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#149 推しメンと結婚します👰
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*月*日
推しメンの卒業ライブだった。
オレは社会不適合者で、極度の対人恐怖症でありコミュニケーション能力はゼロ。
なので、握手会とかは言うに及ばずミーグリとかいうオンラインでの会話でもまともに推しメンと話せなかった。
そういった意味合いからすると、オレは結構アイドルの間では知られている存在なのかもしれない。
あがり症のオレは、ある時腹話術のように人形に喋らせるということを思いついた。
オンラインではノートパソコンの前に熊のぬいぐるみを置いて、その横でオレが喋るという感じだ。
いわゆる地下アイドルの現場では、チェキはとりあえず一緒に撮ってもらうが、会話は熊のぬいぐるみに任せている。
ライブ中は、壁際でそれこそ地蔵のように微動だもせずひっそりと佇みながら、心の中で精一杯の声援を送っている。
なので、雪をかぶった笠地蔵であるとか、腹話術師匠とかヲタクたちには呼ばれていた。
雪をかぶったというのは、髪はザビエル禿げとかではなく、とりあえず申し訳程度にはあるのだが、かなり白髪が目立っていた。
だから、ヲタクたちがヒソヒソ雪をかぶった笠地蔵と呼ぶのは、言い得て妙なネーミングなのだった。
そして、腹話術師匠の師匠は、常に行動を共にしている熊のぬいぐるみのマーが茶色で、ハンバーグに似ているところからも来ているらしい。
まあ、影で何を言われていようが、こんな自分でもとにかくヲタクたちの一員として現場では認めてくれているのだから、なんの不満もなくありがたいことだった。
しかし。そんなささやかな幸せも実に他愛なく終わってしまうものなのだ。
オレは最期の最後に「これだけは絶対に伝えたくて」と、チェキの際にぬいぐるみのマーに言わせた。
卒業ライブが終わり、本当に最後なのにそれでもオレは、面と向かって話すのが恥ずかしかった。
特別な事じゃなくヲタクは二言目には言うお約束みたいなあたりまえの文言なんだけれど、オレには言えなかった。
だから。最後にこの気持ちをこの言葉を伝えたくて。駄目なことは無論わかっているけれど、伝えたくて。
「愛しています。結婚してください」と、マーは顫えながら言った。
「わかった。うれしい。でも、その言葉だけはクマのぬいぐるみじゃなくて、あなた自身から言ってほしい。いい返事はできないかもしれないけれど、それだけはその言葉だけは、自分でちゃんと言ってほしい」
そして、オレは初めて面と向かって推しメンに愛を伝え、意思表示した。
オレの初めての告白は、絶望という名の消滅点であるとはじめから決まっていたのだ。
告白からはじまるのではなく告白することによって終わらせたのだ。
そして、これで完全に終わりなのだと思うと涙がとまらなかった。
キミがすべてだった。
明日からどうやって生きていけばいいのかわからない。
夜の底のような漆黒の車窓に映り込む暗い目をした、しょぼくれたオヤジがオレを哀しげに見つめている。
オレはキミというヒカリを失った。
それでも心の中でキミの名を呼ぶ。胸が張り裂けるような声で。
愛してる、愛してる...
推しメンの卒業ライブだった。
オレは社会不適合者で、極度の対人恐怖症でありコミュニケーション能力はゼロ。
なので、握手会とかは言うに及ばずミーグリとかいうオンラインでの会話でもまともに推しメンと話せなかった。
そういった意味合いからすると、オレは結構アイドルの間では知られている存在なのかもしれない。
あがり症のオレは、ある時腹話術のように人形に喋らせるということを思いついた。
オンラインではノートパソコンの前に熊のぬいぐるみを置いて、その横でオレが喋るという感じだ。
いわゆる地下アイドルの現場では、チェキはとりあえず一緒に撮ってもらうが、会話は熊のぬいぐるみに任せている。
ライブ中は、壁際でそれこそ地蔵のように微動だもせずひっそりと佇みながら、心の中で精一杯の声援を送っている。
なので、雪をかぶった笠地蔵であるとか、腹話術師匠とかヲタクたちには呼ばれていた。
雪をかぶったというのは、髪はザビエル禿げとかではなく、とりあえず申し訳程度にはあるのだが、かなり白髪が目立っていた。
だから、ヲタクたちがヒソヒソ雪をかぶった笠地蔵と呼ぶのは、言い得て妙なネーミングなのだった。
そして、腹話術師匠の師匠は、常に行動を共にしている熊のぬいぐるみのマーが茶色で、ハンバーグに似ているところからも来ているらしい。
まあ、影で何を言われていようが、こんな自分でもとにかくヲタクたちの一員として現場では認めてくれているのだから、なんの不満もなくありがたいことだった。
しかし。そんなささやかな幸せも実に他愛なく終わってしまうものなのだ。
オレは最期の最後に「これだけは絶対に伝えたくて」と、チェキの際にぬいぐるみのマーに言わせた。
卒業ライブが終わり、本当に最後なのにそれでもオレは、面と向かって話すのが恥ずかしかった。
特別な事じゃなくヲタクは二言目には言うお約束みたいなあたりまえの文言なんだけれど、オレには言えなかった。
だから。最後にこの気持ちをこの言葉を伝えたくて。駄目なことは無論わかっているけれど、伝えたくて。
「愛しています。結婚してください」と、マーは顫えながら言った。
「わかった。うれしい。でも、その言葉だけはクマのぬいぐるみじゃなくて、あなた自身から言ってほしい。いい返事はできないかもしれないけれど、それだけはその言葉だけは、自分でちゃんと言ってほしい」
そして、オレは初めて面と向かって推しメンに愛を伝え、意思表示した。
オレの初めての告白は、絶望という名の消滅点であるとはじめから決まっていたのだ。
告白からはじまるのではなく告白することによって終わらせたのだ。
そして、これで完全に終わりなのだと思うと涙がとまらなかった。
キミがすべてだった。
明日からどうやって生きていけばいいのかわからない。
夜の底のような漆黒の車窓に映り込む暗い目をした、しょぼくれたオヤジがオレを哀しげに見つめている。
オレはキミというヒカリを失った。
それでも心の中でキミの名を呼ぶ。胸が張り裂けるような声で。
愛してる、愛してる...
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