4 / 27
一緒に子育て
しおりを挟む
リュンに必要なものは栄養満点の食事だ。骨が浮き出ていてまともに食べれていなかったのだろうということはわかる。
「獣人の子供はどれくらい食べるの?」
「そうだな、肉なら店で売られている塊の半分くらいかな。だがたくさん食べるとリュンの胃には負担になるようで吐き戻してしまうんだ」
ゆえに肉や魚は少量、パンやお菓子を食べているそうだ。
「あまり脂っこいものが食べられないようでな。ドニやブレーズが食べるような料理のほうがたくさん食べれると思うんだ」
「わかった。普段食べている料理を作るね。セドリックにはちゃんと別でこってりなの作るから」
「タレの美味いあれがいい」
豆を発酵させて作った豆油という調味料と米酒、ガリクとショウキョウをすりおろしたものをまぜる。それをカットした肉と共に焼くのだ。
「わかった」
食事の準備はふたりが手伝ってくれたおかげで、いつもよりも量が多くても時間がかからずに仕上がった。
湯気を立てる料理をテーブルへ並べると、セドリックが鼻を鳴らす。
「はぁ、美味そうだなぁ」
耳を小さく動かし、ぺろりと口元を舐める。
「うん」
肉から香る良いにおいに興味があるのかリュンが尻尾をふりふりしながら見ている。
「リュン、食べてみる?」
そう尋ねれば、答えるより先にセドリックの方を見る。
うさぎのぬいぐるみを渡したときは警戒していたからだと思っていたが、もしや確認をとっているのだろうか。
「リュン、自分が思った通りにしていいんだぞ?」
その言葉にリュンが戸惑い、セドリックが軽く息を吐くと頭を撫でた。
「美味しいから一緒に食べような」
「うん!」
子供が大人に伺いを立てる、そういう躾をされていたのだろうか。だが、セドリックの反応に胸がモヤっとする。
それは後で尋ねることにして、リュンにご飯を食べて美味しいって顔を見せてもらいたい。
肉はセドリックのために焼いたので皿ごと渡す。
フォークをグーの手つきで持ち、食べやすいサイズにカットされた肉を突き刺す。
それを食べた途端に耳がぴゅるると動く。
「おいしい!」
「よかった」
自分の料理を美味そうに食べてくれる。それだけでブレーズは幸せだ。
「リュン、果物のパイだよ。熱いからふーふーして食べてね」
パイをのせた皿を渡すと大きな目がさらに大きく見開かれて耳が動き出す。どうやら気に入ってくれたのだろう。
だが、先ほどのようにセドリックを見て、食べていいのかという顔をする。
「これはリュンのだから食べていいんだぞ」
フォークを手に持ち、食べやすいサイズにカットするとフーフーと息をふきかけて口の中へと入れると、ふにゃと表情を緩めた。
「くっ」
ブレーズは小さくガッツポーズをし、ふ、と、視線を感じて見上げればセドリックがにやにやとして見ていた。
「かわいい、だろ?」
「うん。やばすぎる」
これからセドリックと共にリュンが幸せだと感じてくれるその姿を見ていきたい。
「リュン、今日はたくさん食べられたな」
ごちそうさまとフォークを置いたリュンの頭を撫でる。
「あのね、ブレーズのごはんがおいしかったの。それにいっしょだから」
とセドリックを見てブレーズを見る。
「そうか」
幸せ。
自分にも耳と尻尾があったなら、きっとたれていることだろう。
「何、ドニ曰く『はわわわ』な状態?」
「そう」
ドニが獣人に対してきゅんとしたときに出る言葉だ。
「はわわわ?」
首をこてっと横にしてリュンが口にする。
「かわいい」
「はは。ブレーズよ。これからずっとだぜ。心臓持つのか?」
「持たないかも……」
その時はリュンに看病をしてもらえとセドリックが顔を向けると、お腹いっぱい食べて眠くなってしまったかリュンが舟をこぎ出していた。
「おねむのようだな」
セドリックが席を立ちリュンを抱き上げた。
「セド、ベッドに」
寝室用として使っている部屋のドアを開くと中へと入りリュンをベッドの上に寝かせた。
「よかった。眠れるということは安心しているってことだから」
パニックを起こして倒れてからもリュンが安心できるまでに時間がかかった。
部屋の端っこで過ごし、寝るときは毛布にくるまって床に横になっていた。しかも物音を立てるとすぐに起き上がっていたそうだ。
「あの子は大人が子供に向ける愛情を知らない。頭を撫でようとしたら恐がって尻尾を股の間に挟んだんだ。だからまずは顔を背けられないように話すこと。次に触れても怖がられないこと。そうやって少しずつ愛情に慣れてもらいたくてな」
ゆっくりと時間をかけて今の関係になれたという。
それでもはじめての人は怖がってしまうんだとセドリックの表情が曇った。
「リュンは今までどんな生活をしていたのかと想像するだけで辛い」
優しい彼が心を痛めている。ブレーズはそれがつらい。
「セド、僕たちでいっぱい愛情をあげようね」
立ち上がりセドリックの傍へといくと頭を抱きしめた。
「あぁ。夫婦の共同作業だな!」
「また、なんでそういう言葉を覚えるかな」
好意を持っている相手に言われたら勘違いをさせてしまう言葉だ。ブレーズは言葉に反応して照れてしまう。
「ふふ、まだ知っているぞ。交尾のことは……」
「わー!」
流石にその言葉は意識してしまう。黙らせるようにセドリックの頭を乱暴に撫でた。
「はは、大事な行為だぞ。交尾は」
「その話題から離れなさいっ」
両耳を引っ張ると、セドリックが参ったと両手を上げた。
「獣人の子供はどれくらい食べるの?」
「そうだな、肉なら店で売られている塊の半分くらいかな。だがたくさん食べるとリュンの胃には負担になるようで吐き戻してしまうんだ」
ゆえに肉や魚は少量、パンやお菓子を食べているそうだ。
「あまり脂っこいものが食べられないようでな。ドニやブレーズが食べるような料理のほうがたくさん食べれると思うんだ」
「わかった。普段食べている料理を作るね。セドリックにはちゃんと別でこってりなの作るから」
「タレの美味いあれがいい」
豆を発酵させて作った豆油という調味料と米酒、ガリクとショウキョウをすりおろしたものをまぜる。それをカットした肉と共に焼くのだ。
「わかった」
食事の準備はふたりが手伝ってくれたおかげで、いつもよりも量が多くても時間がかからずに仕上がった。
湯気を立てる料理をテーブルへ並べると、セドリックが鼻を鳴らす。
「はぁ、美味そうだなぁ」
耳を小さく動かし、ぺろりと口元を舐める。
「うん」
肉から香る良いにおいに興味があるのかリュンが尻尾をふりふりしながら見ている。
「リュン、食べてみる?」
そう尋ねれば、答えるより先にセドリックの方を見る。
うさぎのぬいぐるみを渡したときは警戒していたからだと思っていたが、もしや確認をとっているのだろうか。
「リュン、自分が思った通りにしていいんだぞ?」
その言葉にリュンが戸惑い、セドリックが軽く息を吐くと頭を撫でた。
「美味しいから一緒に食べような」
「うん!」
子供が大人に伺いを立てる、そういう躾をされていたのだろうか。だが、セドリックの反応に胸がモヤっとする。
それは後で尋ねることにして、リュンにご飯を食べて美味しいって顔を見せてもらいたい。
肉はセドリックのために焼いたので皿ごと渡す。
フォークをグーの手つきで持ち、食べやすいサイズにカットされた肉を突き刺す。
それを食べた途端に耳がぴゅるると動く。
「おいしい!」
「よかった」
自分の料理を美味そうに食べてくれる。それだけでブレーズは幸せだ。
「リュン、果物のパイだよ。熱いからふーふーして食べてね」
パイをのせた皿を渡すと大きな目がさらに大きく見開かれて耳が動き出す。どうやら気に入ってくれたのだろう。
だが、先ほどのようにセドリックを見て、食べていいのかという顔をする。
「これはリュンのだから食べていいんだぞ」
フォークを手に持ち、食べやすいサイズにカットするとフーフーと息をふきかけて口の中へと入れると、ふにゃと表情を緩めた。
「くっ」
ブレーズは小さくガッツポーズをし、ふ、と、視線を感じて見上げればセドリックがにやにやとして見ていた。
「かわいい、だろ?」
「うん。やばすぎる」
これからセドリックと共にリュンが幸せだと感じてくれるその姿を見ていきたい。
「リュン、今日はたくさん食べられたな」
ごちそうさまとフォークを置いたリュンの頭を撫でる。
「あのね、ブレーズのごはんがおいしかったの。それにいっしょだから」
とセドリックを見てブレーズを見る。
「そうか」
幸せ。
自分にも耳と尻尾があったなら、きっとたれていることだろう。
「何、ドニ曰く『はわわわ』な状態?」
「そう」
ドニが獣人に対してきゅんとしたときに出る言葉だ。
「はわわわ?」
首をこてっと横にしてリュンが口にする。
「かわいい」
「はは。ブレーズよ。これからずっとだぜ。心臓持つのか?」
「持たないかも……」
その時はリュンに看病をしてもらえとセドリックが顔を向けると、お腹いっぱい食べて眠くなってしまったかリュンが舟をこぎ出していた。
「おねむのようだな」
セドリックが席を立ちリュンを抱き上げた。
「セド、ベッドに」
寝室用として使っている部屋のドアを開くと中へと入りリュンをベッドの上に寝かせた。
「よかった。眠れるということは安心しているってことだから」
パニックを起こして倒れてからもリュンが安心できるまでに時間がかかった。
部屋の端っこで過ごし、寝るときは毛布にくるまって床に横になっていた。しかも物音を立てるとすぐに起き上がっていたそうだ。
「あの子は大人が子供に向ける愛情を知らない。頭を撫でようとしたら恐がって尻尾を股の間に挟んだんだ。だからまずは顔を背けられないように話すこと。次に触れても怖がられないこと。そうやって少しずつ愛情に慣れてもらいたくてな」
ゆっくりと時間をかけて今の関係になれたという。
それでもはじめての人は怖がってしまうんだとセドリックの表情が曇った。
「リュンは今までどんな生活をしていたのかと想像するだけで辛い」
優しい彼が心を痛めている。ブレーズはそれがつらい。
「セド、僕たちでいっぱい愛情をあげようね」
立ち上がりセドリックの傍へといくと頭を抱きしめた。
「あぁ。夫婦の共同作業だな!」
「また、なんでそういう言葉を覚えるかな」
好意を持っている相手に言われたら勘違いをさせてしまう言葉だ。ブレーズは言葉に反応して照れてしまう。
「ふふ、まだ知っているぞ。交尾のことは……」
「わー!」
流石にその言葉は意識してしまう。黙らせるようにセドリックの頭を乱暴に撫でた。
「はは、大事な行為だぞ。交尾は」
「その話題から離れなさいっ」
両耳を引っ張ると、セドリックが参ったと両手を上げた。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
もふもふ好きにはたまらない世界でオレだけのもふもふを見つけるよ。
サクラギ
BL
ユートは人族。来年成人を迎える17歳。獣人がいっぱいの世界で頑張ってるよ。成人を迎えたら大好きなもふもふ彼氏と一緒に暮らすのが夢なんだ。でも人族の男の子は嫌われてる。ほんとうに恋人なんてできるのかな?
R18 ※ エッチなページに付けます。
他に暴力表現ありです。
可愛いお話にしようと思って書きました。途中で苦しめてますが、ハッピーエンドです。
よろしくお願いします。
全62話
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
獣人の子育ては経験がありません
三国華子
BL
36歳シングルファーザー
転生したら、見た目は地味になったけど、可愛い子供ができました。
異世界で、二度目の子育て頑張ります!!!
ムーンライトノベルズ様にて先行配信しております。
R18要素を含むタイトルに「※」をつけます。
感想はネタバレも公開することにしました。ご覧になる場合はご注意下さい。
オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。
篠崎笙
BL
薬学部に通う理人は植物採集に山に行った際、救世主として異世界に召喚されるが、熊の獣人に拾われてツガイにされてしまい、もう元の世界には帰れない身体になったと言われる。そして、世界の終わりの原因は伝染病だと判明し……。
《完結》狼の最愛の番だった過去
丸田ザール
BL
狼の番のソイ。 子を孕まねば群れに迎え入れて貰えないが、一向に妊娠する気配が無い。焦る気持ちと、申し訳ない気持ちでいっぱいのある日 夫であるサランが雌の黒い狼を連れてきた 受けがめっっっちゃ可哀想なので注意です ハピエンになります ちょっと総受け。
オメガバース設定ですが殆ど息していません
ざまぁはありません!話の展開早いと思います…!
【完結】生贄赤ずきんは森の中で狼に溺愛される
おのまとぺ
BL
生まれつき身体が弱く二十歳までは生きられないと宣告されていたヒューイ。そんなヒューイを村人たちは邪魔者とみなして、森に棲まう獰猛な狼の生贄「赤ずきん」として送り込むことにした。
しかし、暗い森の中で道に迷ったヒューイを助けた狼は端正な見た目をした男で、なぜかヒューイに「ここで一緒に生活してほしい」と言ってきて……
◆溺愛獣人攻め×メソメソ貧弱受け
◆R18は※
◆地雷要素:受けの女装/陵辱あり(少し)
【R18】満たされぬ俺の番はイケメン獣人だった
佐伯亜美
BL
この世界は獣人と人間が共生している。
それ以外は現実と大きな違いがない世界の片隅で起きたラブストーリー。
その見た目から女性に不自由することのない人生を歩んできた俺は、今日も満たされぬ心を埋めようと行きずりの恋に身を投じていた。
その帰り道、今月から部下となったイケメン狼族のシモンと出会う。
「なんで……嘘つくんですか?」
今まで誰にも話したことの無い俺の秘密を見透かしたように言うシモンと、俺は身体を重ねることになった。
狼は腹のなか〜銀狼の獣人将軍は、囚われの辺境伯を溺愛する〜
花房いちご
BL
ルフランゼ王国の辺境伯ラズワートは冤罪によって失脚し、和平のための人質としてゴルハバル帝国に差し出された。彼の保護を名乗り出たのは、銀狼の獣人将軍ファルロだった。
かつて殺し合った二人だが、ファルロはラズワートに恋をしている。己の屋敷で丁重にあつかい、好意を隠さなかった。ラズワートは最初だけ当惑していたが、すぐに馴染んでいく。また、憎からず想っている様子だった。穏やかに語り合い、手合わせをし、美味い食事と酒を共にする日々。
二人の恋は育ってゆくが、やがて大きな時代のうねりに身を投じることになる。
ムーンライトノベルズに掲載した作品「狼は腹のなか」を改題し加筆修正しています。大筋は変わっていません。
帝国の獣人将軍(四十五歳。スパダリ風戦闘狂)×王国の辺境伯(二十八歳。くっ殺風戦闘狂)です。異種族間による両片想いからの両想い、イチャイチャエッチ、戦争、グルメ、ざまあ、陰謀などが詰まっています。エッチな回は*が付いてます。
初日は三回更新、以降は一日一回更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる