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#197 飛鳥の鍵 (逆電+)
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天下茶屋・マンドリル・アルドリッチ・ネイサン・ジンは、鶯谷駅近くのひと気のない駐車場で、スマホ片手に煙草(LARK MILD100 )をふかしていたら、声をかけられた。
金髪の女の子だった。
その途端、ジンの頭をよぎったのは、最近駅の周辺で、いきなり声を掛けてくる若い女性がいて、イエス様を信じますか、とか、アレン様を知っていますか、とかではなく、本番1万でどうですか? なんなら5千円で、と聞いてくるらしい。
だが、今回は違っていた。
パツキンのかわいい、ちゃんねーが吐き出した言葉は「Get ready!」たぶんそんな風に聞こえた。
ジンは、英語が苦手で、もちろんヒアリングもダメだから聞き取れたのは、ネイティヴじゃなくコテコテの日本人の発音だったからかもしれない。
するといきなり腰の入った正拳突きを一発腹にくらった。ウッと呻いて前屈みになったところに、さらに膝蹴り。
グシャッと鼻骨が折れたような感触とともに気が遠のいた。
気づいたら車のトランクの中だった。人に怨まれるような事を何かしたか必死に考えたが思い当たる節はない。
人里離れた森の奥深くに穴を掘り生き埋めにされる映像しか頭に浮かばない。幸いにもスマホは奪われてなかったから警察に電話しようと思った。
まさにその時だった。スマホが震え出して、画面には見知らぬ電話番号が表示されている。誰でもいい、とにかく藁をも掴む思いで電話に出た。
すると...
「あ、ジンくんのケータイでいいですか? お葉書ありがとうございます」
第一声ですぐわかった。大好きな推しメンの声を忘れるわけもない。狭いトランクの中が天国になった。
「励ましのメッセージ本当にありがとう、思い切り泣いちゃいました。ジンくんも何か辛いことや悩みごとがあると思うけど、お互い頑張っていこうね! 根も葉もない噂が拡散されて、熱愛やら真剣交際やら結婚が取り沙汰されているけれど、ジンくんに勇気と元気をもらいました。本当にありがとう」
ラジオ生放送のスタジオからの逆電だった。むしろこのまま生き埋めでいいかな、なんてバカな事をジンは考えたけれど、いいわきゃない。
そして、幸か不幸か、そこでスマホのバッテリーが切れた。推しメンの声が聞けただけでもよしとするべきなのだろうか。
それにしても、いったい全体この車はどこに向かっているんだろう、やっぱり定番でひとけのない山奥の森林に連れて行かれて、スコップだかシャベルを放られ、あるいは渡されて自分で墓穴を掘れとかいわれるんだろうか。
ボケツを掘ることは結構あるけれど、ハカアナはほとんどの人が掘った経験などあるはずもない、とジンは思った。
しかし、車は予想に反して山に登っているような感じはなく、勾配のない平坦な道をずっと走り続けているようだった。
いったい、どこに連れて行かれてしまうんだろう。
やがて、車は停まった。
トランクが、開いた。
いきなり、ジンはトランクから引き起こされて外に出ると、バンダナで目隠しをされた。
大きなシャッターが開いていくような音が聞こえてくる。
促されるまま、ジンは数本歩いて、どうやら建物の中に入ったようだった。
バンダナを外された。
と、ジンの眼前には
東尋坊のような断崖絶壁を背景にした廃屋だか廃墟が建ち並ぶ、そこには、なぜか巨大な猫(アメショ)が、優雅に長々と寝そべっていた。
それは、廃墟のジオラマだった。
ジンはその見事なジオラマに見入ってしまい、自分の置かれた状況を暫し忘れてしまうほどだった。
猫が、ニャーと鳴いた。
それで、ジンはふと我にかえり、周りを見回すと、そこは巨大な倉庫みたいなところだった。
がらんとした巨きな箱の中にジオラマがポツンとあるのみ。
高いところにある窓から、ちょうどジオラマに光がさしていた。
気づけば、誰もいない。
外から車の走りさる音が聞こえた。
なんなんだこれは、とジンは途方に暮れた。
猫がまたニャーと鳴いて、ジオラマから飛び降りた。
猫が優雅に歩いていくその先には、いつのまにか美女が立っていた。
薄暗がりだが、それでも彼女が非の打ち所がないほどの、美貌の持ち主であることが、よくわかった。
ただしかし、そこまでだった。
ジンの出来の悪い頭をいくら振り絞ったところで限界というものがあった。妄想もここまで。
相変わらず、ベンツは走り続けている。テキトーな予想だが関西方面に向かっているのかもしれない。高速に乗ったような感じがした。
すでに、切迫した緊張感は薄れ、ジンは少し眠くなってきた。
と、突然、雷に打たれたようにある考えが閃いた。もしかしたら、これは、彼女なのかもしれないと思った。
逆電されたので、タイミング的にまったく考えもしなかったけれども、すべては仕込まれていたことなのだと考えると、辻褄が合うかもしれないと、ジンは思った。
実は半年前に、不思議なことがあったのだ。
*
ジンはあの日、友人の誕生日プレゼントを買いに出掛けたのだった。
なんのプランもなく、あてもなく軒並みお店を覗いていったが、結局自分の好きなステーショナリーグッズにすることにした。
おめあてのお店は半地下にあって、通りから眺め下ろす感じがジンは好きだった、なんか秘密の基地みたいで。
そこは、たぶんアメリカじゃなくて、ヨーロッパの匂いのするアイテムを揃えていて、ひとつ残らず欲しくて目移りして仕方なかった。
とりわけ、いかしたノートが沢山並んでいて、ジンは洒落たスケジュール帳をプレゼントすることにした。
そいつは、チェック柄のカバーがバックのようになっていて、チャックで開け締め出来る仕様になっていた。
プレゼント用のリボンも付けて貰い、階段を上っていくと、入る時には気づかなかった商品が目にとまり、手にとって見ているとそこに彼女が現われたのだ。
彼女の目を瞠る気品ある美しさに、言葉を失ってただ茫然とその横顔を見つめていた。
すると、視線に気付いた彼女は、まっすぐこちらを見たのだが、アッと小さな声をあげ、持っていた冊子を取り落としそうになった。
咄嗟に手を伸ばしてしまい、自分の持っていたプレゼントを落としそうになったジンを見て、彼女はクスっと笑ったのだった。
それを合図にしたように、するすると言葉がほとばしり出てきたのには、ジン自身驚いた。
「以前にどこかで会ったことありましたっけ?」
その唐突な問いに彼女は、微笑んだだけだった。
確かに彼女に声を掛けたジンの行動は、あまりにも常軌を逸していた。街中で女性に声など掛けたことのないジンが、後先考えず、当たり前のことのように行動し、気付いたら話し掛けていた。考えるよりも先に身体が反応していたのだから、わけがわからない。
そしてまるで旧友に再会したかのような何か不思議な懐かしさがジンの胸にこみ上げてきたのだ。彼女も同じような感覚に囚われていたのではないか、そうならば、やはり運命的な出会いと思っていいのではないだろうか。
だが、冷静に考えるならばそんな都合の良い運命的な出会いがあるはずもない、実際は典型的なストーカーの身勝手きわまりない心理に限りなく近いものがあるかもしれない。
それにしても、彼女が鍵を手渡してきたのには面食らった。
「これ、飛鳥さんからです」
そう言って手渡されたノンタッチキーらしき鍵に、思わず絶句した。
ほんの1分ほどの立ち話に過ぎなかったけれど、まさに夢のような出来事というか、キツネに化かされたようだった。
彼女は、アイドルでもおかしくはないビジュアルだったから、ホンモノの野義メンかもしれなかった。
ジンは飛鳥ちゃんが卒業してから、新曲すらチェックしなくなってしまったから、チームは、ほとんど知らない人ばかりになってしまっていた。
「あと、伝言です。よかったらこの鍵が使える時まで預かっていてください、とのことです」
なんて、用意周到なまでにすらすらと、よどみなく暗記してきたような台詞を彼女が発していたならば、いかにも詐欺師めいていただろうけれど、彼女は何も言わずに、鍵だけ手渡して去っていった。
とにかく、わけがわからない。
しかし、いったい、どこの世界に自分の部屋の鍵を、見ず知らずのわけもわからぬ男に手渡す人がいるだろう。
鼻につくほど、ビジュアルが良すぎるのならまだしも、わかる気がするけれど、十人並みのルックスのただのキモオタに?????
頭の中にハテナ?が嵐のように渦巻いていた。
ということで、やはりこれは流行りのロマンス詐欺と判断するのが妥当な線だろうと、ジンは思った。
しかし、詐欺の為の連絡用SNSの交換は、なぜしなかったのだろうか、そこらへんもよくわからない。
しかし、鍵を渡すというのは、新しいなとジンは思った、そんな詐欺の手口を聞いたことがない。
アキバのメイド喫茶だかカフェのキャストが、道端で大人しそうなブサメンを狙ってやるキャッチの手法みたいに、自分も楽勝で落とせると思われたのだろうか。
そうなのだ、彼女は、ジンの名前を知らなかった。個人を特定したわけではないのだ。たまたま顔を見た瞬間に、コイツなら飛鳥というメジャーな名を出せばイチコロだと思ったのだろうか。
しかし。生憎(あいにく)オレは、擦れている、学生の頃からデルモのバイトをやっていて、綺麗な子は見飽きるほど見てきたし、今も複数の美人と付き合っているけれど、騙しているわけじゃない、他に誰かいても構わないから付き合ってと泣いてすがられるので、仕方なく二桁股になっただけ、なので毎日が酒池肉林ですわ、ワッハッハッハッ、知らんけど。
ジンは、ウソでもそんな風にスケベに豪語したかった、別に性豪やら絶倫やらの称号は欲しくないけれど、彼女のひとりくらいは、ほしかった、生まれてこの方、女性と付き合ったことがない。
ま、とまれ、詐欺師の手先なのかなんなのか知らないけれど、なぜまた彼女が飛鳥ちゃんからといって鍵を手渡してくれたのか、気になるの確かだが、たとえほんとうの話だと仮定しても、部屋の場所がわからない鍵などただの燃えないゴミにすぎないのだから、邪魔くさいだけだった。
ちょうど元カノの写真を捨てるに捨てられない、そんな感じに似ているだろうか、元カノがいたためしはないのだけれど。
ただ、彼女いない歴現在の年齢のジンにしてみれば、計り知れない力が、二人を出会わせたならば、行動を起こさずとも時が来たならば、また会えるだろう、なんてファンタジーの世界に遊んでみたいお年頃なのだった。
たしかに妄想するのも悪くない。
というか、正直な話、むしろ運命的な出会いに賭けたい気持ちでいっぱいだった。
まあ、そのうまくいって欲しいというご都合主義的な心理につけ込むのが詐欺の王道なのだから、そんな甘い話はないなとは思いつつも、ジンはやはり憧れてしまうのだった。
初めてのデートは、どこに行こうとか、何食べようとか、もう想像しただけで、うれしくて震えてくるほどだった。
なので、リアルの厳しさはわかっている上で、とりあえずそれは置いといて、夢のようなめくるめく彼女とのデート、あ、それからそれから、kissなんて、あーぁ、オーぉ、考えただけで、昇天しそうなのだった。
楽しいことを考えている方が、俺はダメだとか、ありえないとか、最初から諦めて、うつむいて生活するなんてことより、100万倍精神衛生上、いいに決まっている。
だから、ジンは妄想でもいい、ネガティブな思考は禁止して、夢のある楽しいことを考えようと決めた。
縁がないのならば、本物の出会いではなく何でもなかったということで終わりにしてしまえばいい。
ただしかし、そんな強がりを言えるのも、飛鳥ちゃんの部屋? らしき鍵を持っているからかもしれない。
しかし、この鍵がほんとうに彼女自身の部屋の鍵なのかもわからないのだし、そうであったとしても住所も知らないのだから、持っているだけなら、ただの不燃ゴミにすぎない、というのは事実だった。
それに、どう考えても、あの飛鳥ちゃんが、キモオタのジンの事など知るはずもないのだった。
彼女は、鍵を手渡すことによってふたりの強い絆を教えてくれたのかも、などとジンは自分に都合のいいように考えたかったが、そんな青天の霹靂の如き事態は、絶対に起こりえない話なのだ。
そして、ある日。
ついに彼女からのメールが、来た。
お元気ですか?
