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はじまりの場所
生徒会室にて(2)
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放課後、俺のクラスはいつも以上にざわついていた。
そう、出入り口に立つ男の存在にだ。
「吾妻」
俺が気軽に名前を呼べば、ざわついていた教室が一気に静まりかえる。
そんな状況に俺は呆れながら、帰ろうと吾妻の背中を叩いて促せば、ウッスと返事をし頭を下げる。
俺が教室から出た途端、再びざわめきはじめた。
以前は吾妻から呼び出されたのだが、今回はわざわざ教室に迎えに来ているのだから余計に気になるのだろう。
いまからどんな噂をされるのやら。
ぼんやりとそんなことを考えていたら吾妻が心配そうに俺を見ていて、俺は平気だよとばかりに吾妻の髪を撫でた。
すると廊下で俺達を見ていた生徒達が、見てはいけないものを見てしまったとばかりに目を反らし始める。
まぁ、予想はしていた反応だけど、なんか気に入らない。俺はただ、後輩を可愛がっているだけなのに。
「おい、優」
こそこそと話す吾妻に、
「皆、大げさだね」
いらつきながら吾妻の腕をつかむと引っ張りながら廊下を歩く。
そんな俺に対して吾妻は何もいわずにされるがまま状態で。やっと気持ちが落ち着いてきた頃、吾妻と俺の腕が離れた。
「優は優しいのな」
照れくさそうに俺を見る吾妻に、一瞬、何を言われているのか解らなかった。
「あいつらの反応に対してイラついていたんだろ?」
そう言われて、一気に熱が上がる。
「別に、そんなんじゃ」
「こんな俺を思いやってくれて嬉しい。好きだ」
ニカっと笑う吾妻に、胸がドクンと飛び跳ねる。
あぁ、なんて可愛いんだ、お前は。
「さっきの奴等に見せてやりたいよ」
そうしたら怖いなんて言わなくなる。
「あ? 何を見せんだよ」
何のことだか解ってない吾妻は、すぐにいつもの目つきの悪い怖い顔となる。
「うんん、なんでもない」
きっとあの顔は俺だから見せるんだ。そう思うと優越感で顔がにやける。
「優、なんか、キモいんだけど」
そう呟かれて、俺は煩いと吾妻の胸をかるく拳で叩いた。
役割を分担する。
そう言われ、真一が口にしたのは、
「しばらくの間、昼と帰りは吾妻と行動しろ」
だった。
だった。しかも、吾妻に教室に迎えに来るようにという指示を出す。
「教室に、か?」
「吾妻と知り合いだとわかれば下手に手出しをしてこないだろう」
確かに吾妻が居れば手出ししてこないだろうな。
だから俺はすぐにその提案を受けれたのだが、吾妻は何か躊躇う素振りをみせる。素直にその提案を受け入れてくれると思っていたのに。
だが、すぐにその理由を知る。
「俺は凄く嬉しいけれどよ、そんなことしたら優に迷惑が掛かんだぞ?」
怖がられてもいいのかよと、心配そうに俺を見る。
あぁ、だからあんな顔を見せたのか。
逆に迷惑を掛けているのは俺だというのに、なんて優しいんだろう。
その気持ちが嬉しくて、俺は手を伸ばして吾妻の頬に触れた。
「周りになんて思われ様が気にしないよ、俺は」
だから心配しないでと、そう気持ちを込めて頬を撫でれば、
「優っ!」
吾妻は皆が居る前で俺を抱き締めてきて、思わず声をあげてしまった俺に、何をしているんだと川上君に後頭部を叩かれていた。
まぁ、そんなやり取りがあり、冗談で吾妻に舎弟のふりでもするかと言ったら、その意見が通りこうなった訳だ。
そう、出入り口に立つ男の存在にだ。
「吾妻」
俺が気軽に名前を呼べば、ざわついていた教室が一気に静まりかえる。
そんな状況に俺は呆れながら、帰ろうと吾妻の背中を叩いて促せば、ウッスと返事をし頭を下げる。
俺が教室から出た途端、再びざわめきはじめた。
以前は吾妻から呼び出されたのだが、今回はわざわざ教室に迎えに来ているのだから余計に気になるのだろう。
いまからどんな噂をされるのやら。
ぼんやりとそんなことを考えていたら吾妻が心配そうに俺を見ていて、俺は平気だよとばかりに吾妻の髪を撫でた。
すると廊下で俺達を見ていた生徒達が、見てはいけないものを見てしまったとばかりに目を反らし始める。
まぁ、予想はしていた反応だけど、なんか気に入らない。俺はただ、後輩を可愛がっているだけなのに。
「おい、優」
こそこそと話す吾妻に、
「皆、大げさだね」
いらつきながら吾妻の腕をつかむと引っ張りながら廊下を歩く。
そんな俺に対して吾妻は何もいわずにされるがまま状態で。やっと気持ちが落ち着いてきた頃、吾妻と俺の腕が離れた。
「優は優しいのな」
照れくさそうに俺を見る吾妻に、一瞬、何を言われているのか解らなかった。
「あいつらの反応に対してイラついていたんだろ?」
そう言われて、一気に熱が上がる。
「別に、そんなんじゃ」
「こんな俺を思いやってくれて嬉しい。好きだ」
ニカっと笑う吾妻に、胸がドクンと飛び跳ねる。
あぁ、なんて可愛いんだ、お前は。
「さっきの奴等に見せてやりたいよ」
そうしたら怖いなんて言わなくなる。
「あ? 何を見せんだよ」
何のことだか解ってない吾妻は、すぐにいつもの目つきの悪い怖い顔となる。
「うんん、なんでもない」
きっとあの顔は俺だから見せるんだ。そう思うと優越感で顔がにやける。
「優、なんか、キモいんだけど」
そう呟かれて、俺は煩いと吾妻の胸をかるく拳で叩いた。
役割を分担する。
そう言われ、真一が口にしたのは、
「しばらくの間、昼と帰りは吾妻と行動しろ」
だった。
だった。しかも、吾妻に教室に迎えに来るようにという指示を出す。
「教室に、か?」
「吾妻と知り合いだとわかれば下手に手出しをしてこないだろう」
確かに吾妻が居れば手出ししてこないだろうな。
だから俺はすぐにその提案を受けれたのだが、吾妻は何か躊躇う素振りをみせる。素直にその提案を受け入れてくれると思っていたのに。
だが、すぐにその理由を知る。
「俺は凄く嬉しいけれどよ、そんなことしたら優に迷惑が掛かんだぞ?」
怖がられてもいいのかよと、心配そうに俺を見る。
あぁ、だからあんな顔を見せたのか。
逆に迷惑を掛けているのは俺だというのに、なんて優しいんだろう。
その気持ちが嬉しくて、俺は手を伸ばして吾妻の頬に触れた。
「周りになんて思われ様が気にしないよ、俺は」
だから心配しないでと、そう気持ちを込めて頬を撫でれば、
「優っ!」
吾妻は皆が居る前で俺を抱き締めてきて、思わず声をあげてしまった俺に、何をしているんだと川上君に後頭部を叩かれていた。
まぁ、そんなやり取りがあり、冗談で吾妻に舎弟のふりでもするかと言ったら、その意見が通りこうなった訳だ。
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