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性急すぎる恋
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この頃、甘いものでつろうとしていないだろうか。
その手についのってしまうのは、ファブリスが作る物が美味いからだ。
バタークリームは特に気に入った。ドニも顔をトロンとさせながらケーキを味わっていた。
もしかしたら自分もあんな表情をしているのだろうか。だとしたら恥ずかしい。
「二人ともすっかり気に入ったようだな」
「うん。すごく美味しい。ね、ロシェ」
「そうだな」
眉間にシワを寄せていれば、ドニの指がそこを押した。
「ほら、素直に美味しいって顔をしなよ。あ、もしかしてファブリスに見せたくないの?」
「うるさい。黙って食え」
「いつもはそんな事を言わないのに」
更に睨みつけると、ドニは意味ありげに含み笑いをし、シリルと話し始める。
「ロシェ、気に入らないんだろうか?」
「別に、そういうんじゃ……」
素直な性格をしていないので、美味いと褒める事も出来なくて口ごもる。
「そうか」
何故か嬉しそうに眼を細めているファブリスに、フンと鼻を鳴らして顔を背けた。
お腹がいっぱいになり、暫く部屋の中にあるソファーに横になりたい。
「俺、中で昼寝するわ」
話をしている三人に、そう言葉で遮る。
「まて。お前たちがいつでも泊まれるようにと部屋を用意した。だからそこで寝ると良い」
ドニがそれをきいて嬉しそうにシリルの手を握りしめた。
「嬉しい。お泊り出来るように部屋を用意してくれただなんて」
「だから、良ければ泊まって行け」
「うん、泊まりたい。良いよね、ロシェ」
「あぁ」
どうせ嫌だと言っても無駄だろう。ドニだけではなくシリルも泊まってほしいようだし、ファブリスも何か手をつかってでも泊めようとしそうだから。
「やった。じゃぁ、お世話になります」
嬉しそうな二人を眺めるファブリスは優しい目をしている。
ふ、と、こちらへと視線が向き、その表情を見た途端、何故か胸が激しく高鳴った。
「二人とも、部屋へ案内しよう」
「うん。ロシェ、行こう」
「あ、あぁ」
落ち着かぬままの胸を押さえ、ファブリスについて二階へと向かう。
「シリルの隣の部屋はドニ、ロシェはこっちだ」
部屋にはベッドと小さな棚意外に何もないが、窓にはカーテンが掛けてある。
そして、不格好ながらも丈夫な作りのベッドが置いてあり、布団もふかふかで寝心地が良さそうだ。
「嬉しい。ベッド、手作りなの?」
「そうだ」
なんでもできるということにドニはすごいねと口にするが、ロシェは素直じゃないから何も言わないでいると、ファブリスが気にしてこちらを見る。
「まぁ、見た目があれだがな。気に入ってもらえただろうか」
「うん。ね、ロシェ」
「ま、いいんじゃねぇの。あまり完璧にやられると逆に引くし」
ひねくれた物言いしかできないのに、ファブリスは尻尾を揺らした。
「じゃ早速」
と、隣の部屋へと向かう。
「ゆっくり休んでくれ」
ファブリスがそう声を掛けてよこす。それに応えるように手をあげてベッドに横になった。
なんとも気持ちがよい。すぐに意識は深く眠りへとおちていった。
外はすっかり星空になっており、あくびをしながら伸びをする。
カーテンを開ければ、月明かりが淡く部屋を照らす。
ドアがノックされ、返事をすれば入るぞとファブリスの声がする。
「ロシェ、起きたか」
手にしたランプに照らされたファブリスは、バスケットを手にしていた。
「夕食だ」
と手渡され、ベッドに腰を下ろして中を見ればサンドウィッチとスープが入っていた。
それをこぼれぬようにとりだす。まだ温かく、一口飲むと優しい味がしてホッとする。
「随分と寝てたようだな」
「そうだな。もう二人も一緒に寝てしまったぞ」
「そうか。仲が良い事で」
ドニとシリルは本当に仲が良い。付き合いはロシェの方が長いのだが、ドニと一緒に寝たのは幼い頃までだ。
なんだか微笑ましいなと口元が緩む。そんなロシェを暖かく見つめるファブリスと視線があう。
「俺達も、だろう?」
と手が頬をゆるりと撫でた。
大きな手だ。これに触れられたのかと思うと身体が熱くなる。
今までの自分は決して微笑ましいと思ったり、この手を受け入れる事は無かっただろう。
ロシェはファブリスの言葉に答えず、サンドウィッチにかぶりつく。
鳥肉と卵をはさみタレがついている。それがすごく美味くて、一気に食べ終える。残ったスープを飲み干す。
「ごちそーさん」
「あぁ」
バスケットを手にしたまま、こちらを見つめている。まだ何か用でもあるのだろうか。
「なに?」
「ロシェ、我らも一緒に入らぬか?」
今まで誘われたことなど一度もなかった。火傷の事もあり、ロシェがそういうのが好きではない事に気が付いていたと思っていたのに。
「一人で入れよ」
ファブリスから下心を感じてしまうのは、先ほどの行為のせいか。ただではすまなそうな気がする。
「それならば、先ほどの続きをしよう」
「冗談じゃねぇよ。調子に乗んな、んっ」
強引に口づけをされ、長い舌が口内を舐めまわす。
「ふぁ」
欲を煽るような口づけに、力が抜けてそのままベッドへ組み敷かれた。
その手についのってしまうのは、ファブリスが作る物が美味いからだ。
バタークリームは特に気に入った。ドニも顔をトロンとさせながらケーキを味わっていた。
もしかしたら自分もあんな表情をしているのだろうか。だとしたら恥ずかしい。
「二人ともすっかり気に入ったようだな」
「うん。すごく美味しい。ね、ロシェ」
「そうだな」
眉間にシワを寄せていれば、ドニの指がそこを押した。
「ほら、素直に美味しいって顔をしなよ。あ、もしかしてファブリスに見せたくないの?」
「うるさい。黙って食え」
「いつもはそんな事を言わないのに」
更に睨みつけると、ドニは意味ありげに含み笑いをし、シリルと話し始める。
「ロシェ、気に入らないんだろうか?」
「別に、そういうんじゃ……」
素直な性格をしていないので、美味いと褒める事も出来なくて口ごもる。
「そうか」
何故か嬉しそうに眼を細めているファブリスに、フンと鼻を鳴らして顔を背けた。
お腹がいっぱいになり、暫く部屋の中にあるソファーに横になりたい。
「俺、中で昼寝するわ」
話をしている三人に、そう言葉で遮る。
「まて。お前たちがいつでも泊まれるようにと部屋を用意した。だからそこで寝ると良い」
ドニがそれをきいて嬉しそうにシリルの手を握りしめた。
「嬉しい。お泊り出来るように部屋を用意してくれただなんて」
「だから、良ければ泊まって行け」
「うん、泊まりたい。良いよね、ロシェ」
「あぁ」
どうせ嫌だと言っても無駄だろう。ドニだけではなくシリルも泊まってほしいようだし、ファブリスも何か手をつかってでも泊めようとしそうだから。
「やった。じゃぁ、お世話になります」
嬉しそうな二人を眺めるファブリスは優しい目をしている。
ふ、と、こちらへと視線が向き、その表情を見た途端、何故か胸が激しく高鳴った。
「二人とも、部屋へ案内しよう」
「うん。ロシェ、行こう」
「あ、あぁ」
落ち着かぬままの胸を押さえ、ファブリスについて二階へと向かう。
「シリルの隣の部屋はドニ、ロシェはこっちだ」
部屋にはベッドと小さな棚意外に何もないが、窓にはカーテンが掛けてある。
そして、不格好ながらも丈夫な作りのベッドが置いてあり、布団もふかふかで寝心地が良さそうだ。
「嬉しい。ベッド、手作りなの?」
「そうだ」
なんでもできるということにドニはすごいねと口にするが、ロシェは素直じゃないから何も言わないでいると、ファブリスが気にしてこちらを見る。
「まぁ、見た目があれだがな。気に入ってもらえただろうか」
「うん。ね、ロシェ」
「ま、いいんじゃねぇの。あまり完璧にやられると逆に引くし」
ひねくれた物言いしかできないのに、ファブリスは尻尾を揺らした。
「じゃ早速」
と、隣の部屋へと向かう。
「ゆっくり休んでくれ」
ファブリスがそう声を掛けてよこす。それに応えるように手をあげてベッドに横になった。
なんとも気持ちがよい。すぐに意識は深く眠りへとおちていった。
外はすっかり星空になっており、あくびをしながら伸びをする。
カーテンを開ければ、月明かりが淡く部屋を照らす。
ドアがノックされ、返事をすれば入るぞとファブリスの声がする。
「ロシェ、起きたか」
手にしたランプに照らされたファブリスは、バスケットを手にしていた。
「夕食だ」
と手渡され、ベッドに腰を下ろして中を見ればサンドウィッチとスープが入っていた。
それをこぼれぬようにとりだす。まだ温かく、一口飲むと優しい味がしてホッとする。
「随分と寝てたようだな」
「そうだな。もう二人も一緒に寝てしまったぞ」
「そうか。仲が良い事で」
ドニとシリルは本当に仲が良い。付き合いはロシェの方が長いのだが、ドニと一緒に寝たのは幼い頃までだ。
なんだか微笑ましいなと口元が緩む。そんなロシェを暖かく見つめるファブリスと視線があう。
「俺達も、だろう?」
と手が頬をゆるりと撫でた。
大きな手だ。これに触れられたのかと思うと身体が熱くなる。
今までの自分は決して微笑ましいと思ったり、この手を受け入れる事は無かっただろう。
ロシェはファブリスの言葉に答えず、サンドウィッチにかぶりつく。
鳥肉と卵をはさみタレがついている。それがすごく美味くて、一気に食べ終える。残ったスープを飲み干す。
「ごちそーさん」
「あぁ」
バスケットを手にしたまま、こちらを見つめている。まだ何か用でもあるのだろうか。
「なに?」
「ロシェ、我らも一緒に入らぬか?」
今まで誘われたことなど一度もなかった。火傷の事もあり、ロシェがそういうのが好きではない事に気が付いていたと思っていたのに。
「一人で入れよ」
ファブリスから下心を感じてしまうのは、先ほどの行為のせいか。ただではすまなそうな気がする。
「それならば、先ほどの続きをしよう」
「冗談じゃねぇよ。調子に乗んな、んっ」
強引に口づけをされ、長い舌が口内を舐めまわす。
「ふぁ」
欲を煽るような口づけに、力が抜けてそのままベッドへ組み敷かれた。
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