パサディナ空港で

トリヤマケイ

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#160 ホスト笠地蔵

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*月*日


   信じてもらえないだろうが一昔前、俺は歌舞伎町のホストの中で知らない奴はいないくらい超売れっ子のホストだった。

  その当時の勲章であるドンペリの空瓶がまだうちには何本も飾ってあるがいつまでもそんな過去の栄光にすがっている自分に嫌気がさしていた。

   規制はある程度緩んできてはいるけれど、このご時世なので、飾ってあるドンペリを叩き割り、お店は辞めて個人事業主になることにした。

  つまり、そう。SOHOである。とはいってもオフィスはスマホの中にある。

   電話、或いはLINEでどこでも身ひとつで飛んでいく出張ホストのジュンと人は俺を呼ぶ。

   お客様は、お店で贔屓にしてくれていたお金持ちのおば様やホステスだ。

  今夜も俺は裸一貫、身ひとつでおば様たちを悦ばせるのだった。人は俺たちホストをさげすむ。しかし、少しだけ想像力を働かせてほしい。

  好きでもない女性の、それもおばさまの、アソコを1時間も2時間も舐めさせられる身にもなってほしい。ハッキリいって吐くのをこらえるのが大変なくらいなのだ。 

  なんてバカなことを考えながら、俺は今夜も壁際で仁王立ちして腕を組み、愛する推しメンに年甲斐もなくキュンキュンし、たぎるような熱い視線を注ぐのだった。てかキュン死。

  童貞はむろん、推しメンに捧げるもの。それが俺のモットーだ!!
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