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第一章 呪われし者
人間らしさ
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薄暗い執務室に、豪快な腹の音が響いた。
「…………」
思考の海底に深く沈んでいたエフェルローンは、容赦なく現実に引き戻され、チッと舌打ちする。
(くそっ、ペース崩されまくりだな……)
そう心の中でぼやくと、のろのろと報告書から視線を上げるエフェルローン。
そんな、「邪魔だ」と言わんばかりのエフェルローンの視線に、ルイーズが申し訳なさそうにこう言った。
「す、すみません、伯爵。私、お腹が空いてしまったみたいで……」
そう言って、自分の腹をしょんぼりと見つめるルイーズ。
せめて、事件の概要を頭に叩き込もうと務めていたようではあったが、さすがに人としての生理現象――空腹には耐えられなかったようである。
エフェルローンは卓上の時計を手に取る。
(夜の八刻過ぎ、か)
「ん……」
肘付き椅子の上で思いっきり背伸びすると、エフェルローンは机の上に組んでいた足を床に下ろした。
ルイーズが空腹と疲労に憔悴した顔でこう尋ねる。
「伯爵、夕食ですか!」
パッと顔を輝かせ、席から勢いよく立ち上がるルイーズを半ば無視し、エフェルローンは面倒くさそうに椅子から立ち上がった。
(確か、あれが冷却装置の中に……)
そう心の中で呟くと。
腰を掻き掻き、エフェルローンは部屋の隅にある年季の入った冷却装置の方へと歩を進めた。
それを見ていたルイーズは、ハッとした表情をするとおずおずとこう尋ねる。
「まさか、この時間に「水を飲んで凌げ」とか、そんな拷問みたいなこと言いませんよね、伯爵?」
引きつった笑みを浮かべるルイーズに、エフェルローンは、冷却装置の扉をおもむろに開きながらこう言った。
「悪いが大正解だ。良かったな、水獲得だ」
そう言うと、瓶に入った水をルイーズに向かってひょいと投げる。
ルイーズは、その瓶を危なげに手に取ると、一際不服そうに顔を顰めた。
「もう、夜の八刻ですよ? 夕食の時間、とっくに過ぎてますからぁ!」
そう言って机の上に突っ伏すルイーズ。
そんな気力も根気も足りないルイーズを呆れ顔で見遣ると、エフェルローンはため息交じりにこう言った。
「ったく、これだから学生気分の抜けない奴は……」
そう親父臭い文句を言うと、エフェルローンは更に装置の中を漁る。
そして目的のものを見つけると、「お。これだこれだ」と言って嬉しそうに取り出した。
「なんです、二日前のサンドウィッチでも出てきましたか?」
ルイーズが卓上に突っ伏しながら、面白くもなさそうにそう尋ねる。
すっかりふて腐れているルイーズを完璧に無視し、エフェルローンは冷蔵庫から取り出したそれを半分に割ると、その片方をルイーズの机に置くとこう言った。
「チョコレートだよ。頭を使った後には丁度いい糖分補給になる。まだ先は長いからな、食べておけ」
そう言うと、自身も手元に残った板チョコの半分をを一口齧る。
ルイーズはというと、机の上の板チョコの半分をじっと見つめながら不満も顕にこう言った。
「遠慮します」
「あ?」
きっぱりと、そう拒絶するルイーズに。
エフェルローンは思いっきりムッとした。
「お前、俺のチョコが食えないってのか……?」
典型的な俺様上司のようにそう凄むエフェルローンに、ルイーズは「譲れない」とばかりにこう言った。
「だって! 良く見ると、なんか食べかけみたいだし……もしそうなら、変な菌とか沸いてそうで、凄く不愉快です!」
―—カチン。
エフェルローンは釣り目をスッと細めると、その両の目を不穏に光らせながらこう言った。
「……変な菌? 不愉快? お前なぁ……いいか、よく聞けよ? 俺はわりと、いやかなり綺麗好きだ。それにチョコは紙の上から手で割って食ってる! だから、変な菌なんて沸かない!」
そう向きになって反論するエフェルローンに、ルイーズも負けじと応戦する。
「そんなの、全然理由になってません! 考えても見て下さい! 手からだってばい菌は増殖するんです! 伯爵はトイレに行った後、ちゃんと手を洗っているって言い切れますか!」
その言葉に。
一瞬、エフェルローンが固まる。
「…………」
言葉に詰まるエフェルローンに、ルイーズは追い打ちを掛けるようにこう言った。
「このチョコの生死にかかわる大事なことです! で、どうなんです、伯爵? 洗っているのかいないのか、どっちなんです!」
ルイーズは疑惑のチョコを手元の紙でつまみ上げると、それをエフェルローンの目の前に突き出す。
(お願いだ。誰かこいつを止めてくれ……)
溜らず、エフェルローンはそう心の中で項垂れる。
「…………」
そんなエフェルローンの無言の反応を答えと見たルイーズは、満足そうにこう言った。
「ははーん、まあいいですよ。でもこれで、このチョコレートの生死が判明しました」
そう言うと、ルイーズはチョコを紙で包み上げる。
そして、それを机の上にことり置くと、祈る真似をしながらこう言った。
「残念ですが、あなたはもう死んでいます。さあ、ゴミ箱にお逝きなさい!」
そう言うと、ルイーズは手早くチョコをつまみ上げると、それをゴミ箱に躊躇うことなく放り込んだ。
年季の入った鉄製のごみ箱が、ごとりと音を立てて揺れる。
「…………」
王室御用達のチョコレート専門店[ヴァン・ピエール]。
仕事中の夜食にと奮発した、少し値の張る高級チョコレート。
それを、まるで使用済みの鼻紙をポイ捨てするかのようにゴミ箱に放り込むルイーズ。
その血も涙もない対応に。
エフェルローンの腸は、ぐつぐつと煮えくり始めていた。
「菌だかなんか知らないが、俺の厚意を仇で返しやがって……」
だが―—。
そんな怒り心頭のエフェルローンに対し、ルイーズはひるむどころか冷めた視線を向け、更にこう言い放った。
「私は別にいいんですよ? 伯爵が菌の繁殖したチョコを食べようが食べまいが。ただ、私は大事をとって遠慮しただけです。配属されたばかりで食中毒とか、恥ずかしいですし」
「食中毒って……」
(いくら何でもそりゃないだろう)
内心そう呟いてみるものの。
そう言われると、なんだか不安に思えてくる。
エフェルローンは自分の掌を見つめた。
何万という菌が生息しているであろう手のひら。
それから、手に持っていたチョコレートをじっと見つめること数秒。
エフェルローンは、迷うことなくチョコレートをゴミ箱に投げ入れた。
ルイーズがホッとしたように肩の力を抜く。
エフェルローンは、降参とばかりに両手を軽く上げると、首を横に振りながらこう言った。
「お前の勝ちだ、ルイーズ。チョコレートは捨てた。これでいいだろ?」
そう言って肩を落とすエフェルローンに、さすがに言い過ぎたと思ったのだろう。
ルイーズは、今までとは打って変わって少し控えめな口調でこう言った。
「……別に、私は伯爵のモラルとか、チョコレートのことなんかは、本当はどうでも良かったんです。ごめんなさい。ただ、伯爵みたいに水とかチョコレートとか、そんな魔法装置の燃料補給みたいな仕方で食事するんじゃなくて、もっと人間らしい、楽しいくて美味しい燃料補給がしたかっただけなんです」
ルイーズはそういうと、しょんぼりと下を向いた。
と、同時に、ルイーズの腹が大きな音を立てて鳴く。
「…………」
拍子抜けしたエフェルローンは無言で頭を掻き回すと、諦めたようにこう言った。
「……ほら、行くぞ」
「えっ? 捜査ですか?」
ルイーズがきょとんとした顔でそう問う。
ルイーズのその問いに、エフェルローンはムスッとした表情でこう言った。
「腹、減ったんだろ? この時間なら酒場しか空いてないけど。ま、何かあるだろ」
ルイーズの顔がみるみる明るくなる。
「酒場って……い、良いんですか!」
そう言って目を輝かせるルイーズに、エフェルローンは皮肉交じりにこう言った。
「……良いも何も、非常食はあの中だしな」
そう言って、ゴミ箱に視線を送るエフェルローン。
ルイーズが申し訳なさそうに肩を竦める。
「それと……」
そう前置きをすると、エフェルローンは改まった口調でこう言った。
「ようこそ憲兵庁へ。今日が初登庁ってことで、今夜は俺のおごりだ。好きにしな」
その言葉に、ルイーズは目を丸くしながら、嬉しそうにこう言った。
「はい! ありがとうございます! うわぁ~、なに頼もう……へへ」
そう言って軽い足取りで執務室を後にするルイーズの背中を目で追いながら、エフェルローンは思わず苦笑する。
「……ったく、マイペースというかなんというか」
(まぁ、今日は大目に見てやるとしよう、今日だけはな……)
こうして、エフェルローンとルイーズは、空腹を満たす為に夜の城下町に繰り出すのであった。
「…………」
思考の海底に深く沈んでいたエフェルローンは、容赦なく現実に引き戻され、チッと舌打ちする。
(くそっ、ペース崩されまくりだな……)
そう心の中でぼやくと、のろのろと報告書から視線を上げるエフェルローン。
そんな、「邪魔だ」と言わんばかりのエフェルローンの視線に、ルイーズが申し訳なさそうにこう言った。
「す、すみません、伯爵。私、お腹が空いてしまったみたいで……」
そう言って、自分の腹をしょんぼりと見つめるルイーズ。
せめて、事件の概要を頭に叩き込もうと務めていたようではあったが、さすがに人としての生理現象――空腹には耐えられなかったようである。
エフェルローンは卓上の時計を手に取る。
(夜の八刻過ぎ、か)
「ん……」
肘付き椅子の上で思いっきり背伸びすると、エフェルローンは机の上に組んでいた足を床に下ろした。
ルイーズが空腹と疲労に憔悴した顔でこう尋ねる。
「伯爵、夕食ですか!」
パッと顔を輝かせ、席から勢いよく立ち上がるルイーズを半ば無視し、エフェルローンは面倒くさそうに椅子から立ち上がった。
(確か、あれが冷却装置の中に……)
そう心の中で呟くと。
腰を掻き掻き、エフェルローンは部屋の隅にある年季の入った冷却装置の方へと歩を進めた。
それを見ていたルイーズは、ハッとした表情をするとおずおずとこう尋ねる。
「まさか、この時間に「水を飲んで凌げ」とか、そんな拷問みたいなこと言いませんよね、伯爵?」
引きつった笑みを浮かべるルイーズに、エフェルローンは、冷却装置の扉をおもむろに開きながらこう言った。
「悪いが大正解だ。良かったな、水獲得だ」
そう言うと、瓶に入った水をルイーズに向かってひょいと投げる。
ルイーズは、その瓶を危なげに手に取ると、一際不服そうに顔を顰めた。
「もう、夜の八刻ですよ? 夕食の時間、とっくに過ぎてますからぁ!」
そう言って机の上に突っ伏すルイーズ。
そんな気力も根気も足りないルイーズを呆れ顔で見遣ると、エフェルローンはため息交じりにこう言った。
「ったく、これだから学生気分の抜けない奴は……」
そう親父臭い文句を言うと、エフェルローンは更に装置の中を漁る。
そして目的のものを見つけると、「お。これだこれだ」と言って嬉しそうに取り出した。
「なんです、二日前のサンドウィッチでも出てきましたか?」
ルイーズが卓上に突っ伏しながら、面白くもなさそうにそう尋ねる。
すっかりふて腐れているルイーズを完璧に無視し、エフェルローンは冷蔵庫から取り出したそれを半分に割ると、その片方をルイーズの机に置くとこう言った。
「チョコレートだよ。頭を使った後には丁度いい糖分補給になる。まだ先は長いからな、食べておけ」
そう言うと、自身も手元に残った板チョコの半分をを一口齧る。
ルイーズはというと、机の上の板チョコの半分をじっと見つめながら不満も顕にこう言った。
「遠慮します」
「あ?」
きっぱりと、そう拒絶するルイーズに。
エフェルローンは思いっきりムッとした。
「お前、俺のチョコが食えないってのか……?」
典型的な俺様上司のようにそう凄むエフェルローンに、ルイーズは「譲れない」とばかりにこう言った。
「だって! 良く見ると、なんか食べかけみたいだし……もしそうなら、変な菌とか沸いてそうで、凄く不愉快です!」
―—カチン。
エフェルローンは釣り目をスッと細めると、その両の目を不穏に光らせながらこう言った。
「……変な菌? 不愉快? お前なぁ……いいか、よく聞けよ? 俺はわりと、いやかなり綺麗好きだ。それにチョコは紙の上から手で割って食ってる! だから、変な菌なんて沸かない!」
そう向きになって反論するエフェルローンに、ルイーズも負けじと応戦する。
「そんなの、全然理由になってません! 考えても見て下さい! 手からだってばい菌は増殖するんです! 伯爵はトイレに行った後、ちゃんと手を洗っているって言い切れますか!」
その言葉に。
一瞬、エフェルローンが固まる。
「…………」
言葉に詰まるエフェルローンに、ルイーズは追い打ちを掛けるようにこう言った。
「このチョコの生死にかかわる大事なことです! で、どうなんです、伯爵? 洗っているのかいないのか、どっちなんです!」
ルイーズは疑惑のチョコを手元の紙でつまみ上げると、それをエフェルローンの目の前に突き出す。
(お願いだ。誰かこいつを止めてくれ……)
溜らず、エフェルローンはそう心の中で項垂れる。
「…………」
そんなエフェルローンの無言の反応を答えと見たルイーズは、満足そうにこう言った。
「ははーん、まあいいですよ。でもこれで、このチョコレートの生死が判明しました」
そう言うと、ルイーズはチョコを紙で包み上げる。
そして、それを机の上にことり置くと、祈る真似をしながらこう言った。
「残念ですが、あなたはもう死んでいます。さあ、ゴミ箱にお逝きなさい!」
そう言うと、ルイーズは手早くチョコをつまみ上げると、それをゴミ箱に躊躇うことなく放り込んだ。
年季の入った鉄製のごみ箱が、ごとりと音を立てて揺れる。
「…………」
王室御用達のチョコレート専門店[ヴァン・ピエール]。
仕事中の夜食にと奮発した、少し値の張る高級チョコレート。
それを、まるで使用済みの鼻紙をポイ捨てするかのようにゴミ箱に放り込むルイーズ。
その血も涙もない対応に。
エフェルローンの腸は、ぐつぐつと煮えくり始めていた。
「菌だかなんか知らないが、俺の厚意を仇で返しやがって……」
だが―—。
そんな怒り心頭のエフェルローンに対し、ルイーズはひるむどころか冷めた視線を向け、更にこう言い放った。
「私は別にいいんですよ? 伯爵が菌の繁殖したチョコを食べようが食べまいが。ただ、私は大事をとって遠慮しただけです。配属されたばかりで食中毒とか、恥ずかしいですし」
「食中毒って……」
(いくら何でもそりゃないだろう)
内心そう呟いてみるものの。
そう言われると、なんだか不安に思えてくる。
エフェルローンは自分の掌を見つめた。
何万という菌が生息しているであろう手のひら。
それから、手に持っていたチョコレートをじっと見つめること数秒。
エフェルローンは、迷うことなくチョコレートをゴミ箱に投げ入れた。
ルイーズがホッとしたように肩の力を抜く。
エフェルローンは、降参とばかりに両手を軽く上げると、首を横に振りながらこう言った。
「お前の勝ちだ、ルイーズ。チョコレートは捨てた。これでいいだろ?」
そう言って肩を落とすエフェルローンに、さすがに言い過ぎたと思ったのだろう。
ルイーズは、今までとは打って変わって少し控えめな口調でこう言った。
「……別に、私は伯爵のモラルとか、チョコレートのことなんかは、本当はどうでも良かったんです。ごめんなさい。ただ、伯爵みたいに水とかチョコレートとか、そんな魔法装置の燃料補給みたいな仕方で食事するんじゃなくて、もっと人間らしい、楽しいくて美味しい燃料補給がしたかっただけなんです」
ルイーズはそういうと、しょんぼりと下を向いた。
と、同時に、ルイーズの腹が大きな音を立てて鳴く。
「…………」
拍子抜けしたエフェルローンは無言で頭を掻き回すと、諦めたようにこう言った。
「……ほら、行くぞ」
「えっ? 捜査ですか?」
ルイーズがきょとんとした顔でそう問う。
ルイーズのその問いに、エフェルローンはムスッとした表情でこう言った。
「腹、減ったんだろ? この時間なら酒場しか空いてないけど。ま、何かあるだろ」
ルイーズの顔がみるみる明るくなる。
「酒場って……い、良いんですか!」
そう言って目を輝かせるルイーズに、エフェルローンは皮肉交じりにこう言った。
「……良いも何も、非常食はあの中だしな」
そう言って、ゴミ箱に視線を送るエフェルローン。
ルイーズが申し訳なさそうに肩を竦める。
「それと……」
そう前置きをすると、エフェルローンは改まった口調でこう言った。
「ようこそ憲兵庁へ。今日が初登庁ってことで、今夜は俺のおごりだ。好きにしな」
その言葉に、ルイーズは目を丸くしながら、嬉しそうにこう言った。
「はい! ありがとうございます! うわぁ~、なに頼もう……へへ」
そう言って軽い足取りで執務室を後にするルイーズの背中を目で追いながら、エフェルローンは思わず苦笑する。
「……ったく、マイペースというかなんというか」
(まぁ、今日は大目に見てやるとしよう、今日だけはな……)
こうして、エフェルローンとルイーズは、空腹を満たす為に夜の城下町に繰り出すのであった。
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