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#73 死にかけの蝿
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*月*日
ドアチャイムの音におれは興奮し、見当をつけながらぶっ放した。ぶっ放したといっても、コルトとか、ワルサーP38とかじゃむろんない。指で作ったゴム鉄砲。パキューン!
俺は、読み止しの本を枕の下に隠し、ついつい急いでしまう自分の足に悪態をつきながら、ドアの方へと行きかけたが、すぐに思い直して鏡の前に立ちどまり、どんな絶世の美女をも卒倒させる極上の笑顔を作って、鏡の中の半分死にかけたような憐れな中年男に微笑みかけた。
ついつい急いで脚がもつれてしまうのは、会社を辞めてからほとんど外に出ることをやめてしまい、さらに日課だった散歩もしなくなってしまったからだろう。
このままだと脚は退化してしまうかもしれない。自分の足に悪態をつきながら、ドアの方へと行きかけたが、すぐに踵をかえして再び鏡の前に立ち、ひとつだけある窓から洩れてくる日の光を反射している鏡の中の、メタボで憐れな中年男性に微笑みかけた。
お化粧でもしてみようかしら?
半分死にかけたような蝿がしっかりと閉まっていなかったバスルームのドアから入ってきて、キッチンの方へとよろよろ飛び去っていった。
ドアチャイムの音におれは興奮し、見当をつけながらぶっ放した。ぶっ放したといっても、コルトとか、ワルサーP38とかじゃむろんない。指で作ったゴム鉄砲。パキューン!
俺は、読み止しの本を枕の下に隠し、ついつい急いでしまう自分の足に悪態をつきながら、ドアの方へと行きかけたが、すぐに思い直して鏡の前に立ちどまり、どんな絶世の美女をも卒倒させる極上の笑顔を作って、鏡の中の半分死にかけたような憐れな中年男に微笑みかけた。
ついつい急いで脚がもつれてしまうのは、会社を辞めてからほとんど外に出ることをやめてしまい、さらに日課だった散歩もしなくなってしまったからだろう。
このままだと脚は退化してしまうかもしれない。自分の足に悪態をつきながら、ドアの方へと行きかけたが、すぐに踵をかえして再び鏡の前に立ち、ひとつだけある窓から洩れてくる日の光を反射している鏡の中の、メタボで憐れな中年男性に微笑みかけた。
お化粧でもしてみようかしら?
半分死にかけたような蝿がしっかりと閉まっていなかったバスルームのドアから入ってきて、キッチンの方へとよろよろ飛び去っていった。
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