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15.好きだよ
しおりを挟む今日は、ドキドキの野外活動…………
って感じは全くなく、俺の班はまさに地獄の雰囲気だった。
まず、ゆう。
無言、無視、しかも、シーンの時だけいきなり性格変わるから周りもびっくり。
少しは隠せよっ……。
次に、上尾。
まさかこいつが同じ班だなんて思わなかったぁっ……
無言、無視をするゆうに話しかけまくるしまつ……。
空気読めよっ……!
そして、もはや別行動の女子2人。
…………そして、1人の俺。
「もぉぉぉぉおっ!!!お前らぁっ!
ちゃんとやれよなぁっ?!」
っったく……進まねぇったらありゃしねぇっ
班で協力してテントを張り、自炊をする。
まぁ、本当にキャンプみたいなものだ。
「…………っくっそおっ…全然とまらねぇ」
テントを固定するための杭を地面に打ち付ける……が、全然入っていかない。
「……痛っ!………………」
力ずくでやろうとして、誤って手を打ってしまう。
いっってぇ~…………
やばいなぁ…骨までいったか?
でも、俺がやらなきゃ進まないし……。
男気だ!男気!
「おっ……終わったぁ……」
「おぉ!マジ?やったな!やったぜ!」
上尾……お前なんにもやってねぇだろ。
「ほら、次はカレー作りだ!
今度は手伝ってもらうからなぁっ!」
「はぁーい」
まず、男子は食材や道具を倉庫から運び、
女子は食器をもう一度洗うことになった。
「…………よいっ……しょ…」
なんでこんなに重いんだっ……
さっき打ったとが効いてきたな。
「…………っ……」
俺は運んでいたダンボールを落としてしまう。
「……まこっ!!…………大丈夫か?
お前なんか顔色悪いぞ……」
ゆうが心配そうな顔で俺を見つめる。
こんな、シーンの時だけ。
喉仏を押さえつけられるように、
苦しいような、悲しいような気持ちになる。
「………………っるせぇなっ」
気づいた時には遅かった。
口をついて出たのは、心配するゆうに対して言ってはいけない言葉だった。
いつもなら、こんな言葉日常で言っていたけれど、いまは状況が違う。
「……………………ご…めん。」
また、ゆうの顔が見れない。
避けていたのはゆうだけじゃなくて……
俺もだったのか。
「………………後でちゃんと理由話すから。
とりあえず今は、先生の所いこ。」
「うん。」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
一日はあっという間に終わり、夜になっていた。
テントの中には、ゆうと上尾と俺の3人が居たはずなんだけど……
「ぐぅぅぅ……がぁぁぁ……ぐぅぅぅ……」
上尾。こいつ……寝ててもうるせぇ……
これに耐えられなくなったゆうはどうやらテントの外へ出ていったようだ。
…………もしかしたら、これはシーンなのかも。
何か話しが出来るかもしれないと思い、
俺もテントを出て、周りのテントで寝ている人たちを起こさないようにこっそり歩く。
そして、少し高台の所でぼーっとしているゆうを見てけた。
話しかけようとすると、何故か心臓がドクトクと脈を打ち、息苦しい。
それでも、俺は聞かなくてはならない気がした。
ゆうが言う『理由』を。
「ゆう…お前寝れないのか?」
「…………あぁ。」
今のゆうは……どっちのゆうなんだろう。
「…………………俺の死ぬ前の名前は、宮嶋 武尊。今俺は、そいつとして話す。」
「…………死ぬ前の話と…最近のことが、
関係あるってことか」
ゆう、今は、宮嶋武尊が静かに頷く。
「俺には、好きな人がいたんだ。」
ドクンと心臓が跳ねる。
「そいつは、何年も前に病気で亡くなった。…………だけど、俺には…あいつの代わりを見つけることなんでできない。
だから決めたんだ。もう、あいつ以外好きにはならないって……。俺は一生、いや、その一生が終わった今でもあいつを好きでいてやりたいんだ。」
ゆうが目線を下に落とす。
話の内容からしてもよくある展開だ。
でも、これは物語でもなんでもなくで、
それは、ただ、宮嶋武尊という男の過去の話。
こんな、重大発表したってことは、
俺を頼ってくれてるん……だよな。
これは、いい事を言わなくちゃ。
「…………好きにならなくてもいいだろっ
初めから、俺らって仲良くもなかっただろ?俺だって男なんて無理だからっ、な?」
あれ……なんか、やっぱり痛いかも。
焦りに焦って1人でペラペラと話してしまった。
数秒ほど沈黙が続く。
やっべぇ……なんかまずいこと言っ……
「…………好きに…なりそうだったんだ。」
「……え?」
「……お前の事。だから、きちんと役と俺との線引きがしたい。安藤 悠斗と宮嶋 武尊で呼び方を変えよう。」
いきなり、色々ことを言われて
なかなか頭の中で状況の整理がつかない。
「……………………ぇ……いや、それはいいんだけどさ、きっと、俺のことが好きって言うのは、この世界の仕業だと思うんだ。
ほら、この世界の影響力っ手すごいだろ?
すぐフラグ回収するし……」
「…………それは…あるかもな。」
宮嶋武尊は少し安心したような顔をする。
でもなんか……気まずい。
話題を変えよう。
「…………だろっ?っていうか、死ぬ前って何歳だったんだ?」
「…………25。」
「………………25?!…………じゃあ、宮嶋さん?って呼べばいいのか???」
「あぁ…………いいよ、武尊で、そーゆうのめんどいし。」
「…………そっか、じゃあ、武尊。」
名前を呼んだだけで武尊の顔が少し赤くなる。
「……っ。やっぱりダメだ。」
こりゃ……結構患ってますなぁ
「………………大丈夫だって、俺のこと好きなのはきっと、この世界がそうさせてんだよっ!」
痛い。痛い。痛い。
月明かりに熱を帯びた瞳が照らされる。
「…………………まこ…………好きだよ。」
この言葉は、この物語のセリフに過ぎない。
「………………ゆう…………俺も好き。」
じゃあ……俺の言葉は………………?
キスで口を塞がれて、窒息死しそうなほど
息苦しくなる。
喉の奥を掻き混ぜられるみたいに、痛くて、
苦しくて。
「…………じゃあ、俺、先にテント戻ってるな。」
「……うん、おやすみ」
早く。早く戻れよ。
「…………おやすみ、まこ。」
「…………っ、…………ぅっ…………」
俺はきっと、この世界に影響なんてされていない。
されていないけど…………俺はゆうが、武尊のことが……。
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