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#169 バナナ記念日
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はじめてのおフランスは雨だった。
シャルル・ドゴール空港にこの足で降り立つ前にANAの機内から雨に煙るパリを静かに眺める。
その美しさに心が震えた。
カヲルとシャンゼリゼ通りを腕を組んで歩くのが夢だったけれど、カヲルはもういない。
こんな小雨の降るある日。
カヲルはビルから飛び降りた。
だが、けっして自殺などではないと思っている。
なぜかというと、ビルから飛び降りたカヲルは地上の低木の植栽の枝に引っかかりながらもアスファルトに猛スピードでぶちあたり、頭蓋骨は陥没、あるいはカチ割れて、脳漿と脳味噌をあたり一面にぶちまけ、骨は折れてグシャグシャの内臓に突き刺さり、地の海の中に———とはならずに、地上に衝突する寸前に搔き消えてしまったのである。
その直後、カヲルからLINEにメッセージが送られてきた。
「モルディブで、バナナを頭に乗せた君が笑ったから、8月10日はバナナ記念日」
シャルル・ドゴール空港にこの足で降り立つ前にANAの機内から雨に煙るパリを静かに眺める。
その美しさに心が震えた。
カヲルとシャンゼリゼ通りを腕を組んで歩くのが夢だったけれど、カヲルはもういない。
こんな小雨の降るある日。
カヲルはビルから飛び降りた。
だが、けっして自殺などではないと思っている。
なぜかというと、ビルから飛び降りたカヲルは地上の低木の植栽の枝に引っかかりながらもアスファルトに猛スピードでぶちあたり、頭蓋骨は陥没、あるいはカチ割れて、脳漿と脳味噌をあたり一面にぶちまけ、骨は折れてグシャグシャの内臓に突き刺さり、地の海の中に———とはならずに、地上に衝突する寸前に搔き消えてしまったのである。
その直後、カヲルからLINEにメッセージが送られてきた。
「モルディブで、バナナを頭に乗せた君が笑ったから、8月10日はバナナ記念日」
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