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第八章 真実は何処に
何もない部屋
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「あ、良かったら椅子に座って」
そう言って、案内されたアキの家は、最低限の家具しかない、殺風景な家であった。
床の上に、取っ手の付いた絵の具の木箱やパレット、そしてガラスの水入れが無造作に置かれ、床には書き散らかした絵が散乱している。
ミリアは、そんなアキの部屋を唖然と見遣ると、背もたれの付いた椅子に腰かけこう言った。
「あ、はい。ありがとうございます」
そう言ってからも、ずっと部屋を呆然と眺めるミリアに。
アキは困ったように後頭部をかくと、苦笑気味にこう言った。
「びっくりしたでしょ? 見事なほど何もなくて」
そう言って、恥ずかしそうに笑うアキに。
ミリアは真面目な顔をしてこう尋ねる。
「アキさん……ちゃんと食べてるんですか?」
問い詰める様にそう言うミリアに。
アキは、少し後ろに仰け反り気味にこう言った。
「うん? そこらへんは大丈夫。そのぐらいはちゃんと稼げてるから!」
そう言って、必死に弁明するアキに。
ミリアはジト目を向けるとそれでも、大袋の中から木製の入れ物を取り出してこう言った。
「これ……良かったら」
そう言って、ミリアが取り出した入れ物を受け取ると。
アキは、徐にそのふたを開けて嬉しそうにこう言った。
「……お、ポテトフライだ! 俺の好物なんだよねー。それにしても、随分と、面白い形のポテトフライだね。それに、食べ応えがありそうだ。ありがとね、ミリアちゃん」
そう言って、すかさずひとつつまんで口に放り込むアキに。
ミリアは言い出し難そうに俯くとこう言った。
「あの……」
「うん?」
「さっきの話、聞いてました、よね?」
「うん」
「その……大丈夫ですか」
そのミリアの問いに。
アキは眉を顰めると、若干、苦笑気味にこう言った。
「うーん。やっぱ、ちょっとキツいかな。自分が何言われようが構わないけど、兄が悪く言われるのは、ね……」
そう言って、ため息をひとつ吐くアキに。
ミリアも大きく頷くとこう言った。
「そうですよね。私だって、家族がそんな風に言われたら辛いですから」
そう言って、しゅんと下を向くミリアを前に。
アキは申し訳なさそうに眉を顰めってこう言った。
「ほんと。ごめんね、ミリアちゃん」
「いえ……」
そう言って、言葉を詰まらせるミリアを前に。
アキは、少し考える様に顎に手を当てると、徐に視線を落としてこう言った。
「俺さ……今、王太子殿下に接触しようと試みているんだけど。なかなか出会えなくてさ」
「王太子殿下に、ですか」
「うん。ミリアちゃんが言っていたように、もし、兄さんの相棒が本当に殿下なら、殿下は何か知っているんじゃないかって思って」
そう言うと、アキは、手に持っていたポテトフライの入れ物をテーブルの上に置くと、自分自身に言い聞かせるようにこう言った。
「どんな真実でもいい。俺は、兄の真実が知りたいんだ。そうしたら、俺は……」
そう言って、自分の片掌をじっと見つめるアキ。
そんな思いつめるアキを傍らでじっと見つめながら。
ミリアは心の中でアキに尋ねてこう言った。
(アキさんは、それを知って……一体、どうするつもりなんですか)
その答えを聞くのがあまりにも怖くて、ミリアは無意識的に口を固く閉じるのであった。
そう言って、案内されたアキの家は、最低限の家具しかない、殺風景な家であった。
床の上に、取っ手の付いた絵の具の木箱やパレット、そしてガラスの水入れが無造作に置かれ、床には書き散らかした絵が散乱している。
ミリアは、そんなアキの部屋を唖然と見遣ると、背もたれの付いた椅子に腰かけこう言った。
「あ、はい。ありがとうございます」
そう言ってからも、ずっと部屋を呆然と眺めるミリアに。
アキは困ったように後頭部をかくと、苦笑気味にこう言った。
「びっくりしたでしょ? 見事なほど何もなくて」
そう言って、恥ずかしそうに笑うアキに。
ミリアは真面目な顔をしてこう尋ねる。
「アキさん……ちゃんと食べてるんですか?」
問い詰める様にそう言うミリアに。
アキは、少し後ろに仰け反り気味にこう言った。
「うん? そこらへんは大丈夫。そのぐらいはちゃんと稼げてるから!」
そう言って、必死に弁明するアキに。
ミリアはジト目を向けるとそれでも、大袋の中から木製の入れ物を取り出してこう言った。
「これ……良かったら」
そう言って、ミリアが取り出した入れ物を受け取ると。
アキは、徐にそのふたを開けて嬉しそうにこう言った。
「……お、ポテトフライだ! 俺の好物なんだよねー。それにしても、随分と、面白い形のポテトフライだね。それに、食べ応えがありそうだ。ありがとね、ミリアちゃん」
そう言って、すかさずひとつつまんで口に放り込むアキに。
ミリアは言い出し難そうに俯くとこう言った。
「あの……」
「うん?」
「さっきの話、聞いてました、よね?」
「うん」
「その……大丈夫ですか」
そのミリアの問いに。
アキは眉を顰めると、若干、苦笑気味にこう言った。
「うーん。やっぱ、ちょっとキツいかな。自分が何言われようが構わないけど、兄が悪く言われるのは、ね……」
そう言って、ため息をひとつ吐くアキに。
ミリアも大きく頷くとこう言った。
「そうですよね。私だって、家族がそんな風に言われたら辛いですから」
そう言って、しゅんと下を向くミリアを前に。
アキは申し訳なさそうに眉を顰めってこう言った。
「ほんと。ごめんね、ミリアちゃん」
「いえ……」
そう言って、言葉を詰まらせるミリアを前に。
アキは、少し考える様に顎に手を当てると、徐に視線を落としてこう言った。
「俺さ……今、王太子殿下に接触しようと試みているんだけど。なかなか出会えなくてさ」
「王太子殿下に、ですか」
「うん。ミリアちゃんが言っていたように、もし、兄さんの相棒が本当に殿下なら、殿下は何か知っているんじゃないかって思って」
そう言うと、アキは、手に持っていたポテトフライの入れ物をテーブルの上に置くと、自分自身に言い聞かせるようにこう言った。
「どんな真実でもいい。俺は、兄の真実が知りたいんだ。そうしたら、俺は……」
そう言って、自分の片掌をじっと見つめるアキ。
そんな思いつめるアキを傍らでじっと見つめながら。
ミリアは心の中でアキに尋ねてこう言った。
(アキさんは、それを知って……一体、どうするつもりなんですか)
その答えを聞くのがあまりにも怖くて、ミリアは無意識的に口を固く閉じるのであった。
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