やっと時間がとれそうなのでご連絡しました。来週なんですけど、会えませんか?火曜日か金曜日。
身勝手なお願いで申し訳ないのですが、どうかよろしくお願いします。
そして、メールのやり取りをして、密会は翌週の火曜日と決まった。
だが、結局待ち合わせ場所である、マークシティにあるタロウの『明日の神話』の下に彼女は現われなかった。
まあ、あたりまえだった、なにからなにまでジンの妄想に過ぎないのだから。
翌日、目覚めるとガラスの灰皿が目の前にあった。最初はそれが何なのか、わからなかった。
まだ夢のなかにいるような浮遊感があった。乳白色の薄いベールに包まれた一糸纏わぬ彼女の長い髪が、風にたおやかに揺れていた。幾層もの音の波が、押し寄せては頬をなぶり、やがて彼方へと退いていった。
住所を知らなければ、鍵はクズ同然なのだから、鍵を渡すのはそれほど彼女にとってリスキーなことではなかったわけだ。
ふたりの強い絆の証しなどと考えるのは、あまりにも安易で馬鹿げたご都合主義だったのかもしれない。
彼女は、単に要らない鍵を、例えば以前に住んでいた部屋の合鍵だとか、もう使用することはないし、使えない要らない鍵を、釣りにして、男をたぶらかして遊んでいるのかもしれない。
まったく知らない綺麗な女子から突然道ばたで、私の部屋の鍵です、よかったら受け取ってください、なんて言われたら男どもは鼻の下を伸ばして、喜ばないやつはまずいないだろう。
疑り深いやつは、天から降ってきたこんな僥倖を、話がうますぎる、だからこそ詐欺にちがいない、どうせ変な壺とかNFTアートを売り付けられるか、いわゆるネズミ講、あるいは流行りのロマンス詐欺だと決めつけるかもしれない。
確かにSNSやマッチングアプリを利用して、正体を明かさずに、親近感を持たせたり、恋愛感情を抱かせ、まんまと金銭を巻き上げ大金を騙し取る連中はウジャウジャいる。
自分のケースは、もっと手が込んでいて、最初に先ず見せ金のように顔見せをして、こんなに美人なのだからウソじゃないと認識させ信用させたという可能性もある、なるほどうまい手口にはちがいない。
タレント事務所やら地下アイドルの未だ世に知られていない、綺麗な子を使って先ず安心させて、ゆっくりとSNS等で焦らしたり、心配させたり、寂しがらせたり、のぼせあがらせて有頂天にし、恋の虜にしてしまうのだ。
骨抜きにされた善良なターゲットは、一切疑うことを知らない。
もうその段階まで行けば、あとひと押しで、詐欺師様専用のATMと化して、好きなだけ大切なお金を引き出されてしまうのだ。
そんな陰湿な思いが叢雲のようにまとわりついて離れない。飛鳥ちゃんの太陽のような明るい笑顔を思い出して、つまらない考えを振りほどこうとするのだけれど、考えは堂々めぐりするばかりだった。
飛鳥ちゃんの美しい顔を思い出し、凛としたその眸の輝きが脳裏を離れない。
だが、彼女が美しければ美しいほど、ジンは騙されているとしか思えないのだった。
ジンは、こんなに深刻なまでの疑心暗鬼に囚われたことは、いままでなかったように思うのだ。
手渡してくれた鍵は、絆の証しなどではなく、逆に釣るためのツールに違いないとわかってはいるものの、信じたいという気持ちが、どうしても勝ってきてしまうのだった。
そんな疑心暗鬼に取り憑かれた自分をジンは醜いと思った、本当は飛鳥ちゃんを信じられない自分の弱さこそを嘆き憎むべきなのかもしれない。
しかし、なにをいったい恐れているというんだろう、失うものなど何もない。そもそも砂のお城を夢見ていただけにすぎない、そう思ったら少しだけ気が楽になった。
しかし、人は、いったん甘い夢に囚われると、そこからなかなか抜け出せなくなってしまうものなのだ。
《ジンの推しメンを突き止めた詐欺師グループは、さすがに推しメン本人はダメに決まっているから、とりあえず美人のバイトを雇って、推しメンからと鍵を渡させたのではないか》
謎解きは、おそらくこれが、いちばん理に叶っていてスマートだった。
しかし、たとえ金銭を騙し取るための、やり取りでもいいから、会話してみたいとジンは思うのだった。
まあ、世界は広いのだからそういう詐欺師との恋愛もあっていいだろう、でも、それが自分であったなんて笑えない冗談ではあるが。
しかし、ロマンス詐欺でないのならば、ただの愉快犯なのかもしれない。
となると、詐欺師グループという大掛かりなものではなく、あの美人さん個人の憂さ晴らし的な話と考えた方がいいのではないか。
推しメンの鍵をもらえた男が、一向に進展しない恋に身悶える、そんな状況を楽しんでいるのだ、金銭的な実害はないので、詐欺とも呼べない。
やはり、寂しさを紛らわせるため、或いは人間関係のストレスやら失恋を癒すのための、憂さ晴らしということだろうか。
まあ、実際はただの暇つぶしに過ぎないのかもしれない。
蛇の生殺し、宙吊り状態を楽しんでいるのだ、相当ねじれにねじれた、ひねくれた性格でだいぶ拗らせてしまっているようだ。
おそらく、これまでの恋愛でかなりヤバい仕打ちを受けてきたんだろう、そう考えると、少しだけ彼女に同情してもいいかなと思ったりもした。
まあ、あれからバッグごとひったくられて、お財布をなくしてしまった、とか、母が老健施設に入所することになって、保証金を急遽支払わなければならない、であるとかいう、お金目当てのDMもこないし、実害はないのだから、愉快犯確定ということでいいのだろう。
というわけで、ジンは最終的にこれはゲームなのだと思うことにした。
アニメの設定みたいな不思議な恋愛を夢みていて、運命的な出会いで鍵を手渡し、さまざま試練を経て再会し、やがてめでたく結ばれるみたいな疑似恋愛をして、恋愛した気分になるゲームだ。
つまりは、ゲームなのだから楽しまなきゃ損、なのだった。夢をみさせてくれた彼女には、逆に感謝していいのかもしれない。
そんな風に考えるくらい、もう鍵を貰った事件のことは、風化してしまうほど、瞬く間に時は過ぎ去っていった。
しかし。ある時驚くべき意外な事が起こったのだ。
ジンは、写真が趣味でSNSをよく利用していたが、ある日、突然意味不明なDMが来たのだった。
DMがくるのだから、相互フォローの相手だが、そこには
「ホテルで配膳のアルバイトをしています」
それだけ、書かれてあった。
その一文に何かあると思ったわけでもなく、頭のネジが何本か飛んだ人なのかな程度に不思議に思って、何気にアカウントに飛んでみた。
すると、何かピントくるものがあった。それは
0113.akusa
というアカウントだった。そこで、ダメ元でジンは、妄想のリミッターを外すことにした。
飛鳥ちゃんは、現在の自分の事はあまり喋りたがらない恥ずかしがり屋さんという設定だった。
つまり、まったく会話はないので、ジンが一方的に書き込むことにしたわけだ。
とにかく自分の中にすべて溜め込んでいるのは、もう苦しくて仕方ないので、一方的な雑談でいいからとにかく何がしか書き込むことで、発散したかった。
誰しも、SNSやらで返信がない片道通行の会話的な、独り言を呟いていたことがあるのではないだろうか?
