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「いくら昨日のことに罪悪感があるからって、そんな嘘言わなくてもいいよ。」






「は?」






武尊が目を大きく開いた。



俺がどんなにお前のこと好きただったか知っていたくせに、昨日だって本当はっ…………


俺が拒んだから武尊はやめた。
自分勝手だけど、俺はあの時本当は武尊に抱いて欲しかった。

それを分かっていながら、
お前が俺の事を見てくれないとちゃんと理解している俺にお前は、今その言葉を言うのか。



「………嘘なんかじゃないっ…俺は本当にお前のことがっ…………」




武尊が俺の腰に手を回し、そのまま俺を強く抱き寄せる。

痛いくらい強く、強く抱きしめる腕は少し震えている。



「……俺、お前のその首のキスマークを見た時、嫉妬でおかしくなりそうだったんだ。」



嫉妬……?武尊が?



「……それだけじゃない、昨日あんなことになって、ここでお前に会うまで、もうお前に口を聞いて貰えないんじゃないかとか、嫌われたんじゃないかとか……そんなことでずっと頭がいっぱいだった。」



俺と……一緒だ、俺もずっと武尊のことで
頭がいっぱいで…………。








「俺が今好きなのは、お前だよ───」








「っ……………………」



まったく、こんな時ばっかり、俺の前世の
名前を使って口説きやがって…………


こんなの……


「俺も、武尊が好き。」


落ちるに決まってるだろうがっ…………。





⿴  ⿻  ⿸  ⿴  ⿻  ⿸  ⿴  ⿻  ⿸  ⿴  ⿻  ⿸





「……っんん……はぁっ……ちゅっ……ん
……おい……武尊っ…………んっ……帰ってきて早々……こんなっ…………っ……」


まだ他の奴らが外で楽しんでいるのをいいことに、俺は今さっきできたばかりの恋人に
キス責めされています…。



「……ん?…………………だって…抱いて欲しかったんだろ?」



?!?!?!?!


ばれているっ!!!!!



「……そりゃぁ………………すき……だから。」


武尊が意地悪そうに、あと、嬉しそうに笑った。


「そうか……じゃ、いいよなっ」




「ひぁっ?!……ちょっ…………またぁっ……首っ…………」


さっきまで海岸にいたから、
海の匂いと、武尊の匂いで……なんか……
あたま……おかしくなりそ……


「………んっ……ちゅっ…………あ、足…怪我してるのか。」


「はぁっ……いや、靴擦れだから、その程度大丈…………夫……?!っ」


武尊が俺の足の親指と人差し指の間付け根を
舌でゾリッと撫でる。


「………痛っ……い……ばかっ……何やってんっ……んんっっつ」


舐められた傷の痛みがジリジリという熱に変わり、腰がムズムズして全身が火照っていくのを感じる。


「……んっ……はぁっ…ちゅっ…ぢゅっ……
痛い…だけ?………本当にそれだけ?」


じっと俺の目を見つめる武尊の目に映る光がいつもより色っぽい。


「………痛いだけっ……それ以外にっ……なっ……にがあるって……?……んっ……ぁ」



「ふーん、そう?…………じゃあ、ここ……
なんでこんなになってんの?」


武尊が指したそこは薄い夏物の浴衣の生地が盛りあがり、その形がはっきりと分かるようになっていた。

「…………こっ?!……れは……………
発情期……だから。」



「そうか……じゃあ、お前は俺に足を舐められただけで発情しちゃったんだな……ふっ」


「…………う…るっせ……武尊だって勃ってんじゃん……」


「…………だって俺も…お前に欲情してるからなっ。」



「よく、そんなことサラッと言えるよなっ。」


「そこは……大人ですからっ」


「ははっ……大人って変態だなっ。」


「…………お前、笑っていられるのも今のうちっ……んんっ?!」


自分から男にキスだなんて、
この世界に来たばかりの頃だったらごめんだったけど…………今は



「……んっ…ちゅ…………それは武尊もね?」




こんなにも武尊のことが欲しい。
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