21 / 27
リュンの主張
しおりを挟む
※※※
ミヒルと仲間たちを捕まえたという知らせを受けたのはあれから三日後のことだった。
内偵で得た情報をもとに、下水道を使い子供を連れて行こうとしていたのを取り押さえ、アジトとして使用していた部屋に残っていた子供の保護と一味の身柄をおさえた。その中にミヒルの姿もあったという。
「ミヒル、みつかったの?」
「見つけた。子供たちも保護したぞ」
それを聞いてホッとした。ミヒルを止めることができたのだから。
「よかった」
「またあえるといいな」
リュンにとってはバードとの思い出はよいものだったのだろう。悪いことをしていたとしてもだ。
複雑な気持ちになりブレーズはしゃがんでリュンを抱きしめた。
「ブレーズ、どうしたの」
「リュン、ミヒルとは……」
口にしようとした言葉をさえぎるようにセドリックがふたりを抱きしめた。
「リュン、ミヒルとは会えない」
「え、なんでっ、ミヒルとあいたい!!」
「ミヒルは罪を償うために遠くに行くことになるだろう」
「そんな、いや」
体をよじらせてふたりから抜け出ると外へと飛び出していった。
「リュン!」
すぐに後を追いかけると木に登っているところだった。
「リュン、危ないから」
やめさせようと木へ向かおうとするが、セドリックに止められた。
「セド」
「大丈夫だ。もしものときは受け止める」
太い幹までたどり着きそこに座るリュンに、
「リュン、悪いことをしたらどうなるかわかるよな」
「うん。でもミヒルはやさしかった」
「あぁ。リュンを俺に引き合わせてくれたのだからな」
「せめてボクだけはって、ミヒルのちで、ボクをびょうきにみせたの。これでたすかるからって、いいじゅうじんにみつけてもらえって」
そしてセドリックとあえたの、そうリュンはいい、そして大きな声をあげて泣き始めた。
「リュンをあそこで見つけた時、病気だからと放置したのだと思っていた。だが、ライナー先生から命に別状はないと聞き、あれは助けるための偽装だったのだと知った。自分たちのしていることが間違いだとわかっている獣人がひとりでもいるとわかり少しだけ救われた」
いったん言葉を切り、
「それがパン屋で子供たちに優しかったバードでそれが本当はそうして生きていきたかったのだと思っている。だがミヒルはやってはいけないことをした。だから罪を償わなければいけない」
「だけどあいたいの」
本当はリュンもわかっている。だけど認めたくないのだろう。
その理由はなんだろうと考えた時、ある答えにたどり着いた。
「リュンは、ミヒルにどうして会いたいの?」
「おれい、いいたい」
やはりそうだった。リュンは助けてもらったお礼を言いたかったのだ。
「そうか、それは気が付かなかった」
リュンの気持ちを知り、セドリックも納得したようだ。
「わかった。どうにか会えるように掛け合ってみよう」
「ほんとう」
嬉しさから木の上であることを忘れてしまったか立ち上がろうとして足を踏み出した。
そこは何もない。リュンの体は真っ逆さまに落ちていく。
「リュン!!」
悲鳴をあげるブレーズに、
「大丈夫だ」
と肩をたたき、高く飛び上がっって腕の中へと見事にキャッチをする。
「セド、すごい」
「だろう?」
落ちた本人は楽しそうだし、セドはいつもの通りだ。腰を抜かして座り込んでいるのはブレーズだけだった。
「よかった、無事で……」
それを見たふたりが慌てて側へとやってくる。
「大丈夫か」
「ブレーズ、へいき?」
「獣人の君たちは大丈夫だと思っていても、人の子である僕は思っていることが違うんだよ」
自分だけ平気でないことに怒りがこみあげて顔をそむけた。
「ごめん、驚かせたよな」
「ブレーズ、ごめんね」
もふんと両頬に頭をくっつけてぐりぐりとしはじめた。反省をしているといいたいのだろう。
「ずるいよそれ」
大好きな獣人にそれをされたら怒っていても許してしまう。
耳をたらしてキューン、ぐるぐると鳴き声をあげる。
怒ったふりをしてもすでに頭の中は可愛いで埋め尽くされている。
口元がふよふよと動き、目じりが下がっているに違いない。
「セド、ブレーズ、もうおこってないよ」
顔をしたから覗き込みそうセドに伝える。
「本当だ。よかった」
同じように顔をのぞかせるセドリックに、ブレーズは笑みを浮かべてふたりに腕を回した。
ミヒルと仲間たちを捕まえたという知らせを受けたのはあれから三日後のことだった。
内偵で得た情報をもとに、下水道を使い子供を連れて行こうとしていたのを取り押さえ、アジトとして使用していた部屋に残っていた子供の保護と一味の身柄をおさえた。その中にミヒルの姿もあったという。
「ミヒル、みつかったの?」
「見つけた。子供たちも保護したぞ」
それを聞いてホッとした。ミヒルを止めることができたのだから。
「よかった」
「またあえるといいな」
リュンにとってはバードとの思い出はよいものだったのだろう。悪いことをしていたとしてもだ。
複雑な気持ちになりブレーズはしゃがんでリュンを抱きしめた。
「ブレーズ、どうしたの」
「リュン、ミヒルとは……」
口にしようとした言葉をさえぎるようにセドリックがふたりを抱きしめた。
「リュン、ミヒルとは会えない」
「え、なんでっ、ミヒルとあいたい!!」
「ミヒルは罪を償うために遠くに行くことになるだろう」
「そんな、いや」
体をよじらせてふたりから抜け出ると外へと飛び出していった。
「リュン!」
すぐに後を追いかけると木に登っているところだった。
「リュン、危ないから」
やめさせようと木へ向かおうとするが、セドリックに止められた。
「セド」
「大丈夫だ。もしものときは受け止める」
太い幹までたどり着きそこに座るリュンに、
「リュン、悪いことをしたらどうなるかわかるよな」
「うん。でもミヒルはやさしかった」
「あぁ。リュンを俺に引き合わせてくれたのだからな」
「せめてボクだけはって、ミヒルのちで、ボクをびょうきにみせたの。これでたすかるからって、いいじゅうじんにみつけてもらえって」
そしてセドリックとあえたの、そうリュンはいい、そして大きな声をあげて泣き始めた。
「リュンをあそこで見つけた時、病気だからと放置したのだと思っていた。だが、ライナー先生から命に別状はないと聞き、あれは助けるための偽装だったのだと知った。自分たちのしていることが間違いだとわかっている獣人がひとりでもいるとわかり少しだけ救われた」
いったん言葉を切り、
「それがパン屋で子供たちに優しかったバードでそれが本当はそうして生きていきたかったのだと思っている。だがミヒルはやってはいけないことをした。だから罪を償わなければいけない」
「だけどあいたいの」
本当はリュンもわかっている。だけど認めたくないのだろう。
その理由はなんだろうと考えた時、ある答えにたどり着いた。
「リュンは、ミヒルにどうして会いたいの?」
「おれい、いいたい」
やはりそうだった。リュンは助けてもらったお礼を言いたかったのだ。
「そうか、それは気が付かなかった」
リュンの気持ちを知り、セドリックも納得したようだ。
「わかった。どうにか会えるように掛け合ってみよう」
「ほんとう」
嬉しさから木の上であることを忘れてしまったか立ち上がろうとして足を踏み出した。
そこは何もない。リュンの体は真っ逆さまに落ちていく。
「リュン!!」
悲鳴をあげるブレーズに、
「大丈夫だ」
と肩をたたき、高く飛び上がっって腕の中へと見事にキャッチをする。
「セド、すごい」
「だろう?」
落ちた本人は楽しそうだし、セドはいつもの通りだ。腰を抜かして座り込んでいるのはブレーズだけだった。
「よかった、無事で……」
それを見たふたりが慌てて側へとやってくる。
「大丈夫か」
「ブレーズ、へいき?」
「獣人の君たちは大丈夫だと思っていても、人の子である僕は思っていることが違うんだよ」
自分だけ平気でないことに怒りがこみあげて顔をそむけた。
「ごめん、驚かせたよな」
「ブレーズ、ごめんね」
もふんと両頬に頭をくっつけてぐりぐりとしはじめた。反省をしているといいたいのだろう。
「ずるいよそれ」
大好きな獣人にそれをされたら怒っていても許してしまう。
耳をたらしてキューン、ぐるぐると鳴き声をあげる。
怒ったふりをしてもすでに頭の中は可愛いで埋め尽くされている。
口元がふよふよと動き、目じりが下がっているに違いない。
「セド、ブレーズ、もうおこってないよ」
顔をしたから覗き込みそうセドに伝える。
「本当だ。よかった」
同じように顔をのぞかせるセドリックに、ブレーズは笑みを浮かべてふたりに腕を回した。
11
<獣人、恋慕ノ情ヲ抱ク>シリーズ
◇獣人ハ恋ヲスル
・獣人剣士(家事が得意)×少年剣士(火傷があり、コンプレックスに)【R18】
◇獣人ハ恋焦ガレル
・人の子と獣人の友情。互いに好きな人ができて恋をする。
・獣人(騎士・料理上手)×人の子(獣人ラブな薬師)【R18】
◇獣人ハ甘ヤカシ、甘ヤカサレル
・人の子(年上・医者)×獣人(パン屋)/歳の差【R18】
◇獣人ハ恋ヲスル
・獣人剣士(家事が得意)×少年剣士(火傷があり、コンプレックスに)【R18】
◇獣人ハ恋焦ガレル
・人の子と獣人の友情。互いに好きな人ができて恋をする。
・獣人(騎士・料理上手)×人の子(獣人ラブな薬師)【R18】
◇獣人ハ甘ヤカシ、甘ヤカサレル
・人の子(年上・医者)×獣人(パン屋)/歳の差【R18】
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる