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#120 まゆみさん ③
しおりを挟むそんなこんなで、めでたく無職が決定して、いよいよまゆみさんとも会えなくなってしまう最終日にも、アクションを起こさなかった自分。
いっそのこと男に走ろうかと思った。まあノンケを絵に描いたような、いかにもどこにでもいるただのダサいおっさんなので、間違っても自分のことなのにパンセクシュアルに未だに気づいていませんでした、なんてことは絶対にありえなかった。
若い人たちの中には、自分のセクシュアリティがよくわからないという人もいるかもしれないが、セクシュアリティに限らずヒトは進化などしていないし、むしろ退化しているくらいだが、とにかく昔から人の数だけセクシュアリティはあったわけで、ただ現代になってそれがおおっぴらになっただけのこと。
もしかしたら宇宙人しか愛せない人もいるかもしれないし、ヒトではなくモノに反応するフェティッシュというのもあたりまえにある。
そういえば、だいぶ昔のことになるがゲイの人と知り合いになったことがあった。
素敵な声ですねとその人は言い、会ってほしいとはいわないけれど、その声をまた聞きたいから電話していいかしらと言われたことがあった。
そんなことをいわれて、一瞬目の前で火花が散ったように思った。
そっちの世界に引きずりこまれるような、何か世界が違って見えるような、倒錯した気持ちが芽生えそうで、かなりヤバかった。
その人は、理知的で好ましい人物だと声音からもよくわかったし、無下に断るのも大人げないかなと思ったのだけれど、心を鬼にして、全然そんなことはないのに差別的な発言をして、その人が後ろ髪を引かれるようなことなどないようにウソをついたのだった。
真っ赤なウソの憎まれ口をきいてあと味がかなり悪かったが、あとあとの事を考えたならば、あれでよかったんだと思ったのだけれど、そんな事を考えてしまう事自体、もうヤバかった。
電話を切った後で相手を傷つけてしまったかもしれないという後悔は、もう恋のはじまりなのかもしれなかった。
素敵な声だから、また電話していい? というのは、もう告白しているようなものだし、こちらもそう言われてドキドキしている自分が、ノンケのはずの自分が、いったいどうなっているのだろうと、自分自身を訝しんだ。
LINEであるとかならまだしも、おちゃらけて逃げられるのだが、肉声での対話はかなりヤバイものがある。
耳元で囁かれるのだから物理的に体内にその人が入ってくるような、とにかくまったく距離がない直の感覚なのかもしれない。
それに理知的な人だったからウソばバレバレだったかもしれなかったので、なおのこと未練が残ってしまったかもしれなかった。
ま、そんな事もあったなというエピソードだけれど、人の数だけセクシュアリティはあるというわけであり、夫婦だからといってHしなければならないということはなく、性の対象は他所にいてもいいのではないかなと思うのだが、そこでいちばん問題なのは子どもが生まれるかもしれないということで、種付けしまくってあとは知らねーじゃ済まないというわけなのだ。
なので、子どもが生まれる心配がない同性ならば問題はないのだから、ソノケノのある人は楽しんだ方がいいのかもしれない。
と、わけのわからない話になっていますが、いずれにせよ、この地球で愛ほどの力のあるものはない、というお話をさせていただきました。
自分自身は、愛の対象があるのに告ることもできない体たらくであり、しかし、相当数そんな方も多いのではないかと思っていたりします。
アイドルみたいに、眉目秀麗ならばいざしらず、やはり二の足を踏んでしまうということもあるのですが、実はある秘密があるのでした。
実は既婚者であり、妻とは現在別居中であって別居して10年くらいにはなっているはずです。
もうだいぶ長く別居しているので、何年たっているのかも忘れています。
なので、やはりそこらへんでブレーキをかけているというのはあるわけで、しかし、その事実を自分が積極的にならない言い訳にしている、ということも言えないことはなく、もし仮にまゆみさんに言い寄られたならば、いや、ぼくには妻がいますから、という、そんな決め台詞ならぬ逃げ台詞のためにまだ離婚に踏み切れないのかと考えたこともあり、兎にも角にも煮え切らない何もかもが中途半端な男なのでした。
それで、一時期寂しくて地下アイドルとかに走ったりして、現場百遍、これは事件現場の現場ですが、タイガー、ファイヤー、サイバー、ファイバー、ダイバー、バイバー、ジャージャーであるとか、チャペ、アペ、カラ、キナ、ララ、トゥスケ、ミョーホントゥースケとMIXを打ったりして沸きまくっていたこともありました。
しかし。先行き不透明のこのご時世で卒業する推しメンとか、グループ自体が解散してしまうとか業界がかなりお寒くなってしまい、自分もドルヲタを卒業したようなカタチにはなっています。
当面の間、感染症が終息に向かうことはないというのが、大方の予想だと思いますから、地下アイドルの運営さんもそろそろ潮時で次の事業を展開するか、縮小したり損切りを考える時期なのかもしれないですね。
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