吸涙鬼のごはんになりました。

黒咲ゆかり

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19.幸せ

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「水葵はいっあぁ~んっ♡」

「……普通に自分で食べれるんだけど。」

「もうっ、そんなこと言わずにっね?
両思いなったんだからっ。」

「……お前、じゃあ、なんで宗介のとこなんか行ってたんだよ。」

「ん~?それはねぇ…恋愛っていうのは押してばかりじゃダメなんだよ?」

(こっ、いつ…………。)

「つまり?俺をはめたってことか?」

「ふぇっ…………いいやぁ?
まぁ、そう言う感じ?」

「……っ!この野郎!」

「だって、水葵僕のこと全部好きって言ってくれないんだもん。
今だって…………。」

「そっ……れは。」

言わなければまたこの繰り替えし。
俺がその2文字を言えば解決。
流石にもうわがままも言っていられないか。

「ほらっ…………言って?お願い。」

真っ直ぐな目。
顔を背けたくなる。

「お、俺は…………お前のこと………す」

「す?」

(頑張れっ……俺!)

「す…………好きだ…たぶん。」

顔が熱い。風邪のせいだきっと。

「多分は余分だったけどっ…
よく出来ました。」

ちゅっ。
という音を立て俺の唇に涙の唇が重なる。

「んっ!?……お前、風邪うつっても知らないからな。」

「大丈夫っ!僕が風邪ひいたら、
看病してくれるんでしょ?」

「…………まぁ、してやらないことも無い」

「ふふっ、約束だよ?」

「ところでお前、1週間誰の涙を吸涙してたんだ?」

「……えっと……それはぁ」

(目が泳いでる。これは怪しいぞ……)

「まさか、沖水宗介……とか。」

「ぇえ!?まさかぁっ……。」

「じゃあ、なんで目が泳いでるんだよ。」

「……えっとねぇ、実は。」

「実は?」

「涙を提供してくれる会社みたいなのがあってね」

「なんだそれ。そんな会社聞いた事ないぞ。」

「僕の他にも、吸血鬼とか、吸汗鬼っていう類の人が居るんだ。
そういう人達の手助けをするような、
いわば裏会社なんだ。」

「裏会社……なんか闇が深そうだな。」

「毎週僕宛てに届くダンボールあったでしょ」

「あぁ…確かに。」

毎週水曜日に涙宛のダンボールが届いていた。通販かなんかだとは思っていたが。

「その中に、涙が入った小さめのペットボトルが入ってるんだ。」

「へぇ~」

「でも、涙の摂取って1度の出来る数が少ないから、緊急時用ってことで……」

「ほぅ……お前はその緊急時用よ涙を飲み干したという訳か?」

「……はい。」

「……はぁ。俺に頼めば吸涙できたものを……」

「だって……好きって言って欲しくて。」

「……まぁ、それは、俺も悪いけど。」

「じゃあさ、今日は…いいんだよね?」

「あぁ…でも、悲しいのは嫌だ。」

「わかってるってばっ、幸せな気持ちでいっぱいにしたげるっ。」
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