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第1章:禁断の森「ソーン樹海」
Ep16:「思いも寄らない事実」
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ユーキ達一行は仮面人に囲まれ森の中を歩いていた。
「なぁなぁ。お前達その仮面熱くないのか?脱げよ。お前達だけ顔晒さないのはどうかと思うぜ?」
少しニヤつきながら、複数の仮面人に聞いて回るレン。一様に無視されている。
仮面人たちは皆ジェイソンのような仮面を身に付けていた。一人ひとり模様が少し違うように見えるがさして変わらない。
「お前。少し黙れ。」
小さな仮面人がレンに向かって籠もった声で静かに言った。
「あぁ?何だよ。・・・っていうかお前、オンーー。」
最後まで言い終わらないうちにショウがレンを思い切り殴った。
「イテッ!」
「言う通りだ。黙って歩け。レン。」
すると小さな仮面人は先程とは違う優しい声で言った。
「レン・・・というのか。村まで後少しだ。そこまでもう少し待ってくれ。」
そのまま一行は30分ほど歩き続けた。その間誰ひとりとして言葉を発するものはおらず、足音だけが森に響いていた。
すると急に仮面人達が立ち止まった。
「第一結界内に入った。村の入口まで”経路”を展開しろ。」
小さな仮面人がそう言うと数人の仮面人たちが動き始めた。
「・・・経路って・・・?」
レンがショウに呟くように聞いた。
「・・・知らない。」
「何だよ。お前なんか知ってるんだろ??」
レンはショウに疑惑の眼差しで聞いた。
「・・・」
ショウは黙ったままだ。
「肝心な所はだんまりってか。」
「五月蝿いな。黙って見てなさい。」
仮面人数人が慌ただしく動き始め、円形になり何かを唱え始めた。
すると仮面人達が囲んだ箇所に魔法陣のようなものが浮かび上がり赤白く輝き始めた。
「さぁ。この中に入ってくれ。」
小さな仮面人の言われるまま、ショウ、ユーキ、レンはその魔法陣の中に入った。
一瞬だった。目の前の景色が変わり目の前に村が現れた。
「な、何だぁ!??」
これにはショウも同様の反応らしく、声は発さないものの、驚いた表情をしていた。
「・・・ワープ。転送陣・・・?」
ユーキは小さく呟いた。
「・・・恐らくそうだ。私も見るのは初めてだが・・・」
ショウの顔には一粒の汗がたれていた。
「ワープ???一瞬でここまで移動したってことか?」
レンが聞いた。
「そうだ。恐らく先程居たところから数キロメートルは離れているだろう。」
驚き方は違えど、三人はこの現象を頭で整理するのが精一杯な様だった。
まもなくしてその他の仮面人達が同様にワープしてきた。最後に小さな仮面人が到着した。
「またせたな。後ほど改めて自己紹介はさせて頂くが、私はこの村の村長を務めるものだ。まずは私の家に案内しよう。」
-薄々感づいてはいたが・・・この小さな仮面人が村のトップだったわけだ。-
ユーキとショウは黙って仮面人達に付いていった。
「お前村長だったの・・・?」
レンは目の前を歩く小さな仮面人が村長であることに驚きを隠せないでいた。
「この村で一番えらい人??そんなに背が小さいのに??!オン--イテッ」
またしてもレンは何かを言いかけたところでショウに殴られていた。
「いい加減にしろ。私達の村ではないんだぞ。静かにしろ。」
そう言われ冷静になったレンは周りを見た。自分たちの村とは規模や家の作り、人々の服装など様々なものが違って見えた。しかしそこのいるのは紛れもなく人間。
そして自分たちの村と変わりない人間が怪訝そうな顔でこちらを伺うように見ていた。
「皆。すまない。私たちで対応する。"外"から来た者たちだ。決して悪さをするような奴らではない。安心して、普段の生活に戻ってくれ。」
村人たちは"外"という言葉に驚いていた。が、最後の言葉で何事もなかったように生活し始めた。
それからはレンも黙って歩いていた。
しばらく歩き、村で一番大きな家の前についた。
目の前に立つ荘厳な建築物は、お偉いさんの家ということを確信に近い形で分からせた。
「客間に案内しよう。私は少し支度をする。少々待っていただきたい。」
そう言われ3人は仮面人たちに連れられ。広い部屋に通された。
「・・・!!・・・・ッ!!!!!!」
ショウが声にならない声で叫んでいた。
「ど、どうした・・・?」
「本だ!!!こんなにも沢山の!ん?あれは何だ!??これは??!・・・凄い!ここは天国か!?」
ユーキは言われて気づいた。眼の前に広がる光景を改めて見た。部屋には本棚が2つ。いずれの本棚も満杯に本が収納されていた。他に棒状温度計(のようななにか)、地球儀なのか、天体を模した置物。球儀の周りには衛生と思われる物体が浮遊しており、少しづつ動いていた。木彫りの人形や、振り子などがあった。
とても不思議な場所で、何時間居ても苦にならないような工夫が至るところに施されていた。窓際にはきれいな花や草が飾られていた。
しばらく部屋を見て回っていると入口の扉をが開き小さな女の子が入ってきた。小柄で可愛らしく、ショートカットのブロンドの髪の毛は少しカールしていた。
-ん?・・・だれだ??-
ユーキは目の前にいる初対面であろう女の子を見て思った。
「申し訳ない。待たせた。この部屋は気に入ってくれた??」
少女らしからぬ喋り方で、そう聞いてくる少女にユーキは困惑した。
「き、君は?どこかで会ったっけ?」
横でショウが少し笑ったのが聞こえた。
「ん?気づかないか・・・。まぁ仮面をしていて顔はもちろん声も聞こえづらかったからかな。そういう君も奇っ怪な仮面をつけているが・・・?」
少女はユーキがつけているマスクを見て笑いながらそう言った。
-まさか・・・-
「もしかして・・・村長さん??」
「そうだ。」
「えええええぇえぇえぇ!!?」
ユーキは大きく声を上げて驚いた。
「何だよわかんなかったのか??俺は分かってたぜ。最初からな・・・。」
レンはニヤついたドヤ顔で小さな村長を見ながら言った。
「ハハッ、お前だけには・・・なんでも無い。。」
お前だけには言われたくない。と言い終わる前にショウの鋭い視線を感じすぐさま言うのをやめた。
「い、いやでも、村長と言うから・・・もっとこう・・・な、なんでも無い。」
ユーキはどこかもどかしそうにそう言うと黙ってしまった。
「さて・・・」
小さな村長はそう言うと部屋の真ん中にある、ローテーブルの横にある椅子に腰掛けた。
「私はあなたに聞いたな。何の真似だ・・・と。」
「あぁ。」
ショウは静かに答えた。
「では改めて確認させていただこう。何の真似だ?」
小さな村長の静かに見透かす目は、とても嘘をつけるような状況にないことをはっきりと分からせた。
「私達は・・・」
ショウがつばを飲み込み、意を決したのが分かった。
「掟を破り、ソーン樹海へ向かっている。」
「なっ!??」
小さな村長は、それば大げさだろう、と思うような驚き方をした。
「お前たちは!またしても繰り返すのか!この短期間で2度も!!!!」
先程までの落ち着いた様子はなく目は血走り、肩は上下に大きく動いていた。
急な状況の変わりようにユーキはオロオロするだけだった。
「・・・!なるほど、そこにいる男は奴の息子か!蛙の子は蛙と言うことだな。」
レンの方を見て唾でも吐くようにそう言い放った。
「何・・・・?親父をバカにしてんのか!?」
静かにレンが怒る。
「あぁ、バカにするさ。バカにするとも!奴は我が父を誑かし、お前たち同様にソーン樹海へと向かった。そして父は、帰ってこなかった!!!」
最後の方は声が震えていた。
「それは・・・」
初めて知る事実。本当のことを言っているかは彼女の顔や声から分かった。レンは反論出来なかった。
「母はその後心労が祟ってか病気を患い死んだ。私がこの歳で村長をやっているのはそういうわけだ。・・・そしてショウ村長!!あなたはそのことを知っている!なぜ!なぜ繰り返すのだ!!」
村長は次にショウを見ながら言った。
「すまない・・・しかし・・・しかし!」
ショウは必死に謝る。
「しかしもカカシも無い!!!」
真っ赤な顔で目尻に溢れんばかりの涙を溜めた彼女が言った。
-あぁこの子は親が居ない可哀想な子だ。喋り方や村長という地位で取繕い、民のためにしっかりものでなければと言う意思に雁字搦めにされている。-
そう思うとレンもユーキも、そしてショウも、彼女の親が亡くなる原因に直接の関係はしていないものの、自分達がこれからやろうとしていることに罪悪感を感じ始めていた。
「この島にある村はこの村とあなたの村の2つ。決して交わることは許されない。その掟を破ることは許容しよう。」
彼女は両手で目をゴシゴシ拭うと、続けた。
「しかし。君たちがこれからやろうとしていることを知ったからには決して許そうとは思わない。そして行かせない。」
しばらく沈黙が続いた。
少し気まずいなぁとユーキが感じ始めた時、ショウが切り出した。
「・・・話はそれだけじゃない。何も贖罪のために、謝罪のためにこの村に寄ったわけではない。」
ユーキは内心ヒヤヒヤしていた。
「・・・!・・・なんだ?」
「ルア。君に・・・君に私達と同行していただきたい。」
どんどん赤くなる顔。やばいとユーキもレンも感じていた。
「舐めるなっっ!!!!!!!!!!!!!!!」
部屋中に声が響いた。魔法でも使っているのでは無いかというほどの声だった。
部屋の外で数人がざわつき、バタバタするのが聞こえた。
「何の真似だっ!!なぜそんなことが言えるんだ!意味がわからない!」
二度目は在るまじきとして、我慢していたのだろう。必死に顔を赤くして目に力を入れていたがついには泣き出してしまった。
「なんで・・・なんでそんなことが言えるんだ・・・」
小さな村長"ルア"はヘタリ込み、顔を両手で塞ぎながら大いに泣いた。
すると外から扉を大きく開けて人が入ってきた。
「何事かっっ!!」
叫びながら部屋に入ってきた男は、既に初老で髭や髪の毛はぼさつき、ところどころに白髪が混じっていた。
部屋に入るなり、ヘタリ込み泣き喚めくルアを見ると、鋭い目線をこちら側に向けた。
「お前達!ルア様に何をした!!」
そういうと、彼は何かを唱えた。すると、次の瞬間には3人まとめて縄で縛られていた。恐らく魔法を使ったのだろう。
「地下牢へと連れて行く!ジキ!ズキ!!客間に来い!!!」
初老の男がそう言うとジキとズキと思われる好青年、赤髪と青髪の短髪の若者が二人入ってきた。
「「はっ!!」」
「こいつらを地下牢へと連れて行くぞ。侵略者だ。」
「侵略者・・・ですか・・・?」
「そうだ。さぁ。さっさと・・・」
「ザキ!!待て・・・!」
いつの間にか泣き止んでいたルアは初老の男を呼び止めた。相変わらず顔は赤く、目は腫れていた。少し嗚咽が漏れていた。
ザキと呼ばれた初老の男はピタッと止まりルアに向け跪いた。
「何故・・・」
「五月蝿い。縄を解け。」
「しかし・・・!」
「解けっ!!」
瞬間3人を縛っていた縄が解かれた。
「ご無礼を・・・」
「いい。気にするな。・・・茶菓子を用意しろ。」
「い、今なんと・・・?」
「えぇい鬱陶しい。聞き返すな爺!茶菓子だ!ちゃ!が!し!」
そう聞くとそそくさと部屋を出ていく3人。
「すまない。泣いたのち、スッキリした。」
そう言うと服の乱れを直し、再度椅子に腰掛けた。しっかりと袖で涙を拭き気丈に振る舞った。
「さて。お前達はソーン樹海に行くという。私は行くなと言う。踏まえてあなた達は私に付いて来て欲しいと言う。」
「・・・」
ショウは静かに聞いていた。
「なぜ。ソーン樹海に行くのか。そして・・・なぜ私に付いて来てほしいのか。」
更にルアは続ける。
「以上を私に説明してほしい。加えて、もしソーン樹海に行きたいならば。私を連れていきたいのであれば、説得してみろ。あの時あの男が、ディズが、我が父、リアを連れて行ったときのように・・・。」
少しの間静寂が場を包んだ。
するとノックの音が聞こえた。ルアが入るように促すと、ザキが茶菓子とお茶を持って入ってきた。
「お持ちしました。」
そう言いながらザキは、ローテーブルに茶菓子とお茶を置いていった。その際に三人を強く睨みつけた。
「すまない。一旦休憩だ。オピャボボミヤブンベブベ。(お茶を飲み休んでくれ)」
ルアは既に茶菓子を口いっぱいに頬張り微笑んでいた。かろうじて何を言っているのかが分かった。
3人はそれぞれ椅子に座り目の前に在る茶菓子に手をつけた。
「あ、」
ユーキは自分がマスクを付けていることも忘れ茶菓子に手をつけようとしていた。
「そういえば甘いもの食べるの久しぶりだなぁ。」
そう言いながらマスクを外した瞬間。
「ボボベフッッッ!!!!!」
目の前に座るルアが盛大に吹いた。ユーキはルアの口から吹き出された茶菓子とお茶を頭からかぶってしまった。
「・・・なにを・・・」
しばらく状況がつかめなかったユーキ。
目の前の少女を見るとアワアワしている。
そして何かを呟いた。
「お、お兄ちゃん・・・・・?」
「なぁなぁ。お前達その仮面熱くないのか?脱げよ。お前達だけ顔晒さないのはどうかと思うぜ?」
少しニヤつきながら、複数の仮面人に聞いて回るレン。一様に無視されている。
仮面人たちは皆ジェイソンのような仮面を身に付けていた。一人ひとり模様が少し違うように見えるがさして変わらない。
「お前。少し黙れ。」
小さな仮面人がレンに向かって籠もった声で静かに言った。
「あぁ?何だよ。・・・っていうかお前、オンーー。」
最後まで言い終わらないうちにショウがレンを思い切り殴った。
「イテッ!」
「言う通りだ。黙って歩け。レン。」
すると小さな仮面人は先程とは違う優しい声で言った。
「レン・・・というのか。村まで後少しだ。そこまでもう少し待ってくれ。」
そのまま一行は30分ほど歩き続けた。その間誰ひとりとして言葉を発するものはおらず、足音だけが森に響いていた。
すると急に仮面人達が立ち止まった。
「第一結界内に入った。村の入口まで”経路”を展開しろ。」
小さな仮面人がそう言うと数人の仮面人たちが動き始めた。
「・・・経路って・・・?」
レンがショウに呟くように聞いた。
「・・・知らない。」
「何だよ。お前なんか知ってるんだろ??」
レンはショウに疑惑の眼差しで聞いた。
「・・・」
ショウは黙ったままだ。
「肝心な所はだんまりってか。」
「五月蝿いな。黙って見てなさい。」
仮面人数人が慌ただしく動き始め、円形になり何かを唱え始めた。
すると仮面人達が囲んだ箇所に魔法陣のようなものが浮かび上がり赤白く輝き始めた。
「さぁ。この中に入ってくれ。」
小さな仮面人の言われるまま、ショウ、ユーキ、レンはその魔法陣の中に入った。
一瞬だった。目の前の景色が変わり目の前に村が現れた。
「な、何だぁ!??」
これにはショウも同様の反応らしく、声は発さないものの、驚いた表情をしていた。
「・・・ワープ。転送陣・・・?」
ユーキは小さく呟いた。
「・・・恐らくそうだ。私も見るのは初めてだが・・・」
ショウの顔には一粒の汗がたれていた。
「ワープ???一瞬でここまで移動したってことか?」
レンが聞いた。
「そうだ。恐らく先程居たところから数キロメートルは離れているだろう。」
驚き方は違えど、三人はこの現象を頭で整理するのが精一杯な様だった。
まもなくしてその他の仮面人達が同様にワープしてきた。最後に小さな仮面人が到着した。
「またせたな。後ほど改めて自己紹介はさせて頂くが、私はこの村の村長を務めるものだ。まずは私の家に案内しよう。」
-薄々感づいてはいたが・・・この小さな仮面人が村のトップだったわけだ。-
ユーキとショウは黙って仮面人達に付いていった。
「お前村長だったの・・・?」
レンは目の前を歩く小さな仮面人が村長であることに驚きを隠せないでいた。
「この村で一番えらい人??そんなに背が小さいのに??!オン--イテッ」
またしてもレンは何かを言いかけたところでショウに殴られていた。
「いい加減にしろ。私達の村ではないんだぞ。静かにしろ。」
そう言われ冷静になったレンは周りを見た。自分たちの村とは規模や家の作り、人々の服装など様々なものが違って見えた。しかしそこのいるのは紛れもなく人間。
そして自分たちの村と変わりない人間が怪訝そうな顔でこちらを伺うように見ていた。
「皆。すまない。私たちで対応する。"外"から来た者たちだ。決して悪さをするような奴らではない。安心して、普段の生活に戻ってくれ。」
村人たちは"外"という言葉に驚いていた。が、最後の言葉で何事もなかったように生活し始めた。
それからはレンも黙って歩いていた。
しばらく歩き、村で一番大きな家の前についた。
目の前に立つ荘厳な建築物は、お偉いさんの家ということを確信に近い形で分からせた。
「客間に案内しよう。私は少し支度をする。少々待っていただきたい。」
そう言われ3人は仮面人たちに連れられ。広い部屋に通された。
「・・・!!・・・・ッ!!!!!!」
ショウが声にならない声で叫んでいた。
「ど、どうした・・・?」
「本だ!!!こんなにも沢山の!ん?あれは何だ!??これは??!・・・凄い!ここは天国か!?」
ユーキは言われて気づいた。眼の前に広がる光景を改めて見た。部屋には本棚が2つ。いずれの本棚も満杯に本が収納されていた。他に棒状温度計(のようななにか)、地球儀なのか、天体を模した置物。球儀の周りには衛生と思われる物体が浮遊しており、少しづつ動いていた。木彫りの人形や、振り子などがあった。
とても不思議な場所で、何時間居ても苦にならないような工夫が至るところに施されていた。窓際にはきれいな花や草が飾られていた。
しばらく部屋を見て回っていると入口の扉をが開き小さな女の子が入ってきた。小柄で可愛らしく、ショートカットのブロンドの髪の毛は少しカールしていた。
-ん?・・・だれだ??-
ユーキは目の前にいる初対面であろう女の子を見て思った。
「申し訳ない。待たせた。この部屋は気に入ってくれた??」
少女らしからぬ喋り方で、そう聞いてくる少女にユーキは困惑した。
「き、君は?どこかで会ったっけ?」
横でショウが少し笑ったのが聞こえた。
「ん?気づかないか・・・。まぁ仮面をしていて顔はもちろん声も聞こえづらかったからかな。そういう君も奇っ怪な仮面をつけているが・・・?」
少女はユーキがつけているマスクを見て笑いながらそう言った。
-まさか・・・-
「もしかして・・・村長さん??」
「そうだ。」
「えええええぇえぇえぇ!!?」
ユーキは大きく声を上げて驚いた。
「何だよわかんなかったのか??俺は分かってたぜ。最初からな・・・。」
レンはニヤついたドヤ顔で小さな村長を見ながら言った。
「ハハッ、お前だけには・・・なんでも無い。。」
