カラメル

希紫瑠音

文字の大きさ
上 下
21 / 32
友達になろう

遊ぶ約束をした日(2)

しおりを挟む
 元々は家族と共に過ごしていたマンションらしいが、両親は海外、兄は一人で暮らし、姉貴は結婚して出て行ったそうで、今は気ままな一人暮らしなのだと言う。

「こんなに広い所に一人で暮らすのってなんだか寂しそうだね」
「そうか?」

 もう慣れたよと言って箪笥からバスタオルと服を取り出して俺に手渡す。

「風呂、入ってこいよ」
「ありがとう。お借りします」

 それからシャワーで十分に体を温めて真新しい下着と吾妻のジャージを着て部屋へ戻る。

 ほかほかと温まった体は頬をほんのりと赤く染める。

 タオルで髪を拭いながら吾妻にもう一度お礼を言が、何故か吾妻は俺を睨んだままで動かない。

「吾妻?」

 首を傾げ俺は吾妻を見れば、目元がほんのりと赤く染まっていた。

「半端ねぇ……」
「え?」

 何が半端ないのだろう。

 首を傾げる俺に、

「風呂上りの優、色っぽい」
「なっ、ばっかじゃないの!!」

 何処がどうやったら自分が色っぽく見えるのだ。

 あの女子高生たちだって残念な顔して自分を見ていたと言うのに。ていうかその言葉は俺より吾妻の事だろうが。

「俺なんかより吾妻の方だろ。男の色気ってやつ」

 そう言い返して、自分もとんでもない事を口にしている事に気が付いて口を押える。

「優、俺に色気を感じてくれてたんだ」
「へ? あ、いや、ちがう、これは言葉のあやというか……」

 手を振りながら今のは違うと言うけれど、吾妻に腕を掴まれてソファーの上に押さえ込まれて唇を奪われていた。

「ん、んんっ」

 舌が絡み、くちゅっと水音が聞こえてきて、恥ずかしくて顔に血が上る。

 しかも、欲を含む口づけは、俺の下半身にじくじくとさせる。

「ふ、らめぇ」

 駄目と言いたいのに口内を犯されてうまく言えない。

「ん、優、好き」

 キスの合間に呟かれる声にドキッと胸が高鳴り、舌が絡む度に感じてしまい身体が跳ねてしまう。

「すき」

 切なく息をはき、唇が離れる。

 とろんとした眼差しで吾妻を見つめる俺に、ふと口元を綻ばせて滴る唾液を舌で拭い唇を舐める。

 目元を朱色に染めて俺を見る吾妻はとても色っぽく。男の俺でもその仕草にドキッとするほどだ。

「優、良い?」

 俺の唇を撫でる吾妻。その仕草がなんだかエロくて、ますます下半身に熱がこもってきた。

「優が欲しい」

 この先に進みたいとそう吾妻が俺を誘う。

 だけど……。

「だめ」

 このまま流されて、許してしまっては駄目だ。

 やっと友達というラインに立ったばかりだというのに、まだ自分の気持ちもわからないのに恋人同士がするような事はしたくはない。

「優……」

 そう思っているのに、辛そうな表情を浮かべる吾妻を見ると胸が苦しい。

「ごめんね」

 髪を撫で頬を撫でれば、吾妻は俺の胸へと顔を埋めてきた。

「や、吾妻っ」

 駄目だと肩を掴んで拒もうとすれば、

「何もしないから、少しの間だけこうさせて?」

 そう切なげに言われ、

「少しだけだよ」

 と俺は肩を掴んでいた手を外して腰へと回し、吾妻を抱きしめる様なかたちとなる。

 吾妻の体温が暖かくて心地よくて。俺は彼を抱き枕状態にし、いつの間にか眠りへと落ちていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

処理中です...