21 / 167
第2章 ユキムラの受難
第5話 王都への道
しおりを挟む イオリが思った以上に機織りという仕事に造詣があると知ったグラバーは熱心に工場見学をさせてくれた。
初期の機織り機が見たい。
イオリの願いを叶える為に機織り達の小屋を出て、敷地の奥に向かう事になった。
案内された広場では年老いたエルフの男女が若い職人に手解きをしているところだった。
「カロス、ダイダ、お邪魔しますよ。」
気兼ねなく入っていくグラバーに2人の老エルフは何事かと顔を上げた。
「こちらのイオリ様は、ハニエル様とフェンバイン様もお認めになられた、大切なお客様です。
是非、イオリ様に初期の織り機を見せて頂きたいのです。」
2人は人族のイオリの周りにエルフのナギと獣人のラックとコーラルが纏わりついているのを見て、微笑んだ。
「イオリ様、こちらは長年、職人を勤め上げられた御2人です。
今は、若い職人を育てる事に尽力してくださっているんですよ。」
突然やってきた人族の若者にも2人は挨拶をすると手招きしてくれた。
「皆が騒いでた人族だね。
若い人。
機織りに興味があるのかい?」
グラバーを引き連れて近くの小屋に入っていったダイダを見送るとカロスは嬉しそうにイオリに椅子をすすめた。
「子供の頃、祖母が使っていました。」
「おや、それじゃ祖師様と故郷が同じなのかい?」
「祖師様?」
カロスは楽しそうに頷いた。
「機織り機をルーシュピケにもたらした、かつての恩人の事さ。」
「もしかして、その方は十蔵という名ではないですか?」
「ふむ・・・。
確かに、そんな名の響きだった気がするが・・・よく考えれば、ずっと祖師様としか呼んだ事がなかったな。
そうだ、獣人のとこに医者がいるんだが、その夫が詳しいぞ。」
「キキ医師の旦那さんのグリーズさん?」
確かに、歴史学者とキキ医師が言っていたのをイオリは思い出した。
「そう、その男だ。
学者というらしい。
もし、直接の話を聞きたければハニエルの爺様だな。
あの人はワシらよりも500年は年寄りだからね。
歴史の生き字引だよ。」
国の成り立ちから知っているハニエル老が十蔵を直接知っている可能性があると聞いて、イオリは胸を高鳴らせた。
「お前さんも祖師様の事を知っていなさるのか?」
カロスの問いかけにイオリは、どう答えればいいのか迷った。
「俺、アースガイルから来たんですよ。
十蔵さんはアースガイルを建国した初代アースガイル王であるマテオ様の親友なんです。
それで、折に触れて聞く名前なんですよ。」
「ほう、なんと なんとな。
それは初めて聞いたな。
学者の男が喜びそうな話だ。」
「カカカっ」と笑うカロスの後ろからダイダが戻ってきた。
「人の子。
これが、初期の織り機だよ。
祖師様が己の手で作られた希少な物だから、大切に扱っておくれ。」
ダイダが差し出すソレは、イオリが知っている機織り機よりも小さく抱えられる程しかない。
しかし、それ以上に重く感じるのは時を重ねてきた先人の置き土産だったからかもしれない。
初期の機織り機が見たい。
イオリの願いを叶える為に機織り達の小屋を出て、敷地の奥に向かう事になった。
案内された広場では年老いたエルフの男女が若い職人に手解きをしているところだった。
「カロス、ダイダ、お邪魔しますよ。」
気兼ねなく入っていくグラバーに2人の老エルフは何事かと顔を上げた。
「こちらのイオリ様は、ハニエル様とフェンバイン様もお認めになられた、大切なお客様です。
是非、イオリ様に初期の織り機を見せて頂きたいのです。」
2人は人族のイオリの周りにエルフのナギと獣人のラックとコーラルが纏わりついているのを見て、微笑んだ。
「イオリ様、こちらは長年、職人を勤め上げられた御2人です。
今は、若い職人を育てる事に尽力してくださっているんですよ。」
突然やってきた人族の若者にも2人は挨拶をすると手招きしてくれた。
「皆が騒いでた人族だね。
若い人。
機織りに興味があるのかい?」
グラバーを引き連れて近くの小屋に入っていったダイダを見送るとカロスは嬉しそうにイオリに椅子をすすめた。
「子供の頃、祖母が使っていました。」
「おや、それじゃ祖師様と故郷が同じなのかい?」
「祖師様?」
カロスは楽しそうに頷いた。
「機織り機をルーシュピケにもたらした、かつての恩人の事さ。」
「もしかして、その方は十蔵という名ではないですか?」
「ふむ・・・。
確かに、そんな名の響きだった気がするが・・・よく考えれば、ずっと祖師様としか呼んだ事がなかったな。
そうだ、獣人のとこに医者がいるんだが、その夫が詳しいぞ。」
「キキ医師の旦那さんのグリーズさん?」
確かに、歴史学者とキキ医師が言っていたのをイオリは思い出した。
「そう、その男だ。
学者というらしい。
もし、直接の話を聞きたければハニエルの爺様だな。
あの人はワシらよりも500年は年寄りだからね。
歴史の生き字引だよ。」
国の成り立ちから知っているハニエル老が十蔵を直接知っている可能性があると聞いて、イオリは胸を高鳴らせた。
「お前さんも祖師様の事を知っていなさるのか?」
カロスの問いかけにイオリは、どう答えればいいのか迷った。
「俺、アースガイルから来たんですよ。
十蔵さんはアースガイルを建国した初代アースガイル王であるマテオ様の親友なんです。
それで、折に触れて聞く名前なんですよ。」
「ほう、なんと なんとな。
それは初めて聞いたな。
学者の男が喜びそうな話だ。」
「カカカっ」と笑うカロスの後ろからダイダが戻ってきた。
「人の子。
これが、初期の織り機だよ。
祖師様が己の手で作られた希少な物だから、大切に扱っておくれ。」
ダイダが差し出すソレは、イオリが知っている機織り機よりも小さく抱えられる程しかない。
しかし、それ以上に重く感じるのは時を重ねてきた先人の置き土産だったからかもしれない。
0
★毎日更新中の作品
≪一番のヒット作≫不思議とカクヨムで公開停止に・・・
高校生 家を買う そして同棲する・・・
https://www.alphapolis.co.jp/novel/940695879/924492179
≪そこそこヒット作≫カクヨムで公開停止に・・・
幼馴染を勇者に寝取られた不遇職の躍進
https://www.alphapolis.co.jp/novel/940695879/702498124
【処女作】
幼馴染に裏切られた最弱職業冒険者がセフレとともに頂点をとる
https://www.alphapolis.co.jp/novel/940695879/374501807
【短編】
子供の生態
https://www.alphapolis.co.jp/novel/940695879/365508479
★完結済の人気作品
≪カクヨムで種別日間・週間1位/月間3位≫2021年7月公開作
【カク〇ム】での公開停止ってどうだろう?
https://www.alphapolis.co.jp/novel/940695879/345522206
≪一番のヒット作≫不思議とカクヨムで公開停止に・・・
高校生 家を買う そして同棲する・・・
https://www.alphapolis.co.jp/novel/940695879/924492179
≪そこそこヒット作≫カクヨムで公開停止に・・・
幼馴染を勇者に寝取られた不遇職の躍進
https://www.alphapolis.co.jp/novel/940695879/702498124
【処女作】
幼馴染に裏切られた最弱職業冒険者がセフレとともに頂点をとる
https://www.alphapolis.co.jp/novel/940695879/374501807
【短編】
子供の生態
https://www.alphapolis.co.jp/novel/940695879/365508479
★完結済の人気作品
≪カクヨムで種別日間・週間1位/月間3位≫2021年7月公開作
【カク〇ム】での公開停止ってどうだろう?
https://www.alphapolis.co.jp/novel/940695879/345522206
お気に入りに追加
325
あなたにおすすめの小説

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる