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第6章
リビドー・マッチ(5/7)
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画面の中で、裸の男女が折り重なって情事に乱れている。
壁にしなだれかかるような体勢でいる女優の背後に男優が立ち、激しく腰を振りつける。いわゆる立ちバックという体位だ。男優にペニスで子宮口を突かれるたび、女優はあんあんと甲高い声を放っては豊満な乳房をぶるぶると揺らしている。まるで全身で性の悦びを表現しているかのようだった。
「……んんっ、ぁんっ」
淫靡な空気が充満する居室に、生々しい吐息の音が響いた。今のはテレビの中の女優が放ったものではない。
隣を見ると、カナがくねくねと身をよじらせながら落ち着かない内心を露わにしていた。湿った瞳を画面に預けて、形の良い眉を切なそうに歪めている。頬は上気していて、半開きの唇からは断続的に熱っぽい息が漏れ出ている。その横顔は完全に発情した牝のそれだった。
「……くッ……んんッ!」
堪えきれないとばかりにカナの声が段々と大きくなっていく。時折びくんと肩を弾ませて、下半身をもぞもぞ蠢かせている。表情は苦悶の色に染まっており、快楽の波と格闘している様が見て取れた。
AVを鑑賞し始めてまだ30分と経っていないが、すでに彼女の理性は限界に達しつつあるようだった。演技でなければ、よほど感じやすい体質なのだろう。
「ずいぶん苦しそうだな」
声をかけると、カナはもどかしさの募った顔でこちらを見返してきた。
「手枷が邪魔だろう。解いてやろうか?」
誘い水を向けると、彼女はいっそうじれったそうに表情を歪めた。
現在、俺とカナの両手は備え付けのハンドタオルを使用して背中で縛られた状態にある。対戦中はテレビの方に集中していないといけない都合上、相互に監視の行き届かない状況になることが予期される。すると相手が見ていないのをいいことにこっそり手淫するということもできなくはない。この手枷はそうしたズルを防ぐための措置だ。
数瞬迷いの素振りを挟みつつも、カナは明らかに強がりだと分かる笑みを浮かべて言った。
「結構です。先輩の方こそ、そろそろ限界なんじゃないですか」
こちらも余裕そうな笑みを返しておいたが、実のところ彼女の指摘は正鵠を射ていた。
導入部の濃厚なキスシーンの時点ですでにやばかった。舌と舌を濃厚に絡ませ合い、お互いの唾液を啜り合う男女の図は、とりわけ精神が摩耗している今の自分にとって目に毒以外の何物でもなく、忽ち股間に熱が集まるのを阻止することができなかった。
以来、勃起状態はいっときたりとも途切れることなく続いている。絶えず射精欲の波が打ち寄せてくるせいで、理性の防波堤は今にも決壊寸前だ。
苦肉の策として般若心境を内心で唱えてみたり肉親の情事を想像してみたりと、どうにか興奮を鎮めるための手法を思いつくかぎり試してみたが、いずれも焼け石に水だった。
下着の中はすでに我慢汁でぐしゃぐしゃに濡れている。
ここまで気持ちが昂ぶっているのは、俳優たちが見事なまでの快演を披露してくれているからだろう。男女ともに蕩けきった表情をしているが、一朝一夕の付き合いで引き出せる表情ではない。互いが互いの気持ちの良い場所を知り尽くしているようで、本当に心の底から愛し合っているようだった。ふたりの間には長年かけて築き上げた絆みたいなものがあるように感じられ、それがスパイスとなって見るものの興奮を煽るのだった。
何度も白旗を挙げかけた。そのたびに思い留まれたのは、対戦相手が自分以上に限界を迎えている様子だったからだ。
はなっから負け試合だとわかっているなら、さっさと降参した方が身のためだ。だが彼女のあまりの狂乱振りをみるに、勝ちの目の方が濃厚かもしれないと希望が湧き、忽ち勝負を捨てる気を失わせるのだった。
また、カナがこれからどのように狂い咲き、どのような姿で果てることになるのかをこの目で見届けたいという思いもあった。
興奮の対象はいつしかAVから立花カナに移り変わっていた。隣で彼女が甘い泣き声を上げるたび、快楽の予兆にのたうち回っている姿を認めるたび、獣欲と好奇心が共に膨張するのを自覚した。その光景はどんな映画をも見劣りするくらい刺激的で、胸の内側を激しく昂ぶらせるものだった。
フィニッシュを迎える直前、女優が鋭い嬌声を放った。
「はうっ、あああンッ!」
続けざまにカナの口からも嬌声が鞭打つように放たれる。首を真後ろに傾けて、弓なりに上半身をのけ反らせている。ガウンが少しばかりはだけていて、胸の谷間も露わになっている。真っ白なうなじには大量の小汗が滲んでいる。
間もなく画面が暗転し、映像が打ち切られた。
カナは身体をベッドに沈め、はあはあと肩で息をしていた。
「もしかして、イったのか?」
もしやと思って問いかけると、おもむろにカナの視線がこちらを向いた。くりりとした丸い双眸にはうっすらと涙が滲んでいて、膜が張られたようにとろんとしていた。曖昧な反応を浮かべていた彼女だったが、やがて消え入るような声で、はい、と白状した。
驚愕の事実だった。性感帯に指一本触れることなく、視覚からの刺激だけで絶頂を迎えたらしい。
「で、でも、両手はこの通り、縛られたままですから。オナニーはしていません」
上体を起こして唇を尖らせながら主張してくる。それからこちらの膨れ上がった下半身を一瞥して、挑むような眼差しを寄越してきた。
「先輩のあそこも苦しそうですよ。早いところギブアップした方が身のためなのでは?」
「それはこっちの台詞だ。いつまで虚勢を張り続けていられるか見ものだな」
笑みを浮かべて言い返すと、カナは少しだけ表情を強張らせた。このまま勝負を続けたら我を失うことになるのは時間の問題だ。自分でもそれがわかっていて不安を抱いているのだろう。だが、それも一瞬のこと。彼女は再度勝ち気そうに目尻をつり上げて、声を張った。
「そうやってほざいていられるのも今のうちです。業突く張りなその態度を改める気がないのでしたら、これから目に物見せてやります。覚悟しておいてください」
威勢はいいが、その根拠のない自信はどこから湧いてくるのやら。勝利を確信しているからか、口元の笑みが抑えられなかった。
前方の画面に目を向けると、すでに次のAVが始まっていた。
今度は重厚なストーリーものだった。
無精子病で子供がつくれない夫婦がいて、夫はどうにか妻を妊娠させるべく、彼女に他の男をあてがうことを決意する。夫が間近で見守る中、妻は別の男と性交に臨む。行為は次第に激しさを増していき、夫は憎悪と嫉妬の炎にその身を焦がしていく。妻は夫への罪悪感を抱きながらも抗い難い快楽の海に溺れていく。
1本目のAVと比べると、俳優らの年齢はやや高めで、行為そのものから感じ取れる熱量も見映えの良さも幾ばかりか見劣りする。しかしながらそれを補って余り有るほどにシチュエーションの異常さが見る者の興奮を誘っていた。
妻が自分ではない男と情交に耽る光景を目の当たりにして頭を抱える夫。悲痛な面持ちだが、下半身はみすぼらしくテントを張っている。そんな夫に対し、男に抱かれながら虚弱な声で「ごめんなさい」と繰り返す妻。だがその顔は完膚なきまでに恍惚の色に染まっている。小刻みに震える身体が隠しきれない性の悦びを主張していた。
快楽と罪悪感の狭間で揺れ動く妻の役を、女優はものの見事に演じていた。その卓越した演技力は圧巻のひと言に尽きた。NTRは趣味ではないが、そんな俺でも思わず目眩を覚えるほどのエロスが女優には備わっていた。それが彼女をひと際美しく、妖艶な存在へと仕立て上げていた。
ズボンの中でペニスが痛みを覚えるくらいに膨張していた。少しでも外的な刺激を加えると、それだけで爆発してしまいそうだった。
「いやぁ! い、イクッッ」
突如として悲鳴のような声が耳に飛び込んできた。
隣を見ると、案の定、すっかり発情しているカナの姿があった。
腰を浮かせてビクビクと全身を震わせている。ベッドがぎしぎしと軋むほどに激しい動きだった。
エクソシストの映画に登場する悪魔憑きの少女のようと表現するのはさすがに言い過ぎだが、はたから見ていてそれに近い狂気みたいなものを感じた。本当に悪い物に取り憑かれているようだった。思わず心配になり「大丈夫か?」と声をかけるが、カナの方はそれに返事をする余裕すらも失っている様子だった。おもてに大粒の汗がたぎり、豊満なバストが激しく上下している。断続的に放たれる喘ぎ声からは微塵も愉悦の色はうかがえず、ただただ苦しそうに身悶えている印象だった。
このまま放っておくと精神崩壊してしまうかもしれない。彼女の身を案じるなら、今すぐ勝負は中断するべきじゃないか?――そう理性的な判断を下そうとする自分も時折顔を覗かせたが、やはり彼女の成れの果てを目にしたいという欲求には抗えなかった。ひいひいとよがり泣きを上げながら壊れていく彼女の有様を、俺は黙ってこの目に焼き付けていた。
やがて2本目のAVも終了した。ストーリーが重厚に練られていただけあって、普通の映画1本分くらいの尺はあったように思える。
カナはうつ伏せになって、虚ろな眼差しをシーツの上に預けていた。さすがにへとへとになっている様子だ。それは俺も同様だった。倦怠感が全身に染み渡り、心なしかいつもより四肢が動かしづらく感じる。相変わらずペニスははち切れんばかりに膨張していて、しきりに痛みを訴えている。こんなになるまで射精を我慢するのは初めてだ。強欲は身を滅ぼすというが、禁欲だって度を過ぎれば身を滅ぼしかねないものだと身をもって知る。
途轍もない疲労感が自分たちから口数を奪っていた。
少し休憩を挟みたかったが、間もなく3本目のAVが始まった。ポップな音楽に乗せて、タイトルが画面いっぱいに表示される。
『出張・マジックミラー号!【検証】街行く男女を〝セックスしないと出られない部屋〟に閉じ込めたら、ふたりはセックスしてしまうのか?』
タイトルを見て、俺はカナと顔を見合わせた。驚いた、という表情。その中に早くも色めきの気配が潜んでいることを俺は見逃さなかった。無論、俺自身も同じ顔になっているはずだ。悪魔の囁きが聞こえた気がしたが、もはや後戻りはできなかった。
画面の中で、裸の男女が折り重なって情事に乱れている。
壁にしなだれかかるような体勢でいる女優の背後に男優が立ち、激しく腰を振りつける。いわゆる立ちバックという体位だ。男優にペニスで子宮口を突かれるたび、女優はあんあんと甲高い声を放っては豊満な乳房をぶるぶると揺らしている。まるで全身で性の悦びを表現しているかのようだった。
「……んんっ、ぁんっ」
淫靡な空気が充満する居室に、生々しい吐息の音が響いた。今のはテレビの中の女優が放ったものではない。
隣を見ると、カナがくねくねと身をよじらせながら落ち着かない内心を露わにしていた。湿った瞳を画面に預けて、形の良い眉を切なそうに歪めている。頬は上気していて、半開きの唇からは断続的に熱っぽい息が漏れ出ている。その横顔は完全に発情した牝のそれだった。
「……くッ……んんッ!」
堪えきれないとばかりにカナの声が段々と大きくなっていく。時折びくんと肩を弾ませて、下半身をもぞもぞ蠢かせている。表情は苦悶の色に染まっており、快楽の波と格闘している様が見て取れた。
AVを鑑賞し始めてまだ30分と経っていないが、すでに彼女の理性は限界に達しつつあるようだった。演技でなければ、よほど感じやすい体質なのだろう。
「ずいぶん苦しそうだな」
声をかけると、カナはもどかしさの募った顔でこちらを見返してきた。
「手枷が邪魔だろう。解いてやろうか?」
誘い水を向けると、彼女はいっそうじれったそうに表情を歪めた。
現在、俺とカナの両手は備え付けのハンドタオルを使用して背中で縛られた状態にある。対戦中はテレビの方に集中していないといけない都合上、相互に監視の行き届かない状況になることが予期される。すると相手が見ていないのをいいことにこっそり手淫するということもできなくはない。この手枷はそうしたズルを防ぐための措置だ。
数瞬迷いの素振りを挟みつつも、カナは明らかに強がりだと分かる笑みを浮かべて言った。
「結構です。先輩の方こそ、そろそろ限界なんじゃないですか」
こちらも余裕そうな笑みを返しておいたが、実のところ彼女の指摘は正鵠を射ていた。
導入部の濃厚なキスシーンの時点ですでにやばかった。舌と舌を濃厚に絡ませ合い、お互いの唾液を啜り合う男女の図は、とりわけ精神が摩耗している今の自分にとって目に毒以外の何物でもなく、忽ち股間に熱が集まるのを阻止することができなかった。
以来、勃起状態はいっときたりとも途切れることなく続いている。絶えず射精欲の波が打ち寄せてくるせいで、理性の防波堤は今にも決壊寸前だ。
苦肉の策として般若心境を内心で唱えてみたり肉親の情事を想像してみたりと、どうにか興奮を鎮めるための手法を思いつくかぎり試してみたが、いずれも焼け石に水だった。
下着の中はすでに我慢汁でぐしゃぐしゃに濡れている。
ここまで気持ちが昂ぶっているのは、俳優たちが見事なまでの快演を披露してくれているからだろう。男女ともに蕩けきった表情をしているが、一朝一夕の付き合いで引き出せる表情ではない。互いが互いの気持ちの良い場所を知り尽くしているようで、本当に心の底から愛し合っているようだった。ふたりの間には長年かけて築き上げた絆みたいなものがあるように感じられ、それがスパイスとなって見るものの興奮を煽るのだった。
何度も白旗を挙げかけた。そのたびに思い留まれたのは、対戦相手が自分以上に限界を迎えている様子だったからだ。
はなっから負け試合だとわかっているなら、さっさと降参した方が身のためだ。だが彼女のあまりの狂乱振りをみるに、勝ちの目の方が濃厚かもしれないと希望が湧き、忽ち勝負を捨てる気を失わせるのだった。
また、カナがこれからどのように狂い咲き、どのような姿で果てることになるのかをこの目で見届けたいという思いもあった。
興奮の対象はいつしかAVから立花カナに移り変わっていた。隣で彼女が甘い泣き声を上げるたび、快楽の予兆にのたうち回っている姿を認めるたび、獣欲と好奇心が共に膨張するのを自覚した。その光景はどんな映画をも見劣りするくらい刺激的で、胸の内側を激しく昂ぶらせるものだった。
フィニッシュを迎える直前、女優が鋭い嬌声を放った。
「はうっ、あああンッ!」
続けざまにカナの口からも嬌声が鞭打つように放たれる。首を真後ろに傾けて、弓なりに上半身をのけ反らせている。ガウンが少しばかりはだけていて、胸の谷間も露わになっている。真っ白なうなじには大量の小汗が滲んでいる。
間もなく画面が暗転し、映像が打ち切られた。
カナは身体をベッドに沈め、はあはあと肩で息をしていた。
「もしかして、イったのか?」
もしやと思って問いかけると、おもむろにカナの視線がこちらを向いた。くりりとした丸い双眸にはうっすらと涙が滲んでいて、膜が張られたようにとろんとしていた。曖昧な反応を浮かべていた彼女だったが、やがて消え入るような声で、はい、と白状した。
驚愕の事実だった。性感帯に指一本触れることなく、視覚からの刺激だけで絶頂を迎えたらしい。
「で、でも、両手はこの通り、縛られたままですから。オナニーはしていません」
上体を起こして唇を尖らせながら主張してくる。それからこちらの膨れ上がった下半身を一瞥して、挑むような眼差しを寄越してきた。
「先輩のあそこも苦しそうですよ。早いところギブアップした方が身のためなのでは?」
「それはこっちの台詞だ。いつまで虚勢を張り続けていられるか見ものだな」
笑みを浮かべて言い返すと、カナは少しだけ表情を強張らせた。このまま勝負を続けたら我を失うことになるのは時間の問題だ。自分でもそれがわかっていて不安を抱いているのだろう。だが、それも一瞬のこと。彼女は再度勝ち気そうに目尻をつり上げて、声を張った。
「そうやってほざいていられるのも今のうちです。業突く張りなその態度を改める気がないのでしたら、これから目に物見せてやります。覚悟しておいてください」
威勢はいいが、その根拠のない自信はどこから湧いてくるのやら。勝利を確信しているからか、口元の笑みが抑えられなかった。
前方の画面に目を向けると、すでに次のAVが始まっていた。
今度は重厚なストーリーものだった。
無精子病で子供がつくれない夫婦がいて、夫はどうにか妻を妊娠させるべく、彼女に他の男をあてがうことを決意する。夫が間近で見守る中、妻は別の男と性交に臨む。行為は次第に激しさを増していき、夫は憎悪と嫉妬の炎にその身を焦がしていく。妻は夫への罪悪感を抱きながらも抗い難い快楽の海に溺れていく。
1本目のAVと比べると、俳優らの年齢はやや高めで、行為そのものから感じ取れる熱量も見映えの良さも幾ばかりか見劣りする。しかしながらそれを補って余り有るほどにシチュエーションの異常さが見る者の興奮を誘っていた。
妻が自分ではない男と情交に耽る光景を目の当たりにして頭を抱える夫。悲痛な面持ちだが、下半身はみすぼらしくテントを張っている。そんな夫に対し、男に抱かれながら虚弱な声で「ごめんなさい」と繰り返す妻。だがその顔は完膚なきまでに恍惚の色に染まっている。小刻みに震える身体が隠しきれない性の悦びを主張していた。
快楽と罪悪感の狭間で揺れ動く妻の役を、女優はものの見事に演じていた。その卓越した演技力は圧巻のひと言に尽きた。NTRは趣味ではないが、そんな俺でも思わず目眩を覚えるほどのエロスが女優には備わっていた。それが彼女をひと際美しく、妖艶な存在へと仕立て上げていた。
ズボンの中でペニスが痛みを覚えるくらいに膨張していた。少しでも外的な刺激を加えると、それだけで爆発してしまいそうだった。
「いやぁ! い、イクッッ」
突如として悲鳴のような声が耳に飛び込んできた。
隣を見ると、案の定、すっかり発情しているカナの姿があった。
腰を浮かせてビクビクと全身を震わせている。ベッドがぎしぎしと軋むほどに激しい動きだった。
エクソシストの映画に登場する悪魔憑きの少女のようと表現するのはさすがに言い過ぎだが、はたから見ていてそれに近い狂気みたいなものを感じた。本当に悪い物に取り憑かれているようだった。思わず心配になり「大丈夫か?」と声をかけるが、カナの方はそれに返事をする余裕すらも失っている様子だった。おもてに大粒の汗がたぎり、豊満なバストが激しく上下している。断続的に放たれる喘ぎ声からは微塵も愉悦の色はうかがえず、ただただ苦しそうに身悶えている印象だった。
このまま放っておくと精神崩壊してしまうかもしれない。彼女の身を案じるなら、今すぐ勝負は中断するべきじゃないか?――そう理性的な判断を下そうとする自分も時折顔を覗かせたが、やはり彼女の成れの果てを目にしたいという欲求には抗えなかった。ひいひいとよがり泣きを上げながら壊れていく彼女の有様を、俺は黙ってこの目に焼き付けていた。
やがて2本目のAVも終了した。ストーリーが重厚に練られていただけあって、普通の映画1本分くらいの尺はあったように思える。
カナはうつ伏せになって、虚ろな眼差しをシーツの上に預けていた。さすがにへとへとになっている様子だ。それは俺も同様だった。倦怠感が全身に染み渡り、心なしかいつもより四肢が動かしづらく感じる。相変わらずペニスははち切れんばかりに膨張していて、しきりに痛みを訴えている。こんなになるまで射精を我慢するのは初めてだ。強欲は身を滅ぼすというが、禁欲だって度を過ぎれば身を滅ぼしかねないものだと身をもって知る。
途轍もない疲労感が自分たちから口数を奪っていた。
少し休憩を挟みたかったが、間もなく3本目のAVが始まった。ポップな音楽に乗せて、タイトルが画面いっぱいに表示される。
『出張・マジックミラー号!【検証】街行く男女を〝セックスしないと出られない部屋〟に閉じ込めたら、ふたりはセックスしてしまうのか?』
タイトルを見て、俺はカナと顔を見合わせた。驚いた、という表情。その中に早くも色めきの気配が潜んでいることを俺は見逃さなかった。無論、俺自身も同じ顔になっているはずだ。悪魔の囁きが聞こえた気がしたが、もはや後戻りはできなかった。
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