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第二章 秘められた悪意
不都合な真実
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もし、グラハム・エイブリーを殺したのがこの組織なら。
それは、この組織が自分たちの信念の為ならば殺人も厭わない凶悪な組織と位置付けれられる。
ということは、この事件を追っているエフェルローンたちのことも放っておくはずはない。
それは、危険以外の何物でもない。
「先輩、何か問題アリなんですか?」
不安げにそう尋ねてくるルイーズに、エフェルローンは冴えない表情でこう言った。
「事件そのものは順序良く調べて行けば問題ない。けど……」
「けど?」
そう問いかけるルイーズに、エフェルローンは表情も硬くこう言った。
「ちょっと、危険……いや、かなり危ないかもしれない」
「危ない?」
怪訝そうに眉を顰めるルイーズに。
エフェルローンは、渋い顔をしながらこう言った。
「この殺人事件、[べトフォードの涙]が関わっている可能性がある」
「はい、でも……それがどう[危険]に繋がるんです?」
小首をかしげ、そう尋ねるルイーズに。
エフェルローンは簡潔にこう言った。
「考えてもみろ、[爆弾娘]事件を調べていた[べトフォードの涙]のジャーナリストが殺されたんだ。[べトフォードの涙]にとっては自分たちの信念を貫くために必要なネタを持ってきてくれる大切な仲間だ。殺す理由はまずないだろう。それが、この殺人事件だ。しかも、彼らはかつて[爆弾娘の罪を晴らす会]の会長を襲撃したりしていて、他にも血生臭い余罪は十分にある。もし、グラハム・エイブリーが、彼らにとって[不都合な真実]を運んできたなら?」
「それは……」
考えが及ばないのか、そう言葉に詰まるルイーズに。
エフェルローンは、さらに嚙み砕いてこう言う。
「[不都合な真実]――例えば、[爆弾娘]の無罪の証拠とか」
「あ」
エフェルローンのその言葉に。
ルイーズは、「合点がいった」とばかりに目を大きく見開く。
「[べトフォードの涙]――きっと、何かある」
エフェルローンはそう結論を下すと難しい顔で顎をさすった。
それに、気がかりなことがもうひとつ。
――存在を消された被害者の日記。
気になるのはその殺害方法の特殊性と魔魂石の関わり。
そして一番不可解なのは、この庁内で日記がなくなったということだろう。
エフェルローンは更に思考を深く沈めていく。
日記の消失―—そこから導き出される結論、それは[証拠の隠滅]だろう。
ならば、その消失した日記に書いてあったこととは、一体何だったのだろうか?
グラハム・エイブリーが突き止めた、[爆弾娘]に関しての新たな事実だろうか。
それとも、[金の魔魂石]の使い道に関してだろうか。
まあ、事実がどうであれ。
証拠の隠滅はこの庁内、しかも、鍵のかかっていたはずの部屋で起こっている。
ということは、それは憲兵庁ないしその上の機関の意向という事にならないか。
それはつまり―—。
国家機密に関わる何か重要なことが書かれていた、もしくは―—。
(どこかの[痛い腹を探られたくない]有力貴族から、憲兵庁に圧力が掛かったか……)
まあ、どちらにしても。
この[憲兵庁]が、日記の内容に書かれていた[何か]を隠そうとしていることに間違いはないだろう。
ならば―—。
(その不正……俺が全部、陽の下に曝してやるさ)
手元の資料を掴み、握り潰すと、エフェルローンはまだ見もしない黒幕に向かい、不敵に笑って見せるのだった。
それは、この組織が自分たちの信念の為ならば殺人も厭わない凶悪な組織と位置付けれられる。
ということは、この事件を追っているエフェルローンたちのことも放っておくはずはない。
それは、危険以外の何物でもない。
「先輩、何か問題アリなんですか?」
不安げにそう尋ねてくるルイーズに、エフェルローンは冴えない表情でこう言った。
「事件そのものは順序良く調べて行けば問題ない。けど……」
「けど?」
そう問いかけるルイーズに、エフェルローンは表情も硬くこう言った。
「ちょっと、危険……いや、かなり危ないかもしれない」
「危ない?」
怪訝そうに眉を顰めるルイーズに。
エフェルローンは、渋い顔をしながらこう言った。
「この殺人事件、[べトフォードの涙]が関わっている可能性がある」
「はい、でも……それがどう[危険]に繋がるんです?」
小首をかしげ、そう尋ねるルイーズに。
エフェルローンは簡潔にこう言った。
「考えてもみろ、[爆弾娘]事件を調べていた[べトフォードの涙]のジャーナリストが殺されたんだ。[べトフォードの涙]にとっては自分たちの信念を貫くために必要なネタを持ってきてくれる大切な仲間だ。殺す理由はまずないだろう。それが、この殺人事件だ。しかも、彼らはかつて[爆弾娘の罪を晴らす会]の会長を襲撃したりしていて、他にも血生臭い余罪は十分にある。もし、グラハム・エイブリーが、彼らにとって[不都合な真実]を運んできたなら?」
「それは……」
考えが及ばないのか、そう言葉に詰まるルイーズに。
エフェルローンは、さらに嚙み砕いてこう言う。
「[不都合な真実]――例えば、[爆弾娘]の無罪の証拠とか」
「あ」
エフェルローンのその言葉に。
ルイーズは、「合点がいった」とばかりに目を大きく見開く。
「[べトフォードの涙]――きっと、何かある」
エフェルローンはそう結論を下すと難しい顔で顎をさすった。
それに、気がかりなことがもうひとつ。
――存在を消された被害者の日記。
気になるのはその殺害方法の特殊性と魔魂石の関わり。
そして一番不可解なのは、この庁内で日記がなくなったということだろう。
エフェルローンは更に思考を深く沈めていく。
日記の消失―—そこから導き出される結論、それは[証拠の隠滅]だろう。
ならば、その消失した日記に書いてあったこととは、一体何だったのだろうか?
グラハム・エイブリーが突き止めた、[爆弾娘]に関しての新たな事実だろうか。
それとも、[金の魔魂石]の使い道に関してだろうか。
まあ、事実がどうであれ。
証拠の隠滅はこの庁内、しかも、鍵のかかっていたはずの部屋で起こっている。
ということは、それは憲兵庁ないしその上の機関の意向という事にならないか。
それはつまり―—。
国家機密に関わる何か重要なことが書かれていた、もしくは―—。
(どこかの[痛い腹を探られたくない]有力貴族から、憲兵庁に圧力が掛かったか……)
まあ、どちらにしても。
この[憲兵庁]が、日記の内容に書かれていた[何か]を隠そうとしていることに間違いはないだろう。
ならば―—。
(その不正……俺が全部、陽の下に曝してやるさ)
手元の資料を掴み、握り潰すと、エフェルローンはまだ見もしない黒幕に向かい、不敵に笑って見せるのだった。
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