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メルカリ編
裏稼業
しおりを挟むということで、タロウは半信半疑でわけもわからないまま、ネットに商品をアップするバイトをはじめた。
決まりきった退屈な毎日に嫌気がさしていたタロウは、いい気分転換になるくらいに考えていたが、やがて油まみれになって精密板金で得られる雀の涙ほどの給料をもらうことがアホらしくなっていった。
板金を17時くらいまでやり、それから五反田の例のマンションでヴェッキオ先生が霊界から引き寄せたというありとあらゆるモノの、物撮りをして、メルカリとebayにアップする作業を行った。
実際にそのような作業のバイトもいくらでもあるだろうが、アキヒロの紹介してくれたこの仕事は、さすがに昼の仕事で得られるお金の比ではなかった。
なんせ、ヴェッキオ先生が引き寄せるだけなのだから、どんな高価なものでも元手がまったく要らないのだった。
しかし、お金に余裕のあるはずのアキヒロが、なぜまたわざわざ板金屋などという表の世界の仕事をしていたのかが、まったくわからなかった。
その前にはゲーセンの店長だったというし、タロウは板金の仕事をそろそろ辞めようかと迷っているというのに、アキヒロは何を考えているのか、見当もつかなかった。
そしてある日、何気なくそのことをアキヒロに訊いてみたのだが、タロウは思いがけないアキヒロのその理由に言葉を失った。
「いや、それはそう。だからお金のために普通の仕事をしてるわけじゃない。ホンモノの能力者というのは、そういうもんなんだよ。むしろ、ふつうの人間の感覚を失わないように心掛けてるんだ。
実はふつうの人からすれば、オレらはバケモンみたいなもんだからね、まあ、天賦の才能を持った、いわゆるギフテッドは少なからず存在していて、ピアノやらギターやらの音楽系の天才とか数学とか物理とかの学問系の天才とかは、自分の才能を鼻にかけて自慢するなんてことはまずない。
オレはむしろ、偏った能力の持ち主であり、フツーではないことに劣等感を持ち、そんな自分を卑下することもあるくらいなんだ。
ホンモノのギフテッドならば、『俺は天才だ』とは間違っても公言しない。
というわけで、タロウはわけもわからないまま、摩訶不思議な一味の仲間に入ったのだが、そつなくメルカリの仕事をこなしているうちに、信頼を得たのだろうか、新たな仕事を任されることになった。
それは、なんと異世界に行ってある作業をすることだった。
そのマンションの一室には、異世界へと繋がっている扉があり、常にリアルと異世界を往き来できるのだった。
タロウがそこで任された仕事とは、にわかには信じがたいことだったし、実際にタロウ自身がその作業をやり始めても、魔法みたいなそれが不思議でならなかった。
タロウが新たに任されることになったその仕事とは、人工的に作られた人造人間であるホムンクルスたちに生命を与えることだった。
作られたばかりの新生のホムンクルスたちには、未だに魂が入っておらず、タロウと交接することによりタロウの射精した精子により生命を得るのだ。
但し、おざなりに愛撫もしないで、ただ闇雲に射精すればいいというわけではなかった。魂を付与するには、なんといっても愛が必須なのだった。
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