お前だけには言われたくない。と言い終わる前にショウの鋭い視線を感じすぐさま言うのをやめた。
「い、いやでも、村長と言うから・・・もっとこう・・・な、なんでも無い。」
ユーキはどこかもどかしそうにそう言うと黙ってしまった。
「さて・・・」
小さな村長はそう言うと部屋の真ん中にある、ローテーブルの横にある椅子に腰掛けた。
「私はあなたに聞いたな。何の真似だ・・・と。」
「あぁ。」
ショウは静かに答えた。
「では改めて確認させていただこう。何の真似だ?」
小さな村長の静かに見透かす目は、とても嘘をつけるような状況にないことをはっきりと分からせた。
「私達は・・・」
ショウがつばを飲み込み、意を決したのが分かった。
「掟を破り、ソーン樹海へ向かっている。」
「なっ!??」
小さな村長は、それば大げさだろう、と思うような驚き方をした。
「お前たちは!またしても繰り返すのか!この短期間で2度も!!!!」
先程までの落ち着いた様子はなく目は血走り、肩は上下に大きく動いていた。
急な状況の変わりようにユーキはオロオロするだけだった。
「・・・!なるほど、そこにいる男は奴の息子か!蛙の子は蛙と言うことだな。」
レンの方を見て唾でも吐くようにそう言い放った。
「何・・・・?親父をバカにしてんのか!?」
静かにレンが怒る。
「あぁ、バカにするさ。バカにするとも!奴は我が父を誑かし、お前たち同様にソーン樹海へと向かった。そして父は、帰ってこなかった!!!」
最後の方は声が震えていた。
「それは・・・」
初めて知る事実。本当のことを言っているかは彼女の顔や声から分かった。レンは反論出来なかった。
「母はその後心労が祟ってか病気を患い死んだ。私がこの歳で村長をやっているのはそういうわけだ。・・・そしてショウ村長!!あなたはそのことを知っている!なぜ!なぜ繰り返すのだ!!」
村長は次にショウを見ながら言った。
「すまない・・・しかし・・・しかし!」
ショウは必死に謝る。
「しかしもカカシも無い!!!」
真っ赤な顔で目尻に溢れんばかりの涙を溜めた彼女が言った。
-あぁこの子は親が居ない可哀想な子だ。喋り方や村長という地位で取繕い、民のためにしっかりものでなければと言う意思に雁字搦めにされている。-
そう思うとレンもユーキも、そしてショウも、彼女の親が亡くなる原因に直接の関係はしていないものの、自分達がこれからやろうとしていることに罪悪感を感じ始めていた。
「この島にある村はこの村とあなたの村の2つ。決して交わることは許されない。その掟を破ることは許容しよう。」
彼女は両手で目をゴシゴシ拭うと、続けた。
「しかし。君たちがこれからやろうとしていることを知ったからには決して許そうとは思わない。そして行かせない。」
しばらく沈黙が続いた。
少し気まずいなぁとユーキが感じ始めた時、ショウが切り出した。
「・・・話はそれだけじゃない。何も贖罪のために、謝罪のためにこの村に寄ったわけではない。」
ユーキは内心ヒヤヒヤしていた。
「・・・!・・・なんだ?」
「ルア。君に・・・君に私達と同行していただきたい。」
どんどん赤くなる顔。やばいとユーキもレンも感じていた。
「舐めるなっっ!!!!!!!!!!!!!!!」
部屋中に声が響いた。魔法でも使っているのでは無いかというほどの声だった。
部屋の外で数人がざわつき、バタバタするのが聞こえた。
「何の真似だっ!!なぜそんなことが言えるんだ!意味がわからない!」
二度目は在るまじきとして、我慢していたのだろう。必死に顔を赤くして目に力を入れていたがついには泣き出してしまった。
「なんで・・・なんでそんなことが言えるんだ・・・」
小さな村長"ルア"はヘタリ込み、顔を両手で塞ぎながら大いに泣いた。
すると外から扉を大きく開けて人が入ってきた。
「何事かっっ!!」
叫びながら部屋に入ってきた男は、既に初老で髭や髪の毛はぼさつき、ところどころに白髪が混じっていた。
部屋に入るなり、ヘタリ込み泣き喚めくルアを見ると、鋭い目線をこちら側に向けた。
「お前達!ルア様に何をした!!」
そういうと、彼は何かを唱えた。すると、次の瞬間には3人まとめて縄で縛られていた。恐らく魔法を使ったのだろう。
「地下牢へと連れて行く!ジキ!ズキ!!客間に来い!!!」
初老の男がそう言うとジキとズキと思われる好青年、赤髪と青髪の短髪の若者が二人入ってきた。
「「はっ!!」」
「こいつらを地下牢へと連れて行くぞ。侵略者だ。」
「侵略者・・・ですか・・・?」
「そうだ。さぁ。さっさと・・・」
「ザキ!!待て・・・!」
いつの間にか泣き止んでいたルアは初老の男を呼び止めた。相変わらず顔は赤く、目は腫れていた。少し嗚咽が漏れていた。
ザキと呼ばれた初老の男はピタッと止まりルアに向け跪いた。
「何故・・・」
「五月蝿い。縄を解け。」
「しかし・・・!」
「解けっ!!」
瞬間3人を縛っていた縄が解かれた。
「ご無礼を・・・」
「いい。気にするな。・・・茶菓子を用意しろ。」
「い、今なんと・・・?」
「えぇい鬱陶しい。聞き返すな爺!茶菓子だ!ちゃ!が!し!」
そう聞くとそそくさと部屋を出ていく3人。
「すまない。泣いたのち、スッキリした。」
そう言うと服の乱れを直し、再度椅子に腰掛けた。しっかりと袖で涙を拭き気丈に振る舞った。
「さて。お前達はソーン樹海に行くという。私は行くなと言う。踏まえてあなた達は私に付いて来て欲しいと言う。」
「・・・」
ショウは静かに聞いていた。
「なぜ。ソーン樹海に行くのか。そして・・・なぜ私に付いて来てほしいのか。」
更にルアは続ける。
「以上を私に説明してほしい。加えて、もしソーン樹海に行きたいならば。私を連れていきたいのであれば、説得してみろ。あの時あの男が、ディズが、我が父、リアを連れて行ったときのように・・・。」
少しの間静寂が場を包んだ。
するとノックの音が聞こえた。ルアが入るように促すと、ザキが茶菓子とお茶を持って入ってきた。
「お持ちしました。」
そう言いながらザキは、ローテーブルに茶菓子とお茶を置いていった。その際に三人を強く睨みつけた。
「すまない。一旦休憩だ。オピャボボミヤブンベブベ。(お茶を飲み休んでくれ)」
ルアは既に茶菓子を口いっぱいに頬張り微笑んでいた。かろうじて何を言っているのかが分かった。
3人はそれぞれ椅子に座り目の前に在る茶菓子に手をつけた。
「あ、」
ユーキは自分がマスクを付けていることも忘れ茶菓子に手をつけようとしていた。
「そういえば甘いもの食べるの久しぶりだなぁ。」
そう言いながらマスクを外した瞬間。
「ボボベフッッッ!!!!!」
目の前に座るルアが盛大に吹いた。ユーキはルアの口から吹き出された茶菓子とお茶を頭からかぶってしまった。
「・・・なにを・・・」
しばらく状況がつかめなかったユーキ。
目の前の少女を見るとアワアワしている。
そして何かを呟いた。
「お、お兄ちゃん・・・・・?」
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一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
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あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
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