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希紫瑠音

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友達になろう

遊びに行こうか(川上)1

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 試験からやっと解放された生徒たちは、休日の話でもちきりだ。

 尚明の休日の予定は今まで試験勉強の為に読むのをやめていた本の続きを読むことだった。

 それが尚明の細やかな楽しみであって、徹夜をして本を読もうと思っていた。

 携帯電話と本をベッドの上に置いて壁に寄りかかる。

 さて、物語の世界に入り込もうかとページを開いた、その時。メールが届いた事を知らせる着信音が鳴る。

 アドレス帳は結構うまっているが、実際に連絡をしてくる者は少なく。メールの殆どは唯一、友と言える人物である勇人からだ。

 だからその送り主の名前を見て尚明は驚いた。

「え、小崎先輩? ど、どうして!!」

 相手は三年の小崎桂司(おざきけいじ)。

 生徒会の手伝いで一年がの連絡先を交換し合ったのはつい最近であり、連絡先を教えてと言われたのは勇人のついでだろうと思っていた。

 なのでまさか自分宛てに彼からメールが送られてくるなんて思っても見なかったのだ。

 震える指でそのメールを開けば、いきなりメールしてごめんとあり、試験も終わったことだし遊ばないかと書いてあった。

 まさか自分の事を遊びに誘ってくれるとは思っておらず、もしかしたら勇人と送り先を間違えてしまったのではないかと何度もメールの内容を確認してしまった。

「ど、どうしよう。そうだ、返事」

 ベッドの上で携帯電話を握りしめながらあたふたとする。

 文章がうまくまとまらなくて結局は「行きます」とたったそれだけの短い返事しか送れなかった。

 メールはすぐに返ってきて、「明日の十時、駅前で」と書いてあった。






 待ち合わせの場所に向かうと既に桂司の姿があり、尚明は遅れてすみませんと駆け寄る。

「俺も今来たところだしな。じゃぁ行こうか」
「何処へ行くんですか?」

 遊ぶ約束はしていたがどこへ行くかは決めていなかった。

「ん? まぁ、一先ずついてきてよ」

 と促され電車で二駅ほど行き、それからバスに揺られる事20分。

 着いた先はプラネタリウムのある科学館だった。

「科学館! それもプラネタリウムもあるんですね」
「ナオは遊園地とかよりこういう所の方が好きかと思って」
「はい、好きです」

 自分の好みそうな所を選んでくれたことが嬉しいし、桂司と一緒に展示物を見るのも楽しみだ。

「ここで待ってろ」

 というと桂司が尚明の頭を撫でてチケット売り場で入場券を購入して戻ってくる。

「さ、いこうか」

 尚明を促して入場口へと向かう桂司に、財布を取り出して代金を尋ねる。

「いらないよ。誘ったのは俺だし」

 だから気にするなとチケットを手渡される。

「でもっ」
「良いから、奢られなさいって」

 それでも財布を開こうとする尚明を制するように手で押さえられ、行くよと順路と矢印が指す方へと歩いていく。

 一先ず財布をしまい、ありがとうございますと桂司へ言うと、隣に並んで展示物を眺める。

 科学館の中は家族連れやらカップルが多く、楽しそうに展示物を見たり体験コーナーで楽しんでいた。

「ここをデートで選ぶのってプラネタリウムがあるからですかね」

 普段ならそんな事を想わないのに桂司といるせいか、ついそんな言葉が口に出る。

「そうだろうな」

 屈みこんで尚明と視線を合わせる桂司の、その意味ありげに微笑む姿に胸が高鳴る。

 もしかして、デートのつもりなのだろうか。だが、そんなつもりはないだろうとすぐさま思いを否定する。ここを選んだのは尚明の事を考えての事だろう。

「ナオ、行くぞ」

 ぽんと背中を軽く叩かれ我に返れば、桂司は既に何歩か前を歩いていて、尚明は彼の広い背中を追いかけた。





 プラネタリウムの上演時間がそろそろだからと移動する。

「そういえば、プラネタリウムに来るのは小学生の時以来だ」

 町内会の遠足でここに来たのだと言う。

「プラネタリウムに行くのは初めてでな。木邑きょうだいと久遠がはしゃいじゃって」

 目を離していられなくて真一と二人で大変だったよと思いだし笑いをする桂司だ。

「皆さん、仲が良いですよね」
「あぁ。あいつ等、俺のことを兄のように慕ってくれるからな」

 可愛いんだよと目を細める桂司。その思いが伝わってくるかのようで微笑ましい気持ちとなる。

「それに甘えられると弱いんだよ、俺」
「そう、なんですか」

 だからだろう。甘える下級生に優しく接する桂司をよく見かけるのは。

(きっと俺は小崎先輩にとって可愛くない後輩だろうな)

 自分には決して無理だ。第一、甘え方なんて解らない。

「お、そろそろ始まるようだな」

 気持ちが暗くなりかけた所にタイミングよく映像が始まる。

 美しい星々の映像に尚明はすぐに夢中になって眺めていた。

 暫くしてそっと桂司へ視線を向ければ、映像を見ているのかと思っていた桂司が自分を見ていて、暗がりの中なのに目があったような気がして慌てて視線を逸らした。

 ふぅ、と、耳元にふわりと息がかかり、ビクッと震える尚明に。

「ナオ、可愛い」

 桂司が耳元に唇を寄せ、そう囁く。

 耳を押さえて桂司の方へと向けば、映像を見上げている姿が薄ら見え。

 あまりに何もなかったかのような態度の桂司に、今のは聞き間違いだと無理やりそう思う事にして映像を見上げた。





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