆転した位置関係だ。
 攻守交代とばかりにカナの口元に不敵な笑みが灯った。

「今度は、私の番です」

 レバーのように屹立した男根を、カナの温度のある両手が包み込んだ。優しく擦られるだけで快感電流が脳内を駆け巡ったが、そのうち彼女の顔が股間に近寄ってきた。
 まさか、と思って息を呑む。予想される次なる展開に胸が高鳴る。
 次の瞬間、カナの艶のある唇が自身の太幹に触れた。さらには舌を伸ばして、裏筋やカリ首を優しくなぞってきた。舌のざらざらとした感触がなんとも刺激的で、すぐに亀頭から我慢汁が溢れてきた。そんなことはお構いなしとばかりにカナは舌だけで執拗に愛撫を続けた。やがて我慢汁と彼女の唾液とで肉棒がてかてかと光沢を帯びてきた。
 カナはうっとりとした眼差しでそれを見つめた後、あんぐりと口を開いた。そしてついに、ぬめり光るそれをぱくりと口の中に収めた。

「うおおおおおおぉぉぉっ」

 思わず雄叫びを上げていた。あの立花カナが自分のものを愛おしそうに咥えている。この日が来ることを何度夢想してきたことか。夢にまで見た光景が現実となり、筆舌に尽くしがたい感動が胸中を満たしていた。
 垂れる横髪を搔き分けながらカナはペニスを頬張り続けた。じゅぽじゅぽと淫靡な響きが彼女の口元から上がる。
 熱い口内粘膜に包まれて、今にも欲望が爆発してしまいそうだった。フェラチオとはこんなに気持ちがよいものだっただろうか? もちろん相手が立花カナだからというのも理由の一つだろうが、彼女自身のテクニックが凄まじいことも否めなかった。
 とてもじゃないが、初めてだとは思えない。会っていない3年の間に相当な経験を積んできたことをうかがわせる。考えてみれば、いや、考えるまでもなく端麗な容姿と爛漫な性格を兼ね備えた彼女のような女の子を、世の男たちが放っておくわけがないだろう。怖くて最後まで訊けず仕舞いだったが、恋人のひとりやふたり過去にいたっておかしくない。
 ふいに男の影がちらついて、メラメラと嫉妬の炎が湧き上がった。
 俺はおもむろに立ち上がって、眼下にカナを見据えた。
 その間もずっとペニスに食らいつくカナのことが愛おしくて、自然と頭を撫でていた。

「ん、ん、はむっ」

 献身的に口唇奉仕に勤しんでいる女性の絵というのはいやがおうにも獣欲を掻き立てられる。ましてやその女性が立花カナともなれば、興奮はひとしおだ。
 ぐっと腰を前に突き出すと、驚いたように彼女の目が見開かれた。

「んんんんっ」

 先端が喉の奥にぶつかる感覚があった。だけど彼女はむせることなく、それどころか逃さないとばかりに腰に手を回して、さらに強く吸茎してきた。
 俺は声にならない声を振りまいて、宙を仰いだ。俄に射精欲に駆られたが、肛門に力をこめて発射するのを堪えた。まだ果てたくない。この時間を終わりにしたくない。そんな願いとは裏腹に、カナの超絶技巧なフェラチオに屈しかけていた。限界が近く、俺はうわごとを漏らすように懇願した。

「あぁ、だめだっ、これ以上は……」

 しかし、カナは一向に吸茎を止めようとしなかった。それどころかさらに激しさが増した。
 吸茎しながら竿の周りを舌で豪快になぞられる。いわゆるローリングフェラだ。
 下半身に最大限の力をこめるが、もはや焼け石に水。
 抗いがたい快楽の奔流が怒濤のごとく脳内に雪崩込んできた。

「だめだっ、出るッッ」

 マグマのような液体が尿道を駆け下る気配があった。そして努力の甲斐も虚しく、亀頭の先端から欲望の塊が連続して噴射された。さっき1回出したとは思えないほどの大量の精液が、彼女の口内をとくとくと満たしていった。
 射精後も搾り取るように吸引されて、快感のあまり膝から崩れ落ちた。

「んんんんんっ、ぷはっ」

 カナの唇が陰茎から離れると、口の中いっぱいに白濁液が溜まっていた。あまりに大量に放出されたため、入りきらなかった分が唇の端から漏れ出ていた。
 彼女は上気した顔で精液をごくごくと嚥下した。それも全て飲み干すと、今し方自分の肉棒を包んでいた手で顔に付着した精液を拭い取っていった。
 どうしようもなく扇情的な光景だった。2度も出したにも関わらず、肉棒はまだガチガチに勃起したまま上を向いている。それを見て、カナは呆れたように、あるいはどこか嬉しそうに笑った。

「すごい。まだ元気」

 俺は肩で息をしながら、彼女の蠱惑的な笑みを見下ろしていた。
 どういうわけか何度精を放っても興奮が収まらない。彼女の丸みを帯びた肢体や白い柔肌を見ていると、内側からみるみる力がみなぎってくるのだった。

「カナ……カナっ」

 俺は彼女を押し倒して上に重なった。
 乳房を揉みしだきながら、舌を濃厚に絡ませる。自分の精液がまだ残っていて、少し生臭い味がしたが、全く気にならなかった。それよりも彼女の唾液を啜り呑むことに躍起になっていた。少しでも彼女の成分を自分の体内に取り込みたかった。
 カレンとのセックスでここまでの激情に駆られることはない。そんなことを考えてしまう自分はとても最低な人間のように思えたが、今は余計な感情を抱いている余裕もなく、ただ目の前の肉体を貪ることに集中していた。
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