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夏休みの過ごし方
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冷房の効いた本屋に入った途端、二人してホッとため息をつく。
「生きた心地がする」
「確かに」
何処に向かうのかと思えば、度道府県の旅行ガイドブックが置かれた棚だった。
「土日に遊ぶところを決めよう」
と一冊の本を手渡される。地元が紹介されているガイドブックだ。
背後に立ち、少し横へとずれた所でピタリとくっついてきて、何事かと高貴を見れば、
「ほら、ページ捲って」
どうやら一緒に一冊の本をみるようで、驚きつつも友人同士はこういうものなのかと素直に頁をめくる。
「お、美味そう」
遊びとグルメと書かれた文字と、食べ物の写真。
丁度、お腹がすく時間帯だ。食べものについ目がいってしまうのは仕方がないことだ。
「ここの喫茶店って夏限定で、ふわふわなかき氷が食べられるんだって。女子に聞いた」
隣に移動してきたが、その距離感は相変わらず近くて緊張してしまう。
「……そうなのか」
きっと彼はもてるのだろうなと思う。女子に優しくしている姿を思い浮かべ、なぜか胸がモヤっとしてしまう。
自分にはできないことを彼は普通にこなしてしまうだろう、きっとそれを羨ましく思ったのだろう。
「駅とは反対側なんだよな。今度、食いに行こうぜ」
女子でなくていいのかと口にしそうになりやめた。折角、自分を誘ってくれたのだから素直に返事をしよう。
「あぁ、今度な」
「これも夏の楽しみの一つかな」
と、話題は次へとうつる。
頁をめくる度に、小さな頃の思いでからつい最近のことまで、表情をコロコロとかえながら話聞かせてくれる。
それが楽しくて、クスクスと声をあげて笑っていた。
「えへへ、なんか嬉しい」
「ん?」
何が嬉しいのだろうかと、小首を傾げれば、
「巧巳が俺の話に笑ってくれて」
と、指で口角を上げてニッコリと笑う。
「あ……」
それは自然とでた笑いであり、高貴に気を許しているということだ。
「もっと笑顔、みたいな」
そう、ふわりと微笑む彼は、天然のタラシではないだろうか。ただ、相手が女子でないのが残念だと思うが。
「そのために、夏休みの楽しみ方を教えてくれるのだろう?」
わざとぶっきらぼうに言うと本を彼の方へと押し付けた。
「そうなんだけどね。あ、そうだ。プールとか、どう」
泳げるのかと聞かれ、たまに勉強の息抜きで泳いでいることを話す。
「へぇ、だからか……。じゃぁ、地元でメジャーなトコだけど、行っちゃう?」
とスマホを取り出してホームページを開いた。プールへは遊ぶ目的で行ったことはなく、そこは名前だけは聞いたことがあるという程度だった。
「ウォータースライダーがあるんだな」
「ここ、去年、リニューアルしたんだよ」
泳ぐだけならジムのプールで十分。だが、遊びとなるとウォータースライダーや波のプールは興味がそそられる。
「楽しそうだな」
「楽しいよ。あ、そうだ。他の奴等も呼ぼうか?」
大勢も楽しいぞと言われ、やはり自分だけではつまらないのだろうかと、楽しいという気持ちが一気に落ちていく。
「あ……、嫌だった?」
顔に出ていたのだろうか。
空気が読めない奴と、一度、誰かに言われたことがある。
それを思い出して顔が強張っていく。
「すまない、あまり大勢で行くのは慣れていないから」
「そっか。俺こそごめん。二人きりなら、良いかな?」
プールが嫌なんじゃないよね、と、心配そうにこちらを窺っている。
「あぁ、プールは嫌じゃない」
「よかった。じゃぁ、二人で行こう」
土曜に駅前で待ち合わせをすることになり、楽しみだねと高貴の言葉に頷いた。
「生きた心地がする」
「確かに」
何処に向かうのかと思えば、度道府県の旅行ガイドブックが置かれた棚だった。
「土日に遊ぶところを決めよう」
と一冊の本を手渡される。地元が紹介されているガイドブックだ。
背後に立ち、少し横へとずれた所でピタリとくっついてきて、何事かと高貴を見れば、
「ほら、ページ捲って」
どうやら一緒に一冊の本をみるようで、驚きつつも友人同士はこういうものなのかと素直に頁をめくる。
「お、美味そう」
遊びとグルメと書かれた文字と、食べ物の写真。
丁度、お腹がすく時間帯だ。食べものについ目がいってしまうのは仕方がないことだ。
「ここの喫茶店って夏限定で、ふわふわなかき氷が食べられるんだって。女子に聞いた」
隣に移動してきたが、その距離感は相変わらず近くて緊張してしまう。
「……そうなのか」
きっと彼はもてるのだろうなと思う。女子に優しくしている姿を思い浮かべ、なぜか胸がモヤっとしてしまう。
自分にはできないことを彼は普通にこなしてしまうだろう、きっとそれを羨ましく思ったのだろう。
「駅とは反対側なんだよな。今度、食いに行こうぜ」
女子でなくていいのかと口にしそうになりやめた。折角、自分を誘ってくれたのだから素直に返事をしよう。
「あぁ、今度な」
「これも夏の楽しみの一つかな」
と、話題は次へとうつる。
頁をめくる度に、小さな頃の思いでからつい最近のことまで、表情をコロコロとかえながら話聞かせてくれる。
それが楽しくて、クスクスと声をあげて笑っていた。
「えへへ、なんか嬉しい」
「ん?」
何が嬉しいのだろうかと、小首を傾げれば、
「巧巳が俺の話に笑ってくれて」
と、指で口角を上げてニッコリと笑う。
「あ……」
それは自然とでた笑いであり、高貴に気を許しているということだ。
「もっと笑顔、みたいな」
そう、ふわりと微笑む彼は、天然のタラシではないだろうか。ただ、相手が女子でないのが残念だと思うが。
「そのために、夏休みの楽しみ方を教えてくれるのだろう?」
わざとぶっきらぼうに言うと本を彼の方へと押し付けた。
「そうなんだけどね。あ、そうだ。プールとか、どう」
泳げるのかと聞かれ、たまに勉強の息抜きで泳いでいることを話す。
「へぇ、だからか……。じゃぁ、地元でメジャーなトコだけど、行っちゃう?」
とスマホを取り出してホームページを開いた。プールへは遊ぶ目的で行ったことはなく、そこは名前だけは聞いたことがあるという程度だった。
「ウォータースライダーがあるんだな」
「ここ、去年、リニューアルしたんだよ」
泳ぐだけならジムのプールで十分。だが、遊びとなるとウォータースライダーや波のプールは興味がそそられる。
「楽しそうだな」
「楽しいよ。あ、そうだ。他の奴等も呼ぼうか?」
大勢も楽しいぞと言われ、やはり自分だけではつまらないのだろうかと、楽しいという気持ちが一気に落ちていく。
「あ……、嫌だった?」
顔に出ていたのだろうか。
空気が読めない奴と、一度、誰かに言われたことがある。
それを思い出して顔が強張っていく。
「すまない、あまり大勢で行くのは慣れていないから」
「そっか。俺こそごめん。二人きりなら、良いかな?」
プールが嫌なんじゃないよね、と、心配そうにこちらを窺っている。
「あぁ、プールは嫌じゃない」
「よかった。じゃぁ、二人で行こう」
土曜に駅前で待ち合わせをすることになり、楽しみだねと高貴の言葉に頷いた。
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