痛いヤツ、アタオカ上等、しかし、ストレスを溜め込むよりは全然いい。
彼女が読むのか読まないのかも一切気にしない、たとえ片道通行であろうとも、彼女と何かしら繋がっているという、自分勝手な思い込みでいいから、何かエビデンスがほしかった。
そして、ジンはこんな風に書き込んでいった。
小さな頃、家の裏にある竹藪で、よく遊んだ、その竹の笹は風が吹くとサラサラとほんとうに優しい音を奏でるんだ。
猫を2匹飼っていて、名前はチャコとチビ。
大風の吹いたある日、羽根を痛めた雀が部屋の中に逃げ込んできて、手当てしてあげようとしたのに、部屋中を飛び回るうちに死んでしまった。
お母さんと近くの公民館へピアノの発表会を見に行ったら、蝙蝠が天井にぶら下がっていて大騒ぎになって、発表会どころじゃなくなった。
ツツジの花で食べられる種類のやつがあって、それは甘酸っぱくて美味しい。
UFOを何度も目撃したことがあって、あれは未来から飛来してくるんじゃなくて、実は地球の地底世界から来るんだと思ってた。
綿菓子が大好きで、お祭りの時には必ず買ってもらったけれど、食べることよりも綿菓子を持って歩いていることがうれしくて、いつも最後は手がべとべとになった。
大雪が降った日に、学校を出てからまっすぐ家には帰らず、寄り道して暗くなるまで雪だるまを作って遊んでいて、お母さんをひどく泣かせてしまったことがある。
たまたま行った知らない小さな公園で、滑り台をやったら尖った木が突き出ていて、くるぶしにグサリと突き刺さった。
一度きりだけど、水彩画のコンクールで奇跡的に佳作を取って小さな盾をもらった。
台風の時に、ほんの少しだけ戸を開けて、蒲団を被ってわくわくしながらずっと外を覗いていた。
犬を飼いたくて、近所の家から仔犬をもらい飼い始めたけれど、母犬の悲痛な啼き声がずっと聞こえていて、結局一日で飼うのを諦めた。
鯖の味噌煮は大好きだけど、鯖の水煮もまあまあ美味しい。
あの天草四郎時貞の洗礼名が、ジェロニモというインディアンみたいな名でびっくりしたけど、なんか自分に関係あるんじゃないかと密かに思っている。
盲人が、白い杖で床をコツコツやるのは、何か手助けを必要としている合図と知っていながら、知らんぷりして通りすぎたことがある。
おなかに赤ちゃんがいます、のバッヂを3つくらいバッグに付けたおばあちゃんを見たことがある。
ディズニーランドのパレードでダンサーさんと目が合った時、恥ずかしそうにしていたことがあって、自分も恥ずかしくなった。
ディズニーで、列に横入りした家族がいて、周りから滅茶苦茶に罵倒されまくっていたのを目の当たりにしたことがあり、結局その家族は、すごすごと列から離れていったけれど、その背中にさらに「おまえら家族は二度とディズニーに来んなー!」と罵声を浴びせられていたが、夢の国もこれじゃ台無し。
電車で前に座っていたお婆さんが、なんか変なヅラを着けていて、よく見たら黒のマジックペンで何本も線が引いてあった。
関西人でもないのに、ときどきマックをマクドと言ってしまうことがある。
浅草寺のほうずき市に浴衣を着て行ってみたいとずっと思っているけど、行くんならふたりで行きたい。
まあ、こんな具合にまったく徒労で不毛な書き込みをしていたのだが、自分の事を誰かに話すということは、それなりにストレスの発散にはなるのは、間違いなかった。
世の中には日記をつけている方もたくさんいらっしゃるだろうが、ジンの場合は、やはり誰かに見られているという感覚がウソでもないと書き続けることが出来なかった。
飛鳥ちゃんからのレスは、むろん一切ない。いや、ジンが勝手に飛鳥ちゃんを想定してメンションしているだけであって、実際誰なのかすらわからない。
やがて、ジンはトチ狂ったついでに彼女との会話を妄想し、それをヤケクソで、DMで送った。
それは、こんな具合に...
「ハネムーン行くとしたら、どこがいい?」
「そうだなぁ、やっぱワイハー?」
「ああ、ありがちだねw」
「じゃ、どこ行きたい?」
「あのね、エーゲ海かな。サントリーニ島やミコノス島に行ってみたい」
「なるほど。エーゲ海クルーズか。じゃ、船酔いは大丈夫なんだ?」
「あ、それ忘れてた! じゃあさじゃあさ、モルディブは? 一棟ずつ独立して海上に建てられたウォーターヴィラがあって、そこには島からボートで行くんだって」
「なーる。開放的な隠れ家みたいな? w」
「でさ、スノーケリングやりたいな。あとカヌーとボードセーリング」
「あー、アナログなやつね」
「そう。海亀なんか水上バイクのスクリューにひっかけられるとかよく聞くし」
趣味はなんだと聞くと、意外な答えが返ってきて驚いた。盆栽だというのである。
「いや、最近凝りはじめたばっかで、初心者もいいとこなんだけどね、盆栽はすごいですよ?」
「なにがやねん?」
「だからさ、あれはね老人趣味の植物虐待なんかじゃないわけ。アートなのよ」
「ああ、それはわかる気がする」
「小宇宙なんだから。時間がぎゅっと凝縮されてる。てかさ、渋谷の井の頭線へ続く通路に岡本太郎のデッカい壁画あるじゃん?」
「あの、黒っぽいやつか」
「あれ、やっぱデカいから退いて見ないと全体を見渡せないよね、でしょ? それをね、スマホ見るみたいに手のひらに乗せて見られるとしたら、どう?」
「どうって言われても...だから、なに?」
「それがね盆栽なんだよね。大自然と時間を言わばミニチュア化する。人は元のスケールの大自然を知っているし時間の堆積というものを感じとることができる。だから、盆栽を見ると脳のスペースとタイムのスケール感が狂わされてしまう。そこに魅力があると思うの」
「ほう。深いですな」
東京にずっといたいのかという質問には、こんな風に答えた。
「まあね、便利だからね。でも、歳とったら変わるかも」
「うん。今はね、いわゆる洋風のマンション住まいでもいいけどね」
「京町家ってわかる? あんな風なところで、みんなでわいわいやりながら暮らしたいな。坪庭があって坪庭を通して奥の、中の間や座敷、さらにその奥に奥庭が垣間見える、その空間の広がりが、たまらない」
「あーなんとなくわかる。川端康成に出てきそうな家だね。その広い奥庭は、板張りの回廊みたいなのに囲まれてる感じかな?」
「それな!」
もちろん、ケンカもした。てか、片道通行の今が、絶賛ケンカ中なわけです、という設定なのだ。
「なにかギクシャクして相手を思い遣る気持ちがなくなってしまっているときには、むしろ、とことんやり合って心にわだかまりを残さない方がいい。それが出来ないといつまでも拗れるだけだし、シコリが生じてしまう気がする。なので、飛鳥ちゃんの機嫌が直るまで、オレはじっくり待つよ」
まあ、会えないことを除けば概ねふたりはうまくやっていたと言えると思う、ジンの妄想の世界で。
だが、その先にはとんでもない奇跡が、ジンを待ち受けていた。
事実は、小説よりも奇なり。なんと、リアルでの出会いが待っていたとは、お釈迦様でも知らぬめぇ、というやつか。
*
そうだった、とジンは思った。今日、鶯谷のパーキングで白昼拉致られたのは、あの摩訶不思議な鍵の事件がらみ、だったのかも知れない。
もう半年以上も前の話で、タイムラグがありすぎて気づかなかった。
それに、よく考えてみると、拉致した犯人は警察に通報されたならアウトなのだから、ジンのスマホを没収しないはずもなく、となると、やはり、ラジオ局からの逆電の時間に合わせて拉致して、トランクの中で逆電がかかってくるように、すべては仕組まれていたわけらしい。
そう推理してみると、思いのほか、あのノンタッチキーは、飛鳥ちゃんのモノホンの鍵説がグッと信憑性を増してくる。
しかし、予断を許さない状況にかわりはなかった。これから何が待ち受けているか、全くわからない。まさかの鍵の持ち主である飛鳥ちゃんの登場という流れなのだろうか。あるいは、自分の墓穴を掘らされるような、生き地獄が待っているのだろうか。
となると、まさに天国か地獄か。
ジンは、妄想癖があるけれど、かなり現実的なところもあるので、後者である可能性が限りなく高いと賢明にも判断していたが、奇跡の邂逅を未だに諦めているわけではなかった。
ベンツが停車し、トランクが開かれるその時が、刻一刻と迫る切羽詰まった状況の中で、ジンは震えながら手を合わせ、奇跡が起こりますようにと、祈るほかなかった。
金髪の女の子だった。
その途端、ジンの頭をよぎったのは、最近駅の周辺で、いきなり声を掛けてくる若い女性がいて、イエス様を信じますか、とか、アレン様を知っていますか、とかではなく、本番1万でどうですか? なんなら5千円で、と聞いてくるらしい。
だが、今回は違っていた。
パツキンのかわいい、ちゃんねーが吐き出した言葉は「Get ready!」たぶんそんな風に聞こえた。
ジンは、英語が苦手で、もちろんヒアリングもダメだから聞き取れたのは、ネイティヴじゃなくコテコテの日本人の発音だったからかもしれない。
するといきなり腰の入った正拳突きを一発腹にくらった。ウッと呻いて前屈みになったところに、さらに膝蹴り。
グシャッと鼻骨が折れたような感触とともに気が遠のいた。
気づいたら車のトランクの中だった。人に怨まれるような事を何かしたか必死に考えたが思い当たる節はない。
人里離れた森の奥深くに穴を掘り生き埋めにされる映像しか頭に浮かばない。幸いにもスマホは奪われてなかったから警察に電話しようと思った。
まさにその時だった。スマホが震え出して、画面には見知らぬ電話番号が表示されている。誰でもいい、とにかく藁をも掴む思いで電話に出た。
すると...
