吸涙鬼のごはんになりました。

黒咲ゆかり

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4. いただきます

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「たっだいまぁ~はぁ…疲っれた~」

そりゃあ、つかれるよな…

涙がクラスメイトを泣かしてしまった件は
女子達がかってに『あれぐらいで泣くなんて』とあっさり丸くおさまった。

一方、俺をかばった涙を冷たくあしらった俺の『冷血』の信憑性はより高まったのだった。

「ねぇ…ただいまってば」

俺に無視されることなんて分かっているはずなのに、子供みたいに頬をふくらませるだけでこれ以上何も言ってこないこいつは
俺よりもよっぽど大人だ。

「………おかえり。」

「ねぇ、今日のあの言葉。
僕は悲しかったなぁ~傷付いちゃったかもなぁ…」

わざとらしくこちらをみつめる。

『昨日会ったばっかりで、
お前は一体俺の何を知ってるんだよ。』

我ながらひどい言葉だ。
こいつとはいえ、庇ってくれた奴に
こんな言葉をかけるんだ。
最低だろ。冷血だろ。
だから…もう。

「ねぇ、あの時のセリフって…
みんなが言う『ロボット』を意識してたでしょ?」

「………?!…俺がなんでそんなことしなきゃいけないんだよ。」

「僕が一番悪くならないように。
でしょ?」

「……………。」

「水葵が思われてる人物像で周りの人を自分に引きつければ、水葵の噂で持ち切りになるからね。」

「……ちがう。」

「自分が悪者になる…。
そうまでして『会ったばかり』僕を
助けたかった?」

「…………うるさい。」

俺はそんな心の綺麗な奴じゃない。
悪態をついたのは本当だし、
俺の言ったことは間違ってすらいない。
何も、涙を思っていったことばなんかじゃない。

「……自惚れるなよ。」

「ごめん…。」

「……………………………。」

「でもさ、水葵が傷付いてないならさ
その涙はなぁに?」

「ぇっ………あ、これは…わからない。」

(っ…そうだ、これはこいつが)

「僕が居るから?」

「……これはお前が泣かせたんだ。」

「ふ~ん…僕には泣かせやすくする力はあっても、何も無いところから泣かせることはできないんだ。」

「……っそん…なの」

「だからね…水葵
君が1ミリも傷付いていないというなら
僕は君の涙をこうやって…」

ぺろり。

「舐めてあげることはできないんだ。」


「っ………やめろっ」


「ん~?僕のスマホの待ち受け見る?」

(嫌な予感しかしない。)

「じゃじゃぁ~ん!君の泣き顔♡」

「ふっ…ざけんなぁっ!」

「って、ことで…んっ…じゅるっ」

(本当に今すぐ消してくれ…。)

「いただきます♡」
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