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魔王編
ケンジ、キャップをもらう!
しおりを挟む「それで。やっぱ、フエくんが言うダンジョン攻略しながらテレポート可能なポイントを見つけ出すのが、いちばんいいのかもね」
「またあのダンジョン行くわけ?」とケンジ。
「なんだよ、文句ある?」
「いや、あそこ悪の巣窟だよね? まあ、わけのわからないこの世界で善悪なんて意味すらないんだろうけど、とにかくモンスターのデパートみたいなもんなんだから、危険極まりないでしょ」
「だからさ、このニワトコの杖さえあれば大丈夫だって」
「ふざけんな! そんなもんどこにあんだよ」
「いや、ケンジ。いま、ナウ気がついたんだけどさ、ニワトコの魔法の杖があるんだとマジに思ってみ?」
「なんだよ、それ。冗談キツいぞユタカ。アタマでも打ったのかよ?」
「いやいや。マジでそう思ってみろって! おまえ魔法信じてんやろ?」
「信じてるさ。しかし、それとこれとは話がちがう。ないものをあるなんて言えるかよ」
「あーあ。ダメだな、こりゃ。ケンジくん、君にはがっかりだよ」
「うわー。なんだよ、いきなり。それいちばんこたえるぞ? 君にはがっかりだよ? もしさ、彼女とかに君にはがっかりだよ、なんて言われた日にゃ死にたくなるって」
「だって仕方ないじゃん、ケンジにはマジに期待してたのにさ。リカちゃん、どうすんだよ? 放置playっすか?」
「ユタカ、ぜってえヌッコロす! 放置するわきゃねーだろが!」
「だよな、だよな? なら、幻の魔法のニワトコの杖を自分は保有している、さらに、ニワトコの杖の主人(あるじ)は自分なのだから、ニワトコの杖は主人の元へと絶対自分の方から帰ってくると思う、そんな風な認識。それが普通だと思うんだよな、だから、それをケンジ実践してみろよって話なんだよ」
「なりきれってことか。まあ、一理あるかもしれないけどさぁ、フエちゃんどう思うよ?」
「うーん。確かにか思考実験的には面白いかもしれないですね、ただ、僕たちにはいまこんなアホなやり取りやってるヒマないんじゃないですかね?」
「えっ! じゃ、フエちゃんうちらと一緒に探してくれるの?」
「ええ。もうこうなったら乗りかかった船ですからね、みんなで力を合わせてダンジョン攻略しましょう!」
「でも、オレは足手まといになりそうで、申し訳ないなぁ」
「いや、だからケンジ。ニワトコっていうか、魔法の杖は今はとりあえずあきらめて、フエちゃんからギフトをもらえばええやん。付け焼き刃的でもないよりは全然ましやろ」
「そうか! それな! わすれてた!」
「じゃ、とりあえず、このキャップをケンジくんにあげますよ」
「えっ! 魔術のスキルじゃなくて?」
「ま、それも考えたんですけど、いまは手っ取り早い方法の方がいいだろうという判断です」
「キャップ被ってどうなるってもんでもないような気がするんだけど? メットならまだしも、あそれに最近知ったけどテッパチとか?」
「いえいえ。防御のためではないですよ? 魔法の杖で思い出したんです。ボクがこれを身につけているのは、魔術のパワーを増幅するためなんですが、これ単体でも魔法の杖みたいなスキルが使えるんです」
「マジ? それ早く言ってよ。でもフエちゃは、キャップなくて大丈夫なの?」
「フエちゃ! わるくないですね。キャップならいくらでもあるです」
そう言いながらフエちゃは、どこからともなくキャップを取り出して被った。そして、前のキャップをケンジがかぶるのを見ながら「あ、でも最初だけ慣れるまで頭がちょっとクラクラするかもです」
たしかにケンジはフエちゃからたった今もらったばかりのニューエラみたいなキャップを被った途端、度の強い眼鏡を掛けたみたいにクラーッときて、フラついて倒れそうになった。
「な、なんやねんなー」
わけもわからず関西弁になるケンジ。
「おまえ、おかしなやつやな」とユタカはよろけながら、その場にうずくまるケンジの肩を叩いた。
「いた! なにすんねん!」
下手な関西弁にユタカはもう笑いがとまらない。「おまえ、アホか、なんで関西弁なんや」
ケンジは、やっと立ち上がって「うっせーわ、わいが関西弁喋って何がわるいねん、ええかげんにせーよ、シャバ僧、しばき倒すぞ、コラッ!」
「おいおい、フエちゃ、これおかしない? ケンジふざけてるんちゃうやろ? キャップが合わへんやないの?」
ユタカは噴き出しそうになるのをやっとこらえながらそう言った。
「うーん。おかしいですね。そんなはずはないんですけれど。ま、人にあげたことはないので、よくはわからないんですがかなり拒否反応を示してはいますね、ていうか、キャップ自体がバグを自動調整して徐々に慣れていくと思いますよ」
「そうなん? それならええねんけど。ケンジがあまりにも不憫で」とユタカはまたバカ笑いする。
「コラ! 何がおもろいねん、ひとつもおもんないわ。アホづらさらしてからに、このスケコマシが!」
ユタカはもう腹をよじりながらヒーヒーいって涙を流している。
「わかった、わかったさかい、そのエセ関西弁やめ~」
しかし。フエちゃの予想に反してケンジの関西弁は激しさを増していくばかりなのだった。
「何ゆうてけつかんねん、おまえ、いっぺんどたまかち割って、脳ミソチューチュー、極太のストローで吸うたろか?」
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