「あ、ジンくんのケータイでいいですか? お葉書ありがとうございます」
第一声ですぐわかった。大好きな推しメンの声を忘れるわけもない。狭いトランクの中が天国になった。
「励ましのメッセージ本当にありがとう、思い切り泣いちゃいました。ジンくんも何か辛いことや悩みごとがあると思うけど、お互い頑張っていこうね! 根も葉もない噂が拡散されて、熱愛やら真剣交際やら結婚が取り沙汰されているけれど、ジンくんに勇気と元気をもらいました。本当にありがとう」
ラジオ生放送のスタジオからの逆電だった。むしろこのまま生き埋めでいいかな、なんてバカな事をジンは考えたけれど、いいわきゃない。
そして、幸か不幸か、そこでスマホのバッテリーが切れた。推しメンの声が聞けただけでもよしとするべきなのだろうか。
それにしても、いったい全体この車はどこに向かっているんだろう、やっぱり定番でひとけのない山奥の森林に連れて行かれて、スコップだかシャベルを放られ、あるいは渡されて自分で墓穴を掘れとかいわれるんだろうか。
ボケツを掘ることは結構あるけれど、ハカアナはほとんどの人が掘った経験などあるはずもない、とジンは思った。
しかし、車は予想に反して山に登っているような感じはなく、勾配のない平坦な道をずっと走り続けているようだった。
いったい、どこに連れて行かれてしまうんだろう。
やがて、車は停まった。
トランクが、開いた。
いきなり、ジンはトランクから引き起こされて外に出ると、バンダナで目隠しをされた。
大きなシャッターが開いていくような音が聞こえてくる。
促されるまま、ジンは数本歩いて、どうやら建物の中に入ったようだった。
バンダナを外された。
と、ジンの眼前には
東尋坊のような断崖絶壁を背景にした廃屋だか廃墟が建ち並ぶ、そこには、なぜか巨大な猫(アメショ)が、優雅に長々と寝そべっていた。
それは、廃墟のジオラマだった。
ジンはその見事なジオラマに見入ってしまい、自分の置かれた状況を暫し忘れてしまうほどだった。
猫が、ニャーと鳴いた。
それで、ジンはふと我にかえり、周りを見回すと、そこは巨大な倉庫みたいなところだった。
がらんとした巨きな箱の中にジオラマがポツンとあるのみ。
高いところにある窓から、ちょうどジオラマに光がさしていた。
気づけば、誰もいない。
外から車の走りさる音が聞こえた。
なんなんだこれは、とジンは途方に暮れた。
猫がまたニャーと鳴いて、ジオラマから飛び降りた。
猫が優雅に歩いていくその先には、いつのまにか美女が立っていた。
薄暗がりだが、それでも彼女が非の打ち所がないほどの、美貌の持ち主であることが、よくわかった。
ただしかし、そこまでだった。
ジンの出来の悪い頭をいくら振り絞ったところで限界というものがあった。妄想もここまで。
相変わらず、ベンツは走り続けている。テキトーな予想だが関西方面に向かっているのかもしれない。高速に乗ったような感じがした。
すでに、切迫した緊張感は薄れ、ジンは少し眠くなってきた。
と、突然、雷に打たれたようにある考えが閃いた。もしかしたら、これは、彼女なのかもしれないと思った。
逆電されたので、タイミング的にまったく考えもしなかったけれども、すべては仕込まれていたことなのだと考えると、辻褄が合うかもしれないと、ジンは思った。
実は半年前に、不思議なことがあったのだ。
*
ジンはあの日、友人の誕生日プレゼントを買いに出掛けたのだった。
なんのプランもなく、あてもなく軒並みお店を覗いていったが、結局自分の好きなステーショナリーグッズにすることにした。
おめあてのお店は半地下にあって、通りから眺め下ろす感じがジンは好きだった、なんか秘密の基地みたいで。
そこは、たぶんアメリカじゃなくて、ヨーロッパの匂いのするアイテムを揃えていて、ひとつ残らず欲しくて目移りして仕方なかった。
とりわけ、いかしたノートが沢山並んでいて、ジンは洒落たスケジュール帳をプレゼントすることにした。
そいつは、チェック柄のカバーがバックのようになっていて、チャックで開け締め出来る仕様になっていた。
プレゼント用のリボンも付けて貰い、階段を上っていくと、入る時には気づかなかった商品が目にとまり、手にとって見ているとそこに彼女が現われたのだ。
彼女の目を瞠る気品ある美しさに、言葉を失ってただ茫然とその横顔を見つめていた。
すると、視線に気付いた彼女は、まっすぐこちらを見たのだが、アッと小さな声をあげ、持っていた冊子を取り落としそうになった。
咄嗟に手を伸ばしてしまい、自分の持っていたプレゼントを落としそうになったジンを見て、彼女はクスっと笑ったのだった。
それを合図にしたように、するすると言葉がほとばしり出てきたのには、ジン自身驚いた。
「以前にどこかで会ったことありましたっけ?」
その唐突な問いに彼女は、微笑んだだけだった。
確かに彼女に声を掛けたジンの行動は、あまりにも常軌を逸していた。街中で女性に声など掛けたことのないジンが、後先考えず、当たり前のことのように行動し、気付いたら話し掛けていた。考えるよりも先に身体が反応していたのだから、わけがわからない。
そしてまるで旧友に再会したかのような何か不思議な懐かしさがジンの胸にこみ上げてきたのだ。彼女も同じような感覚に囚われていたのではないか、そうならば、やはり運命的な出会いと思っていいのではないだろうか。
だが、冷静に考えるならばそんな都合の良い運命的な出会いがあるはずもない、実際は典型的なストーカーの身勝手きわまりない心理に限りなく近いものがあるかもしれない。
それにしても、彼女が鍵を手渡してきたのには面食らった。
「これ、飛鳥さんからです」
そう言って手渡されたノンタッチキーらしき鍵に、思わず絶句した。
ほんの1分ほどの立ち話に過ぎなかったけれど、まさに夢のような出来事というか、キツネに化かされたようだった。
彼女は、アイドルでもおかしくはないビジュアルだったから、ホンモノの野義メンかもしれなかった。
ジンは飛鳥ちゃんが卒業してから、新曲すらチェックしなくなってしまったから、チームは、ほとんど知らない人ばかりになってしまっていた。
「あと、伝言です。よかったらこの鍵が使える時まで預かっていてください、とのことです」
なんて、用意周到なまでにすらすらと、よどみなく暗記してきたような台詞を彼女が発していたならば、いかにも詐欺師めいていただろうけれど、彼女は何も言わずに、鍵だけ手渡して去っていった。
とにかく、わけがわからない。
しかし、いったい、どこの世界に自分の部屋の鍵を、見ず知らずのわけもわからぬ男に手渡す人がいるだろう。
鼻につくほど、ビジュアルが良すぎるのならまだしも、わかる気がするけれど、十人並みのルックスのただのキモオタに?????
頭の中にハテナ?が嵐のように渦巻いていた。
ということで、やはりこれは流行りのロマンス詐欺と判断するのが妥当な線だろうと、ジンは思った。
しかし、詐欺の為の連絡用SNSの交換は、なぜしなかったのだろうか、そこらへんもよくわからない。
しかし、鍵を渡すというのは、新しいなとジンは思った、そんな詐欺の手口を聞いたことがない。
アキバのメイド喫茶だかカフェのキャストが、道端で大人しそうなブサメンを狙ってやるキャッチの手法みたいに、自分も楽勝で落とせると思われたのだろうか。
そうなのだ、彼女は、ジンの名前を知らなかった。個人を特定したわけではないのだ。たまたま顔を見た瞬間に、コイツなら飛鳥というメジャーな名を出せばイチコロだと思ったのだろうか。
しかし。生憎(あいにく)オレは、擦れている、学生の頃からデルモのバイトをやっていて、綺麗な子は見飽きるほど見てきたし、今も複数の美人と付き合っているけれど、騙しているわけじゃない、他に誰かいても構わないから付き合ってと泣いてすがられるので、仕方なく二桁股になっただけ、なので毎日が酒池肉林ですわ、ワッハッハッハッ、知らんけど。
ジンは、ウソでもそんな風にスケベに豪語したかった、別に性豪やら絶倫やらの称号は欲しくないけれど、彼女のひとりくらいは、ほしかった、生まれてこの方、女性と付き合ったことがない。
ま、とまれ、詐欺師の手先なのかなんなのか知らないけれど、なぜまた彼女が飛鳥ちゃんからといって鍵を手渡してくれたのか、気になるの確かだが、たとえほんとうの話だと仮定しても、部屋の場所がわからない鍵などただの燃えないゴミにすぎないのだから、邪魔くさいだけだった。
ちょうど元カノの写真を捨てるに捨てられない、そんな感じに似ているだろうか、元カノがいたためしはないのだけれど。
ただ、彼女いない歴現在の年齢のジンにしてみれば、計り知れない力が、二人を出会わせたならば、行動を起こさずとも時が来たならば、また会えるだろう、なんてファンタジーの世界に遊んでみたいお年頃なのだった。
たしかに妄想するのも悪くない。
というか、正直な話、むしろ運命的な出会いに賭けたい気持ちでいっぱいだった。
まあ、そのうまくいって欲しいというご都合主義的な心理につけ込むのが詐欺の王道なのだから、そんな甘い話はないなとは思いつつも、ジンはやはり憧れてしまうのだった。
初めてのデートは、どこに行こうとか、何食べようとか、もう想像しただけで、うれしくて震えてくるほどだった。
なので、リアルの厳しさはわかっている上で、とりあえずそれは置いといて、夢のようなめくるめく彼女とのデート、あ、それからそれから、kissなんて、あーぁ、オーぉ、考えただけで、昇天しそうなのだった。
楽しいことを考えている方が、俺はダメだとか、ありえないとか、最初から諦めて、うつむいて生活するなんてことより、100万倍精神衛生上、いいに決まっている。
だから、ジンは妄想でもいい、ネガティブな思考は禁止して、夢のある楽しいことを考えようと決めた。
縁がないのならば、本物の出会いではなく何でもなかったということで終わりにしてしまえばいい。
ただしかし、そんな強がりを言えるのも、飛鳥ちゃんの部屋? らしき鍵を持っているからかもしれない。
しかし、この鍵がほんとうに彼女自身の部屋の鍵なのかもわからないのだし、そうであったとしても住所も知らないのだから、持っているだけなら、ただの不燃ゴミにすぎない、というのは事実だった。
それに、どう考えても、あの飛鳥ちゃんが、キモオタのジンの事など知るはずもないのだった。
彼女は、鍵を手渡すことによってふたりの強い絆を教えてくれたのかも、などとジンは自分に都合のいいように考えたかったが、そんな青天の霹靂の如き事態は、絶対に起こりえない話なのだ。
そして、ある日。
ついに彼女からのメールが、来た。
お元気ですか?
やっと時間がとれそうなのでご連絡しました。来週なんですけど、会えませんか?火曜日か金曜日。
身勝手なお願いで申し訳ないのですが、どうかよろしくお願いします。
そして、メールのやり取りをして、密会は翌週の火曜日と決まった。
だが、結局待ち合わせ場所である、マークシティにあるタロウの『明日の神話』の下に彼女は現われなかった。
まあ、あたりまえだった、なにからなにまでジンの妄想に過ぎないのだから。
翌日、目覚めるとガラスの灰皿が目の前にあった。最初はそれが何なのか、わからなかった。
まだ夢のなかにいるような浮遊感があった。乳白色の薄いベールに包まれた一糸纏わぬ彼女の長い髪が、風にたおやかに揺れていた。幾層もの音の波が、押し寄せては頬をなぶり、やがて彼方へと退いていった。
住所を知らなければ、鍵はクズ同然なのだから、鍵を渡すのはそれほど彼女にとってリスキーなことではなかったわけだ。
ふたりの強い絆の証しなどと考えるのは、あまりにも安易で馬鹿げたご都合主義だったのかもしれない。
彼女は、単に要らない鍵を、例えば以前に住んでいた部屋の合鍵だとか、もう使用することはないし、使えない要らない鍵を、釣りにして、男をたぶらかして遊んでいるのかもしれない。
まったく知らない綺麗な女子から突然道ばたで、私の部屋の鍵です、よかったら受け取ってください、なんて言われたら男どもは鼻の下を伸ばして、喜ばないやつはまずいないだろう。
疑り深いやつは、天から降ってきたこんな僥倖を、話がうますぎる、だからこそ詐欺にちがいない、どうせ変な壺とかNFTアートを売り付けられるか、いわゆるネズミ講、あるいは流行りのロマンス詐欺だと決めつけるかもしれない。
確かにSNSやマッチングアプリを利用して、正体を明かさずに、親近感を持たせたり、恋愛感情を抱かせ、まんまと金銭を巻き上げ大金を騙し取る連中はウジャウジャいる。
自分のケースは、もっと手が込んでいて、最初に先ず見せ金のように顔見せをして、こんなに美人なのだからウソじゃないと認識させ信用させたという可能性もある、なるほどうまい手口にはちがいない。
タレント事務所やら地下アイドルの未だ世に知られていない、綺麗な子を使って先ず安心させて、ゆっくりとSNS等で焦らしたり、心配させたり、寂しがらせたり、のぼせあがらせて有頂天にし、恋の虜にしてしまうのだ。
骨抜きにされた善良なターゲットは、一切疑うことを知らない。
もうその段階まで行けば、あとひと押しで、詐欺師様専用のATMと化して、好きなだけ大切なお金を引き出されてしまうのだ。
そんな陰湿な思いが叢雲のようにまとわりついて離れない。飛鳥ちゃんの太陽のような明るい笑顔を思い出して、つまらない考えを振りほどこうとするのだけれど、考えは堂々めぐりするばかりだった。
飛鳥ちゃんの美しい顔を思い出し、凛としたその眸の輝きが脳裏を離れない。
だが、彼女が美しければ美しいほど、ジンは騙されているとしか思えないのだった。
ジンは、こんなに深刻なまでの疑心暗鬼に囚われたことは、いままでなかったように思うのだ。
手渡してくれた鍵は、絆の証しなどではなく、逆に釣るためのツールに違いないとわかってはいるものの、信じたいという気持ちが、どうしても勝ってきてしまうのだった。
そんな疑心暗鬼に取り憑かれた自分をジンは醜いと思った、本当は飛鳥ちゃんを信じられない自分の弱さこそを嘆き憎むべきなのかもしれない。
しかし、なにをいったい恐れているというんだろう、失うものなど何もない。そもそも砂のお城を夢見ていただけにすぎない、そう思ったら少しだけ気が楽になった。
しかし、人は、いったん甘い夢に囚われると、そこからなかなか抜け出せなくなってしまうものなのだ。
《ジンの推しメンを突き止めた詐欺師グループは、さすがに推しメン本人はダメに決まっているから、とりあえず美人のバイトを雇って、推しメンからと鍵を渡させたのではないか》
謎解きは、おそらくこれが、いちばん理に叶っていてスマートだった。
しかし、たとえ金銭を騙し取るための、やり取りでもいいから、会話してみたいとジンは思うのだった。
まあ、世界は広いのだからそういう詐欺師との恋愛もあっていいだろう、でも、それが自分であったなんて笑えない冗談ではあるが。
しかし、ロマンス詐欺でないのならば、ただの愉快犯なのかもしれない。
となると、詐欺師グループという大掛かりなものではなく、あの美人さん個人の憂さ晴らし的な話と考えた方がいいのではないか。
推しメンの鍵をもらえた男が、一向に進展しない恋に身悶える、そんな状況を楽しんでいるのだ、金銭的な実害はないので、詐欺とも呼べない。
やはり、寂しさを紛らわせるため、或いは人間関係のストレスやら失恋を癒すのための、憂さ晴らしということだろうか。
まあ、実際はただの暇つぶしに過ぎないのかもしれない。
蛇の生殺し、宙吊り状態を楽しんでいるのだ、相当ねじれにねじれた、ひねくれた性格でだいぶ拗らせてしまっているようだ。
おそらく、これまでの恋愛でかなりヤバい仕打ちを受けてきたんだろう、そう考えると、少しだけ彼女に同情してもいいかなと思ったりもした。
まあ、あれからバッグごとひったくられて、お財布をなくしてしまった、とか、母が老健施設に入所することになって、保証金を急遽支払わなければならない、であるとかいう、お金目当てのDMもこないし、実害はないのだから、愉快犯確定ということでいいのだろう。
というわけで、ジンは最終的にこれはゲームなのだと思うことにした。
アニメの設定みたいな不思議な恋愛を夢みていて、運命的な出会いで鍵を手渡し、さまざま試練を経て再会し、やがてめでたく結ばれるみたいな疑似恋愛をして、恋愛した気分になるゲームだ。
つまりは、ゲームなのだから楽しまなきゃ損、なのだった。夢をみさせてくれた彼女には、逆に感謝していいのかもしれない。
そんな風に考えるくらい、もう鍵を貰った事件のことは、風化してしまうほど、瞬く間に時は過ぎ去っていった。
しかし。ある時驚くべき意外な事が起こったのだ。
ジンは、写真が趣味でSNSをよく利用していたが、ある日、突然意味不明なDMが来たのだった。
DMがくるのだから、相互フォローの相手だが、そこには
「ホテルで配膳のアルバイトをしています」
それだけ、書かれてあった。
その一文に何かあると思ったわけでもなく、頭のネジが何本か飛んだ人なのかな程度に不思議に思って、何気にアカウントに飛んでみた。
すると、何かピントくるものがあった。それは
0113.akusa
というアカウントだった。そこで、ダメ元でジンは、妄想のリミッターを外すことにした。
飛鳥ちゃんは、現在の自分の事はあまり喋りたがらない恥ずかしがり屋さんという設定だった。
つまり、まったく会話はないので、ジンが一方的に書き込むことにしたわけだ。
とにかく自分の中にすべて溜め込んでいるのは、もう苦しくて仕方ないので、一方的な雑談でいいからとにかく何がしか書き込むことで、発散したかった。
誰しも、SNSやらで返信がない片道通行の会話的な、独り言を呟いていたことがあるのではないだろうか?
