甘える君は可愛い

希紫瑠音

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年下ワンコはご主人様が好き

12・久世

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「違うよね。波多君が三木本君と仲良さげなのが嫌だったんだよね」

 よしよしと頭を撫でられ、久世は甘える様に八潮に抱きつく。

「はい。波多さんと俺は相思そう――、むぐ」
「変な事を口走るな、バカ犬」
「良いじゃないの。二人はそういう関係なんでしょう?」

 そういう関係とは恋人同士という事。久世はそうなんだと頷きかけ、波多はぽかんと口を開けてかたまっていた。

「波多さん?」
「話は後にして、八潮課長は手を洗ってエプロンしてください」

 明らかに話をそらして睨まれる。そして、波多の背中を叩いて我に返す。

「ほら、米の炊き方からだろ。波多、教えてやれ。八潮課長もちゃんと見ていてくださいね」
「あ、あぁ。すまん。久世、来い」

 ぎゅっと耳を掴まれて、

「後でゆっくり、教えてもらうからな」

 と、耳をひっちぎるように指が離れた。

 一合で茶碗二杯分くらいの量なので、今回は2合炊くことになった。

「内釜に目盛があるだろ、二合だから2の所まで水をいれろ」
「はい。これで良いですか」
「あぁ。後はセットして炊飯を始めればいいだけだ。次はジャガイモの皮むきな。ピーラーを使えば簡単だから」

 と皮をむいて見せてくれる。

「なんか楽しそうですね」
「ほら、やってみ。八潮課長も見てるだけでなくやってください」

 ピーラーを握りしめたままで見ているだけの八潮に声を掛ける。

「いやぁ、ついね、三木本君の見事な包丁さばきに目がね……」

 ハンバーグを作るために玉ねぎをみじん切りしていた三木本が、目を細めてこちらを睨む。

「うわぁ、三木本君、睨まないで」

 ちゃんとやるからと、付け合せに使う人参の皮むきを始めた。

 本当は照れているだけだと、波多が耳打ちしてくる。

「波多さんは三木本さんの事を良くわかってますね」

 妬けます、と、そう波多に耳打ちを返した。

「馬鹿なこと言ってないで、お前も手ぇ動かせ」
「はい」

 ごつごつとしたジャガイモの皮を剥くのは意外と難しく、どうにか一つだけ剥き終える。

「波多さん、出来ましたよ!!」

 上手に出来たでしょうと波多に見せれば、ふっと鼻で笑われた。

「ま、その調子で、あと一つ剥いちゃいな」

 波多はコンソメのスープを作り、三木本は手際よくハンバーグの形成を終えてフライパンで焼き始めている。

「人参、剥き終えたよ」
「俺もジャガイモの皮、剥き終えました」
「はい。次はジャガイモはくし切り、人参はシャトー切りにします。まずは人参から。適度な大きさにカットしていきます。で、形を整えていきます」

 ゆっくりと形を整えながらカットしていく。レストランとかで見る付け合せと同じ形になった。

「すごいねぇ、ワンコちゃん」
「はい!」
「で、水をひたひたに入れて、バター、砂糖、塩を加えて煮ます」

 人参が煮えるまでの間、ジャガイモはレンジで加熱してからバターで焼く。

「焦げ目がついたら言えよ」
「はい」
「三木本、ハンバーグは俺が見ているから、八潮課長とテーブルのセッティングな」
「わかった。課長、こちらに来てもらえますか」
「はぁい」

 楽しそうに返事をして三木本の元へと向かう。

「波多さん、やりますねぇ」
「まぁな。三木本も八潮課長も楽しそうでよかったよ」

 そういう波多自身も楽しそうだ。

「よし、ハンバーグはもういいな。人参の方はあと少しで、ジャガイモの方は?」
「どうでしょう?」
「まぁ、これくらいで良いか。よし、盛り付けな」

 皿の上にハンバーグ、付け合せのジャガイモを置き、最後に人参を並べた。

「あれ、ハンバーグのソースは?」
「お前が作るんだよ。ハンバーグを焼いたフライパンにケチャップとソース、後は赤ワインを入れて混ぜる」

 波多の指示通りにフライパンの中へと入れて火を通す。

「わぁ、こんなに簡単に出来るんですね」
「お前、本当に何も知らないんだな」

 ふぅ、と、ため息をつき、

「出来上がったソースをハンバーグにかけて完成だ」

 ハンバーグの上にソースをかけ、テーブルまで運ぶ。

「上手に出来たね」

 と八潮が頭を撫でてくれ、三木本に席に着けと波多と並んで座る。

「課長、お酒を飲まれます?」
「うんん。今日はやめておくよ」

 暖かいうちに食べたいからねとハンバーグを指さし、

「では、ご飯をよそってきますね」

 と炊飯器へとむかい、白米をよそう。

 久世がはじめて炊いた米。いつもよりも美味そうに見えてくる。

「久世君、嬉しそうだねぇ」
「こいつ、自分で米を炊いたもんだから、うまくできて喜んじゃっているんですよ」

 出来て当たり前。そう、こつんと額を叩かれる。

「でも、俺、何にも知らないから」

 大したことをしてなくても、出来たという事がすごく嬉しいのだ。

「久世は小さな子供みたいな」

 そう三木本に言われ、その通りだと波多が頷き、八潮が微笑む。

「酷いです」

 唇を尖らせながら三人を見れば、そう言う所がガキっぽいと笑われた。
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