小さな食堂

希紫瑠音

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沖と郷田の話

嫉妬する ※

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 郷田の様子がおかしい。

 いつもは優しい目をしているのに、沖を見る目が険しい。

 気が付かぬところで何かやらかしたかと、今日の行動を振りかえってみる。



 朝はまだいつもの郷田だった。美味しそうにご飯を食べ、行ってきますと家を出た。

 今日は定休日なので掃除と洗濯を済ませた後にお弁当を持って家を出た。

 近くの公園で祖母たちが植えた花が見ごろだと聞いていたのでそれを見ながらご飯を食べようと思ったからだ。

 するとその途中で佐木に会った。お昼を買いにコンビニへと向かう途中だったそうだ。

「郷田がうらやましいですよ。沖さんの手作り弁当を食べられて」

 定休日の日は郷田に弁当を作って持たせる。それを見たのだろう。

「あ、これ食べますか?」

 弁当の包みをカバンから取り出すと、

「うわぁ、嬉しいな」

 と喜んでくれた。

「すこし量が少ないですが、かわりにスープ付きです」

 飲み物のかわりにと簡単に作れる中華スープを用意した。

「ありがとう。遠慮なく」

 それを受け取ると、また店に行きますと手を振って署へと戻っていった。

 佐木と別れ公園へと向かい花見をする。

 そこから祖母の家へと向かい、お昼をごちそうになり、煮物をもらって帰ってきた。

 洗濯物をとりこんで夕食の準備をして今に至るわけだが、特に何かやらかした気はしない。

 そうだとすると署で何かあったのだろうか。

 食事中は食べるほうに夢中なのでいつもと変わらないが、気になってしまいそれどころではなく、食事を終えてお茶を飲んでいる郷田に思い切って聞いてみる。

「あのさ、俺、何かしちゃったかな?」
「いえ、なにもないですよ」

 といいつつも顔が怖い。

 絶対に何かあったに違いない。どう聞き出すべきか。

 すると郷田が息を深くはき、沖のほうを見る。その目はいつもの優しいものだった。

「すみません。心の狭い男で」
「え?」

 立ち上がり、

「風呂に行ってきます」

 と部屋を出ていく。

 わかったことは一つ、何かにたいし怒っているということだ。

 話を聞いて謝ろう。

 風呂場へと向かい、ドアをノックする。

「一太君」

 ドアが開き、濡れたままの一太の姿が目に入る。

 引き締まっていて男らしい身体だ。

 思わず見惚れそうになり、今はそれどころではないと理由を聞こうとすると、

「佐木さんが、お弁当ごちそうさまと言ってました」

 という。

「あ、うん。量が少なめだから足りなかったんじゃないかな」
「……はぁ」

 何かを吐き捨てるかのように息を深くため息をつく。

「ねぇ、話してくれないとわからないよ」

 恋人同士なのに黙っていられるほうがつらい。

「わかりました」

 郷田が沖の体を抱き上げる。向かう先は寝室だ。

 ベッドへと寝かされた後にすぐにそこから降りようと身を起こすが、沖の両腕を掴んだ郷田が体重をかけその身を押さえ つけるように覆いかぶさる。 

 軋むベッドの音。息が届く位に近い距離。

 こんな状況でなければ震えるくらいに嬉しい状態なのに、今は郷田が自分をどうしたいのかが解らなくて戸惑う。

「なぜ、佐木さんが弁当を持っていたんですか?」 

 教えてくださいと顔を更に近づける郷田の息がかかる。

「あげちゃ、だめだった?」

 と口にすると、郷田の目が険しくなる。

「佐木さんに食べてほしい、そういったそうですね」
「え、なに、それ」

 そんなことは口にしていない。

「一太君、それ、違う」
「スープもどうぞって、お弁当以外にも渡したそうで」

 確かにスープも手渡したが、あれはお茶の代わりにと持ってきたものだ。

「渡したけれど、あれは」
「黙れ」

 唇をふさがれてしまう。

「んっ、はぁ」

 服をめくりあげて舌をはわす。

「いったくん、おこったの?」

 郷田の両頬を手で包み込む。すると身を離し、すみませんと項垂れた。

「自分がこんなに嫉妬深いなんて思いませんでした。駿也さんのことになると冷静になれません」 

 熱がじわっとこみ上げ、口元が緩む。

 まさか嫉妬してくれるとは思わず、沖は郷田を抱きしめた。

「もう、どうしてこんなに可愛いのっ!」
「駿也さん」
「お弁当をあげたのはたまたま会ったから。佐木さんにからかわれたね」
「嘘ってことですか」
「うん。公園でお花を見ながら一太君と一緒のお弁当を食べようって思ってたの」

 自分用のだよといい、髪をなでる。

「はぁ、あの人は」

 だまされましたと悔しそうな顔をする。

「でも、佐木さんのおかげでいつもとは違う一太君が見れた」

 好きな人の色々な表情を見れるのはうれしいものだ。しかも嫉妬してくれたのだから。

「敬語じゃない一太君もかっこいい」

 その言葉に目を見開き、そしてくつくつと笑い出した。

「まいりました」

 機嫌が直ったようでなによりだ。

 よかったと郷田にキスをすると、すぐにキスが返ってきて、それは欲を含んだものとなった。





 視線の先に愛しい男が自分を求めぎらぎらとした目を向けている。

 唾液を含んだ舌を伸ばし、沖の下半身のモノへと絡みつく。

「ンふ」

 大きな口が自分のを咥えている。それに興奮し、身体がぞくそくと震える。

「いったくん」
「駿也さんの蜜、おいしいです」

 くちゅ、くちゅと音を立て根、裏と舐め、そしてきつく吸われた。

「ひゃぁん、だめぇ」

 我慢できずに口内に放ってしまった。

「や、だして」
「嫌です。駿也さんだってしてくれましたよね」

 とっさに口づけて舌で中をなめとると、なんともいえぬ味がする。

 唾液と共に口のはしから自分の放ったものが流れ落ち、それを今度は郷田の舌がなめとった。

「一太君」
「欲しかったからといったらひきましたか?」

 すべてが欲しいんです、濡れた唇を郷田の親指がなでた。

 ずきゅっと心臓を撃ち抜かれた。しかも放ったばかりだというのに下半身が反応していた。

「ひくわけないでしょ。だって、嬉しいんだもの。俺を欲しがってくれて」

 幸せだ。こんなに愛してもらえて。

「だから今度は俺の番」

 にぃ、と笑みを浮かべると郷田の喉が鳴る。

 大きくはりつめたモノへ舌を這わせば、郷田の目元が赤く染まった。


<了>
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