25 / 90
第四章 王都からの洗礼
四個とひとつ
しおりを挟む
「少し時間が押してるけど、まっいいか。作っちゃおう」
急ぎ足で自宅に戻ったミリアは、早速ジャム作りに取り掛かる。
実は、野生のイチゴ摘みの時に遭遇した巨大な生き物――大熊に襲われた時、イチゴの半分近くを地面にぶちまけてしまっていたミリアは、籠がいっぱいになるまで銃士のアレンに護衛を頼み込んだのであった。
そんな経緯もあり、ミリアは四の瓶に更に一つ瓶を加える。
「アレンさんにもお礼、しないとだしね」
そう呟くと、ミリアは白い小鍋をひとつ用意する。
その中に、洗って水切りをし、ヘタを取って四等分したイチゴを入れた。
それから砂糖を普通より少し少なめに入れると。
ミリアは鍋をそのままにして調理場を離れる。
「お砂糖がイチゴに染み込むまで、最低でも一時間は寝かせないとね。……ってことで、日記帳、日記帳……っと」
そう言って、茶色い帆布のバックの中から茶色い革表紙の日記帳を取り出すミリア。
それを、丸いテーブルの上に置くと。
ミリアは、嬉しそうにそれを開いた。
「今日はまだ続いているけど、アレンさんとのことは日記に書いておかないと。あんなこと、滅多にないものね……」
森の奥にあった、たくさんの野生のイチゴのこと。
巨大な大熊に襲われた事。
そして、銃士のアレンと出会ったこと。
ミリアは日記帳のペンホルダーから万年筆を取り出すと、日記帳にペンを走らせていく。
そうこうしているうちに、一時間が過ぎ――。
「さて、イチゴを煮始めますか」
そう言うと、ミリアは服の袖をまくり、コンロに火を入れるのであった。
※ ※ ※
美味しそうな、甘酸っぱい匂いが部屋中に広がる。
ミリアは手のひらに収まるぐらいの小瓶に、ジャムをスプーンですくって入れていく。
そして、全部で五つのジャムの瓶が完成すると、ミリアはそれを小ぶりな帆布製の茶色いバックに入れていった。
そして、最後の五つ目を手に取り、ミリアは少し不安そうな面持ちでこう呟く。
「アレンさん、貰ってくれるかなぁ」
銀色の髪に、青く鋭い眼差しのアレン。
歯に衣着せぬ物言いをする彼が、こんな、どこの物ともつかない怪しげなジャムなど受け取ってくれのだろうか。
「保存食だから、会えた時に手渡せばいいとして。最悪、渡せなければ自分で食べればいいし。ま、いっか……」
そう言うと、ミリアは五個目のジャムもバックの中に丁寧にしまい込んだ。
「さて、ジャムも出来たし、日も暮れて来ているし……そろそろ行かなきゃね」
そう言うと、ミリアはエプロンを徐に外して椅子の背もたれに引っ掛ける。
そして、ジャムの小瓶が入ったバックの中を改めて見つめると、期待に満ちた顔でこう呟いた。
「みんな、喜んでくれると良いなぁ……」
そう言って、にんまり微笑むと。
ミリアはお気に入りのリュックとジャムの入ったバッグ片手に、鼻歌交じりに家を後にするのだった。
急ぎ足で自宅に戻ったミリアは、早速ジャム作りに取り掛かる。
実は、野生のイチゴ摘みの時に遭遇した巨大な生き物――大熊に襲われた時、イチゴの半分近くを地面にぶちまけてしまっていたミリアは、籠がいっぱいになるまで銃士のアレンに護衛を頼み込んだのであった。
そんな経緯もあり、ミリアは四の瓶に更に一つ瓶を加える。
「アレンさんにもお礼、しないとだしね」
そう呟くと、ミリアは白い小鍋をひとつ用意する。
その中に、洗って水切りをし、ヘタを取って四等分したイチゴを入れた。
それから砂糖を普通より少し少なめに入れると。
ミリアは鍋をそのままにして調理場を離れる。
「お砂糖がイチゴに染み込むまで、最低でも一時間は寝かせないとね。……ってことで、日記帳、日記帳……っと」
そう言って、茶色い帆布のバックの中から茶色い革表紙の日記帳を取り出すミリア。
それを、丸いテーブルの上に置くと。
ミリアは、嬉しそうにそれを開いた。
「今日はまだ続いているけど、アレンさんとのことは日記に書いておかないと。あんなこと、滅多にないものね……」
森の奥にあった、たくさんの野生のイチゴのこと。
巨大な大熊に襲われた事。
そして、銃士のアレンと出会ったこと。
ミリアは日記帳のペンホルダーから万年筆を取り出すと、日記帳にペンを走らせていく。
そうこうしているうちに、一時間が過ぎ――。
「さて、イチゴを煮始めますか」
そう言うと、ミリアは服の袖をまくり、コンロに火を入れるのであった。
※ ※ ※
美味しそうな、甘酸っぱい匂いが部屋中に広がる。
ミリアは手のひらに収まるぐらいの小瓶に、ジャムをスプーンですくって入れていく。
そして、全部で五つのジャムの瓶が完成すると、ミリアはそれを小ぶりな帆布製の茶色いバックに入れていった。
そして、最後の五つ目を手に取り、ミリアは少し不安そうな面持ちでこう呟く。
「アレンさん、貰ってくれるかなぁ」
銀色の髪に、青く鋭い眼差しのアレン。
歯に衣着せぬ物言いをする彼が、こんな、どこの物ともつかない怪しげなジャムなど受け取ってくれのだろうか。
「保存食だから、会えた時に手渡せばいいとして。最悪、渡せなければ自分で食べればいいし。ま、いっか……」
そう言うと、ミリアは五個目のジャムもバックの中に丁寧にしまい込んだ。
「さて、ジャムも出来たし、日も暮れて来ているし……そろそろ行かなきゃね」
そう言うと、ミリアはエプロンを徐に外して椅子の背もたれに引っ掛ける。
そして、ジャムの小瓶が入ったバックの中を改めて見つめると、期待に満ちた顔でこう呟いた。
「みんな、喜んでくれると良いなぁ……」
そう言って、にんまり微笑むと。
ミリアはお気に入りのリュックとジャムの入ったバッグ片手に、鼻歌交じりに家を後にするのだった。
10
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
チートも何も貰えなかったので、知力と努力だけで生き抜きたいと思います
あーる
ファンタジー
何の準備も無しに突然異世界に送り込まれてしまった山西シュウ。
チートスキルを貰えないどころか、異世界の言語さえも分からないところからのスタート。
さらに、次々と強大な敵が彼に襲い掛かる!
仕方ない、自前の知力の高さ一つで成り上がってやろうじゃないか!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる