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第六章 勝利を目指して
真面目VS超真面目
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「フェリクスねぇ」
そう言って、アキは顎に手をやり、少し渋い顔をする。
そんなアキに、ミリアは驚いたようにこう言った。
「アキさん、知ってるんですか?」
「知ってるというか、ちょっとした情報ならねー」
そう言って、斜め掛けの革鞄の中から手帳を取り出すアキ。
そんなアキに、エマは興味深そうにこう尋ねる。
「どんな情報?」
「そうだなー。現剣士団団長の二番目の息子で、剣術は父から直々に教えて貰っているだとか、兄には及ばないけど剣の腕はかなりのものだとか。それから……顔がいい」
真面目にそう言うアキに。
エマは、ふっと笑うとこう言った。
「顔がいいっていうの、ちょっと興味あるわね」
そんなエマの感想に、ミリアも同意とばかりに頷くとこう言った。
「はい。それに、都人感がすごいというか……」
(凄く紳士的で、礼儀正しくて……なんなんだろ、あの感じ)
ミリアがそう心の中で首を捻っていると。
「あれ? ミリアちゃん、フェリクスに会ったことあるの?」
ミリアの言葉からフェリクスのにおいを感じ取ったアキが、少し驚いたように首を傾げてそう言った。
その顔は、以外や以外とばかりに驚きを隠せないでいる。
(そうだよね。「あんまり人付き合いが得意じゃないミリアが」って、みんな不思議に思うよね)
そう考えたミリアは、昨日会ったことを正直に話してこう言った。
「昨日、[武術大会]の案内看板の前で会ったんです、フェリクスさんに」
「フェリクスさん、ね……。で、どうだった? やっぱり、さっきの女の子みたいにプライド高そうな感じ?」
興味津々といった体で、アキは眼を輝かせながらそう尋ねる。
そんなゴシップ万歳的なアキの質問に。
ミリアは、顎に片手を添えると、フェリクスのことを思い出しながらこう言った。
「確かに……プライドは高そうでしたけど。でも、あんなあからさまな感じは無かったです。どちらかというと、凄く真面目な感じで」
「ふーん、真面目君なんだー」
つまらなそうに肩を落とすアキに。
エマは、ふと思い付いたようにこう言った。
「真面目と言えば、グレックも真面目よね」
「えー、グレックは違うんじゃない? 頼れる兄貴って感じで」
そう反論するアキに。
エマは、独自の観察眼をもってこう断言する。
「彼の場合、融通が利くからそう感じないだけで、根は真面目よ」
エマのその言葉を聞いたミリアは、少し考えるような仕草をすると、力強く頷いてこう言った。
「そう考えると、フェリクスさんはグレックさんより、もっと……ううん、凄く真面目です」
「それは……また、面倒くさそうな」
そう言って苦笑いするアキに、ミリアは何とも言えない複雑な表情をすると、ぼそぼそっとこう言った。
「面倒くさい、というか……なんか、怖いです」
「怖い?」
エマがミリアの言葉に反応し、不可解そうに眉を顰める。
ミリアは、自分か感じた得体の知れない不安のようなものを、言葉で言い表そうと努力しつつこう言った。
「はい、その……優勝するって事に対しての想いが、凄く強いというか。ちょっと、怖い感じが……」
「なるほどねー。勝利に対する執念って感じかな? まあ、剣士団団長の息子となれば、国民や父親の期待も大きいだろうし、そうなっても当然かもねー。で、グレックが勝ち進んだとして、そんな勝利への執念に燃えるフェリクスくんと当たるのは……決勝戦か」
そういって、会場の中央を見つめ、重たいため息をひとつ吐くアキの横で。
「いやぁ、決勝戦……面白くなりそうじゃないかー」
突然、癖のある白髪交じりの黒髪長髪の初老の男が、そう言ってアキに声を掛けてきた。
そんな男から本能的に体を離すと、アキは口元をひくつかせながらこう尋ねる。
「あの……あなた、誰ですかー?」
そう、胡散臭気に男を凝視するアキをそのままに。
白髪交じりの初老の男は、片手に持ったサンドイッチを美味そうに頬張ると。
宝石のような輝きを放つ琥珀色の瞳を、会場の中央に向け、熱心に試合を見つめるのであった。
そう言って、アキは顎に手をやり、少し渋い顔をする。
そんなアキに、ミリアは驚いたようにこう言った。
「アキさん、知ってるんですか?」
「知ってるというか、ちょっとした情報ならねー」
そう言って、斜め掛けの革鞄の中から手帳を取り出すアキ。
そんなアキに、エマは興味深そうにこう尋ねる。
「どんな情報?」
「そうだなー。現剣士団団長の二番目の息子で、剣術は父から直々に教えて貰っているだとか、兄には及ばないけど剣の腕はかなりのものだとか。それから……顔がいい」
真面目にそう言うアキに。
エマは、ふっと笑うとこう言った。
「顔がいいっていうの、ちょっと興味あるわね」
そんなエマの感想に、ミリアも同意とばかりに頷くとこう言った。
「はい。それに、都人感がすごいというか……」
(凄く紳士的で、礼儀正しくて……なんなんだろ、あの感じ)
ミリアがそう心の中で首を捻っていると。
「あれ? ミリアちゃん、フェリクスに会ったことあるの?」
ミリアの言葉からフェリクスのにおいを感じ取ったアキが、少し驚いたように首を傾げてそう言った。
その顔は、以外や以外とばかりに驚きを隠せないでいる。
(そうだよね。「あんまり人付き合いが得意じゃないミリアが」って、みんな不思議に思うよね)
そう考えたミリアは、昨日会ったことを正直に話してこう言った。
「昨日、[武術大会]の案内看板の前で会ったんです、フェリクスさんに」
「フェリクスさん、ね……。で、どうだった? やっぱり、さっきの女の子みたいにプライド高そうな感じ?」
興味津々といった体で、アキは眼を輝かせながらそう尋ねる。
そんなゴシップ万歳的なアキの質問に。
ミリアは、顎に片手を添えると、フェリクスのことを思い出しながらこう言った。
「確かに……プライドは高そうでしたけど。でも、あんなあからさまな感じは無かったです。どちらかというと、凄く真面目な感じで」
「ふーん、真面目君なんだー」
つまらなそうに肩を落とすアキに。
エマは、ふと思い付いたようにこう言った。
「真面目と言えば、グレックも真面目よね」
「えー、グレックは違うんじゃない? 頼れる兄貴って感じで」
そう反論するアキに。
エマは、独自の観察眼をもってこう断言する。
「彼の場合、融通が利くからそう感じないだけで、根は真面目よ」
エマのその言葉を聞いたミリアは、少し考えるような仕草をすると、力強く頷いてこう言った。
「そう考えると、フェリクスさんはグレックさんより、もっと……ううん、凄く真面目です」
「それは……また、面倒くさそうな」
そう言って苦笑いするアキに、ミリアは何とも言えない複雑な表情をすると、ぼそぼそっとこう言った。
「面倒くさい、というか……なんか、怖いです」
「怖い?」
エマがミリアの言葉に反応し、不可解そうに眉を顰める。
ミリアは、自分か感じた得体の知れない不安のようなものを、言葉で言い表そうと努力しつつこう言った。
「はい、その……優勝するって事に対しての想いが、凄く強いというか。ちょっと、怖い感じが……」
「なるほどねー。勝利に対する執念って感じかな? まあ、剣士団団長の息子となれば、国民や父親の期待も大きいだろうし、そうなっても当然かもねー。で、グレックが勝ち進んだとして、そんな勝利への執念に燃えるフェリクスくんと当たるのは……決勝戦か」
そういって、会場の中央を見つめ、重たいため息をひとつ吐くアキの横で。
「いやぁ、決勝戦……面白くなりそうじゃないかー」
突然、癖のある白髪交じりの黒髪長髪の初老の男が、そう言ってアキに声を掛けてきた。
そんな男から本能的に体を離すと、アキは口元をひくつかせながらこう尋ねる。
「あの……あなた、誰ですかー?」
そう、胡散臭気に男を凝視するアキをそのままに。
白髪交じりの初老の男は、片手に持ったサンドイッチを美味そうに頬張ると。
宝石のような輝きを放つ琥珀色の瞳を、会場の中央に向け、熱心に試合を見つめるのであった。
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