2 / 27
ブレーズ
しおりを挟む
ブレーズの親が始めた服屋は評判で、小さな店から大きなお店へと変わったとき、貴族からも服を頼まれるようになった。
自分も将来は店で働くつもりだったが、十二歳の時に今後の運命を左右するできごとがあった。
獣人が王宮へくるときは国を挙げて歓迎パレードを行うのだが、一度も見たことがなく獣人のことを話で聞くだけだった。
理由は簡単。親が忙しくて誰も連れていてはくれなかったからだ。本当は見てみたいと思っていたが忙しい親に言い出せずにいた。
そんなブレーズをパレードへ連れて行ってくれたのは兄であった。
すでに店で働いていたが一度は見てみたかったんだと休みをもらったという。きっとブレーズの気持ちに気が付いていたのだ。
パレードがはじまる前だというのに興奮していた。どんな姿なのか、話通りなのかと。
そして獣人の姿を見た衝撃を受けた。そう、あのまま死んでしまうのではないかと思ったくらいに胸が飛び跳ねた。
人のことは違う姿。気高く美しい毛並みと気品あふれる姿に目は話せず、パレードは終わった後も熱が冷めず、兄の手を握りしめていた。
それからというもの獣人の姿が離れず、獣人の国へと行き服を作りたいという夢ができた。
思いは歳を重ねても冷めることなく両親にそのことを相談すると、行って来いと背中を押してもらった。
獣人の国では人の子でも働くことができる。まずは入国許可書を取得し、商売許可書を手に入れなければならない。
しかも商売ができるのは男性のみで、獣人から推薦を貰わなければならない。
入国審査は国の役所へ書類を提出することになる。それの合否は早くて半月かかる。
ただし獣人の国からの招待客は入国許可書を所得する必要がないそうだ。
許可をもらうと証明書が発行される。それが身分証となるので三年に一度、申請のために人の子の国へと戻らねばならない。
そして商売をするためには獣人からの推薦状があると有利となる。それは父がコネを使い用意してくれた。しかも店を出すための資金もだ。家族の応援と獣人愛でブレーズは頑張った。
店を始めるにも誰も知り合いがおらず、心細い時もあった。そんな日は買い物をするために街に出るのだが、別の場所へもいってみようと歩いていたら道に迷ってしまった。
セドリックはブレーズにできた初めての獣人の友人だった。
まだ獣人の国に慣れていないころ、道に迷っていたところを助けてくれたのがはじまりだ。
たてがみともふもふな首毛をもった真っ白い美しい毛並みの獣人だ。
獣人は人の子よりも体格に優れているものが多く、彼も二メートルはあるだろう。
ブレーズの背は一七六センチあるが、人の子の国では別に自分の背丈を低いとは感じなかったが、獣人の国へときてからは店へくるお客を見上げることが多い。
黒い制服を着てマントをしていた。それがとても似合っていて見惚れてしまった。
その時に彼が騎士であることを聞き、自分はこの国で店を開くのだと話をしたわけだ。
オープンをしたら遊びに行くよと言ってはくれたが本気にはしていなかった。だから店のオープン日にはスタンド花を贈ってくれた時は驚いたし、数日後に店に来てくれたことが嬉しかった。
気さくで優しくて頼りがいがある。そんな彼を友として好きになるのはあっという間だった。
だが、この頃はなにか様子がおかしい。
セドリックを見るとやたらときらきらとして見てるし、今まで通りに話をしているだけなのに顔を見ると胸が弾むのだ。
その正体に気が付いたのは、セドリックの口からよく出てくる「ドニ」という人の子の存在でだ。
ドニのことを話すときのセドリックはとても楽しそうで、まるで恋をしているかのようだった。
友が恋をしている。驚きとともに心の奥底には黒くもやもやとしたものを感じた。
その子を店に連れてきたとき、ブレーズはセドリックを応援しようと心に決めた。
ドニは自分よりも低く体も細い。そして目がくりっとしていてタレ目な自分とは違い可愛い顔をしている。
しかも獣人に対する愛が強く、自分も同じなので素直にそれは嬉しかったし仲良くしたいと思った。
だが全てはブレーズの勘違いだった。セドリックはドニが好きな人がいるのを知っていて、鈍い雄のためにと当て馬になったというわけだ。
そこには恋愛感情ではなく大好きなふたりに幸せになってほしかった、早い話はセドリックはおせっかいを焼いただけだったのだ。
その話を聞いて胸のもやもやの正体に気が付いていしまった。それからというものブレーズはセドリックに片思いをしていた。
自分も将来は店で働くつもりだったが、十二歳の時に今後の運命を左右するできごとがあった。
獣人が王宮へくるときは国を挙げて歓迎パレードを行うのだが、一度も見たことがなく獣人のことを話で聞くだけだった。
理由は簡単。親が忙しくて誰も連れていてはくれなかったからだ。本当は見てみたいと思っていたが忙しい親に言い出せずにいた。
そんなブレーズをパレードへ連れて行ってくれたのは兄であった。
すでに店で働いていたが一度は見てみたかったんだと休みをもらったという。きっとブレーズの気持ちに気が付いていたのだ。
パレードがはじまる前だというのに興奮していた。どんな姿なのか、話通りなのかと。
そして獣人の姿を見た衝撃を受けた。そう、あのまま死んでしまうのではないかと思ったくらいに胸が飛び跳ねた。
人のことは違う姿。気高く美しい毛並みと気品あふれる姿に目は話せず、パレードは終わった後も熱が冷めず、兄の手を握りしめていた。
それからというもの獣人の姿が離れず、獣人の国へと行き服を作りたいという夢ができた。
思いは歳を重ねても冷めることなく両親にそのことを相談すると、行って来いと背中を押してもらった。
獣人の国では人の子でも働くことができる。まずは入国許可書を取得し、商売許可書を手に入れなければならない。
しかも商売ができるのは男性のみで、獣人から推薦を貰わなければならない。
入国審査は国の役所へ書類を提出することになる。それの合否は早くて半月かかる。
ただし獣人の国からの招待客は入国許可書を所得する必要がないそうだ。
許可をもらうと証明書が発行される。それが身分証となるので三年に一度、申請のために人の子の国へと戻らねばならない。
そして商売をするためには獣人からの推薦状があると有利となる。それは父がコネを使い用意してくれた。しかも店を出すための資金もだ。家族の応援と獣人愛でブレーズは頑張った。
店を始めるにも誰も知り合いがおらず、心細い時もあった。そんな日は買い物をするために街に出るのだが、別の場所へもいってみようと歩いていたら道に迷ってしまった。
セドリックはブレーズにできた初めての獣人の友人だった。
まだ獣人の国に慣れていないころ、道に迷っていたところを助けてくれたのがはじまりだ。
たてがみともふもふな首毛をもった真っ白い美しい毛並みの獣人だ。
獣人は人の子よりも体格に優れているものが多く、彼も二メートルはあるだろう。
ブレーズの背は一七六センチあるが、人の子の国では別に自分の背丈を低いとは感じなかったが、獣人の国へときてからは店へくるお客を見上げることが多い。
黒い制服を着てマントをしていた。それがとても似合っていて見惚れてしまった。
その時に彼が騎士であることを聞き、自分はこの国で店を開くのだと話をしたわけだ。
オープンをしたら遊びに行くよと言ってはくれたが本気にはしていなかった。だから店のオープン日にはスタンド花を贈ってくれた時は驚いたし、数日後に店に来てくれたことが嬉しかった。
気さくで優しくて頼りがいがある。そんな彼を友として好きになるのはあっという間だった。
だが、この頃はなにか様子がおかしい。
セドリックを見るとやたらときらきらとして見てるし、今まで通りに話をしているだけなのに顔を見ると胸が弾むのだ。
その正体に気が付いたのは、セドリックの口からよく出てくる「ドニ」という人の子の存在でだ。
ドニのことを話すときのセドリックはとても楽しそうで、まるで恋をしているかのようだった。
友が恋をしている。驚きとともに心の奥底には黒くもやもやとしたものを感じた。
その子を店に連れてきたとき、ブレーズはセドリックを応援しようと心に決めた。
ドニは自分よりも低く体も細い。そして目がくりっとしていてタレ目な自分とは違い可愛い顔をしている。
しかも獣人に対する愛が強く、自分も同じなので素直にそれは嬉しかったし仲良くしたいと思った。
だが全てはブレーズの勘違いだった。セドリックはドニが好きな人がいるのを知っていて、鈍い雄のためにと当て馬になったというわけだ。
そこには恋愛感情ではなく大好きなふたりに幸せになってほしかった、早い話はセドリックはおせっかいを焼いただけだったのだ。
その話を聞いて胸のもやもやの正体に気が付いていしまった。それからというものブレーズはセドリックに片思いをしていた。
10
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
獣人の子育ては経験がありません
三国華子
BL
36歳シングルファーザー
転生したら、見た目は地味になったけど、可愛い子供ができました。
異世界で、二度目の子育て頑張ります!!!
