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第八章 真実は何処に
グレックの彼女?
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夕方――。
王太子ユートへの嘆願が聞き届けられなかった失意を抱えながらも。
ミリアは、今日の午前中に作り終えていたポテトフライをグレックに届ける準備をしていた。
「ちょっと冷めて固くなっちゃったかもだけど、小腹がすいた時にはいいよね」
そう呟くと、ミリアは斜め掛けのバッグに貴重品を入れ、片手にポテトフライの入った木の入れ物を持って家を後にする。
紫色の雲が、夜空をゆっくりと横切るのを見つめながら。
ミリアはグレックの家へと歩を進めた。
すれ違う騎士たちに「早く帰る」よう促されながらも、グレックの家まで無事辿り着いたミリアは、グレックの家の扉を三回ノックする。
すると――。
「お?」
「え」
グレックの家であるはずの玄関口から、赤毛で短髪の見知らぬ壮年男が姿を現し、ミリアは驚いて、思わず踵を返してしまう。
「す、すみません! 間違えました! 失礼します!」
そう言って、その場を立ち去ろうとした、その時――。
「おーい、グレック! 彼女が来てるぞー」
赤毛の壮年男は、そう家の中に向かって声を掛けた。
「えっ?」
(ど、どういうこと――?)
ミリアは訳が分からず、その場でおろおろしてしまう。
すると、部屋の中から聞きなれた声が聞こえて来てこう言った。
「え、俺に彼女はいませんけど……」
そう言って、タオルで手を拭きながら家の入口に現れたグレックに向かい、
赤毛の壮年男は、顎に手をやり、にやにやしながらこう言った。
「じゃあ、この子はなんだぁー、おい?」
その赤毛の壮年男の問いに、グレックは困ったようにこう言った。
「違いますよマークさん、彼女はただの友人で……」
ミリアを気にしながら、そう必死に弁明するグレックに。
ミリアも援護射撃とばかりにこう言った。
「はい! グレックさんの友人の、ミリア・ヘイワードです!」
そう言って、何度も深く頷くミリアに。
赤毛の壮年男――マークと呼ばれた男は、酷く残念そうにこう言った。
「なんだ、つまらんなぁ」
そう言って、意気消沈するマークに、グレックは眉を顰め、苦笑する。
と、そんな、何だか色々と大変そうなグレックに苦笑いしながら。
ミリアは肩掛けバッグの中から木の箱を取り出すと、グレックに手渡してこう言った。
「グレックさん、良かったらこれ……ポテトフライなんですけど」
そう言って差し出された木箱を嬉しそう受け取ると。
グレックは、木箱の蓋を開けて、フッと笑みを漏らすとこう言った。
「お、これは……ありがたい。チーズ以外に丁度いい酒のつまみがないか、探していたところだったんだ」
「そうだったんですか。お役に立てて良かったです」
そう言って、にっこり微笑むミリアに、グレックの背後からマークがぬっと現れ、こう言った。
「なんだ、嬢ちゃん。これから帰るのかい?」
「はい」
そう言って、くるっと踵を返すミリアの背中越しに。
マークは外の様子を確認すると、真面目な顔でこう言った。
「悪い事は言わない。あとでグレックに送って貰うといい」
「え? い、いえ! 大丈夫です!」
二人の親交の邪魔なのではないかと思ったミリアは、そう強く否定するも。
マークは、ミリアの話など右から左でこう言った。
「そう言うな。その代わり、少し俺たちのくだらん話に付き合って貰うがな、わはは」
「マークさん!」
そう言って、慌てて止めに入るグレックを目で制すると。
マークは強引にミリアをグレックの家の中へ引きずり込むのであった。
王太子ユートへの嘆願が聞き届けられなかった失意を抱えながらも。
ミリアは、今日の午前中に作り終えていたポテトフライをグレックに届ける準備をしていた。
「ちょっと冷めて固くなっちゃったかもだけど、小腹がすいた時にはいいよね」
そう呟くと、ミリアは斜め掛けのバッグに貴重品を入れ、片手にポテトフライの入った木の入れ物を持って家を後にする。
紫色の雲が、夜空をゆっくりと横切るのを見つめながら。
ミリアはグレックの家へと歩を進めた。
すれ違う騎士たちに「早く帰る」よう促されながらも、グレックの家まで無事辿り着いたミリアは、グレックの家の扉を三回ノックする。
すると――。
「お?」
「え」
グレックの家であるはずの玄関口から、赤毛で短髪の見知らぬ壮年男が姿を現し、ミリアは驚いて、思わず踵を返してしまう。
「す、すみません! 間違えました! 失礼します!」
そう言って、その場を立ち去ろうとした、その時――。
「おーい、グレック! 彼女が来てるぞー」
赤毛の壮年男は、そう家の中に向かって声を掛けた。
「えっ?」
(ど、どういうこと――?)
ミリアは訳が分からず、その場でおろおろしてしまう。
すると、部屋の中から聞きなれた声が聞こえて来てこう言った。
「え、俺に彼女はいませんけど……」
そう言って、タオルで手を拭きながら家の入口に現れたグレックに向かい、
赤毛の壮年男は、顎に手をやり、にやにやしながらこう言った。
「じゃあ、この子はなんだぁー、おい?」
その赤毛の壮年男の問いに、グレックは困ったようにこう言った。
「違いますよマークさん、彼女はただの友人で……」
ミリアを気にしながら、そう必死に弁明するグレックに。
ミリアも援護射撃とばかりにこう言った。
「はい! グレックさんの友人の、ミリア・ヘイワードです!」
そう言って、何度も深く頷くミリアに。
赤毛の壮年男――マークと呼ばれた男は、酷く残念そうにこう言った。
「なんだ、つまらんなぁ」
そう言って、意気消沈するマークに、グレックは眉を顰め、苦笑する。
と、そんな、何だか色々と大変そうなグレックに苦笑いしながら。
ミリアは肩掛けバッグの中から木の箱を取り出すと、グレックに手渡してこう言った。
「グレックさん、良かったらこれ……ポテトフライなんですけど」
そう言って差し出された木箱を嬉しそう受け取ると。
グレックは、木箱の蓋を開けて、フッと笑みを漏らすとこう言った。
「お、これは……ありがたい。チーズ以外に丁度いい酒のつまみがないか、探していたところだったんだ」
「そうだったんですか。お役に立てて良かったです」
そう言って、にっこり微笑むミリアに、グレックの背後からマークがぬっと現れ、こう言った。
「なんだ、嬢ちゃん。これから帰るのかい?」
「はい」
そう言って、くるっと踵を返すミリアの背中越しに。
マークは外の様子を確認すると、真面目な顔でこう言った。
「悪い事は言わない。あとでグレックに送って貰うといい」
「え? い、いえ! 大丈夫です!」
二人の親交の邪魔なのではないかと思ったミリアは、そう強く否定するも。
マークは、ミリアの話など右から左でこう言った。
「そう言うな。その代わり、少し俺たちのくだらん話に付き合って貰うがな、わはは」
「マークさん!」
そう言って、慌てて止めに入るグレックを目で制すると。
マークは強引にミリアをグレックの家の中へ引きずり込むのであった。
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