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ヤンキーと俺
俺の居場所(吾妻)
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年上の友人が昔どこかの族のトップをしていたのは確か。でも今は族をやめて働いているし、俺はバイクの後ろにのせてもらっただけだ。
それにどこかの族をつぶしたのはその友人であり、当時、中坊だった俺は巻き込まれただけだ。
無論、手も出していない。その友人は恐ろしく喧嘩の強い男だったから。
なのにどうして俺が族のトップで族を潰して歩いているということになるのだろうか?
入学した時からクラスメイトに遠巻きにされ、挙句の果てに根も葉もない噂まで付きまとう始末。
規則が厳しくないのをイイことに金髪にしたのも噂をより確信なものにしてしまったかもしれない。
目つきが悪いことが相乗効果となり、周りをよりいっそう怖がらせることとなった。
だが染め直す気なんてない。見た目や噂を信じる奴らと仲良くなんてできないから。
噂がもっと酷くなろうとも別に良い。居場所がこれ以上に悪くなるようならば、学校に行かないだけ。
こうして俺は完全にクラスでも学校でも孤立する羽目となったのだが、こんな俺にも居場所と呼べる場所が学校に出来た。
まず一つ目は保健室。
教室の居心地が悪く屋上でサボろうかと思い向かっている途中で養護教諭の穂高恭介さんと出会った。
「君が噂の吾妻かぁ」
俺を見ながら楽しそうに笑う穂高先生に、はじめの頃は馬鹿にされているのかと思い無視をしていたが、何かと理由をつけて保健室に誘われるようになってから、すっかり恭介サンを兄のように慕うようになっていた。
もう一つはクラス委員長である川上尚明の傍だ。
俺は見た目はこんなだけど勉強は出来る方で成績だって上位の方だ。そのお蔭もあってか教師は俺に対して強く言ってくることはない。
無視に近い扱いをされていると言った方が正しいか。クラスメイトもそうだ。俺に用事がある時はクラス委員長だからと川上にすべてを押し付けた。
自分の用事も全て川上に押し付けることに、俺は腹が立ってしょうがなく。一度、クラスメイトに怒鳴りつけたことがある。
気まずい空気の流れる中、その間に立ったのは川上で。結局、俺まで川上に迷惑をかけてしまった。
そのことを素直に謝れば、気にしなくて良いと言ってくれてその後にありがとうと言った。
川上は初めから他のクラスメイトと違い俺のことを変な目で見ないでくれていた。
何かわからないことがあれば俺は川上を頼るようになっていた。
暫くして、尚明だからナオなとそう呼び始めた俺に、「ちゃんと尚明って呼べ、バカ」とちょっと照れた姿を見せる。
それが珍しく、俺はナオともう一度呼んだ。すると川上が俺のことを「勇人」と、はっきりと呼んだ。
居場所があると言うだけで、ここに来ようという気になる。
それにだ。この頃は気になる相手がいる。
俺の噂もすごいけれど、もう一人噂のすごい奴がいる。
同じ嫌われ者同士だが、俺の場合は怖がられて、その噂の人はねたまれているようだ。
男しかいないこの学校で、アイドルのような扱いを受けている一つ上の先輩がいる。
興味なんてないけれど、嫌でも噂は耳に届くわけで。
久遠とかいうそのアイドルの傍に、二年の学年トップと冴えない男がいるという。
噂によればその男は平凡な顔達、成績は良くなく運動もできないらしい。
性格だって男らしくないのに幼馴染だというだけで傍にいることが出来る。
あんな奴が傍に居れる意味がわからない、とか云々。
初めは興味から。
だが、相手を知る度に違う感情が生まれた。
見つけた。愛おし存在を。学校にいる理由がまたできた。
この想いを伝えたい。
気持ちがあふれて、いてもたってもいられず、彼が一人の時に裏庭へと呼び出した。
結果はと言えば、返事は「無理だ~!!」だった。
相手に逃げられ、俺はウサギを追いかける狼の如く追いかけようかと思ったけれど、やめた。
まだまだ気持ちを伝えるチャンスはある。
あいつが「イエス」と言うまで俺はあきらめない。
唇に触れた感触を思い出し、俺は頬杖ついてにやにやとすれば、周りに変な空気を感じる。
見てはいけないものを見てしまったとばかりに顔を不自然にそらしている。
そんなクラスメイトの態度は鼻にくるが、俺は早く授業が終わらないかと時計を見つめた。
それにどこかの族をつぶしたのはその友人であり、当時、中坊だった俺は巻き込まれただけだ。
無論、手も出していない。その友人は恐ろしく喧嘩の強い男だったから。
なのにどうして俺が族のトップで族を潰して歩いているということになるのだろうか?
入学した時からクラスメイトに遠巻きにされ、挙句の果てに根も葉もない噂まで付きまとう始末。
規則が厳しくないのをイイことに金髪にしたのも噂をより確信なものにしてしまったかもしれない。
目つきが悪いことが相乗効果となり、周りをよりいっそう怖がらせることとなった。
だが染め直す気なんてない。見た目や噂を信じる奴らと仲良くなんてできないから。
噂がもっと酷くなろうとも別に良い。居場所がこれ以上に悪くなるようならば、学校に行かないだけ。
こうして俺は完全にクラスでも学校でも孤立する羽目となったのだが、こんな俺にも居場所と呼べる場所が学校に出来た。
まず一つ目は保健室。
教室の居心地が悪く屋上でサボろうかと思い向かっている途中で養護教諭の穂高恭介さんと出会った。
「君が噂の吾妻かぁ」
俺を見ながら楽しそうに笑う穂高先生に、はじめの頃は馬鹿にされているのかと思い無視をしていたが、何かと理由をつけて保健室に誘われるようになってから、すっかり恭介サンを兄のように慕うようになっていた。
もう一つはクラス委員長である川上尚明の傍だ。
俺は見た目はこんなだけど勉強は出来る方で成績だって上位の方だ。そのお蔭もあってか教師は俺に対して強く言ってくることはない。
無視に近い扱いをされていると言った方が正しいか。クラスメイトもそうだ。俺に用事がある時はクラス委員長だからと川上にすべてを押し付けた。
自分の用事も全て川上に押し付けることに、俺は腹が立ってしょうがなく。一度、クラスメイトに怒鳴りつけたことがある。
気まずい空気の流れる中、その間に立ったのは川上で。結局、俺まで川上に迷惑をかけてしまった。
そのことを素直に謝れば、気にしなくて良いと言ってくれてその後にありがとうと言った。
川上は初めから他のクラスメイトと違い俺のことを変な目で見ないでくれていた。
何かわからないことがあれば俺は川上を頼るようになっていた。
暫くして、尚明だからナオなとそう呼び始めた俺に、「ちゃんと尚明って呼べ、バカ」とちょっと照れた姿を見せる。
それが珍しく、俺はナオともう一度呼んだ。すると川上が俺のことを「勇人」と、はっきりと呼んだ。
居場所があると言うだけで、ここに来ようという気になる。
それにだ。この頃は気になる相手がいる。
俺の噂もすごいけれど、もう一人噂のすごい奴がいる。
同じ嫌われ者同士だが、俺の場合は怖がられて、その噂の人はねたまれているようだ。
男しかいないこの学校で、アイドルのような扱いを受けている一つ上の先輩がいる。
興味なんてないけれど、嫌でも噂は耳に届くわけで。
久遠とかいうそのアイドルの傍に、二年の学年トップと冴えない男がいるという。
噂によればその男は平凡な顔達、成績は良くなく運動もできないらしい。
性格だって男らしくないのに幼馴染だというだけで傍にいることが出来る。
あんな奴が傍に居れる意味がわからない、とか云々。
初めは興味から。
だが、相手を知る度に違う感情が生まれた。
見つけた。愛おし存在を。学校にいる理由がまたできた。
この想いを伝えたい。
気持ちがあふれて、いてもたってもいられず、彼が一人の時に裏庭へと呼び出した。
結果はと言えば、返事は「無理だ~!!」だった。
相手に逃げられ、俺はウサギを追いかける狼の如く追いかけようかと思ったけれど、やめた。
まだまだ気持ちを伝えるチャンスはある。
あいつが「イエス」と言うまで俺はあきらめない。
唇に触れた感触を思い出し、俺は頬杖ついてにやにやとすれば、周りに変な空気を感じる。
見てはいけないものを見てしまったとばかりに顔を不自然にそらしている。
そんなクラスメイトの態度は鼻にくるが、俺は早く授業が終わらないかと時計を見つめた。
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