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夏休みの過ごし方
2-1
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ご機嫌だな、と前岡に言われるまで表情に出ていたことすら気が付かなかった。
それが恥ずかしく、眉間にしわを寄せる。
「ありゃ、折角、良い感じに和らいていたのになぁ。お前は堅物過ぎなんだ」
「……はぁ」
真面目そうとはよく言われてきた。
クラスメイトと話はするが、ふざけ合うようなことはしたことがない。
きっとつまらない奴だと思われているだろう。前岡もそう思ったに違いない。
「橋本は、その表情が頂けないなぁ」
近寄りがたく見えるんだと、両頬を掴まれて笑顔にされる。
「せんせ……」
「うん、可愛くない笑顔だなぁ」
とゲラゲラと声を上げて笑う。なんて酷い教師だ。
「結構、イイと思うけど」
いつの間に来たのか。前岡の背後からその様子を見つめていた。
高貴は百七十五センチの巧巳や同じ背丈位の前岡より数センチとびぬけている。
しかも背伸びしているのか、視線は更に上にあり、前岡の肩につかまり頭に顎をのせていた。
「こら、重い」
「えぇ、だってさ、前ちゃんが巧巳とイチャついているから、俺もって」
苛められているというならわかるが、コレのどこがいちゃついてみえるのか。
やっと頬から手が離れ、高貴も前岡から離れた。
「巧巳を笑顔にするのは前ちゃんじゃなくて俺の役目でしょっ」
そんなことを素で言うなんて。
前岡が口を押えて、惚れちゃいそうなんて言いながら茶化す。
確かに、自分が女子であったら惚れてしまうかもしれない。男である自分ですら、胸が高鳴ったのだから。
「ていうか、お前等、名前で呼び合っているのな」
「これから一緒に遊ぶわけだし、俺が第一号って訳。徐々にクラスメイトを下の名前で呼ぶ……、ふがっ」
これ以上、余計なことを言いだす前に高貴の口を手でふさいだ。
「よし、よし。良い感じに友情を育んでいるな」
その調子だと肩を叩き、今日の補習が始まった。
高貴の集中力が何度か途切れ、合間に休憩を入れつつもなんとか午前中を乗り切る。
「よっしゃ、終わった」
チャイムが鳴ると同時に問題集を閉じて鞄の中へと突っ込んだ。
「はやいな」
あと少しだけ問題を解きたかったが、勝手にこちらの問題集まで閉じられてしまった。
「勉強の時間はおしまい。今日は本屋さんに寄って帰るぞ」
はやく、と急かされてため息をつく。
余程、補習から解放されたいようだ。
「わかった」
机の上の物を鞄にしまって起ちあがる。
「先生、お先に失礼します」
「前ちゃん、バイバイ」
「おう、気を付けて帰れよ、二人とも」
会釈をする巧巳と手を振る高貴に応えるように前岡が手を上げる。
教室もだが、廊下も人がいないせいか、少しだけひんやりとしており、靴を履いて外へと出るとムッとした暑さが襲ってくる。
「あちぃ……」
だらりと歩く高貴に、流石に巧巳も暑さには勝てず、そうなってしまう気持ちがわからなくもない。
「本屋までの我慢だ」
「うーん、じゃぁ、本屋まで引っ張ってよ」
両腕をこちらに伸ばしてきて、手首を掴めば、すぐに汗ばんできて二人して離れる。
「そうなるよな」
「そうだね」
触れること自体、熱を感じる。
慣れていないというのもあるが、高貴は巧巳の中で少し特別な存在であった。
じっと手を見つめていれば、どうしたのとこちらを窺う視線とぶつかる。
「あ、いや、別に」
「そう。じゃぁ、はやいとこ涼みに行こう」
と少し前を歩き出す。その後に続き、本屋へと向かった。
それが恥ずかしく、眉間にしわを寄せる。
「ありゃ、折角、良い感じに和らいていたのになぁ。お前は堅物過ぎなんだ」
「……はぁ」
真面目そうとはよく言われてきた。
クラスメイトと話はするが、ふざけ合うようなことはしたことがない。
きっとつまらない奴だと思われているだろう。前岡もそう思ったに違いない。
「橋本は、その表情が頂けないなぁ」
近寄りがたく見えるんだと、両頬を掴まれて笑顔にされる。
「せんせ……」
「うん、可愛くない笑顔だなぁ」
とゲラゲラと声を上げて笑う。なんて酷い教師だ。
「結構、イイと思うけど」
いつの間に来たのか。前岡の背後からその様子を見つめていた。
高貴は百七十五センチの巧巳や同じ背丈位の前岡より数センチとびぬけている。
しかも背伸びしているのか、視線は更に上にあり、前岡の肩につかまり頭に顎をのせていた。
「こら、重い」
「えぇ、だってさ、前ちゃんが巧巳とイチャついているから、俺もって」
苛められているというならわかるが、コレのどこがいちゃついてみえるのか。
やっと頬から手が離れ、高貴も前岡から離れた。
「巧巳を笑顔にするのは前ちゃんじゃなくて俺の役目でしょっ」
そんなことを素で言うなんて。
前岡が口を押えて、惚れちゃいそうなんて言いながら茶化す。
確かに、自分が女子であったら惚れてしまうかもしれない。男である自分ですら、胸が高鳴ったのだから。
「ていうか、お前等、名前で呼び合っているのな」
「これから一緒に遊ぶわけだし、俺が第一号って訳。徐々にクラスメイトを下の名前で呼ぶ……、ふがっ」
これ以上、余計なことを言いだす前に高貴の口を手でふさいだ。
「よし、よし。良い感じに友情を育んでいるな」
その調子だと肩を叩き、今日の補習が始まった。
高貴の集中力が何度か途切れ、合間に休憩を入れつつもなんとか午前中を乗り切る。
「よっしゃ、終わった」
チャイムが鳴ると同時に問題集を閉じて鞄の中へと突っ込んだ。
「はやいな」
あと少しだけ問題を解きたかったが、勝手にこちらの問題集まで閉じられてしまった。
「勉強の時間はおしまい。今日は本屋さんに寄って帰るぞ」
はやく、と急かされてため息をつく。
余程、補習から解放されたいようだ。
「わかった」
机の上の物を鞄にしまって起ちあがる。
「先生、お先に失礼します」
「前ちゃん、バイバイ」
「おう、気を付けて帰れよ、二人とも」
会釈をする巧巳と手を振る高貴に応えるように前岡が手を上げる。
教室もだが、廊下も人がいないせいか、少しだけひんやりとしており、靴を履いて外へと出るとムッとした暑さが襲ってくる。
「あちぃ……」
だらりと歩く高貴に、流石に巧巳も暑さには勝てず、そうなってしまう気持ちがわからなくもない。
「本屋までの我慢だ」
「うーん、じゃぁ、本屋まで引っ張ってよ」
両腕をこちらに伸ばしてきて、手首を掴めば、すぐに汗ばんできて二人して離れる。
「そうなるよな」
「そうだね」
触れること自体、熱を感じる。
慣れていないというのもあるが、高貴は巧巳の中で少し特別な存在であった。
じっと手を見つめていれば、どうしたのとこちらを窺う視線とぶつかる。
「あ、いや、別に」
「そう。じゃぁ、はやいとこ涼みに行こう」
と少し前を歩き出す。その後に続き、本屋へと向かった。
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