13 / 24
新しい暮らし(2)
しおりを挟む
店を開けるまでエメはパンを焼き、それをふたりは熱心に見ていた。
パンが焼きあがると香ばしい香りに尻尾が揺れるのはエメも同じだ。
「味見をしたい人!」
するとふたりは元気よく手を挙げてる。
「はい、火傷しないようにね」
焼き立てのパンはとても熱く紙に包んで手渡した。
息を吹きかけてハフハフといいながら食べると目を大きく見開いて互いに顔を合わせた。
「おいしぃ」
とろけるような笑みを浮かべるギーとルネが可愛くて口元が緩んだ。
ふたりから合格点を貰い棚に焼き立てのパンを並べる。
「いいにおいに包まれていて、幸せですぅ」
フンフンと鼻を鳴らすふたりにエメも一緒に匂いを嗅いで笑いあった。
「お客様がきたら元気よく『いらっしゃいませ』と声をかけてね」
「はい、頑張ります」
「頑張ります」
「袋はカウンターの下にサイズ順になっているから。パンは一つずつ紙の袋に入れてね。別の棚に小さいのがあるから」
「わかりました」
そろそろ店を開く時間だ。吊るし看板のクローズをオープンにするのに店のドアを開くと外には既に客の姿がある。
「いらっしゃいませ」
エメが声を掛けるとふたりも大きな声で挨拶をする。
その声に、店員さんが増えたのねと言われ、今日からよろしくお願いしますと声をかけた。
ギーとルネはたどたどしいながらも懸命だ。しかもパンの種類や値段がわからないとどちらかが棚へと向かい調べてくる。
はやく種類と値段を覚えたいからできるだけふたりで頑張ります、その言葉通りにしていた。
口を出すのは本当に困ったとき。そう決めてパンを作る方へと集中することにした。
いつもよりも余裕があるお陰でパンを多く作れそうだ。昼になる前に調理パンは売り切れになってしまうが肉を焼く時間もある。
パンを焼くのに集中できるのはミヒルが働いていた時以来だ。
北の小さな村からお兄と一緒に出てきたばかりで働く場所を探しているというので雇ったのだが、本当の目的は子供をさらうことだった。今は収監されている。
「元気かな、ミヒル」
リュンが面会に行った日に一緒にどうかと誘われていた。だけど会えなかった。その時は許すことができなかった。大切な店を悪事のために利用されたのだから。
彼のことを思い出すたびに苦しかった。誰かを雇うのがこわかった。だがライナーとふたりのお陰でそれも薄れつつあった。
パンが焼きあがると香ばしい香りに尻尾が揺れるのはエメも同じだ。
「味見をしたい人!」
するとふたりは元気よく手を挙げてる。
「はい、火傷しないようにね」
焼き立てのパンはとても熱く紙に包んで手渡した。
息を吹きかけてハフハフといいながら食べると目を大きく見開いて互いに顔を合わせた。
「おいしぃ」
とろけるような笑みを浮かべるギーとルネが可愛くて口元が緩んだ。
ふたりから合格点を貰い棚に焼き立てのパンを並べる。
「いいにおいに包まれていて、幸せですぅ」
フンフンと鼻を鳴らすふたりにエメも一緒に匂いを嗅いで笑いあった。
「お客様がきたら元気よく『いらっしゃいませ』と声をかけてね」
「はい、頑張ります」
「頑張ります」
「袋はカウンターの下にサイズ順になっているから。パンは一つずつ紙の袋に入れてね。別の棚に小さいのがあるから」
「わかりました」
そろそろ店を開く時間だ。吊るし看板のクローズをオープンにするのに店のドアを開くと外には既に客の姿がある。
「いらっしゃいませ」
エメが声を掛けるとふたりも大きな声で挨拶をする。
その声に、店員さんが増えたのねと言われ、今日からよろしくお願いしますと声をかけた。
ギーとルネはたどたどしいながらも懸命だ。しかもパンの種類や値段がわからないとどちらかが棚へと向かい調べてくる。
はやく種類と値段を覚えたいからできるだけふたりで頑張ります、その言葉通りにしていた。
口を出すのは本当に困ったとき。そう決めてパンを作る方へと集中することにした。
いつもよりも余裕があるお陰でパンを多く作れそうだ。昼になる前に調理パンは売り切れになってしまうが肉を焼く時間もある。
パンを焼くのに集中できるのはミヒルが働いていた時以来だ。
北の小さな村からお兄と一緒に出てきたばかりで働く場所を探しているというので雇ったのだが、本当の目的は子供をさらうことだった。今は収監されている。
「元気かな、ミヒル」
リュンが面会に行った日に一緒にどうかと誘われていた。だけど会えなかった。その時は許すことができなかった。大切な店を悪事のために利用されたのだから。
彼のことを思い出すたびに苦しかった。誰かを雇うのがこわかった。だがライナーとふたりのお陰でそれも薄れつつあった。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
獣人ハ恋シ家族ニナル
希紫瑠音
BL
ブレーズは獣人の国で服を作り売っている。そんな彼の元に友人のセドリックが子供の獣人を連れてきて新しい生活がはじまる。
都合よく話が進みます。
獣人(人の好い)×人の子(家事が得意で手先が器用)・子育て
ほのぼの・いちゃいちゃな展開で書いてはおりますが、悲しいシーンがそこそこあります。
※印はR18またはR15(ゆる~いのにもつけてます)
弱小魔術師はシンデレラになれるのか
桜羽根ねね
BL
王宮専属魔術師になるのが夢な、平民のリーベル。そんな彼は友人に巻き込まれて王宮の厨房で給仕をさせられる羽目になった。頻繁に行われている第一王子ディラザードのハーレム婚活パーティーで、毎日のように大忙し。そんな彼には、夜にだけ出会う秘密の友人が出来て──。
シンデレラと美女と野獣をモチーフに、こねこねしたなんちゃってファンタジーです。
【完結】ただの狼です?神の使いです??
野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい?
司祭×白狼(人間の姿になります)
神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。
全15話+おまけ+番外編
!地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください!
番外編更新中です。土日に更新します。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
神様のポイント稼ぎに利用された2
ゆめ
BL
女神様から便利なスキルセットを授かり異世界転生した僕。
あれから約一年、気付いたら一妻多夫の子沢山。
今日ものんびりライフを謳歌します。
※R指定なシーンや残酷な描写が発生しても予告はないです。
※他シリーズから主人公が出張してます、積極的に物語を引っかき回します。
別サイトにも掲載中
【R18】満たされぬ俺の番はイケメン獣人だった
佐伯亜美
BL
この世界は獣人と人間が共生している。
それ以外は現実と大きな違いがない世界の片隅で起きたラブストーリー。
その見た目から女性に不自由することのない人生を歩んできた俺は、今日も満たされぬ心を埋めようと行きずりの恋に身を投じていた。
その帰り道、今月から部下となったイケメン狼族のシモンと出会う。
「なんで……嘘つくんですか?」
今まで誰にも話したことの無い俺の秘密を見透かしたように言うシモンと、俺は身体を重ねることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる