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第1章:禁断の森「ソーン樹海」

Ep10:「魔祖」「星の力」

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レンとユーキは徒歩でレンの自宅へと向かっていた。日はすでに暮れ始めていた。

「いやー昨日からいろいろ重なって凄い二日間だった。これからの方がもっと凄いことになりそうだ。」

レンは染み染みと言った。

「今更なんだが、レンが生まれてからこの島の外から人が来たことはないのか?」

「無いよ。でもこの島を出てから戻ってきた人はいるよ。今さっきもちょっと話が出てきたけどさ。俺の親父。自慢じゃないけど凄い人だ。」

-ディズ・・・だっけか-

「俺も正直あんまり覚えて無いんだけどさ。最後にこの島を出て行ってから音沙汰がないんだ。まだ俺が小さい頃だ。それなのにショウやガンさんは死んだって言うんだ。」

「なるほど。レンが小さい頃にこの島を出って行ってそれから帰ってきてないと。確かになんでそれだけで死んだって言えるんだろうな。」

レンが怒るのも無理はないなとユーキは感じていた。

「だろ?!まぁ昔から言われててもう慣れたというかなんというか。俺の中では自分の目で確かめるまではショウの言葉は信じないって決めてるんだ。だからこの島を出たいんだよ。」

「まぁわかるよ。この島であの小さい村にずっといたら気が狂いそうになるな。狭すぎる。・・・無神経ですまん。」

失礼なことを言ってしまったと後悔し謝罪した。

「別にいいよ!普通の人ならそう思うんだろ!」

大笑いしながらレンは答えた。

「でも村のみんなもなぜか掟に従うんだ。」

「んー。多分軽い洗脳見たいな感じだと思うけど。・・・無神経ですまん。」

またも失礼なことを言ってしまったと後悔し謝罪した。

「だから気にすんなって。俺もそう思うよ!」

レンの自宅への帰り道はとても賑やかな帰り道だった。

その日、レンは自宅で翌日の準備をし、ユーキは食事をした後寝床についた。

そして翌日。レン宅を出発し、村長宅へ向かった二人。

村長宅ではすでにショウが準備を終え待っていた。

「遅いな。二人とも。」

二人を見るなりそう言うショウ。

「遅いって・・・今6時だぞ。早いくらいだろ。」

これにはユーキも同意だった。レンの家は村から少し離れた箇所に在るため、朝は4時起きだった。

こんなに朝早く起きたのは部活の顧問に朝早くから走り込みをさせられた時以来だった。

「さて、村長就任の儀はすでに終わっている。早速向かおう。」

そういうとショウは荷物を持ち立ち上がった。

「ソーン樹海の範囲はそれほど大きくはないため、攻略自体は一日二日で終わるだろう。ただ樹海自体がここから遠い。約1週間程度歩く必要がある。」

1週間という言葉に驚きを隠せないユーキ。

「そ、そんなにかかるのか?ってことは・・・野宿?」

「ユーキ。当たり前だ。私たちがサポートするとはいえ、かなりきつい旅になるだろう。」

まじかと心の声が漏れ出るユーキ。

「また道中寄りたい箇所がある。なので樹海まで片道約2週間程度見たほうがいい。次にこの村に帰ってくるのは約1か月後だ。」

まじかと心の声が漏れ出るユーキ。とレン。

「寄りたいところってどこだ?」

レンが聞いた。

「ついてからのお楽しみだ。」

笑いながら話をはぐらかすショウ。

「ふざけるな!この旅は命がけなんだぞ!」

さらに笑うショウが続ける。

「お前ともあろうものが。緊張しているのか?ソーン樹海でそんなに緊張しているのか?この島から出ようとしたお前はどこに行った?」

「ぐぬぬ」

ぐうの音も出ないレン。

-ぐぬの音は出たな。-



その後、ショウは村民にを大筋を説明した。やはり皆、動揺を隠せないでいた。

「掟はどうなるんだ?」

40代くらいの農民が当たり強くショウに聞いた。

「掟のことは、すまない。村長という身であったにも関わらず破ることになる。しかしこの村のためと思い許してほしい。すまない。」

ショウは頭を深く下げ謝罪した。

深く頭を下げるショウに対して村民は口を閉ざした。

村民とガンに見送られ村を出た3人はソーン樹海への向かった。

もちろん道なんてあろうはずもなく道なき道を進んでいた。

「なんていうか。やっぱり村長だったんだな。ショウって。」

ふとユーキが切り出した。

「なんだ。いきなり。」

「いや、ショウより何歳も年上の村民はさ。ずっと掟を守ってきたんだろ。その親父さんも。その親父さんも。ずっと。
でもさ。頭を下げるだけで掟を破ったショウを、みんな仕方ないかって顔してたぞ。」

「・・・みんなには申し訳ないことをしたと思ってるし、感謝してる。みんなの反応には私が村長である事はあまり関係無いと思う。兄さんの存在も大きいと思っている。」

「兄さんは村長では無いものの、村人をよく観察し、有事の際にはすぐに駆け付け、相談なんかにも乗っていた。私なんかよりよっぽど村長だったのさ。その兄さんの説得もみんなが許してくれた理由の一つかな。」

「そんなもんなのか・・・俺ならもっと怒るけどな。。。あ、無神経ですまん。」

またもや失礼なことを言ってしまったと後悔し謝罪した。自分は無神経な奴なんだと自覚した。

「ハハッ。気にしないでいいよ。実際私でも同じ立場なら怒るだろうね。」

「後は・・・やっぱりユーキの事も大きいかな。島の外から人が来た事。リヴァイアサンが現れたこと。みんな不安にもなるだろう。」

「そうだよな・・・」

3人は歩きながら今回の事や、他愛もない話していた。日は落ち既に夜になっていた。

少し開けた場所で3人は腰を下ろした。

「もう遅い。今日はここで野宿をしよう。」

そういうとショウは火をおこし始めた。魔法で。

「当たり前に魔法を使うなぁ。」

「珍しいのかい?」

ショウは不思議そうにユーキに聞いた。

「珍しいも何も、俺がいた世界じゃ魔法なんてなかったよ。」

するとショウもレンも驚いた。

「魔法がないのか?そんな不便なことがあるのか!?」

レンが身を乗り出し聞いてきた。

「そんなに驚くの・・・?俺からしたら普通に魔法を使ってることのほうが驚きだけど。それこそ物語の中だけだよ。まぁこの世界じゃ魔法がないと不便なのか。」

あの世界には科学があったからそんなに不便ではなかったが魔法があればもっと変わった世界になっていたんだろうなぁとふと考えた。

「魔法はこの世界では当たり前だし全てだよ。いや魔法というより魔祖・・・か。」

ショウが言った。

「魔祖!よく話に出てきたけどなんなんだ?魔力の事なのか?」

「その話は明日だ。今日はもう夜だし、魔物が活発になる。すでに村の結界は通り過ぎた。気を付けなくては。この周りに簡単に結界を張ったから大丈夫だと思うが。今日は早めに体を休めてくれ。」

「魔物・・・。モンスターだよな。どんな奴がいるんだ。食われるのか?」

ユーキは震えた声で聴いた。

「その話も明日だ。さ、これを食べたら休んでくれ。見張りは私とレンでやろう。」

渡された携帯食を食べユーキは横になった。初めての野宿で最初は寝れなかったが、いつの間にか寝入っていた。



「ん・・・」

翌日空が白み始めた時間帯に鳥のさえずりでユーキは起きた。

「起きた?」

レンが聞いてきた。

「レンか。おはよう。ずっと起きてたの?」

反対側には木に寄り掛かり寝息を立てているショウが見えた。

「まさか。ショウと途中で交代したよ。」

「なるほど。ありがとう。役立たずだよな。俺。」

「あんまり悲観的になるなよ。星の力・・・ってのがどんな力か知らないけど。魔祖の事や魔法の事を何も知らないんだから当然だ。赤ちゃんが親に世話してもらうことぐらい当たり前だ。」

「なんか嫌だなその例え」

「さて、ショウを起こして進むか。」

そういうとレンはショウを起こした。そのまま軽い食事を済ませ3人は歩き始めた。

「さて、今日は魔祖や星の力について話しながら魔物を探そう。実戦形式で教えたいと思う。」

「い、いきなり魔物かよ!大丈夫?」

ユーキが聞いた。

「大丈夫。ほとんど害がないような魔物もいるんだ。そういう魔物を探す。」

3人は順調に道を進んでいく。

「さてユーキ。昨日の質問に答えよう。まずは魔祖について。」

「魔祖とは、この世の全てであり、全てのものを構成するエネルギーの事だ。」

「全てのもの?ってことは俺たち人間やそこの木なんかも魔祖から出来てるっていうのか?」

まさか。そんな訳・・・と心の声が漏れていた。

「そのまさかだ。全ての物は魔祖から出来ている。いや、んー少し語弊があるか。まず魔祖の特性を教えよう。例えば、人が死んだり物が朽ちたりした場合、魔祖は大地へと還る。そして新しい物へと生まれ変わるんだ。」

ピンとこない説明をされて不思議な顔をするユーキ。

「ここではそういうものと考えてくれ。深く考える必要はない。魔祖は生き物はもちろん、大地や草木に存在している。その草木を使い建てられた家も魔祖を持つ。実際には家の材料が魔祖を持っているだけだが。」

「んーなんとなく理解した、と思う。」

「けどただ持っている訳ではない。生まれ変わるといったが、生まれ変わる以前、この世界が誕生してから今に至るまで魔祖はあらゆる知識を溜め込んでいる。」

「知識?」

「そう知識。例えば歴史。例えば記憶。私たち人間はその殆どを知るすべもなく、魔祖は還り、また生まれる。けど一般的にはそう言われているんだ。私たちが使う魔法なんかも魔祖が持つ知識が影響しているといわれている。」

「なるほど・・・」

そろそろ頭から煙が出そうだと思い始めたユーキだった。

「素粒子などのあらゆる物質を構成する存在は魔祖の知識を使用して結びついていると言われている。つまり魔祖は物質を構成するすべてと言って過言でないと言うわけだ。」

頭が爆発した。(イメージです。)

「む、難しい。俺は体育会系なんだよ。しいて言うなら文系だ。そんな理系の知識を並べられても、、、、」

「まぁ先ほども言ったが、そこまで深く考える必要もない。要は魔祖はすべてのものにあると考えてもらえればいい。」

ショウはそのまま続けた。

「けどこの法則が、ユーキ、君やほかの星人はその限りでないらしい。」

「星の力ってやつか?」

「そう。星の力で体が構成されている。星の力が魔祖同様に知識を持っているかどうかまではこの本には書いてないけど、おそらく同じと思われる。」

今のところ自分の体に変化が無いためあまり実感が沸かないユーキ。

「こちらも深く考える必要はない。要は、魔祖と名前が違うだけでその他はほとんど同じということが分かればいい。」

「OK。じゃあ俺が星の力を持っているか確認するためにはどうすればいいの?」

するとショウは鞄から何かを取りだした。

「それにはこちらを使用して確認する。魔祖を図る際にも使われるものだ。」

ショウが手に持っているのは、何の変哲もない布だった。

「なんだその布切れ。」

かなりぼろい布だった。端々はすでに解れ、所々茶色いしみがあった。

「本来私たちは魔祖をある程度認識することができる。だからこの布はあまり使用しない。正確に測ることができるのでトラブルの種になった事もあったな。が、私達は星の力とやらは認識できない。レンが君に魔祖がないと感じたのはそのためだ。こちらを君にも使えるのではと考えて持ってきた。ちなみにこれはディズさんがソーン樹海から持って帰ってきたアーティファクト、"神器"の一つだ。」

横で小さく咳ばらいをするレンの声が聞こえた。

「神器!?これが?こんなぼろいどこにでもあるような布切れが?」

目の前にあるものと、イメージしていた神器に絶大なほど差があったユーキは驚きの声を上げた。

「そうだ。おそらくこれで測れると思う。実際に試してみよう。さぁこの布の端を持って。」

ユーキは手渡された布の少し汚れている端を片方の手で持った。

「そのままなんていうんだろうか。魔法を使うイメージ。。。といってもわからないか。体の中の力をその手に込めてみるんだ。」

ーあ、こいつ感覚で物を教えるタイプの人間だ。ー

以前、母校のためだ。と部活に教えに来たプロ選手のことを思い出していた。

しかしわからないでは話が進まない。とりあえずユーキは言われたとおりにやってみた。

すると・・・

「うおっ!」

手の中で布が大きく動くのが分かった。

布は見る見るうちに大きくなり上へ上へと広がっていく。

「なるほど。すごいな。」

大きくなるのが収まった頃には辺りは真っ暗になっていた。半径100M程度まで布は大きくなっていた。

「ありがとう。もう手を放していいぞ。」

そう言われユーキは布を手放した。すると布は見る見る間に小さくなり、元の大きさに戻った。

「かなりの大きさだ。久しぶりに見たよ。ここまでの大きさは。私の数倍はある。」

そう言われたユーキは頬を赤らめた。

「この布、"計反"と呼んでいるが、計反で図ったことがあるのは魔祖だけだから、正しい値とも言い切れないが。。。それは実践で確かめてみよう。」

しかしユーキは話を聞いていなかった。楽しんでいた。

-これはやはり異世界転生で最強になる前触れでは。-

ユーキはひとしきり優越感に浸った後、ふと気になったことを聞いてみた。

「ショウは俺の数分の一って言ってたけど。レンは??」

「俺??」

ふいに話を振られたレン。

「レンは特殊・・・でね。。。」

ショウが静かに言った。

「特殊・・・?」

ユーキが聞き返した。

「俺と比べないほうがいいよ。」

笑いながらそう言うレン。

「なんだよ。もったいぶるなよ。」

-どれだけ布が大きくなったのか。半径1Mくらいかな?寧ろ小さくなったとか?いかにも体育家系らしいな-

ユーキは思いっ切りからかってやろうとしていた。

「レンはね。魔祖お化けなんだ。ユーキの何倍か・・・わからない。」

「・・・へ?」

虚をつかれたように固まるユーキ。

「おそらくこの島を全て飲み込むほどの大きさだった。しかもまだ大きくなる途中だったな。」

「は、はぁ!?」

この島を飲み込む大きさ。端から端まで全速力で駆け抜けても3日程度。

-つまり?確かこいつ俺をおぶってかなりの早さだった。力もすごかった。

ウサインボルトの速さは時速45キロ程度。。。レンの全速力が仮に時速40とした場合、3日は24 x 3 で72時間。

72 x 40 で・・・2880キロ・・・日本とほぼ同じじゃないか!!-

ユーキは立ち止まり、手身近にあった木の棒で地面に計算式を書きながら考えていた。

-日本の大きさほどもある島にもびっくりだが・・・もはや大陸だと思うが・・・その大きさを覆うほど計反・・・。

くそ。俺が最強じゃないのか。。。-

打ちひしがれるユーキ。

「あんまり気にするなって。ほんとに特殊なんだ。俺って。でも魔法は全然得意じゃないし、あんまり魔祖の恩恵感じたことないぜ?」

慰めで言ってくれたのだろうが、ユーキからしてみれば慰めよりからかいに聞こえた。

「そ、そーなのか。フーン。すごいじゃん。」

必死に取り繕った。

一行は再び歩き始めた。

「魔祖お化けって。例えばディズさんとか、ガンさんはどーなんだ?」

ふとユーキは気になったことを聞いた。

「兄さんは魔祖は少ないほうだよ。4、5Mくらいかな。ディズさんは昔だからあんまり詳しくは覚えてないけど、たぶん俺と同じくらい。20M行かないくらいだね。」

「え?ディズさんってすごい人じゃないの?この島を出たり入ったりできる。」

「魔祖の量だけがその人の強さを表す訳じゃないんだよ。ディズさんは圧倒的な魔祖コントロールのセンスと体術がすごかった。一方・・・」

そういうとショウはレンの方を向きながら続けた。

「レンのように、ディズさんという偉大な人の血を受け継ぎながらも圧倒的に魔祖コントロールのセンスが無いやつだっているんだ。まぁ体術に関しては目を見張るものがあるが。」

「つまり、魔祖の量じゃなくて魔祖のコントロールだったり、後は使う魔法の属性やタイプの相性なんかもあるな。」

「属性やタイプってなんだ?」

「それについてはこいつらで試してみよう。」

一行は少し開けた場所に出た。そしてショウは目の前を指差していた。そこには何かがいた。

「うわっ」

目の前にいたのは大量の不思議な生き物たち。

「こいつらは低級モンスター。さぁ。実践だ。」
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