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一緒に朝ご飯(2)
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「こうやって若いのを構うから鬱陶しいがられてしまうんだな」
その言葉にスープを皿によそう手がとまった。それは自分以外にもしたということか。
「え、ライナー先生、誰かにやったの?」
揺れていた尻尾の動きが止まる。
「ん、まぁ、な」
すぐに思い浮かんだのはニコラだった。可愛い人の子だったから構いたくなるに違いない。
「そう。ライナー先生、俺はいいけれど他の子は駄目だよ。勘違いしちゃうから」
声が震えそうになりながらもなんとか言えた。
「そうだな。俺も嫌われたくはないから気を付けるよ」
その答えはさらにエメを傷つけた。
「うん、それがいいよ」
スープをよそいライナーの前へと置くと、
「ライナー先生、俺、朝食はいいや」
エプロンをはずして椅子に掛けた。
「エメ」
ライナーの手が腕をつかむ。こんな気持ちで一緒に食事は無理だ。そう思っていたのに、
「一緒に食べたいんだ」
そんなふうに言われたら気持ちが揺らぐ。
「美味しいものはエメと一緒がいい」
さらに追い打ちをかけられて、エメの心は簡単に傾いた。
そんなふうに言われたら嬉しい。それでも突っぱねる真似などエメにはできなかった。
「わかった。一緒に食べよう」
と口にしていた。
皿をとり自分の分をよそうと椅子に腰を下ろす。
「頂きます」
ふたりそろって手を合わせてスープを一口。野菜と肉が柔らかく、出汁がスープに溶け込んでいる。
「美味いな」
「うん。少し味が濃くなったからパンを浸して食べるといいよ」
「そうしよう」
パンをつけて食べると最高に美味しい。
「耳がピコピコと動いていいるぞ」
そう言われてエメは恥ずかしくて耳を抑えると、
「だが、そうなるくらい美味い」
ライナーは自分の耳をつまんで動かした。
「ふふ、一緒」
優しい目をして見ている。
温かくて幸せな時間に胸が切なくなりキューンと喉が鳴った。
「こら、そんなに可愛い顔をしていると撫でまわすぞ」
「うん、せんせいになでられるのすき……」
うっとりとライナーを見つめていたら鼻先に痛みが走り、
「きゃうんっ」
どうして指ではじかれたのかわからずに両手で押さえる。
「なんで」
「ボーとしているからスープが垂れているぞ」
と指さす場所へと目をやれば確かに汚れていた。
「わっ、拭くものっ」
椅子から立ち上がりキッチンへと向かう。そして布巾を探しながら息を吐いた。
惚けていた。ずっとこのままでいたいと思っていたのだ。このままではライナーと離れるなんて無理だ。
「俺が番になる、ていうのもありなのかな」
だが子ども扱いされているのだから相手にされるはずがない。
「はぁ、悩ましいっ」
頭を抱えてしゃがみこむと、
「エメ、どうした?」
心配そうな顔をしてライナーがキッチンへとやってきた。
「なんでもないよっ。ついでにおかわりしようか悩んでたの」
正直に言えるわけもなく、子供っぽい理由を答えてしまった。
「そうか。お替りはお皿に残った分を食べてからな」
これだからいつまでたっても大人の雄には見られないのだろう。
「そうだね」
共に席へと戻り食事を再開し、おかわりもしっかりと頂き片づけをする。
「ライナー先生、行くね」
「あぁ。また昼に」
ライナーと別れて部屋に戻るとそのまま座り込んだ。
自分だって番になれるのだと意識してしまいそれでいっぱいになっていた。
「どうしてそんなことを思っちゃったかなぁ、俺」
番となるのは自分のような子供ではなく歳の近い人がなるのだろうと思っていたからだ。
「そうだ。自分など相手にされるはずなんてない」
