8 / 27
リュンと店(2)
しおりを挟む
ピトルが持ってきてくれた本を夢中で読んでいた。部屋の隅で丸くなっていなくて良かった。
「リュン、おうちに帰るよ」
「うん」
本は置く場所がまだないのでテーブルの上にそのまま置いておく。
「リュン、これを着て」
フード付きの上着を手渡し、かわりにうさぎを受け取る。
「きたよ」
と着終えた姿を見せるリュンにうさぎを返すと、
「おんなじ!!」
とうさぎを持ち上げて目をキラキラとさせた。
同じ服を作ったのはリュンに喜んでもらいたいたかったから。その狙いはどうやらうまくいったようだ。
「これからはお外に行くときはこれを着て行こうね」
「うん、いっしょのきてくの」
ピトルが持ってきてくれたルキンスの本。あれがヒントになった。リュンの中にある楽しいを引き出すことで怖いという気持ちが薄れることを。
手をつないで外へでると、
「よかった。間に合った」
と声をがして、制服姿のセドリックの姿がある。
「え、セド、どうしたの!?」
「早く上がれたから迎えに来たんだ」
そういうけれど、本当は心配で早めに切り上げてきたのではないだろうか。
「リュン、イイ子にしていたか」
リュンを抱き上げると、
「セド、見て、おそろいなの」
うさぎを見せるように差し出した。
「よかったな」
「うん!」
ぎゅっと首に腕を回して頬を摺り寄せるリュンに、くすぐったいとセドリックが笑う。
その姿があまりにも愛おしくて胸が高鳴る。
「さ、帰ろう」
セドリックが手を差し伸べる。
「え?」
躊躇うブレーズに、口角を上げちらりと牙が見える。
「手、つなぎたい」
今一度差し出されてその手をつかみ取った。
「よし、帰るぞ」
「うん」
足が地につかない。それだけ気持ちが舞い上がっている。
にゃん、にゃにゃん。
リズムがついていてまるで鼻歌のようだとセドリックを見上げれば、こちらに気が付き目を細めた。
「独りモンだからさ、こういうのを一度は味わってみたと思っていた」
家族に対するあこがれ。
それは恋愛対象が異性なら普通に抱くものだろう。だが、ブレーズは同性であり別種族の者に恋をしてからは持たなくなったものだ。
そう、セドリックはこれから先、いくらでも家庭を持てるのだ。
ふわふわとしていた気持ちはすっかり元通り。繋いでいた手を離した。
「あ……」
「買い物をしたいから先に帰っていて」
「それなら一緒に」
「だめ。お店はもう少し慣れてきてから」
リュンのことを言っているのだと気がついたようで、
「わかった。先に帰るな」
ぽんと頭に手を乗せ、家の方角へと歩いて行った。
その姿を見送りながらセドリックが触れた個所へと触れる。
本当は一緒に帰りたかった。だけど友達でしかない相手と家族ごっこをしても空しいだけだ。
「いつかそういう相手ができるよ」
セドリックは優しい男だ。しかも家柄も良く騎士団長でもあるのだから。
落ち込みながら商店街へと歩いていけば、そこにゾフィードとドニの姿を見つけた。
「ドニ」
「ブレーズ。あれ、一人なの?」
何かを気にしている様子のドニに、ゾフィードが、
「団長が子供を預かっていることを話した」
という。一緒にいると思ったのだろう。ドニのことだからずっと気になっていたにちがいない。
「セドリックと先に帰った」
「そうなんだ。本当はね、店を休んで会いに行こうと思ったんだけど、ゾフィードがいきなりはダメだっていうんだよ」
「あたりまえだ。こんな変態にいきなり会わせたら怖がらせてしまうだろう」
リュンの事情を知っているから止めてくれたのだろう。
だがオイルのこともあるので会わせたいとは思っているのだが、それはセドリックに相談してからだ。
「ううっ、わかった。いつか会えるのを楽しみに待ってる。それじゃ、またね」
「またね」
仲良く手をつなぎふたりは歩いていく。しかもそろいの宝石を身に着けていて、それが羨ましくて嫉妬から胸がもやもやとしてしまう。
「はぁ、友達の幸せにこんな気持ちになるなんて」
そんな自分が好きではなく、でも気持ちが重苦しいのは当分とれそうにもなかった。
「リュン、おうちに帰るよ」
「うん」
本は置く場所がまだないのでテーブルの上にそのまま置いておく。
「リュン、これを着て」
フード付きの上着を手渡し、かわりにうさぎを受け取る。
「きたよ」
と着終えた姿を見せるリュンにうさぎを返すと、
「おんなじ!!」
とうさぎを持ち上げて目をキラキラとさせた。
同じ服を作ったのはリュンに喜んでもらいたいたかったから。その狙いはどうやらうまくいったようだ。
「これからはお外に行くときはこれを着て行こうね」
「うん、いっしょのきてくの」
ピトルが持ってきてくれたルキンスの本。あれがヒントになった。リュンの中にある楽しいを引き出すことで怖いという気持ちが薄れることを。
手をつないで外へでると、
「よかった。間に合った」
と声をがして、制服姿のセドリックの姿がある。
「え、セド、どうしたの!?」
「早く上がれたから迎えに来たんだ」
そういうけれど、本当は心配で早めに切り上げてきたのではないだろうか。
「リュン、イイ子にしていたか」
リュンを抱き上げると、
「セド、見て、おそろいなの」
うさぎを見せるように差し出した。
「よかったな」
「うん!」
ぎゅっと首に腕を回して頬を摺り寄せるリュンに、くすぐったいとセドリックが笑う。
その姿があまりにも愛おしくて胸が高鳴る。
「さ、帰ろう」
セドリックが手を差し伸べる。
「え?」
躊躇うブレーズに、口角を上げちらりと牙が見える。
「手、つなぎたい」
今一度差し出されてその手をつかみ取った。
「よし、帰るぞ」
「うん」
足が地につかない。それだけ気持ちが舞い上がっている。
にゃん、にゃにゃん。
リズムがついていてまるで鼻歌のようだとセドリックを見上げれば、こちらに気が付き目を細めた。
「独りモンだからさ、こういうのを一度は味わってみたと思っていた」
家族に対するあこがれ。
それは恋愛対象が異性なら普通に抱くものだろう。だが、ブレーズは同性であり別種族の者に恋をしてからは持たなくなったものだ。
そう、セドリックはこれから先、いくらでも家庭を持てるのだ。
ふわふわとしていた気持ちはすっかり元通り。繋いでいた手を離した。
「あ……」
「買い物をしたいから先に帰っていて」
「それなら一緒に」
「だめ。お店はもう少し慣れてきてから」
リュンのことを言っているのだと気がついたようで、
「わかった。先に帰るな」
ぽんと頭に手を乗せ、家の方角へと歩いて行った。
その姿を見送りながらセドリックが触れた個所へと触れる。
本当は一緒に帰りたかった。だけど友達でしかない相手と家族ごっこをしても空しいだけだ。
「いつかそういう相手ができるよ」
セドリックは優しい男だ。しかも家柄も良く騎士団長でもあるのだから。
落ち込みながら商店街へと歩いていけば、そこにゾフィードとドニの姿を見つけた。
「ドニ」
「ブレーズ。あれ、一人なの?」
何かを気にしている様子のドニに、ゾフィードが、
「団長が子供を預かっていることを話した」
という。一緒にいると思ったのだろう。ドニのことだからずっと気になっていたにちがいない。
「セドリックと先に帰った」
「そうなんだ。本当はね、店を休んで会いに行こうと思ったんだけど、ゾフィードがいきなりはダメだっていうんだよ」
「あたりまえだ。こんな変態にいきなり会わせたら怖がらせてしまうだろう」
リュンの事情を知っているから止めてくれたのだろう。
だがオイルのこともあるので会わせたいとは思っているのだが、それはセドリックに相談してからだ。
「ううっ、わかった。いつか会えるのを楽しみに待ってる。それじゃ、またね」
「またね」
仲良く手をつなぎふたりは歩いていく。しかもそろいの宝石を身に着けていて、それが羨ましくて嫉妬から胸がもやもやとしてしまう。
「はぁ、友達の幸せにこんな気持ちになるなんて」
そんな自分が好きではなく、でも気持ちが重苦しいのは当分とれそうにもなかった。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
【R18】満たされぬ俺の番はイケメン獣人だった
佐伯亜美
BL
この世界は獣人と人間が共生している。
それ以外は現実と大きな違いがない世界の片隅で起きたラブストーリー。
その見た目から女性に不自由することのない人生を歩んできた俺は、今日も満たされぬ心を埋めようと行きずりの恋に身を投じていた。
その帰り道、今月から部下となったイケメン狼族のシモンと出会う。
「なんで……嘘つくんですか?」
今まで誰にも話したことの無い俺の秘密を見透かしたように言うシモンと、俺は身体を重ねることになった。
インバーション・カース 〜異世界へ飛ばされた僕が獣人彼氏に堕ちるまでの話〜
月咲やまな
BL
ルプス王国に、王子として“孕み子(繁栄を内に孕む者)”と呼ばれる者が産まれた。孕み子は内に秘めた強大な魔力と、大いなる者からの祝福をもって国に繁栄をもたらす事が約束されている。だがその者は、同時に呪われてもいた。
呪いを克服しなければ、繁栄は訪れない。
呪いを封じ込める事が出来る者は、この世界には居ない。そう、この世界には——
アルバイトの帰り道。九十九柊也(つくもとうや)は公園でキツネみたいな姿をしたおかしな生き物を拾った。「腹が減ったから何か寄越せ」とせっつかれ、家まで連れて行き、食べ物をあげたらあげたで今度は「お礼をしてあげる」と、柊也は望まずして異世界へ飛ばされてしまった。
「無理です!能無しの僕に世界なんか救えませんって!ゲームじゃあるまいし!」
言いたい事は山の様にあれども、柊也はルプス王国の領土内にある森で助けてくれた狐耳の生えた獣人・ルナールという青年と共に、逢った事も無い王子の呪いを解除する為、時々モブキャラ化しながらも奔走することとなるのだった。
○獣耳ありお兄さんと、異世界転移者のお話です。
○執着系・体格差・BL作品
【R18】作品ですのでご注意下さい。
【関連作品】
『古書店の精霊』
【第7回BL小説大賞:397位】
※2019/11/10にタイトルを『インバーション・カース』から変更しました。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。
篠崎笙
BL
薬学部に通う理人は植物採集に山に行った際、救世主として異世界に召喚されるが、熊の獣人に拾われてツガイにされてしまい、もう元の世界には帰れない身体になったと言われる。そして、世界の終わりの原因は伝染病だと判明し……。
獣人辺境伯と白い花嫁~転化オメガは地上の楽園で愛でられる~
佐藤紗良
BL
***
「ミア。いい加減、オメガに転化したって認めちゃいなよ」
「何度も申し上げますが、私はアルファです」
「夕べはアンアン言ってたのに?こんなに僕が愛してるのに??」
「記憶にございません。先ほどから、黙れと申し上げております。獣人に不当な扱いを受けた、と派遣規定に沿って上に報告せねばなりませんがよろしいですか」
***
※独自解釈を加えたオメガバースBLファンタジーです。
※獣姦シーンがあるため、自己責任でお願いします。
※素敵な表紙はrimei様(https://twitter.com/rimei1226 )に描いて頂きました。転載等は固くお断りいたします。
[あらすじ]
温暖化、砂漠化、食糧難……。
人間が劣悪になった地上を捨て、地下へと入り込んで九百年。地上は浄化され、獣人と獣の住む楽園となっていた。
八十年ほど前から、地上回帰を狙う人間の調査派遣が行われるようになり、試験に15歳で合格したアルファのミアは一年の研修を経て、地上へ向かった。
順風満帆だった調査や研究。
二年の任期満了を目前に幼い頃、昔のネイチャー雑誌で見たホッキョクギツネが今も生息しているか確認するため、北への移動申請をだした。
そこで強いアルファ性をもつ獣人シャノンと出会い、転化してしまう。追い討ちを掛けるように現実を受け止め切れないミアが引き金となる事件が起こってしまいーー。
ツンドラの大地で紡がれるホッキョクギツネ獣人シャノン(性に奔放アルファ)×アルビノ人間ミア(隠れモフモフ大好き転化オメガ)の最果ての恋物語。
【完結】生贄赤ずきんは森の中で狼に溺愛される
おのまとぺ
BL
生まれつき身体が弱く二十歳までは生きられないと宣告されていたヒューイ。そんなヒューイを村人たちは邪魔者とみなして、森に棲まう獰猛な狼の生贄「赤ずきん」として送り込むことにした。
しかし、暗い森の中で道に迷ったヒューイを助けた狼は端正な見た目をした男で、なぜかヒューイに「ここで一緒に生活してほしい」と言ってきて……
◆溺愛獣人攻め×メソメソ貧弱受け
◆R18は※
◆地雷要素:受けの女装/陵辱あり(少し)
【完結】糸と会う〜異世界転移したら獣人に溺愛された俺のお話
匠野ワカ
BL
日本画家を目指していた清野優希はある冬の日、海に身を投じた。
目覚めた時は見知らぬ砂漠。――異世界だった。
獣人、魔法使い、魔人、精霊、あらゆる種類の生き物がアーキュス神の慈悲のもと暮らすオアシス。
年間10人ほどの地球人がこぼれ落ちてくるらしい。
親切な獣人に助けられ、連れて行かれた地球人保護施設で渡されたのは、いまいち使えない魔法の本で――!?
言葉の通じない異世界で、本と赤ペンを握りしめ、二度目の人生を始めます。
入水自殺スタートですが、異世界で大切にされて愛されて、いっぱい幸せになるお話です。
胸キュン、ちょっと泣けて、ハッピーエンド。
本編、完結しました!!
小話番外編を投稿しました!
獣人ハ甘ヤカシ、甘ヤカサレル
希紫瑠音
BL
エメは街でパン屋を開いている。生地をこねる作業も、オーブンで焼いているときのにおいも大好きだ。
お客さんの笑顔を見るのも好きだ。おいしかったという言葉を聞くと幸せになる。
そんな彼には大切な人がいた。自分とは違う種族の年上の男性で、医者をしているライナーだ。
今だ番がいないのは自分のせいなのではないかと、彼から離れようとするが――。
エメがライナーのことでモダモダとしております。じれじれ・両想い・歳の差。
※は性的描写あり。*は※よりゆるめ。
<登場人物>
◇エメ
・20歳。小さなパン屋の店主。見た目は秋田犬。面倒見がよく、ライナーことが放っておけない
◇ライナー
・32歳。医者。祖父と共に獣人の国へ。エメが生まれてくるときに立ち合っている。
<その他>
◆ジェラール…虎。エメの幼馴染。いい奴
◆ニコラ…人の子。看護師さん
◆ギー…双子の兄
◆ルネ…双子の弟
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる