3秒間の永遠〜たった3秒だけでいいから、あなたに想いを届けたい〜

紫水晶羅

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椿

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 結局徹平は、こちらが拍子抜けしてしまうほどあっさりと、誘いに応じた。
 これには椿も呆気にとられた。いざとなったら、「台所から火が出てる」とかなんとか言って、無理やりにでも連れ出すつもりだったのに。

 椿の手から色とりどりの金平糖を受け取りながら、「しょうがねぇなぁ」と照れ臭そうに口の端を持ち上げる徹平に、椿の張りつめていたものがぷつりと切れた。同時に、自分がいかに身構えていたかということに気付かされた。

 こちらが身構えていたら、相手も心を開いてくれるはずがない。
 そう思ったら無性に、生意気そうなこの少年と仲良くなりたくてたまらなくなった。

 祭り会場は、大勢の人でごった返していた。気を抜くと、あっという間にはぐれてしまいそうになる。三人は、極力離れないよう慎重に歩いた。

 途中、向こうから中学生くらいの集団が歩いてきた。椿は咄嗟に、徹平の手を掴んだ。
 自分よりも少し小さな柔らかい手のひらが、反射的に吸い付いてくる。彼もきっと、はぐれまいと必死なのだ。
 この手を決して離してはいけない。
 そう自分に言い聞かせ、椿は徹平の手をしっかり握った。


 椿は、徹平が可愛くて仕方なかった。
 甘えたいのに、そっぽを向いてしまうところも。本当は優しいのに、わざと乱暴な口を利くところも。口下手で、言いたいことの半分も言えずにいるところも……。
 その全てが、愛おしくてたまらなかった。
 まるで本当の弟ができたみたいで、椿は嬉しかったのだ。

 それ故か、椿は徹平になんでも話した。時には、恭介に対するほんの些細な愚痴までも。
 小学生相手に何をしているのだろうかと、自分で自分が可笑しく思えることもあったが、徹平の何事にも動じず落ち着いた雰囲気が、椿に安心感をもたらし、自然と胸の内を吐き出すことができたのだ。

 徹平はただ、ゲームをしながら面倒くさそうに生返事をしていただけだったが、それでも椿は、徹平の打つ僅かな相槌が嬉しくて、一方的に話し続けた。
 手負いの子狼を彷彿とさせるような警戒心強めのこの少年に、自分が受け入れられていることが嬉しかった。

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