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二人が出会った意味
最後の言葉
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高校二年の冬。
その日は朝から、霙まじりの雨が降っていた。
綾音たちの通う高校はバイク通学が禁止されていたため、皇が高梨家へ来る際は、一旦帰宅してバイクに乗り換えて来なければならなかった。
学校帰りに直接来ても良いが、辺鄙な田舎町にある高梨家の周辺は、交通の便が悪く、駅に向かう最終バスは、午後七時には出てしまう。
よって、時間の融通が利くバイクなら、帰りの心配をせずに済むのだ。
サッカー部に所属していた皇は、悪天候の日は屋内トレーニングとなる為、部活動は早く終わる。その日はいつにも増して早く終わった為、皇は喜び勇んで帰宅し、初雪のチラつく中、いつものようにバイクで綾音の元へと向かった。
しかし、帰宅部でとっくに帰っているはずの綾音の姿は、そこになかった。
たまたま学校帰りに、友だちの買い物に付き合っていた為、帰りが遅くなっていたのだ。
バスケ部に所属していた優吾は勿論不在で、暇潰しをする相手もいない。
当時、喫茶わたゆきを経営していた優吾の母に、帰ってくるまで店で待つよう言われたが、遠慮したのか皇はそれを断り、自宅玄関前でじっと綾音を待ち続けていた。
ようやく帰宅した綾音に浴びせられた皇の第一声は、「おっせーよ! どこ行ってたんだよ!」だった。
雪の中、長時間待ちぼうけを食らいフラストレーションが溜まっていたのかも知れない。もしくは、待ち人にやっと会えた安心感から、思わず口をついて出てしまった憎まれ口だったのかも知れない。
だが、突然怒鳴られた方は堪らない。
勝手に来ておいてその言い草はないだろうと、綾音は負けじと反論した。
売り言葉に買い言葉だった。
「皇なんて大っきらい! もう、顔も見たくない!」
それが、綾音が皇と交わした、最後の言葉だった。
その日は朝から、霙まじりの雨が降っていた。
綾音たちの通う高校はバイク通学が禁止されていたため、皇が高梨家へ来る際は、一旦帰宅してバイクに乗り換えて来なければならなかった。
学校帰りに直接来ても良いが、辺鄙な田舎町にある高梨家の周辺は、交通の便が悪く、駅に向かう最終バスは、午後七時には出てしまう。
よって、時間の融通が利くバイクなら、帰りの心配をせずに済むのだ。
サッカー部に所属していた皇は、悪天候の日は屋内トレーニングとなる為、部活動は早く終わる。その日はいつにも増して早く終わった為、皇は喜び勇んで帰宅し、初雪のチラつく中、いつものようにバイクで綾音の元へと向かった。
しかし、帰宅部でとっくに帰っているはずの綾音の姿は、そこになかった。
たまたま学校帰りに、友だちの買い物に付き合っていた為、帰りが遅くなっていたのだ。
バスケ部に所属していた優吾は勿論不在で、暇潰しをする相手もいない。
当時、喫茶わたゆきを経営していた優吾の母に、帰ってくるまで店で待つよう言われたが、遠慮したのか皇はそれを断り、自宅玄関前でじっと綾音を待ち続けていた。
ようやく帰宅した綾音に浴びせられた皇の第一声は、「おっせーよ! どこ行ってたんだよ!」だった。
雪の中、長時間待ちぼうけを食らいフラストレーションが溜まっていたのかも知れない。もしくは、待ち人にやっと会えた安心感から、思わず口をついて出てしまった憎まれ口だったのかも知れない。
だが、突然怒鳴られた方は堪らない。
勝手に来ておいてその言い草はないだろうと、綾音は負けじと反論した。
売り言葉に買い言葉だった。
「皇なんて大っきらい! もう、顔も見たくない!」
それが、綾音が皇と交わした、最後の言葉だった。
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