痛いヤツ、アタオカ上等、しかし、ストレスを溜め込むよりは全然いい。
彼女が読むのか読まないのかも一切気にしない、たとえ片道通行であろうとも、彼女と何かしら繋がっているという、自分勝手な思い込みでいいから、何かエビデンスがほしかった。
そして、ジンはこんな風に書き込んでいった。
小さな頃、家の裏にある竹藪で、よく遊んだ、その竹の笹は風が吹くとサラサラとほんとうに優しい音を奏でるんだ。
猫を2匹飼っていて、名前はチャコとチビ。
大風の吹いたある日、羽根を痛めた雀が部屋の中に逃げ込んできて、手当てしてあげようとしたのに、部屋中を飛び回るうちに死んでしまった。
お母さんと近くの公民館へピアノの発表会を見に行ったら、蝙蝠が天井にぶら下がっていて大騒ぎになって、発表会どころじゃなくなった。
ツツジの花で食べられる種類のやつがあって、それは甘酸っぱくて美味しい。
UFOを何度も目撃したことがあって、あれは未来から飛来してくるんじゃなくて、実は地球の地底世界から来るんだと思ってた。
綿菓子が大好きで、お祭りの時には必ず買ってもらったけれど、食べることよりも綿菓子を持って歩いていることがうれしくて、いつも最後は手がべとべとになった。
大雪が降った日に、学校を出てからまっすぐ家には帰らず、寄り道して暗くなるまで雪だるまを作って遊んでいて、お母さんをひどく泣かせてしまったことがある。
たまたま行った知らない小さな公園で、滑り台をやったら尖った木が突き出ていて、くるぶしにグサリと突き刺さった。
一度きりだけど、水彩画のコンクールで奇跡的に佳作を取って小さな盾をもらった。
台風の時に、ほんの少しだけ戸を開けて、蒲団を被ってわくわくしながらずっと外を覗いていた。
犬を飼いたくて、近所の家から仔犬をもらい飼い始めたけれど、母犬の悲痛な啼き声がずっと聞こえていて、結局一日で飼うのを諦めた。
鯖の味噌煮は大好きだけど、鯖の水煮もまあまあ美味しい。
あの天草四郎時貞の洗礼名が、ジェロニモというインディアンみたいな名でびっくりしたけど、なんか自分に関係あるんじゃないかと密かに思っている。
盲人が、白い杖で床をコツコツやるのは、何か手助けを必要としている合図と知っていながら、知らんぷりして通りすぎたことがある。
おなかに赤ちゃんがいます、のバッヂを3つくらいバッグに付けたおばあちゃんを見たことがある。
ディズニーランドのパレードでダンサーさんと目が合った時、恥ずかしそうにしていたことがあって、自分も恥ずかしくなった。
ディズニーで、列に横入りした家族がいて、周りから滅茶苦茶に罵倒されまくっていたのを目の当たりにしたことがあり、結局その家族は、すごすごと列から離れていったけれど、その背中にさらに「おまえら家族は二度とディズニーに来んなー!」と罵声を浴びせられていたが、夢の国もこれじゃ台無し。
電車で前に座っていたお婆さんが、なんか変なヅラを着けていて、よく見たら黒のマジックペンで何本も線が引いてあった。
関西人でもないのに、ときどきマックをマクドと言ってしまうことがある。
浅草寺のほうずき市に浴衣を着て行ってみたいとずっと思っているけど、行くんならふたりで行きたい。
まあ、こんな具合にまったく徒労で不毛な書き込みをしていたのだが、自分の事を誰かに話すということは、それなりにストレスの発散にはなるのは、間違いなかった。
世の中には日記をつけている方もたくさんいらっしゃるだろうが、ジンの場合は、やはり誰かに見られているという感覚がウソでもないと書き続けることが出来なかった。
飛鳥ちゃんからのレスは、むろん一切ない。いや、ジンが勝手に飛鳥ちゃんを想定してメンションしているだけであって、実際誰なのかすらわからない。
やがて、ジンはトチ狂ったついでに彼女との会話を妄想し、それをヤケクソで、DMで送った。
それは、こんな具合に...
「ハネムーン行くとしたら、どこがいい?」
「そうだなぁ、やっぱワイハー?」
「ああ、ありがちだねw」
「じゃ、どこ行きたい?」
「あのね、エーゲ海かな。サントリーニ島やミコノス島に行ってみたい」
「なるほど。エーゲ海クルーズか。じゃ、船酔いは大丈夫なんだ?」
「あ、それ忘れてた! じゃあさじゃあさ、モルディブは? 一棟ずつ独立して海上に建てられたウォーターヴィラがあって、そこには島からボートで行くんだって」
「なーる。開放的な隠れ家みたいな? w」
「でさ、スノーケリングやりたいな。あとカヌーとボードセーリング」
「あー、アナログなやつね」
「そう。海亀なんか水上バイクのスクリューにひっかけられるとかよく聞くし」
趣味はなんだと聞くと、意外な答えが返ってきて驚いた。盆栽だというのである。
「いや、最近凝りはじめたばっかで、初心者もいいとこなんだけどね、盆栽はすごいですよ?」
「なにがやねん?」
「だからさ、あれはね老人趣味の植物虐待なんかじゃないわけ。アートなのよ」
「ああ、それはわかる気がする」
「小宇宙なんだから。時間がぎゅっと凝縮されてる。てかさ、渋谷の井の頭線へ続く通路に岡本太郎のデッカい壁画あるじゃん?」
「あの、黒っぽいやつか」
「あれ、やっぱデカいから退いて見ないと全体を見渡せないよね、でしょ? それをね、スマホ見るみたいに手のひらに乗せて見られるとしたら、どう?」
「どうって言われても...だから、なに?」
「それがね盆栽なんだよね。大自然と時間を言わばミニチュア化する。人は元のスケールの大自然を知っているし時間の堆積というものを感じとることができる。だから、盆栽を見ると脳のスペースとタイムのスケール感が狂わされてしまう。そこに魅力があると思うの」
「ほう。深いですな」
東京にずっといたいのかという質問には、こんな風に答えた。
「まあね、便利だからね。でも、歳とったら変わるかも」
「うん。今はね、いわゆる洋風のマンション住まいでもいいけどね」
「京町家ってわかる? あんな風なところで、みんなでわいわいやりながら暮らしたいな。坪庭があって坪庭を通して奥の、中の間や座敷、さらにその奥に奥庭が垣間見える、その空間の広がりが、たまらない」
「あーなんとなくわかる。川端康成に出てきそうな家だね。その広い奥庭は、板張りの回廊みたいなのに囲まれてる感じかな?」
「それな!」
もちろん、ケンカもした。てか、片道通行の今が、絶賛ケンカ中なわけです、という設定なのだ。
「なにかギクシャクして相手を思い遣る気持ちがなくなってしまっているときには、むしろ、とことんやり合って心にわだかまりを残さない方がいい。それが出来ないといつまでも拗れるだけだし、シコリが生じてしまう気がする。なので、飛鳥ちゃんの機嫌が直るまで、オレはじっくり待つよ」
まあ、会えないことを除けば概ねふたりはうまくやっていたと言えると思う、ジンの妄想の世界で。
だが、その先にはとんでもない奇跡が、ジンを待ち受けていた。
事実は、小説よりも奇なり。なんと、リアルでの出会いが待っていたとは、お釈迦様でも知らぬめぇ、というやつか。
*
そうだった、とジンは思った。今日、鶯谷のパーキングで白昼拉致られたのは、あの摩訶不思議な鍵の事件がらみ、だったのかも知れない。
もう半年以上も前の話で、タイムラグがありすぎて気づかなかった。
それに、よく考えてみると、拉致した犯人は警察に通報されたならアウトなのだから、ジンのスマホを没収しないはずもなく、となると、やはり、ラジオ局からの逆電の時間に合わせて拉致して、トランクの中で逆電がかかってくるように、すべては仕組まれていたわけらしい。
そう推理してみると、思いのほか、あのノンタッチキーは、飛鳥ちゃんのモノホンの鍵説がグッと信憑性を増してくる。
しかし、予断を許さない状況にかわりはなかった。これから何が待ち受けているか、全くわからない。まさかの鍵の持ち主である飛鳥ちゃんの登場という流れなのだろうか。あるいは、自分の墓穴を掘らされるような、生き地獄が待っているのだろうか。
となると、まさに天国か地獄か。
ジンは、妄想癖があるけれど、かなり現実的なところもあるので、後者である可能性が限りなく高いと賢明にも判断していたが、奇跡の邂逅を未だに諦めているわけではなかった。
ベンツが停車し、トランクが開かれるその時が、刻一刻と迫る切羽詰まった状況の中で、ジンは震えながら手を合わせ、奇跡が起こりますようにと、祈るほかなかった。
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