獣人ハ恋ヲスル

希紫瑠音

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愛おしくてたまらない(2)

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◇…◆…◇



 成人の儀で王都へと向かう日が近づくにつれ、ロシェに会えない日々を想うと辛くなる。

 そこまでファブリスの心は、彼に対する想いが占めている。

 初めてロシェに触れ、そこから欲が収まらなくなった。今までなら剣を振るえばどうにか落ち着いていた。だが、今では触れて感じないと物足りなさを感じてしまう。

 ロシェが欲しい。身も心も全部。

 甘えるなんて、今までしたことがない。子供のような真似をしてでも彼を手に入れたかったのだ。



 それを咥えた時、流石に尻尾が逆立ってしまった。食いちぎられると思ってしまったからだ。

 だが、よくよく考えてみれば人の子は獣人とは違う。鋭い牙は無いのだから。

 しかもそれがすごく気持ちが良い。

「ふ、人の子はいいな。こんなに俺のモノを気持ち良くしてくれるのだから」

 じゅるじゅると吸い上げられ、その中でイってしまいたいが、流石にあれをロシェの口へと放つつもりはない。

 もう限界だ。

「ロシェ、もう、出るから」

 だが咥えたまま、更に強く吸われてしまう。

「くっ、駄目だ」

 余裕のない姿に、ロシェはどこか楽しそうで。

 そういうことかと、後頭部を抑え込みさらに深く押し込むと、そこへ欲を放った。

「うっ」

 流石にそうくるとは思わなかったのだろう。口を押えながら目をつぶる。

「すまん、飲んでしまったか」
「平気だ。ドニの薬はこれより不味い」
「はは、そうか」

 水面を叩く音と共に、耳元に甘い吐息がかかる。

 向き合いながら抱き合うかたちで湯船につかっているのだが、ロシェの中にはファブリスのモノが入り込んでいた。

「あ、あぁっ……」
「すごくいい」

 顔がぐしゃりと歪む。

 泣いているのかと頬を掌で包み込むと、口角を上げた。

「お前の望みをかなえてやるよ」

 鼻先に唇が触れ、爪で傷つけぬように指を曲げて胸の粒を挟み込む。身体をそらしながら腰が揺れ、張り湯が音をたてる。

「ファブリス」

 ぐったりと身を預けてくる。このままではのぼせてしまう。

「続きはベッドで。いいだろうか?」
「好きにしろと、いったはずだ」

 その身をタオルに包み抱き上げる。

 ベッドにおろし、再び互いを繋ぎ合う。

 すんなりと自分を受け入れ、あふれ出るくらいに欲を注いだ。

「ふ、もう、無理……」

 ロシェの身体じゅうに行為の痕が残り、それを満足げに見つめてゆるゆると尻尾を揺らす。

「まったく。どんだけマーキングするんだよ、お前は」

 火傷の跡には噛み痕がある。鬱血が目立たないので甘噛みをしたのだ。

 ロシェは特にそれが弱いようで、泣いて身体を善がらせる。それが可愛くてたまらない。

「お前は俺のモノだという証を残したいんだ」
「はっ。こんなもん、お前が戻るころには消えてるさ」

 といった途端、ロシェの目から涙が流れ落ちる。

 それに驚き目を見開く。

「くそっ」
「ロシェ」
「べつに、寂しいとか、そんなんじゃ……」
「俺と同じ気持ちなんだな?」

 顔を背けるロシェの、耳が真っ赤に染まっている。

「お前が、寂しいって甘えるからだ。俺にまでそいつが感染したっ」
「あぁ、嬉しいよ。ロシェ、これを受け取ってはくれないだろうか」

 枕の下に隠しておいた箱を取り出し、蓋を開いてロシェの方へと向ける。中にはカフスが入っていた。

 それは数日前からファブリスの耳につけられているピアスと同じ、真っ赤な宝石の雫がついている。

 相手に婚姻を申し込むときに、同じ宝石で作ったアクセサリーを手渡す。

 それを告げるとロシェが眉をひそめる。

「はぁ? 婚姻って、俺は男だし人だぞ」
「性別など関係あるのか? 愛しいと思う気持ちに」

 好きだという気持ちを素直に告げるのはあたりまえだし、それがお互い通じ合っているのなら問題はないはずだ。

 何もこまることはない。首を傾げるファブリスにロシェがため息をつく。

「……うん、そうだな。よし、ファブリス、俺につけてくれないか」

 何かを納得したように言葉を飲み込み、そして髪を掻きあげて耳をだす。

 耳にカフスをつけ、かるくキスをする。

「ファブリス、お礼だ」

 と鼻先にキスをし、ファブリスの目が驚きに見開かれる。

「ロシェ、これは」
「鼻先にキスをするのは、そういう意味なんだろう?」

「あぁ、そうだ」
「ファブリス、俺を長く待たせるなよ。でないと浮気するぞ」

 そんな真似はしないと解っている。だが、あえてそう口にするのは素直じゃないロシェからの「早く帰ってこい」という言葉だろう。

「あぁ。待たせはしない」

 宝石を受け取ってくれたのだ。次に会う時、この宝石の意味を伝えよう。

 その時、どういう反応を見せてくれるのかを楽しみに、この暖かい気持ち持って王都へ。

「ロシェ」

 尻尾を優しく撫でる手。愛おしくて胸が胸が詰まり苦しくなる。

「ファブリス」

 愛している。

 互いの鼻先が触れ、そして腕の中に抱きしめた。
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