ムーンライトノベルズ様にて先行配信しております。
R18要素を含むタイトルに「※」をつけます。
感想はネタバレも公開することにしました。ご覧になる場合はご注意下さい。
婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》
クリム
BL
「婚約を破棄します」相手から望まれたから『婚約破棄』をし続けた王息のサリオンはわずか十歳で『婚約破棄王子』と呼ばれていた。サリオンは落実(らくじつ)故に王族の容姿をしていない。ガルド神に呪われていたからだ。
そんな中、大公の孫のアーロンと婚約をする。アーロンの明るさと自信に満ち溢れた姿に、サリオンは戸惑いつつ婚約をする。しかし、サリオンの呪いは容姿だけではなかった。離宮で晒す姿は夜になると魔獣に変幻するのである。
アーロンにはそれを告げられず、サリオンは兄に連れられ王領地の魔の森の入り口で金の獅子型の魔獣に出会う。変幻していたサリオンは魔獣に懐かれるが、二日の滞在で別れも告げられず離宮に戻る。
その後魔力の強いサリオンは兄の勧めで貴族学舎に行く前に、王領魔法学舎に行くように勧められて魔の森の中へ。そこには小さな先生を取り囲む平民の子どもたちがいた。
サリオンの魔法学舎から貴族学舎、兄セシルの王位継承問題へと向かい、サリオンの呪いと金の魔獣。そしてアーロンとの関係。そんなファンタジーな物語です。
一人称視点ですが、途中三人称視点に変化します。
R18は多分なるからつけました。
2020年10月18日、題名を変更しました。
『婚約破棄王子は魔獣に愛される』→『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』です。
前作『花嫁』とリンクしますが、前作を読まなくても大丈夫です。(前作から二十年ほど経過しています)
《完結》狼の最愛の番だった過去
丸田ザール
BL
狼の番のソイ。 子を孕まねば群れに迎え入れて貰えないが、一向に妊娠する気配が無い。焦る気持ちと、申し訳ない気持ちでいっぱいのある日 夫であるサランが雌の黒い狼を連れてきた 受けがめっっっちゃ可哀想なので注意です ハピエンになります ちょっと総受け。
オメガバース設定ですが殆ど息していません
ざまぁはありません!話の展開早いと思います…!
【R18】満たされぬ俺の番はイケメン獣人だった
佐伯亜美
BL
この世界は獣人と人間が共生している。
それ以外は現実と大きな違いがない世界の片隅で起きたラブストーリー。
その見た目から女性に不自由することのない人生を歩んできた俺は、今日も満たされぬ心を埋めようと行きずりの恋に身を投じていた。
その帰り道、今月から部下となったイケメン狼族のシモンと出会う。
「なんで……嘘つくんですか?」
今まで誰にも話したことの無い俺の秘密を見透かしたように言うシモンと、俺は身体を重ねることになった。
オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。
篠崎笙
BL
薬学部に通う理人は植物採集に山に行った際、救世主として異世界に召喚されるが、熊の獣人に拾われてツガイにされてしまい、もう元の世界には帰れない身体になったと言われる。そして、世界の終わりの原因は伝染病だと判明し……。
【完結】生贄赤ずきんは森の中で狼に溺愛される
おのまとぺ
BL
生まれつき身体が弱く二十歳までは生きられないと宣告されていたヒューイ。そんなヒューイを村人たちは邪魔者とみなして、森に棲まう獰猛な狼の生贄「赤ずきん」として送り込むことにした。
しかし、暗い森の中で道に迷ったヒューイを助けた狼は端正な見た目をした男で、なぜかヒューイに「ここで一緒に生活してほしい」と言ってきて……
◆溺愛獣人攻め×メソメソ貧弱受け
◆R18は※
◆地雷要素:受けの女装/陵辱あり(少し)
【完結】バングル売りのナディル 〜俺のつがいは獅子獣人の次期領主様〜
N2O
BL
番を溺愛する次期領主(獅子獣人)×獣人に苦手意識を持つ黒髪癖毛青年(人間)
ご都合主義です。
獣人も好きなので、書いてみました。
楽しんでいただければ幸いです。
R18シーンは少なめ。
表紙絵
⇨おむ・ザ・らいす様 X(@mgmggat)
※同じ世界線の別CPあります☺︎
『木の実のお菓子屋さん〜リスと狼の獣人の話〜』もよろしければ✌︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる