短編集

希紫瑠音

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夏休みの過ごし方

5-1

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 巧巳が友達を呼ぶのは初めてのことだ。

 やたらと母親が嬉しそうだったのは、高貴が背が高くカッコいいからだろう。

 浴衣を出して合わせていた時も、きっとよく似合うわよと目を輝かせていた。

「母さん、後は俺がやるから」
「えぇっ、わかったわよ。また後でね、高貴君っ」

 渋々と部屋を出ていく母親に、高貴は明るい母親だなと笑っている。

「恥ずかしい……」
「えぇ、いいじゃん。俺の母ちゃんと合いそう」

 きっと明るくて話し上手な母親なのだろうと想像し、出してもらった浴衣を高貴にあてた。

「うん、確かに似合うだろうな」

 顔を覗き込めば、

「そう、かな」

 照れつつ視線を外されてしまう。

「どうする、俺が着せようか?」
「うんん。巧巳が着るのを見ながら着てみるよ」
「わかった」

 ポロシャツとズボンを脱ぎ、パンツ一枚となる。

 その姿をティーシャツを脱いだ格好で高貴が見つめていた。

「高貴?」
「あ、あぁ。ごめん。いつみても良い身体で」
「俺の身体が好きだな」

 プールの時も思ったことだが、やたらと身体を見られる。

 あまりじろじろと見られるのは好きではないが、高貴に対しては不思議とそ思わない。目元を赤く染めて色っぽい目で見つめてくるのだから。

 自分は決してナルシストではないとは思うが、その時だけはもっと俺を見ろと思ってしまうのだ。

「あ、う……、憧れるというか」

 さらに顔を赤くした高貴に、何故だろう、つい、

「触れるか?」

 と手を掴んでいた。

「え?」

 戸惑う高貴に、

「あぁ、すまん。触りたいのかと思った」

 流石にこれは引くよなと、馬鹿げたことをしてしまったと手を離すが、次の瞬間、その身を高貴に抱きしめられた。

「高貴っ」
「巧巳が、悪いんだからな」

 と唇に柔らかくて暖かいモノが触れた。

「んっ」

 キスをしている。

 あまりの驚きに頭の中は真っ白になり、抵抗をすることも出来ぬままそれを受け入れていた。

 舌が歯列をなで、舌が絡みつく。

 こんな感覚ははじめてで、やたらと身体が熱くなるし芯が甘く痺れてしまう。

「たくみ」

 高貴は行為に夢中で、巧巳は力が抜けて畳に膝をついた。そのまま押し倒されるようなカタチとなり、互いの視線が合う。

 そこで我に返った。

 身体が離れ、高貴がごめんと呟く。

 キスをしてしまったことを後悔している。顔にそうかいてあった。

 熱がひき、頭の中が冷静になる。

 きっと次に出る行動は、脱いだティーシャツを着て帰るというだろう。

 案の定、ティーシャツを手にしたところで、巧巳は身を起こして高貴の腕をつかんだ。

「巧巳、俺っ」

 引き止められるとは思わなかったのだろう。離してと言う高貴に、巧巳は駄目だと首を横に振る。

「帰るな。祭りに行くと約束した」

 ここで手を離したら高貴を失う。ただのクラスメイトという関係にはもう戻りたくはない。

「ごめん、もう無理だよ……」

 好きなんだと、高貴が呟いた。

 あの熱い視線の意味はそういうことだったのか。

 心にすとんと落ちる。そうか、だから高貴の視線もキスも不愉快に感じなかったのだ。

 自分もきっと同じ意味で……。

「それならば俺の傍に居ろ」
「何を言っているか解っているのか?」
「あぁ、解っている」

 目を見開きながら見つめる高貴に、今度は自分の方からキスをする。

「巧巳っ」

 互いに想いは一緒だ。

 それが通じたようで高貴が照れながら抱きしめられた。
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