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幼馴染(2)
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ジェラールに連れられて向かうのはなじみの店だ。席につくと食事の注文を済ませて理由を尋ねた。
「それで」
「診療所に新しい看護師が入ったそうだ」
「えっ、お昼休みに行ったときにライナー先生は何も言っていなかったし看護師さんも見なかったよ」
もしそうだとしたらこれから診療所で働くのだから黙っている必要はない。
胸がもやっとしエメは胸に拳を当てた。
「そうなのか。俺は見たぞ。人の子だった」
「そう、なんだ」
ライナーと同じ種別。それだけで胸のもやもやが膨らんでくる。
「同じ人の子だし、楽しそうだったなライナー先生」
春が来たかと付け加えた。ジェラールには悪気はない。ただ鈍いだけだ。エメの心が痛むとわかっていない。
すぐに話題は別のことにかわり、エメはライナーとまだ知らぬ人の子のことを頭の中から追い払うように、
「ジェラール、今日はとことん飲もう!」
と彼の肩へと腕を回した。
「お、珍しいな。よし、飲もう!!」
すぐにそれにのってきて、エメはいつもよりも早いペースで酒を空けていった。
酒も入り陽気な気分でアパルトメントへと向かう。
「エメ、危ないぞ」
「だいじょうぶ」
だが足はいうことをきかずによろめいた。
「おいおい、言っているそばから……」
腰に腕を回し体を支えてくれる。自分よりも背が高く体格も良い。見つめているとジェラールの口角が上がった。
「何、見惚れてんの?」
「ふ、見慣れた顔だなって」
ケタケタと笑い声をあげるとジェラールの耳が垂れた。
「なんだよ、かっこよくなったと思ってたのにな」
ルルス系の黒い縞模様がかっこいい雄なのだがエメと同じく番がいない。もてるのに鈍いから気が付かず、上手くいかないのだろう。
「ジェラールはさ、もう少し他の人の目を気にした方がいいよ」
「はっ、そういうお前もだろうが」
そう言い返されて、いつもなら余計なお世話と言うところだが、今日はそうだよねといって笑う。
「酔ったお前は素直だなぁ」
「ん?」
ジェラールから離れて再びふらふらと歩き出すと何かにぶつかりそして抱きしめられた。
「あ、ライナー先生の匂いだ」
すんすんと鼻をならすと頭を撫でられた。
「エメ、随分と飲んだみたいだな」
「えへへ」
「楽しい酒だったようだな。ジェラールありがとう」
抱きしめて頭を撫でてくれてくれる。それが気持ちよくてグルルルと喉が鳴る。
「いや、久々に飲めて楽しかった。後のことはライナー先生に任せるから。それじゃなエメ」
「うん、またね」
ジェラールに手を振り、ふらふらとした足取りで歩き始めるとライナーがエメの腕をとり肩へと回した。
「せんせぇ、新しい看護師さんが入ったって聞いたよぉ」
「明日から来る予定だったのだが、夕方ごろ挨拶に来たんだ。それで歓迎会をすることになってな」
「そっかぁ、あした会えるね」
「ああ。エメと同じくらいの歳の子だ。仲良くしてやってくれ」
ライナーは優しい人の子だから彼のことが心配なのだろう。
「わかった」
その頼みともなれば力になりたい。だが、心の奥で何かがつっかえたままであった。
「それで」
「診療所に新しい看護師が入ったそうだ」
「えっ、お昼休みに行ったときにライナー先生は何も言っていなかったし看護師さんも見なかったよ」
もしそうだとしたらこれから診療所で働くのだから黙っている必要はない。
胸がもやっとしエメは胸に拳を当てた。
「そうなのか。俺は見たぞ。人の子だった」
「そう、なんだ」
ライナーと同じ種別。それだけで胸のもやもやが膨らんでくる。
「同じ人の子だし、楽しそうだったなライナー先生」
春が来たかと付け加えた。ジェラールには悪気はない。ただ鈍いだけだ。エメの心が痛むとわかっていない。
すぐに話題は別のことにかわり、エメはライナーとまだ知らぬ人の子のことを頭の中から追い払うように、
「ジェラール、今日はとことん飲もう!」
と彼の肩へと腕を回した。
「お、珍しいな。よし、飲もう!!」
すぐにそれにのってきて、エメはいつもよりも早いペースで酒を空けていった。
酒も入り陽気な気分でアパルトメントへと向かう。
「エメ、危ないぞ」
「だいじょうぶ」
だが足はいうことをきかずによろめいた。
「おいおい、言っているそばから……」
腰に腕を回し体を支えてくれる。自分よりも背が高く体格も良い。見つめているとジェラールの口角が上がった。
「何、見惚れてんの?」
「ふ、見慣れた顔だなって」
ケタケタと笑い声をあげるとジェラールの耳が垂れた。
「なんだよ、かっこよくなったと思ってたのにな」
ルルス系の黒い縞模様がかっこいい雄なのだがエメと同じく番がいない。もてるのに鈍いから気が付かず、上手くいかないのだろう。
「ジェラールはさ、もう少し他の人の目を気にした方がいいよ」
「はっ、そういうお前もだろうが」
そう言い返されて、いつもなら余計なお世話と言うところだが、今日はそうだよねといって笑う。
「酔ったお前は素直だなぁ」
「ん?」
ジェラールから離れて再びふらふらと歩き出すと何かにぶつかりそして抱きしめられた。
「あ、ライナー先生の匂いだ」
すんすんと鼻をならすと頭を撫でられた。
「エメ、随分と飲んだみたいだな」
「えへへ」
「楽しい酒だったようだな。ジェラールありがとう」
抱きしめて頭を撫でてくれてくれる。それが気持ちよくてグルルルと喉が鳴る。
「いや、久々に飲めて楽しかった。後のことはライナー先生に任せるから。それじゃなエメ」
「うん、またね」
ジェラールに手を振り、ふらふらとした足取りで歩き始めるとライナーがエメの腕をとり肩へと回した。
「せんせぇ、新しい看護師さんが入ったって聞いたよぉ」
「明日から来る予定だったのだが、夕方ごろ挨拶に来たんだ。それで歓迎会をすることになってな」
「そっかぁ、あした会えるね」
「ああ。エメと同じくらいの歳の子だ。仲良くしてやってくれ」
ライナーは優しい人の子だから彼のことが心配なのだろう。
「わかった」
その頼みともなれば力になりたい。だが、心の奥で何かがつっかえたままであった。
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<獣人、恋慕ノ情ヲ抱ク>シリーズ
◇獣人ハ恋ヲスル
・獣人剣士(家事が得意)×少年剣士(火傷があり、コンプレックスに)【R18】
◇獣人ハ恋焦ガレル
・人の子と獣人の友情。互いに好きな人ができて恋をする。
・獣人(騎士・料理上手)×人の子(獣人ラブな薬師)【R18】
◇獣人ハ恋シ家族ニナル
・獣人(人の好い)×人の子(家事が得意で手先が器用)・子育て【R18】
◇獣人ハ恋ヲスル
・獣人剣士(家事が得意)×少年剣士(火傷があり、コンプレックスに)【R18】
◇獣人ハ恋焦ガレル
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・獣人(騎士・料理上手)×人の子(獣人ラブな薬師)【R18】
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