何を考えていたのだろうと一気に熱が冷めた。
それ以上を求めるなんて厚かましい。傍にいることを許してくれたからそれに甘えすぎたのだ。少しずつでも距離を置くことを考えた方がいいだろう。
その言葉にスープを皿によそう手がとまった。それは自分以外にもしたということか。
「え、ライナー先生、誰かにやったの?」
揺れていた尻尾の動きが止まる。
「ん、まぁ、な」
すぐに思い浮かんだのはニコラだった。可愛い人の子だったから構いたくなるに違いない。
「そう。ライナー先生、俺はいいけれど他の子は駄目だよ。勘違いしちゃうから」
声が震えそうになりながらもなんとか言えた。
「そうだな。俺も嫌われたくはないから気を付けるよ」
その答えはさらにエメを傷つけた。
「うん、それがいいよ」
スープをよそいライナーの前へと置くと、
「ライナー先生、俺、朝食はいいや」
エプロンをはずして椅子に掛けた。
「エメ」
ライナーの手が腕をつかむ。こんな気持ちで一緒に食事は無理だ。そう思っていたのに、
「一緒に食べたいんだ」
そんなふうに言われたら気持ちが揺らぐ。
「美味しいものはエメと一緒がいい」
さらに追い打ちをかけられて、エメの心は簡単に傾いた。
そんなふうに言われたら嬉しい。それでも突っぱねる真似などエメにはできなかった。
「わかった。一緒に食べよう」
と口にしていた。
皿をとり自分の分をよそうと椅子に腰を下ろす。
「頂きます」
ふたりそろって手を合わせてスープを一口。野菜と肉が柔らかく、出汁がスープに溶け込んでいる。
「美味いな」
「うん。少し味が濃くなったからパンを浸して食べるといいよ」
「そうしよう」
パンをつけて食べると最高に美味しい。
「耳がピコピコと動いていいるぞ」
そう言われてエメは恥ずかしくて耳を抑えると、
「だが、そうなるくらい美味い」
ライナーは自分の耳をつまんで動かした。
「ふふ、一緒」
優しい目をして見ている。
温かくて幸せな時間に胸が切なくなりキューンと喉が鳴った。
「こら、そんなに可愛い顔をしていると撫でまわすぞ」
「うん、せんせいになでられるのすき……」
うっとりとライナーを見つめていたら鼻先に痛みが走り、
「きゃうんっ」
どうして指ではじかれたのかわからずに両手で押さえる。
「なんで」
「ボーとしているからスープが垂れているぞ」
と指さす場所へと目をやれば確かに汚れていた。
「わっ、拭くものっ」
椅子から立ち上がりキッチンへと向かう。そして布巾を探しながら息を吐いた。
惚けていた。ずっとこのままでいたいと思っていたのだ。このままではライナーと離れるなんて無理だ。
「俺が番になる、ていうのもありなのかな」
だが子ども扱いされているのだから相手にされるはずがない。
「はぁ、悩ましいっ」
頭を抱えてしゃがみこむと、
「エメ、どうした?」
心配そうな顔をしてライナーがキッチンへとやってきた。
「なんでもないよっ。ついでにおかわりしようか悩んでたの」
正直に言えるわけもなく、子供っぽい理由を答えてしまった。
「そうか。お替りはお皿に残った分を食べてからな」
これだからいつまでたっても大人の雄には見られないのだろう。
「そうだね」
共に席へと戻り食事を再開し、おかわりもしっかりと頂き片づけをする。
「ライナー先生、行くね」
「あぁ。また昼に」
ライナーと別れて部屋に戻るとそのまま座り込んだ。
自分だって番になれるのだと意識してしまいそれでいっぱいになっていた。
「どうしてそんなことを思っちゃったかなぁ、俺」
番となるのは自分のような子供ではなく歳の近い人がなるのだろうと思っていたからだ。
「そうだ。自分など相手にされるはずなんてない」
何を考えていたのだろうと一気に熱が冷めた。
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