吸涙鬼のごはんになりました。

黒咲ゆかり

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22.餌

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『放課後に体育館裏』

「はぁ…行きなくねぇな…」

どう考えたって、おかしな事しかあいつと話してないし…。

宮川の『餌』?になんてなりたくはない。
 
餌といえば、涙も初めはそんなようなこと言ってたなぁ。

『ごはん』も『餌』も同じだけれど…
それが俺の何なのかは分からない。

それ以前に吸涙鬼とかその辺の類であるかすら怪しい。

(まぁ、考えても仕方ないから行くけど。)

「おぉ~水葵君じゃないか~やっと来たね?」

「…来たけど、何?」

近づき過ぎないよう、ちょうどいい距離感を保つ。

「あのさ、君。沖水 涙の『餌』でしょ」

「は?」

餌って…まぁ、言ったらそんなような物だけど。
俺が吸涙鬼の「餌」だったとして…

(なんでこいつがそれを?)

「俺実はねぇ、沖水君の秘密知ってるんだ。」

「…?!」

「というのもね、沖水君のよく利用している会社の社長の息子が俺なんだ。」

「涙が利用している会社?」

前言ってた裏会社っつやつか。

「そう。そして俺は吸血鬼。
話ぐらいは聞いた事があるだろう。」

「吸血鬼!?
あぁ…あの、ニンニクが嫌いだとか、
鏡に映らないとか言うあれな。」

「はっ、あれ呼ばわりかぁ~酷いな。」

「餌に慣れとか言っていたが…
まさか俺にっ…血をくれだなんて言うんじゃ…。」

「正解~!お見事だね~。で、どう?」

「どうも何も…。」

こいつに血なんて与えてやる義理はない。

でも、待てよ。

こいつが初めに出した、涙が利用している会社の息子がこいつだという話は…

まさか。


「気づいたみたいだね。」

「お前…。」

「そう。君が俺に吸血させてくれれば、
沖水 涙の安全は保証しよう。」

(また脅しかぁ~!!)

でもこれは結構きつい問題だ。

俺が血を吸われるか、涙が事件に巻き込まれるかなんて…初めから答えは出ている。

それを分かっていてこいつは俺に選ばせている。

「…分かったよ。
で、でもその……痛いのはなしな。」

「…ははっ、可愛いところもあるんじゃないか。」

「…うるせぇ。早く済ませろ。」

「そんなに急かすなよ。
じゃあ…いくよ。……はぁっ…」

息を吸う音が耳元から聞こえる。

気持ちが悪い。

涙の時はこんな事感じたことは無かった。

嫌だ。

でも、これを断ったら…。

(涙……。)



「み~ず~き~さぁ~ん?」

「ひぃっ!?」

「なんか今日は遅いと思ったら…
本当に浮気かなぁ?」

「い、いや、違うくて…。」

「じゃあ、何してたの。宮川。」

「いやぁ、ちょっと、秘密の会議だよ。」

「ふ~ん…。」

(やばいやばいやばい。これは……)

涙が持っていた傘を勢いよく振り…

宮川の眼球に触れるか触れないかすれすれの所で止める。

が、宮川は瞬きすらしない。

(二人とも……こえ~…。)

「次、水葵に手を出したら…。
眼はないと思え。」

(なんで眼なんだっ。)

「…………。」

(……これは、俺も怒られるパターンでは!?)


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